ゴブリンスレイヤー in このすば   作:名枕(ナマクラ)

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 あの後、とりあえず互いに自己紹介したんだけど……ますますコイツの事がわからなくなった。

 

「水の魔法と回復魔法なら任せなさい! 本当だったらゴブリンの巣なんて洪水で押し流したりもできるんだから! このアクシズ教の女神を崇めなさい!」

「我が爆裂魔法は唯一無比。一撃で全てを終わらせる究極の魔法です。故に他の魔法など不要。二発撃てる必要もないのです。ないったらないのです!」

「私は少々不器用で剣技に自信がなくてな……だが盾役としてなら役に立てると思うから、遠慮なく存分に盾にしてくれて構わない。いや、むしろそうしてくれ!」

 何ができるかという問いに対してこんな不安しかない返答が返ってくるなかでコイツは特に動揺した様子もなく「そうか」しか反応がなかった。まだまともな俺の答えにも特に反応はなかった。

 それよりコイツも職業は冒険者(最弱職)らしい。……まさか最弱職だからゴブリンしか狩ってないとかじゃねぇだろうな……。

 いや、だとしてもゴブリンに対する知識はコイツの方があるのは確かなんだ。

 なら利用して……もとい協力してもらって少しでも楽に金を稼がなければ!

 ……ということで、今俺たち五人はゴブリンの巣へと向かっている道中であった。

「……ところで気になっていたのですが、貴方のその剣、微妙に短いですけど何か拘りでもあるんですか?」

「通常の剣では洞窟で振り回すには長すぎる」

「成程。洞窟で振るうに適した長さというわけか」

 剣についての考察をするダクネスが何か騎士っぽく見える……コイツは剣使えないのに。

「つまり、特別仕様……ちなみに銘なんかは付けてるんですか?」

「特にはない」

 オーダーメイドとかで愛着のある武器なら名前つけてもおかしくないよな……俺もいつかは俺専用の武器が欲しい。日本刀みたいなのがいいなぁ……。

「なら『ぺんぺん丸』で」

「……今、なんて?」

 思わず口を挟んでしまった。コイツ今何て言った?

「『ぺんぺん丸』です。今日からその剣の銘は『ぺんぺん丸』です」

 いややめてやれよ。そんな名前付けられた気持ちも考えてみろよ。そんな至極当然とも言えるツッコミを入れる前にアイツの持つ剣に変化が起きた。

 持ち手……柄の部分についていた札に何か浮かんだと思ったらそれが燃えて消えたのだ。残ったのは焼き跡で文字を書いたような模様でそれも柄に吸い込まれるように消えてしまった。

「え、何。何か剣が反応したんだけど……」

「……あの剣に銘が刻まれたんだ。これで名実ともにあの剣は『ぺんぺん丸』になったというわけだ」

 え、つまりあの剣はこれから先ずっと微妙な名前で、コイツはそれをずっと使い続けていかなきゃいけない事になるわけで……失礼なんてレベルじゃねぇ!?

「すみませんすみません! このバカ頭爆裂魔法なヤツなんで!! ……ってか何やってんのお前!? 人様の武器にこんな変な名前つけて!」

「はあ!? 最っ高にカッコイイ名前じゃないですか! というか人様の武器を強奪して売っぱらったカズマに言われたくないです!」

 アレはあの魔剣の……マツルギ?が因縁をつけてきたのが悪いんであって俺は正答な権利を行使したに過ぎないわけで……というか今はその事は関係ないだろ!!

 というかこれ賠償とかになるんじゃねぇの? 何、また借金増えんの?

