着任先の新提督が色々とマトモじゃない。   作:夏夜月怪像

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「着任先の新提督が色々とマトモじゃない。」を見るときは、部屋を明るくしてスマホの画面から離れて見て下さい(大嘘)


ここからが、クウガと艦これの物語の始まりとなります。


クウガ編 第二章
8話 : 提督


未確認生命体を撃破し、どれほど時間が経っただろう。

 

 

一条は、石ノ森鎮守府の中にある医務室のベッドの中で目を覚ました。

 

 

「…………っ……」

 

痛む体を起こすと、ベッドの脇に毛布で体を(くる)んで、座り込んで眠る吹雪の姿があった。

 

 

「…………」

 

着任して早々、心配をかけてしまった……。

起きたらちゃんと謝罪して、説教でも愚痴でも、全て受け止めよう。

 

吹雪の寝顔を見ながらそう考えていると、手元にある一枚のメモ用紙に気付いた。

 

 

手に取ると、そこには伝言が記されていた。

 

 

『一条さんへ。

 

大事な約束があるので、一度東京へ帰ります。

でも!夜にはまた戻ります。

 

俺、今度も『中途半端』はしません!

キチンと関わりますから!!

 

____五代雄介』

 

 

「…………」

 

 

 

18年前………『未確認生命体関連事件』として知られ、今や歴史の教科書にも掲載されている、九郎ヶ岳の遺跡より甦った超古代の種族《グロンギ》と、それに対抗すべく、グロンギと戦った古代の人類《リント》が生み出した戦士クウガ。そして、クウガと協力体制を取った警察による1年もの戦い……。

 

あの事件の終結と同時に、五代雄介は地獄の苦しみから開放された。開放されるべきだったのだ。

 

 

なのに……

 

彼は自らの意思で、再び『寄り道』することを選んだ。

 

こんな『寄り道』をさせないために、力を尽くすと決めていたのに………。

 

 

メモ用紙を握りしめる一条の表情は、険しくなっていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一方。

 

雄介と大淀、そして単ちゃんは東京に着いた。

 

 

「うっわ〜〜〜……なんか東京の空気、スッゴイ久しぶりな気がする!」

 

「色々ありましたからね、石ノ森(むこう)で」

 

はしゃぐ雄介に反し、大淀は酷く気持ちが沈んでいた。

 

 

「あ。朝飯はどうする?基地の食堂で済ませればいっか?」

 

「行きませんよ、基地には。今日はもう帰って休みたい……」

 

 

そう返した大淀に、雄介はちょっと残念がる。

 

「そっかぁ……あの石版について、調べてくれる人を紹介したいんだけどなあ」

 

「お願い、勘弁して下さい……」

 

 

そう応えた大淀は、心底疲弊していた。

 

只でさえ、未確認生命体に襲われ、雄介が変身して…と大淀のキャパシティの限界値を容易く超えてしまう問題が立て続けに起こったばかりなのだから、無理もなかった。

 

 

それを察した雄介は、流石にそこまで我儘を言える人間ではない。

 

「そっかぁ……そうだね」

 

 

雄介が気を遣ってくれたことに、雄介の肩に乗っていた単ちゃんは嬉しそうに擦り寄るのだった。

 

 

 

 

 

東京 渋谷 10:18 a.m.

 

 

スーツ姿の公務員や制服姿の学生、その他にも沢山の人が交差点を行き交う。

 

 

その人混みの中を、色白の少女が歩いていた。

 

「………」

 

黒地に白い縁取りのフードパーカーを着込み、7部丈の黒いパンツに黒いスニーカーというコーディネートは、フードの下から覗く白い髪と、垢抜けたような白い肌が際立っている。

 

「………」

 

 

道行く人の話し声などを見聞きし、少女はニタリと笑いながら歩いていくのだった……。

 

 

 

東京 秋葉原 10:22 a.m.

