『朱雀全軍に緊急命令。
皇国軍の攻撃により首都及び、魔導院ペリシティリウム朱雀失陥の危機にあり。
国民を守る為の最低限の兵力を残し、全軍を援軍として魔導院に送られたし。
この命令は準備が整い次第、確実に実行されたし。
作戦行動は各部隊の指揮官に一任する。
【命令作成者】
魔導院院長カリヤ・シバル6世
軍令部長スズヒサ・ヒガト大将
魔法局局長アレシア・アルラシア』
これはいったいどういうことだ?
ここにいる全員が目を見開き、モニターの情報が見間違いではないか確認している。
数十秒後、カーティス大佐が言った。
「情報が真実か否か関係なくこの情報をクザン大将に報告すべきでは……」
「そうだな。信じがたいことだがこの命令が真実だとすればこの状況を説明できることも確かだ。報告する価値はあるか」
カーティス大佐の言葉にハーシェル中佐がそう答えると通信兵を呼び寄せる。
そして受話器を取り、相手が通信に答えると話しかけた。
『こちら選抜連隊のハーシェル中佐です。クザン大将応答願えますか?』
SIDE クザン大将
【津波】作戦の最高責任者であるクザン大将は第三軍に所属している空中戦艦の司令部でロコル攻略の指揮をとっていた。
そしてロコル攻略もあと少しというところでハーシェル中佐から通信が入った。
『ああ、ハーシェル中佐。どうだ?なにか分かったか?』
『ええ。ですがあまりに信じがたい内容でして……』
『いいから話して』
『ええ、どうやら魔導院の連中が援軍をよこせと命令を下したようで……それも全軍に限界まで要求したようです』
『なるほど。道理でロコルの制圧も簡単にいってるわけだ』
『?それはどういう――』
『それがね。ロコルの守備兵が少なすぎるんだよ。だがそれも朱雀全軍が首都に向かってるって言うなら当たり前だなぁ』
『……ということはこの命令は事実ということですか?』
『そうだなぁ。俺は多分間違いないと思うが万が一ってことがあるからなぁ。【日蝕】作戦の責任者のカトル准将に話をしてその上で俺が間違いないと思ったら本国と【隼】作戦の奴等に報告しよう。お前等選抜連隊はこれからメロエ地区に戻って残党狩りと地方の都市や村を制圧しろ』
『メロエ地区全域となると流石に数が足りないのですが』
『それならそこにいるカーティス大佐の隊と俺の指揮下の2個軍団をそちらに回す。指揮権も任せるんで後は適当にやっててくれ』
『はぁ、わかりました』
ハーシェル中佐からの通信が切れる。
するとクザン大将はカトル准将に通信を取るように命令をだす。
そして直ぐにカトル准将と通信が取れた。
『カトル准将です。いったいなんのようですか?』
『いやねぇ。なんかハーシェル中佐からの報告によると魔導院が朱雀全軍に対して援軍要請出したらしいんだけどなにか心当たりないか?』
『……確かに散発的に朱雀軍が首都に入ってきます。まぁルシ・クンミが朱雀クリスタルを抑えているので大した脅威ではありませんが数が多いことは事実です』
『そうか。じゃあやっぱりハーシェル中佐が入手した情報は正しいようだな』
『そうですね』
『そうか。じゃあこの情報は真実として報告しておこう。朱雀軍の圧力が強くなると思うから気をつけろよ。じゃあな』
その後、クザン大将は本国にその内容を報告。
そして【隼】作戦の最高責任者サカヅキ大将に連絡を繋いだ。
SIDE サカヅキ大将
『なんじゃと?』
わしはクザンの奴からの報告を聞き、耳を疑った。
『ええ、なんだかねぇ朱雀全軍がどうも魔導院に向かってるみたいなんですよ』
『間違いないんじゃな?』
『ええ』
『わかった』
わしはそう言ってクザンとの連絡を切った。
そして思わず拳を握り、自分が座っている肘掛に叩きつける。
その音を聞いた空中戦艦の船員が思わずうめき声をあげた。
誰から見てもワシが激怒しているのがわかる表情だったからじゃろうのう。
「あの、いかがなされたので?」
この艦隊の司令官であるジョナサン中将が尋ねる。
「朱雀の軍ちゅうのは軍として最大の義務を守らんのだと知って同じ軍人として腹立たしいと感じただけじゃ」
「は、はぁ」
先程クザン大将からの朱雀軍に関する報告は許しがたいものだった。
国軍というのは有事にあっては国民と国土を守ることこそ最大の義務。