「別に構わない」

 そんな不安が俺の中で膨らむ中で、コイツは表情一つ変えずにそう言った……いや表情わかんないんだけど。声色は全く変わっていなかった。

 なんて心が広いんだ……いや心が広いなんてレベルなのか……とりあえず賠償請求とかされなくて助かった。

「ふふん。やはりこの名前の良さ、わかる人にはわかるのですよ」

「いやそれはないだろ」

「何をーーっ!?」

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ゴブリンが巣にしている洞窟、その入り口に二匹のゴブリンがいた。

 おそらく外敵がこないかの見張りなのだろうけど、でっかいあくびしてたりしてやる気がこれっぽっちも見受けられない。

「ギャ!?」

「ゴギャ!?」

 そんな二匹が頭から血を巻き散らかしながら地に臥した。どこからか飛んできた石がそれぞれの頭部に命中して拉げさせたのだ。

「……まずは二、だ」

 そう言って見張りに突っ立っていたゴブリンを投石紐からの飛礫で二匹とも瞬殺したのを目の当たりにした俺は一先ずコイツの腕前を認めざるをえなかった。

 一発で石をゴブリンの頭に気付かれない速さで頭に命中させる辺り精度が高い。それも二発連続で……投擲スキルかな? 便利そうだし俺も取ろうかな……必要ポイントだけでも確認してみよう。

「……ってあれ?」

「どうした?」

「まさかここまで来て怖気づいたとかないでしょうねー?」

「ちげーよ。ただ投擲スキルがカードに出てなくてさ。今アンタのスキル使う所見たはずなのに……」

 冒険者カードの取得可能なスキルの欄を見ても投擲みたいなスキルの名称がなかった。目の前で見たから出てきてもおかしくはないはずなのだが……。

「俺はスキルなど使っていない」

「え? じゃあ今の凄い早い投擲は?」

「ただの技術だ」

 いや、ただの技術って……スキルもなしにあんな石ころ一つでモンスターを殺せるっておかしくないか……?

「別にスキルでなくては技術が身に付かないわけではない。訓練を積み重ねればこの程度できるようになる」

「いや、この程度って……」

 明らかに簡単に言ってのけるレベルじゃないと思うんだが……しかしスキルを取得しなくても練習すれば使いこなせるようになるのか。まあ考えてみれば当たり前なんだけど……でも長い時間ひたすら一つの事に打ち込んで修得するくらいならスキルポイント使ってすぐに使えるようになった方がいいしなぁ。

「成程。スキルではなく度重なる訓練によって身体に刷り込ませた技術か……スキルばかりに頼らない、そういった志は私も騎士として見習わなくてはな」

「ならこれからお前も両手剣の練習しろよ」

「…………」

「…………」

 スキルポイント振らなくても武器を使いこなせるようになる実例が目の前にいるぞ。騎士として見習わないといけないんだろ。ならやれよ。

「さて、そろそろゴブリンたちの巣食う洞窟に踏み込むとしようか」

「おい! せめて返事しろよ!」

 コイツ、意地でも自分から攻撃する気ないな!!

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ダクネスが一人突っ込もうとするのを留めているとめぐみんが言いにくそうに声を上げた。

「あの、今更なのですが……」

「何だ、どうしためぐみん? トイレか?」

「違います! 紅魔族はトイレなんて行きません!!」

 嘘吐け。お前トイレ行っているだろ。っと、そんなどうでもいい事は置いといて、急にどうしたんだ?

「今回、私が行く意味あります? ダンジョン潜っても爆裂魔法撃てないんですよ? ならダンジョン潜る意味ないじゃないですか」

「何を言い出すかと思えば……お前にだってやれることくらいあるだろ。ほら、えっと…………荷物持ちとかさ」

「おい、今少し間が空いた理由を聞こうじゃないか」

 べ、別に何も思い浮かばなかったわけじゃない。そういえばめぐみんとパーティ組んだ時に「荷物持ちでもしますから!」みたいなことを言ってたのをタイミングよく思い出したわけでもない。

「それにほら、仲間外れは寂しいもんな」

「それは暗に私を道連れにしようという事では?」

 しかしめぐみんの主張も間違っちゃいない。下手したらパニックで爆裂魔法を撃ってパーティ生き埋めで全滅なんて事もあり得る。というか前になりかけた。

 ……うん、メリットに比べてデメリットがデカすぎる以上、めぐみんは置いていってもいい気がしてきた。

 

「――――何を言っている。爆裂魔法は有用だろう」

「うん……?」

 ……なんて考えてたら、何を思ったかコイツはそんなことを言い出した。

「いや、一発しか魔法が使えないんですよ……?」

「貴重な一発だ。確かに使い所は見極める必要がある」

「で、でもそもそもダンジョンで爆裂魔法なんて使ったら……」

 爆裂魔法に絶対の信頼を置くめぐみんも、さすがに理解しているみたいで、言葉が尻すぼみになっていく。

 コイツ、それが理由で色んなパーティから門前払いされてきたから、思う所があるんだろう。

 めぐみんの爆裂愛は汲み取ってやりたい気もするが、ただダンジョンじゃ使い物にならないのは確かだしなぁ……

 コイツはどう返すんだろうか? 