 

白いポンチョを羽織り、少しウェーブのかかった白い髪をふわりとなびかせながら、小学生くらいの少女が走っていた。

 

 

「………」

 

何かを探しているようで、周りをきょろきょろと見回している。

 

 

「あらあら、おチビちゃんどうかしたの?お父さんお母さんは一緒じゃないの?」

 

それに気付いた、一人のお婆さんが声をかけた。

 

「………」

 

「もし、はぐれちゃったのなら、お婆ちゃんが一緒に探したげよっか?」

 

 

「……ル、ナ…」

 

「なぁに?」

 

「コッチニクルナ!!」

 

「ひっ!」

 

その大声にビックリしている間に、少女は姿を消してしまっていた。

 

「……あらっ?おチビちゃん……?おチビちゃーんっ!!」

 

 

懸命に呼び、探したものの、少女は見つからなかった………。

 

 

 

豊島区 わかば保育園 11:21 a.m.

 

 

「お前ら、元気だったか〜〜?」

 

わかば保育園___そこは、雄介の憩いの場であり、守るべき笑顔がある大切な場所の一つでもあった。

 

 

「あ!ゆーすけだ!!」

 

「ほんとだー!」

 

「ゆーすけーーーっ!!」

 

 

雄介に懐いている園児たちが一気に集まり、じゃれ付いてきた。

 

「お兄ちゃん!」

 

「雄介さん、お久しぶりです♪」

 

雄介の来訪を出迎えたのは、当園で保育士を勤めている雄介の妹・後藤みのり(旧姓:五代)と、ボランティアで手伝いによく来てくれる艦娘・練習巡洋艦の「鹿島」である。

 

 

「久しぶり♪…あ!みのり、髪切った?」

 

「うん♪」

 

 

再会を喜び合い、室内に通された雄介は早速、号令をかけた。

 

「はぁ〜い、注目〜!」

 

「はーい!」

 

「今日は、まず〜…コレだ!ジャグリング〜〜!!」

 

園内のおもちゃ箱に入っていた、ボールなどを手に取り、雄介はジャグリングを披露する。

 

その技に、園児たちは笑顔で拍手する。

 

 

それは、雄介にとってもみのりたちにとっても、とても充実した時間だった。

 

 

 

 

その頃、一条は警視庁の鑑識課に赴いており、傍らには長門と吹雪の姿もあった。

 

 

「まさか、また未確認の事件を扱うことになるとは思いもしませんでしたよ」

 

「同感です」

 

今回、クウガが撃破した揚陸強襲鬼やギブナの体組織を採取し、血液検査や成分分析を依頼していた。

 

 

「あの……長門さん、私も来て良かったんでしょうか?」

 

「君は提督の秘書艦だ。(とも)に行動するのは当然だし、今回の事件に関わった艦娘の一人として知る権利がある」

 

 

「すみませーん!遅くなりました〜!」

 

白衣を小脇に抱えた、緑色の髪をポニーテールにした少女が出てきた。

 

「せっかくの休暇を邪魔してすまんな、夕張」

 

長門の謝罪に対し、白衣に袖を通す少女・軽巡洋艦「夕張」は笑顔で応える。

 

「いいえ!好きでやってるんですから、気にしないでください♪」

 

 

「夕張さん。先日行った、鑑定結果のファイルがコレです」

 

「あ、ありがとうございます」

 

鑑識課の職員に礼を述べ、揚陸強襲鬼の血液成分のグラフを見た夕張は顔を強張らせた。

 

「夕張さん?」

 

 

吹雪が尋ねると、夕張は椅子に腰掛ける。

 

「……これは、揚陸強襲鬼の血液の成分表です。そして、これによく似た生物の成分表が…コレです」

 

 

「………」

 

その表を見て、一条は黙り込む。

 

「確かに似ている……。蜘蛛の血か?」

 

 

長門の問いに、夕張は首を横に振った。

 

「蜘蛛の血液には、赤血球はありません………」

 

「え?じゃあ、何の血ですか?」

 

 

詰め寄る吹雪たちに、夕張は静かに告げた。

 

 

「これは………人間の血よ」




クウガ編、最初のターニングポイントに向けて動き出しました……!

次回、一条さんの提督としてのお仕事が本格化するかも?

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  • 五代雄介
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  • 吹雪
  • 長門
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