着任先の新提督が色々とマトモじゃない。   作:夏夜月怪像

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仮面ライダーヴァイス編、完結。


84話 : 仮面ライダーヴァイス誕生秘話・鏡に映るは憎悪の塊

大本営 司令室 05:25 p.m.

 

 

 

「………うーむ…」

 

 

国家転覆の企て…及び海軍組織への反逆罪により、沼田統也中将を軍事裁判にて尋問する―――。

 

 

警視庁鎮守府が発足されておらず、新生日本海軍司令部の要職に就いていた山県大将(当時)は、この通達に対してずっと疑問を抱いていた。

 

 

何故なら、山県は統也と幾度か演習の相手をしたことがあるだけでなく、苦労人な提督同士、腹を割って話すことも多かったので、彼の人柄は大体理解していた。

何より、今は亡き戦友の忘れ形見である鳳翔との婚姻の際、先輩の門出だからと仲人を名乗り出てくれたのが他ならぬ統也だったのだ。

 

 

自分は世話を焼くくせに、誰かに世話を焼かれるのは嫌がる面倒くさい後輩……。

それが、山県の抱く統也に対する印象だった。

 

それだけに、今回の招集について納得のいかない点があまりに多過ぎる。

 

 

「……川内、不知火。居るな?」

 

指令書から目は離さず、山県は部下の艦娘二名を名指す。

 

 

「はい」

 

「呼んだ?提督」

 

音も立てず、軽巡洋艦《川内》と駆逐艦《不知火(しらぬい)》が姿を現す。

 

 

「赤塚鎮守府の提督、沼田は分かるな?今回の出頭命令について、情報を集めてもらいたい。不知火は外、川内は内から頼む」

 

 

「承知しました。落ち度の無いよう、遂行します」

 

「合点!」

 

 

 

(どうも胸騒ぎがする………。沼田……まさかと思うが……)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「っし……。これで、偽装は良いか」

 

「な、なぁ……今更だけど、これ……下手すっと俺らクビ切られんじゃねえか?」

 

 

大本営に向かう途中の、統也が乗っていた車を襲い、運転士の憲兵や統也を殺した5人の犯行グループ……彼らは大本営に所属する、士官候補生であった。

 

 

『国家転覆を目論む、脚本家気取りの反逆者を正義の名の下に粛清せよ』

 

 

突然の密命に最初は驚いたが、前金としてとんでもない金額が口座に振り込まれていた為、欲に目が眩んだリーダー格と数人の取り巻きが実行に移った。

 

 

憲兵は、取り巻きの一人が心臓目がけてナイフを突き立てたのでそのまま放置したが、統也は数人がかりで押さえ込んで絞殺……免許証から住所を割り出し、自殺に仕立て上げて、計画は完了という予定だった。

 

 

しかし、グループの中で付いてきた……というより、付き合わされた、消極的なメンバーが一人居た。

 

元々優柔不断で、押しに弱い性格であったためにリーダー格や取り巻きたちのパシリに使われていたのだが、暗殺すると聞いて、これを断固拒否。

 

「来ねえなら、お前の分前は無しだぞ?」と脅されたが、『人殺しになるくらいなら弱虫のままで良い!』と逃げてきた。

 

 

 

その弱虫とバカにされた士官候補生・小宮は、独り赤塚鎮守府へと走っていた。

 

統也が危ない、このままでは殺されてしまう。

その事を伝えるために………。

 

 

しかし

 

 

「!……あ、あの……貴方は…ひょっとして………!?」

 

 

その道中、小宮は一人の女性を抱いて泣き叫ぶ青年と遭遇した。

 

 

 

 

「……あ…あの………」

 

 

傷だらけで、静かに笑みを浮かべたまま、もう二度と目を覚まさない鈴谷を抱いたまま、どれ程泣き叫んでいただろう。

 

 

声はかすれて、正直、声をかけられるまで口の中がカラカラになっていることに気付かなかった。

 

 

「…ぁ…あんた…は………?」

 

服装から、大本営の士官候補生だというのは理解したが、それにしたって初めて見る顔だ……

 

そんな事をぼんやりと考えていた、次の瞬間。

 

そいつは、いきなり土下座してきた。

 

 

「すいません!!!俺…軍人としてだけじゃなく、人として最低な事をやらかしましたッ!!!!」

 

 

土下座してきた小柄なそいつ……小宮と名乗った候補生は、自分とその同期生数人が、大金を餌に釣られて、無実の罪を着せられた兄さんを殺す計画を立てたことを話した。

 

「俺はやりたくないって言ったんです……でも、あいつらを止めなきゃいけないのに……また、俺は独りで逃げて…………ッごめんなさい……ごめんなさい…ッ!!」

 

 

小宮の体は小さく震えており、コイツは弱いけど正しくあろうとする人間なんだということは理解出来た。

 

 

なるほど……

 

コイツは確かに逃げたのかもしれないが、それだけで済ませるほど卑怯者にもなれそうにない。

恐らく、兄さんの鎮守府にでも行って、危機を報せるつもりだったんだろう……。

 

 

「……そいつらの名前と、今何処に居るのかを教えてくれ。そしたら、お前だけはなんとか許してもらえるよう説得してやる」

 

 

 

 

小宮の懺悔……そして、大本営の一部派閥共が企てたクソみたいな計画を聞いて、俺は思い知らされた。

 

 

どんなに正しく、真っ直ぐな思いを貫こうとしたところで、権力なんていうハリボテに隠れて、嘘の力を手にした奴の前では無力だと……。

 

なら、そんなクソみたいな偽りの壁をぶち壊して、本物の力とは何かを徹底的に教え込んでやれば良い……。

 

 

 

「だから………」

 

 

―――想い人の遺した、鏡に映る『力』を手に入れ、憎しみと怒りに囚われた猛獣と化した沼田静こと《仮面ライダーヴァイス》は、兄を死に至らしめた犯行グループは勿論、計画を企てた大本営の権力者たちを皆殺しにして、契約モンスター・バイトダイラーの贄とした………。

 

 

 

「そうだ………。偽物が力を持つから、本物の正しさが否定されるんだ………。ククク……なら、俺が証明してやる………!本物の怖さをなぁ!!クッハハ…ハハハハハハハハハ!!!」

 

 

獲物の血を浴びたまま、憎しみの牙を振るい続ける大鰐は、狂った笑い声を上げ続けた……。




仮面ライダーヴァイス編、最後までお付き合いいただき、ありがとうございましたm(_ _)m

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