 

 

 

「――――俺は今回爆裂魔法を切り札の一つとして考えていた。違うのか?」

 

 

 

 それは多くを語らない言葉だったが、コイツの考えを集約していた言葉だった。

 ……俺は嘘か本当か見極めるスキルみたいなのは持ってないけど、間違いない。俺にもわかる。

 コイツ、本心から言ってやがる……。

 嘘だろ。確かに爆裂魔法は強力だ。使い所を間違えなければ確かに戦局を変える一撃になるかもしれない。

 けど、洞窟だぞ。ダンジョンだぞ。

 どう考えても生き埋めになるに決まってるだろ!! 使い所を間違う前に使う場所として間違ってんだろ!!

 マジかよコイツ正気じゃねぇ! 頭おかしいんじゃねぇのか!?

「――――」

 だが、そんな頭のおかしい発言のせいで、頭のおかしい爆裂娘のやる気に火が付いたらしい。

 

「――――我が名はめぐみん! 人類最強魔法の使い手にして、爆裂魔法にてゴブリンを屠る者!!」

 

 …………俺、生きて帰れるのかな……

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ねえ、もっと手っ取り早く終わらせる方法ってないの? こう一発で、ゴブリンは死ぬ!みたいなの」

 めぐみんのやる気も出てきたところで、いざゴブリンの巣に突入! って時にまたアクアが馬鹿な事を言い出した。

「おいアクア、そんなモンあるわけ……」

「……ないことはない」

「あんの!?」

 そんなのがあるんなら依頼もすぐに終わるし、俺たちにも真似できる方法ならこれからの金策も捗る。是非ともご教授いただきたい。

「そこに、川がある」

「うん、あるわね」

 確かに川がある。ちょっとした水浴びくらいなら出来そうなくらい水量がありそうだ。ゴブリンの生活用水として使われてるのかもしれないが、もしかしたら方角的にアクセルの水源の一つにもなってるのかもしれないな。

「そこから大量の水を引いて洞窟に流し込む。抜け穴があろうと巣穴は確実に潰せる」

 ――――そんなどうでもいい考えごとが一瞬で吹き飛んだ。

「え? 要は水流すだけでいいの? それならわざわざ川からじゃなくてもできるわよ! セイクリッド――――!」

「ちょ、待て待て待て!?」

「何よー、簡単にゴブリン退治できてお金貰えるのよー」

「このお馬鹿!! お前は反省って事をしないのか!!」

 俺たちが借金を背負う原因になったのと同じことを繰り返そうとしてるのに何で気付かないんだよ!

「てかアンタもアンタだ!! そんな大量の水をぶっこんで山が崩れたらどうすんだよ!?」

「だがゴブリンは死ぬぞ」

「俺たちも死ぬわ!!」

「そうか……」

 わかってくれたようだ。よかった。顔色も変えずにあんなとんでもないことを言うもんだからコイツもおかしいのかと思ったぜ……兜で顔色見えないけど。

「……ならば、爆裂魔法。山を崩し、巣を丸ごと潰す」

「いいでしょう。黒より暗き――――」

「待て待て待て!?」

 何でそこでその選択肢が出てくるんだよ!? めぐみんも即応してんじゃねーよ!?

「お前わかってねーだろ! 結局山が崩れたら同じ事だろぉが!!」

「だがゴブリンは死ぬぞ」

「だから俺たちも死ぬっての!!」

「待ってくださいカズマ! ならこうも突発的に高まった私の爆裂欲はどうすればいいんですか!!」

「我慢しろ!!」

 くっそ、やっぱりコイツもおかしいヤツだった!!

