──悪役は倒され、物語が終わっても、この世界は続いている。
この世界を作った神様、私の友達だった新条アカネは自分のいるべき場所に戻った。その事はほんの少し……いや、とっても寂しいけれど、それは仕方のない事だ。
だって、アカネはこの世界の神様ではあっても、最初からこの世界の住人だったワケじゃない。
アカネは彼女が元いた世界からやって来て、この世界を作った。つまり、アカネにはきちんと
その世界にはきっとアカネの家族も、友達も、もしかしたら好きな人だっているかもしれない。そっちの世界でのアカネの事は私は分からないけれど、きっとそうだと信じたい。
なら、私はそれを邪魔しちゃいけない。帰るべき場所があるアカネを、この世界に引き留めちゃいけない……そう考えて、あの時私はアカネを送り出した。
……だから、ふとした時に頬から流れる涙は私が悲しいからじゃない。アカネの新たな門出が嬉しいからなんだって、そう思う事にした。
だって、アカネは神様だもん。もし私が悲しんでると知ったら、この世界に戻って来るくらいはやりかねない。私はそんな
それに、この世界が作り物であったとしても、今私達が生きているのはこの世界なんだ。だからアカネにとっての
現実である以上、学校もあるし、ちゃんと勉強して色んな努力をしないと就職する事も出来ない。そのあたりの事は、どうやら甘く設定してはくれなかったらしい。
自分がレプリコンポイドとかいう電子生命体だなんて聞かされても、「何それ」ってのが正直な感想だ。
生まれがどうであったとしても、今此処に生きている私は自分の事を人間だと思っている。ならそれでいいじゃない、ってのが私の考えだった。
内海くんはこの事について色々悩んでいたみたいだったが、結局は「作り物が自我を確立するのも王道だよな!」とかワケの分からない事を言って勝手に納得してしまった。
……そして、裕太くんは、裕太は……意外な程あっさりと、今の状況を受け入れていた。
グリッドマン達が帰った後、私の家で目を覚ました裕太は、朧げながらグリッドマンに憑依されていた間の事を覚えているようだった。
本人曰く「長い夢を見ていた気がする」との事だったが、どうやら裕太は
グリッドマンに勝手に身体を使われていた事に関しては、
自分の身体が勝手に他人に使われていたというのに呑気なものだと呆れたが、裕太は「だって、そうしないとこの世界が救われる事はなかったんだから」って笑顔で言うものだから、私はそんな裕太に何も言えなくなってしまった。
……そもそも、今私は裕太の事を避けている。何故かって、そりゃあ……グリッドマンに、裕太が私の事を好きだという事を暴露されてしまったからだ。
裕太が記憶をなくしたあの日、裕太は私に告白して来た。そして、私がその返事を伝える前に倒れ、目が覚めたら記憶喪失になっていた。
告白した直後に倒れるもんだから放っておけず、家に入れて休ませていたのだが……その結果、グリッドマンと関わる事になったのだから数奇な運命とやらを感じてしまう。
ともあれ、私はあの日告白を受けた時には裕太がどれくらい本気で私を好いてるのかが分からなかった。
同じような告白は何度も受けたが、どうにも男女間の交際というものに興味を抱けずに全て断って来た。
だって、男女交際なんてしたら自分の時間が取られるようで嫌だった。相手によっては束縛して来るかもだし、無理して愛想よくして交際するくらいなら、いつもの友達と駄弁っている方がずっと楽しいと思ったからだ。
……けれど、グリッドマンが言うには裕太はグリッドマンに憑依されていた間も私への恋心を忘れなかったらしい。その事を聞いて、私の心は揺れに揺れた。
だって、そんな本気の好意なんて今まで感じた事なんてない。今まで私に告白して来た男達は下心が透けて見える連中ばっかだったというのもあるけれど、少なくとも裕太の好意は受けていて嫌な感じはしなかった。
私に告白して来る連中は、大概私の容姿がいいから告白して来るらしい。だから、普段の愛想のない私の姿なんかを見れば、幻滅する者が大半だろう。
けれど、裕太はこれまでの【グリッドマン同盟】としての活動の中で、私の
勿論、下心がないなんて事はないだろう。でも、裕太にはきちんと私に真摯に向き合おうという姿勢が垣間見えた。
……私が裕太をどう思っているかについては、未だ答えが出ない。だって、【グリッドマン同盟】として付き合ってきた裕太はあくまでグリッドマンが憑依した裕太で、裕太本人じゃなかったんだから。
けれど、内海くんが言うには裕太の性格はグリッドマンが憑依してからも大して変わっていなかったらしい。
精々が使命感に突き動かされていたのが目立ったくらいで、あとは本物の裕太そのものだったそうだ。
しかも、どうやら裕太はグリッドマンに憑依されている間も私への好意を問われて肯定していたらしい。
グリッドマン曰くその感情は裕太本人のものだと言うので、
だから、裕太の告白に関して私がどう答えるか。残る問題は、それだけだった。
ぶっちゃけてしまうと、裕太の事は嫌いじゃない。むしろ、好感を持てる相手だと認識している。
裕太は私の家で目覚めた後、私にもう一度告白して来た。「俺は、六花の事が好きです」って。
……告白をやり直すなんて勇気が必要な筈なのに、きちんとそうしてくれた事はなんだか嬉しかった。
返事はいつでもいい、とも言ってくれた。だから私はその言葉に甘えて、今まで返事を保留していた。
裕太から返事を催促された事はないが、気が付くと裕太が私の事をチラチラ見ている様子があるので、内心ではその事が気になっているに違いない。
──いい加減、返事をするべきだろう。アカネを笑顔で送り出した私が、こんな所で足踏みしてていい筈がない。
みんな、自分の現実を生きている。私も、裕太も、内海君も、アカネやグリッドマンだって、自分の世界で自分の未来と向き合っている。
それなら、私も未来と向き合おう。裕太の告白と向き合って、きちんと返事をしよう。
そうと決まれば行動は早い方がいい。私はスマホに登録してあった裕太の番号にかけて、私の家に呼び出した。
電話に出た裕太はどうやら私の用事を察したらしく、緊張した様子で「すぐ行く」と言って電話を切った。その様子がなんだか微笑ましくて、申し訳ないけれど笑いが零れてしまった。
ともあれ、裕太への返事はもう決まっている。
考えてみれば、簡単な事だった。だって、いつの間にか彼への呼び方が
私自身自覚はしていなかったけど、これはつまり……
──家の入口に、裕太の姿が見えた。急いで走って来たらしく、息が切れているのが見て取れる。
私はそんな裕太を家に招き入れて、そして──
────私の返事を聞いた裕太は一瞬驚いて、そして……満面の、笑みを返してくれた。
──アカネ、私はこれからもこの世界を生きてくよ。だから、アカネも自分の世界で幸せになってね。
──うん。六花も響くんとお幸せに! ──
──何処かから、そんな懐かしい声が……聞こえた、気がした。
私はこの世界を、現実を生きていく。これからは、
未来の事なんて分からないけれど、それでも……彼と歩む未来は、きっと楽しいものになるだろうと……私は、そう思えた。
──だって、この世界を作った神様が……祝福して、くれたような気がしたから。
なんとか最終回視聴後の熱のままに書き上げました。どうだったでしょうか? 最終回の余韻を壊さないように気を付けたつもりです。
【SSSS.GRIDMAN】、本当に良い作品をありがとうございます。