しかし今自分と皇国軍が敵対している朱雀軍はその義務を放棄し、自国の国民を見捨てて首都で国政を担っている一部の権力者を最優先で救おうとしている。
それが許せない。
もしそんな命令を下れば自分は絶対に無視する。
いや、それどころかそんな上司ならどんな手を使ってでも排除する。
そういう軍人としての強烈な誇りをサカズキは持っているのだ。
「やけに朱雀軍の数が少ないのは陥落間近の首都に向かっているからじゃ。朱雀の罠の可能性はない!全軍に伝えよ!!」
「ハッ!!」
「それとルブルム地区の攻略にあたっちょるボルサリーノの隊にも伝えるんじゃ!!」
「ハッ!!」
「我が軍の持つ全ての力を持って朱雀軍……いや、軍と呼ぶにも値せん腰抜けの
「ハッ!!」
そこまで言い切ると力強く握り締めていた拳を目の前に広げる。
力を入れすぎていたのか手は赤くなり、少し血が出てしまっている。
それを見てわしは改めて決心する。
朱雀軍は一人残らずミリテス皇国の名の下に等しく……全滅させるんじゃと。
SIDE ソユーズ少佐
「我々はこれよりメロエ地区に戻り、敵残党の撃破及び辺境の制圧に向かう」
ハーシェル中佐の言葉にイシス少佐が問いかける。
「選抜連隊だけでは数が足りないのでは?」
「クザン大将が指揮下の2個軍団とカーティス大佐の312部隊の指揮権を私に委ねたので兵力は足りてる」
「……2個軍団も前線から引き抜いて大丈夫なのですか?」
「大丈夫もなにも我が軍を迎え撃つ筈の朱雀軍が背中を向けて首都に向かってる。我が軍にまともに歯向かえる朱雀の部隊が残っているものか」
「……そうでした」
「それにしても朱雀はいったいなにを考えているのでしょうか?守るべき国土と国民を投げ出し首都に援軍に向かうなど」
カーティス大佐が腕を組み、疑問を零す。
確かに国軍が国土と国民を見捨てて我が軍の追撃を受けながら首都に後退するなど正気の沙汰ではない。
首都が落とされたということは軍事力の源であるクリスタルを安置しているペリシティリウムも落とされたということだから救援に向かわねばならないのは理解できるが撤退するなら撤退するで
「確かに、ですが朱雀軍としてはありえない話ではない」
「はぁ、それはどういう意味ですかソユーズ少佐」
しかし国軍として失格ながら
「そもそもカーティス大佐は【朱雀領ルブルム】という国の成り立ちをご存知ですか?」
「いえ、朱雀の武器などに対する知識はともかく歴史はあまり知りません。精々このオリエンスに現存する国家の中で最古の国であり、朱雀クリスタルが安置されてある魔導院ペリシティリウム朱雀が出来たのが我等が使う鴎暦の元年であること程度ですな」
「ええそうです。その朱雀クリスタルがアギトを育てよという使命を授けたとされているのも我が国を除く他の国と同じです」
ミリテス皇国ではペリシティリウムは白虎クリスタルからエネルギーを吸い出す施設として存在している。
しかし他国ではクリスタルを安置する場所であると同時にアギトを育成する為の教育施設として機能している。
特に朱雀のペリシティリウムは魔導院とよく略され、院長が国家元首である為に魔導院はクリスタルの安置所=アギト育成施設=政府という図式が成り立っている。
「その魔導院で学んだアギト候補生達が各地で魔法を教えるとますます各地の魔導院に対する依存が高まります。そして鴎暦120年にある事件が起こった」
「ある事件とは?」
「モンスターが魔導院を襲撃した。朱雀のルシがモンスターを撃退し、魔導院を守ることには成功したようだが損害が結構あったらしくて魔導院に依存していた地域は衝撃を受けたそうだ」
「なるほど」
「その結果、朱雀クリスタルを守る為に魔導院を中心とした国家を建設せねばならないという動きが各地に広がり、モンスターの襲撃から僅か3年後に【朱雀領ルブルム】が建国された」
「ということは……」
「そう、元々クリスタルを守護するために国家が出来たのだ。ならばその国の軍の役割も分かるだろう?」
「魔導院を守ること……ですか」
「その通り。【アギトを育成する為に魔導院があり、その魔導院を守る為に朱雀軍が存在する】というのが朱雀軍の在り方で、国土や国民を守るのは二の次という訳だ。私がこれを知ったときはあくまで建前だろうと思っていたが今回の朱雀軍の動きを見るが切りどうやら本音だったようだな」