「……仕方ない。ならば巣穴に乗り込む」

「最初っからそうしてくれ」

「もうわがままばっか言わないでよね、カズマ」

「え、何。俺が悪いの?」

 絶対俺悪くないよな? そう思い他の仲間を見渡すとめぐみんがアクアの言葉に同調するように力強く頷いていた。いやお前爆裂魔法撃ちたいだけだろ。

 ちなみにダクネスは俺に同情するような表情を向けていた。よかった、おかしくないのは俺だけじゃなかった……いやコイツも別方面でおかしいけど。

「もういいや、ならさっさと乗り込もうぜ」

「その前にすることがある」

「することって?」

「ゴブリンは臭い、特に女の臭いに敏感だ」

「成程、このまま侵入した所ですぐに捕捉されるということか」

 そうか。前回の侵入の時は、俺たちが思っていた以上に早くゴブリンの大群が向かってきたと思ったけど、コイツらの臭いに釣られて出てきてたってわけか。

「じゃあどうすんだよ?」

「臭い消しを身体に塗る」

「臭い消しなんて持ってるのか。さすがスペシャリスト」

「少し待て」

 そういって彼は仕留めたゴブリンの死体の腹を掻っ捌いた。

「……うん?」

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「うえぇぇん。臭いよ~汚いよ~」

「……爆裂魔法を撃つためだと我慢……爆裂魔法を撃つためだと我慢……」

「まさか嫌がる私の身体にゴブリンの血肉を攪拌した物を無理やり塗りたくられるなんて……んぅ、はぁ……っ!」

「おいダクネス、お前昂奮してないか?」

「し、してにゃい!」

 ……正直、俺が男で軽装備でよかったと、心底思った。

 臭い消しというものの、その実態はゴブリンの内臓をかきまぜて出来た汚物のことで、それを体に塗りたくる事で本来の臭いをゴブリンの臭いで隠すためのものだった……臭い消しってそういうんじゃねーだろ!!

 そしてそんな頭のおかしい臭い消しを考案した頭のおかしいコイツは嫌がる女どもに容赦なくその臭い消し(汚物)を塗りたくった。

 あとゴブリンは女の臭いだけじゃなく鉄の臭いにも敏感らしいから鎧なんて着てたら俺もやらなきゃいけなかったが、俺はそんな鉄臭い装備をしていなかったので助かった。

 ダクネスは女+金属装備という二重苦だったので念入りに塗られていた……本人はどことなく恍惚としていたが。

「では突入する」

 そんな頭のおかしい行為を何の躊躇もなく行なった犯人がティンダーを唱えて取り出した松明に火を付けた姿を見てふと疑問が浮かぶ。

「何でわざわざ松明に火を移すんだ? 初級魔法使えるならティンダー付けっぱなしでいいんじゃ?」

「状況にもよるが魔法の回数は温存すべきだ。いざと言う時に選択肢が狭まる」

 初級魔法とはいえ常に使い続けていると消費魔力も馬鹿にならない、という言葉に言われてみれば確かに、と感心する。身近にいる魔法を使えるヤツは膨大な魔力を持つ紅魔族と無尽蔵な魔力を持つ女神くらいだったから感覚が狂っていたかもしれない。片や爆裂魔法の一発屋、片や厄介事ばかり起こす駄女神だが。

 俺も初級魔法は使えるけど、そこまで魔力が多いわけじゃないからそれだけで魔力が無くなる事になるのは避けるべきだ。それに光源がない中で魔力切れなんて起きたら本当に終わりだ。

 専門家(コイツ)曰く、ゴブリンは暗闇でも目が効くらしいし、松明の火は消えにくいらしいから消えにくい光源としては適している。

「でも片手塞がるのはきついよな……」

「両手を空けておきたいならランタンでもいい。割れないよう気を付ける必要はあるが、水気にも強い」

「なるほどなー」

 同じ冒険者(最弱職)として俺がコイツから見習うべき点は多い…………コイツも頭おかしいけど。

 

 

 さて、ゴブリンの巣に突入するここからが本番だ。見習うべき点は盗んでいかなきゃな……

 




二話目は一週間くらいには上げよう、なんて思ってたら気付けば既に一月末……
ま、丸一ヶ月は経ってないからセーフ……(震え声)
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