戦わなければ、生き残れない!
「………これが、俺の知ってることだ。後の事は青葉……君が知ってる通りだ」
「………ッ………」
赤塚鎮守府にて、《
あまりにも惨い……そして理不尽な仕打ちに、青葉は泣き崩れ、真司は溢れんばかりの怒りに拳を震わせていた。
「……分かったかい?アンタや兄さんみたいに真っ当な人間や、鈴谷みたいに人のために命を削る艦娘ほど排除されて、嘘の塊みたいなゴミばかりが伸し上がっていく……それが、この世界の仕組みなのさ。そんな奴らを黙らせるだけの力を得るには、そいつらが嫌う力を得て振りかざすしかないんだよ」
そう言って冷ややかな笑みを浮かべる静の顔は、先程までの悪人振った雰囲気は微塵も無く。
大切な物を奪われ、傷付いた一人の若者としての本心が表れていた。
「……そっか……」
真司は一言、ポツリとそう呟く。
「とりあえず、アンタだけはそういう奴らと違うことは分かった。だから、これ以上攻撃はしないし、アンタの邪魔もしない。でも……アンタが俺を止める権利が無いってことも解って欲しい。アンタみたいなお人好しに、俺みたいな奴の過去をどうこうされたくないんだ」
「静さん……!」
真司のことは認めたが、それでも自分の復讐を止めるつもりは無いと言う静に対し、青葉はいい加減にしろと厳しく諌めようとした。
「―――分かった。なら、気の済むまでやれば良い」
ところが、真司はそれを許す発言をした。
「せ、先輩!?」
「っ!?」
これには静も予想していなかったらしく、驚きのあまり目を見開いた。
「手段は最悪だけど、それで気が済むのなら好きなようにすれば良い。兄貴を殺した奴らや、大本営の権力者どもの遺族から恨まれ続けることが……戦い続けながら生きることが出来るのならな」
「ッ!!」
「ぁ……」
遺族………
その一言に、静と青葉はハッとなる。
「俺、お前や青葉みたいに物事を難しく考えるのは苦手でさ?頭ん中が爆発すると、見える範囲がすっごい狭くなっちゃうんだけど……それでも、踏み越えたらまずいラインくらいは忘れないようにはしてる……つもり」
だって
「それを踏み越えたら……もう、引き返せなくなっちゃうから」
「………」
それを聞いて、静は自分のしてきた事を思い返す。
醜い欲望を持った連中のために、兄さんは殺された……
だから、それに対する復讐は殺す以外に無い……そう思いながら、奴らを一人残らず消した……。
でも………
そんなクズ共だって、何も生まれた時からそうだったとは限らない。
そいつらにだって……家族が…大切な人たちが居たんだ………。
我が子の死を受け入れられず、半狂乱に泣き叫ぶ両親や大好きな父、或いは祖父との別れを拒む子供たちの姿を、静は見ていなかった。
否……見えてはいたが、見ないようにしていた。
自分のした事が、兄を奪った連中と何ら変わりないことを、理解していたから………。
「………おれは……人を…殺し……ちがう…人殺しなのは、兄さんを殺した奴らのことで、おれは……おれは…!!」
目を背けてきたことを思い返した途端、静の身体がガタガタと震えだした。
震えを抑えようと、静はブツブツと呟き、己の行為を正当化しようとする。
「おれは…おれはっ……!!!」
―――その時。
静の体を、青葉が優しく抱きしめた。
「ごめんなさい……私にも、もっと力があれば……こんな事をさせなくて済んだのに……っ…司令官を……あなたの兄さんを死なせてしまって………ほんとに…ごめんなさい………っ……!」
青葉の流した、暖かな涙が静の頬を伝い、鼓動が静の胸に響いてくる。
「青葉?それに………静さん?」
そこに、品の良さげな声が呼びかけてきた。
「えっ……えっと……君は?」
ブラウンのブレザーに、艷やかで長い茶髪。
その顔立ちは、鈴谷と似ていた。
「く…熊野……さん?」
青葉の裏返った声に、真司も目を丸くした。
「え?なに、知り合い?」
「最上型重巡洋艦《熊野》さん……。鈴谷さんの、姉妹艦…です………」
「……えっ………?」
熊野―――
鈴谷に妹がいることは本人から聞いていたが、名前までは知らなかったので、静も熊野の顔を見る。
静の顔を見て、熊野は穏やかに微笑んだ。
「鈴谷の言っていた通りの方のようですわね?真面目で、融通の利かない…でも、誰よりも優しい…提督が誇りとされていた弟さん」
静の目線に合わせて屈むと、熊野は青葉ごと抱きしめた。
「鈴谷のこと……ありがとうございました。小生意気でそそっかしい、甘えん坊な姉でしたけど……貴方のことを、本当に愛していましたの。貴方の心の傷が、簡単に癒えないであろうことは理解していますが……せめて、彼女と提督の分まで、私に貴方を守らせて下さいな?」
「………っ……」
熊野の言葉は、とても暖かく。
とても優しく……静の心に染み込んでいく。
それは、確かに自分を想ってくれた、大切な人の温もりと似ていた。
―――ありがとう。
でも……そろそろ、自分を許してあげなよ?―――
謎の声が聞こえたその時……。真司と静は、ガラス越しに鈴谷の姿を見た気がした。
その顔は、愛しげに微笑んでいて
静の額にそっと口付けると、奥に立つ若い提督……沼田統也の幻影と共に、遠くへと歩き去っていった……。
「…あ…ぁあ……あああ…ぁあ〜〜ぁああ……!」
溜め込んでいた物……そして、独りで抱え続けた物が崩れ落ちた反動であろう。
青葉と熊野に抱きしめられたまま、静は大声をあげて泣いた。
その様子に、真司も少しだけ涙ぐみ、空を見上げた。
「……上〜を向ぅ〜う〜い〜て♪
何となしに、『上を向いて歩こう』を口ずさんでみる真司。
静の泣き声と、上手いのか下手なのか分かりづらい真司の歌声が、夜空に上っていく。
その日の夜空は、雲一つ無い夜空であったという。
仮面ライダー龍騎第2章、及び仮面ライダーヴァイス編。
完!!
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