会議
ミリテス皇国。
この国は
その時にイエルクは白虎ルシと出会い、機械技術を会得したと言われている。
その3年後に銃や大砲という今までオリエンスに存在しなかった武器を用い、イエルクは僅か1年でアズール地区を平定。
そしてアズールの北に新たな都市イングラムを築き、イエルクは自らを皇帝と名乗り、ミリテス皇国の設立を宣言した。
これがミリテス皇国誕生の歴史である。
本来ならば皇帝を国家元首とする専制国家なのだが、鴎暦832年に皇帝が行方不明になった為、現在はミリテス皇国軍元帥シド・オールスタインが代理で国政を行っている。
今は鴎暦842年火の月(1月)10日。
そんな国の首都イングラムを守護する帝都防衛旅団の指揮官が会議室に集まっていた。
「第四大隊指揮官ソユーズ少佐。ただ今参りました」
私は会議室に入ると自分の所属を言い、敬礼する。
「そうかこれで揃ったな。では会議を始める」
「まず今回の議題だが、来月に朱雀に侵攻する作戦がある」
「・・・それはいままでの小競り合いではないということですか?」
「うむ。全面戦争ということになる」
ミリテス皇国と国境を接する
魔法を司る
ここ最近は国境付近の領土を巡って紛争が耐えない。
去年など全面戦争一歩手前の状況になるほど激化した。
だからこの開戦自体にそれ程の驚きはない。
「その作戦についてだが、大きく3つに分かれている。その1つの国境からイスカ地区目掛けて侵攻する部隊に我が旅団から3個大隊を送ることになる」
「一部とはいえ、帝都防衛旅団まで動員する必要があるのですか?」
第二大隊指揮官の男が疑問を呈する。
「ああ、実は他にも同時期に行う別の作戦があってな。あまり朱雀戦に戦力を回せんのだ」
クラーキン少将の側近であるハーシェル中佐が答える。
ハーシェル中佐は少尉だったころに朱雀との国境紛争で顔の大半に火傷を負い、常に真っ白な仮面で顔を隠している。
現在は作戦立案などで才を発揮している為、既に前線に立つことは殆どないが歴戦の戦士として旅団内では知られている。
「別の作戦とは?」
「ロリカ同盟首都攻略作戦」
「「「なっ」」」
ロリカ同盟はミリテス皇国と国境を接するもうひとつの大国だ。
国民こそ少ないものの国=軍という体制をとっており、全員が騎士としての教育を受けている。
更に国民全てが
ミリテス皇国とロリカ同盟は建国当時から犬猿の仲であり、3度に渡る
最近は朱雀程ではないが小競り合い程度なら数ヶ月一度か二度はある。
「つまり我が国は玄武と朱雀両国と同時に戦うということですか?」
思わず私は中佐にそう問いかける。
「そういうことになるな」
「幾らなんでも無謀ではありませんか?」
「心配するな。朱雀戦の作戦のひとつでカトル准将が率いる部隊が朱雀首都を急襲する作戦があるんだが、その部隊にルシ・クンミが含まれおり、開発段階のクリスタルジャマーを使用するとのことだ」
「なっ!【パクス・コーデックス】の規約違反を行うというのですか?」
パクス・コーデックス。
それは361年に締結されたオリエンス大戦の講和条約である。
その講和条約で現在の四カ国の国境が制定された。
最もそれでも国境線上の領土を巡り四カ国の紛争は絶えなかったが。
その条約で最も重大な規約がルシによる国境侵犯の禁止だ。
これはオリエンス大戦において各国のルシ同士が何度も激突し、甚大な被害を各国が被ったからである。
「何を今更。我が国が【パクス・コーデックス】の規約違反等今までに何度も行っていようが」
クラーキン少将が面白くなさそうな声でいう。
実際にその通りである。
パクス・コーデックスではルシの国境侵犯の禁止や国境の制定以外にも交戦の規定や捕虜・民間人の扱いなども定められていた。
その規約をミリテス皇国が守っていたかというと殆ど守っていない。
降伏した兵士や民間人などその場で射殺することなど何度もあったし、捕虜については国内の捕虜収容施設そのものが閉鎖されている。
なぜならミリテス皇国の領土は痩せており、慢性的な食糧不足に陥っていて国民ですら満足な食事ができない。
そんな状況で敵国の人間に飯を食わせている余裕などなかったのだ。
「それにロリカ同盟――玄武についてだが、最近開発に成功したというアルテマ弾の試作品が使用されることが決定している」
「アルテマ弾ですか・・・」
アルテマ弾。
それは大規模破壊兵器や大陸破壊兵器と呼ばれ、甲型ルシの一撃の再現という目標のもと製作された兵器だ。
しかしそれを実用化できるのはまだ時間がかかるといわれている。
「それならば玄武や朱雀はどうにかなるかも知れませんが
私の右に座っていた第三大隊指揮官ルーキン少佐が疑問を呈する。
「確かに同盟を理由に参戦してきたら我が国は三カ国相手に一国で戦争をすることになりますな」
ルーキン少佐の言葉に私も同意する。
「心配はいらん。あの国も同盟関係がある以上朱雀に助力はするだろうが、全面的な参戦はありえんとシド元帥を筆頭に考えておられる。これは蒼龍の王族と通じて得た情報でもある」
「蒼龍の王族……件の男のことですか信用できる情報なのですか?」
「ああ、現蒼龍女王の慎重さも考えればまず本格的な参戦はあるまい。言っておくがこれは機密事項だ。この場以外でそのことを言うことを禁じる。それにロリカ同盟首都にアルテマ弾を投下した時点でロリカ同盟はあまり組織的反抗はできず、二個軍団12万を動員すれば4ヶ月以内に玄武全域を制圧が可能だという上層部の考えだ」
「そういうことで我が国に本格的に対抗できそうなのは朱雀のみと考えられており、3個軍70万の兵力を動員する。無論ロリカ同盟攻略の為の二個軍団を差し引き、我が帝都防衛旅団を始め他の部隊から抽出された部隊がその穴埋めにかりだされることになる。だがそれもロリカ同盟制圧後に元の編成に戻る。まぁ、ロリカ同盟領には守備隊を残してだからそのまま居座り続ける部隊もあるだろうがこの旅団から出兵するものはロリカ同盟制圧後帰還することになる」
「なるほど」
クラーキン少将とハーシェル中佐の説明を聞き、私とルーキンは頷く。
他の将校も同じだ。
「他に疑問はあるか?」
クラーキン少将がそう言って円卓に座っている将校を見渡す。
全員が首を横に振るのを確認すると書類を回す。
全員に配り終えると
「そこに書いてある通り、ルーキン少佐指揮下の第三大隊、ソユーズ少佐指揮下の第四大隊、イシス少佐指揮下の第五大隊を動員する。よいな?」
「「「ハッ!」」」
私を含む三人の少佐が起立し、敬礼する。
「ハーシェル中佐!」
「ハッ!」
「貴官に第三、第四、第五大隊で編成された帝都防衛旅団選抜連隊の総指揮権を委ねる」
「了解しました」
その言葉と同時にハーシェル中佐は敬礼する。
「さて、前線行き免れて安堵の表情を浮かべている諸君。君たちはこれから休暇無しで働きまくって貰うぞ。書類仕事・憲兵業務・訓練その他諸々全てだ。期間は選抜連隊が帰還するまでだ」
居残りになった将校達が少し青ざめた顔をしながら頷いた。
その顔を見てクラーキン少将は愉快そうに大声で笑った。
帝都防衛旅団:原作では帝都を守護する部隊。
しかし本作では筆者によって内情がかなり改変されている部隊。