そう、初めて朱雀に関する文献を見たとき私はそう思っていた。
しかしどうやら朱雀は文献どおりの度し難いクリスタルの犬であるようだ。
「しかしそれでも殿すら残さないとは朱雀軍は馬鹿の集まりなのですか?」
「まぁ、敵が馬鹿なのは俺たちにとってはありがたいことじゃないか」
「ルーキン少佐の言うとおりだカーティス大佐。敵が馬鹿なのは我が軍にとって有利にしかならん」
ハーシェル中佐の言葉を聞き、カーティス大佐は頷いた。
そしてメロエ地区に戻り、地区全域の制圧を開始した。
1万から2万づつに兵力を分けて村や町を包囲して【ホ-四三自走175mm加農砲】通称ニムロッドを中心とした砲兵部隊の砲撃で朱雀の守備隊の数を減らす。
その後、命中率が悪かった155mm砲を外し、代わりにクローを装備したストライカーの近接戦闘用に特化した皇国軍の主力鋼機【コ-二四二陸戦鋼機四型】通称ウォーリアを中心とした鋼機部隊と歩兵部隊を突入させ、虱潰しに殲滅。
そして殲滅が完了したら村や町にあった物資を輸送機に載せてメロエに送る。
輸送が終わったらまた別の町や村へ向かい同じようにして殲滅。
こうしたことを何回か繰り返していると上からメロエ地区制圧完了の報が届いた。
「ようやく一息つけますね」
ベルファーがそう言いながらため息をつき、ウイスキーを飲む。
メロエ地区を制圧したので一本だけ飲むのが許可されたのだ。
といっても【ホワイト・タイガー】という安物のウイスキーだが。
「少佐はいいですねぇ、ブラックなんて高級なもの飲めて」
「だが、私は酒はあまり飲まない。残りをやろうか?」
「ありがとうございます!!!」
ベルファーが物凄く嬉しそうな顔をしながら敬礼する。
……心なしかいつもよりちゃんと敬礼しているように見えるのは何故だろうか?
「ベルファー大尉、あまり酔わないでくださいね。まだ時間はありますが後でクンミ様のお手伝いをしなければならないのですから」
「え?
ベルファーが首を捻りながら私に訊いてきた。
「ルシ・クンミがカトル准将の指揮下にあるからどちらも間違いではない。だが普通は指揮権を持っている者の名前を言うべきだろうイネス大尉」
「カトル准将よりクンミ様の方が私の中では偉いのですからそれでいいんです」
「……クンミの奴は部下に恵まれていたようだな」
イネス大尉は皇国軍では珍しく女性軍人だ。
というのも生粋の軍人ではなく
鋼室というの鋼機を設計・開発する施設で、鋼機の試運転もここの技官がしている。
そんな中で試運転ですばらしい才能を発揮した技官を軍人として抜擢することがたまにある。
そういう経緯で軍に入れば最初から士官扱いで入隊できるのだ。
勿論そんな経緯で入れば軍内で出世する可能性も殆どないが……
「クンミ様が首都攻略に乗っていた鋼機はクンミ様専用に調整されていて私もその設計に加わっていたんです。クンミ様の素顔も久しぶりに見ましたそれはそれはもう美しいの一言です!!でもクンミ様はシド元帥の方ばかり見ておられて私の方をあまり見てくれませんでした。あの老人め……いえ、別に元帥を批難しているわけではないんです。ただ私もクンミ様とお話したかったので、ええ、それでその元帥に少し嫉妬しただけなので謀反を起こす気などありません!ええ!!精々後ろからコロッサスの腕で殴る程度です!!!そういえば今クンミ様がお乗りになっているであろう鋼機にはクリスタルジャマーが搭載されているのでおそらく朱雀に圧勝できると私は思っています。クンミ様と……私が造った鋼機で、へへ――」
「ベルファー、向こうで一緒に酒でも飲もう」
「ええ、なにやらイネス大尉がトリップしているようなので急ぎましょう」
私とベルファーは永遠と続くイネス大尉の語りから逃げ出した。
因みにイネス大尉は私達が離れた事にも気づかず顔を赤くさせて話し続けていたがどうでもいい話だ。
作者「え?なに?皇国軍に某海賊漫画の人外がいるじゃないかって?
いや他人の空似に決まってますよwwww
だから氷人間だったり、溶岩人間だったり、光人間だったりしませんよwww
・・・・・・・・・・・・・・多分」
セア「それより何時になったら【不老不死の暴君】更新するんだよ~
ベルガ戦の途中から一ヶ月以上更新ないんだけど」
作者「・・・」