fate勢の状況
切嗣side
「アヴァロン、か」
やれやれ、アハト翁も余計なことをする。
僕の戦い方―――いや、殺し方を理解していないようだ。
最優のサーヴァントといっても、おそらく―――いや、確実に僕とはそりが合わないだろう。
前々から思っていたが、アハト翁には戦略的な思考がたりないのではないか?
前回の聖杯戦争も奇をてらい過ぎて失敗したようだし。
最優のサーヴァントとはもちろんセイバーのことだ。
そして、アヴァロンを使うのならば、召喚されるのは決まっている。
アーサー・ペンドラゴン。
伝記通りならば、彼の王は騎士道とやらを好むらしいからね。
騎士道。
「………全く吐き気がする」
何が騎士道だ。
それで何人の人間を殺してきた。
何人の人間を戦いに駆り立てた。
清々しい顔で殺人を肯定する偽善者どもめ。
怖い顔をしてしまっていたようで、アイリが心配そうな顔をしている。
「大丈夫だよ」
彼女は僕の理念の理解者ではない。
けれど、僕の理解者であろうとしてくれている。
それだけで、僕は救われる。
だから、彼女には無意味な負荷をかけたくない。
………やがて、聖杯となる彼女に対してこの想いは偽善なのかもしれない。
しかし、どうしようもない。
彼女を愛しているのだ。
想うだけならいいだろう。
想うだけならば。
さて、そろそろ召喚の儀式を始める時間だ。
大丈夫、これは人類のためだ。
僕の選択は間違っていない。
アイリも納得している。
迷うことなんてない。
僕は勝つ。
勝って人類を救うのだから。
ウェイバーside
「やった、やった!」
今、僕はおそらく人生の最盛期を迎えている。
いや、これから迎える、と言った方が正しいかな。
僕の素晴らしい論文を引き裂いた憎き時計台教授ロード・エルメロイ―――いや、ロードなんていう必要ないな。
ケイネス・アーチボルトから僕の所にやってきた聖遺物。
そう、あれはまさに正しい所有者は僕であるといっているかのようであった。
これは必然だったんだ。
だから、僕が使うのは正しいことなんだ。
そう、これは泥棒じゃない。
正当なことなんだ!
証拠に令呪もしっかりこの手に宿ってるんだ!
「しっかし、本当にこのリボンが聖遺物なのか?」
それは2本の、元は赤っぽい色であったであろうリボンだった。
今は色が褪せてしまっている。
それに所々黒くなっている。
僕の印象ではただの汚いリボンだ。
僕ほどの技量があれば、儀式は成功するだろうけど、このリボンは不安要素だった。
本当に本物なんだろうな?
いや、大丈夫!
しかし、あの宅配屋が間違ってないかぎりはこれは聖遺物だ。
ご丁寧に上等な箱にこんな物をいれていたんだ。
間違いないはず!
今さら時計台に行く気はない。
だから、もう冬木とかいうところに来ている。
もういいかな。
正直召喚したくてたまらない。
英雄を召喚するんだ。
この僕が。
興奮するのも無理はないと思う。
「そろそろかな」
僕は待ちに待った儀式へと取りかかった。
遠坂side
「完璧だ」
私は今日、神に連なるモノを呼び出す。
そして、遠坂の悲願を達成する。
根元の渦へと至る。
そのために必要なことは全てした。
言峰綺礼という嬉しい誤算も手に入れた。
教会を味方につけ、聖杯戦争参加者の一人を味方につける。
これで、勝てない方がどうかしている。
しかし、油断は禁物だ。
というわけで、聖遺物の確認をする。
制服。
見滝原中学校という空想世界に存在する教育機関の物だ。
神の世界にも学校があることに最初、私は驚いたが、今はとなっては納得している。
それにその聖遺物が何であるかなど問題ではない。
大事なのは、この聖遺物を使えば、最強のサーヴァントを呼び出せることだ。
遠坂たるもの優雅たれ。
家訓に従い、神に謁見するに相応しい格好をする。
もてなしも完璧だ。
綺礼を呼び出す準備をする。
あいつにはまだ召喚しないよう言いつけている。
私が召喚した後に私のサーヴァントと共闘するに相応しい適正を持ったサーヴァントを呼び出してもらうつもりだ。
「さて、では根源へ至るとしようか」
私は優雅に儀式を起動させた。
ケイネスside
「やってくれるじゃないか」
ウェイバー・ベルベット君。
君は本当に愚かなことをした。
まさか私を敵にまわすとはね。
いいだろう。
ならば、私が君のそのちっぽけな英雄願望を潰してあげよう。
跡形もなく。木っ端微塵に。粉々に。
―――しかし、彼は本当に愚かだ。
まさか、私が
………………。
改めて考えてみると彼は本当にバカなんじゃないだろうか?
聖遺物を奪うこと。
確かにそれは簡単に聖杯戦争で有利になる方法だ。
しかし、それは奪われた相手が何もしてこなかった場合に限る。
今回の私のように―――いや、例え私のように予備の聖遺物を用意してなくとも参加自体はできるのだ。
つまり、それは自分のサーヴァントの能力と経歴を知っている人間が敵になるということだ。
当然、弱点も知られているだろう。
つまり、私はあの『黒きリボン』の英霊の正体を知っているのだ。
いや、英霊と呼ぶのもおこがましいあの悪魔の正体を。
そして、弱点を知っているのだ。
「フフフ」
ベルベット君。
課外授業といこうか。
教えるのは敗北と劣等感。
授業料は君の命で結構だよ。
私は儀式を組み立てる。
間桐side
「ゲホッゲホッゲホッゲホゲホゲホッ」
吐き気がする。
そう思った次には吐いていた。
虫が出てきた。
汚い。
なんでこんなに苦しいんだっけ?
………思い出せないし、どうでもいいや。
「まさか、これほど蟲の侵攻が早いとはな。見込み外れじゃったかのぉ」
虫の声が聞こえる。
楽しそうな声だ。
いらいらする。
なぎはらってみる。
でも、手は動かない。
代わりに何かが動いた。
「ほう………。蟲のコントロールだけはできとるのぉ。いや、むしろ出来すぎじゃ。
まあ、これだけボロボロになって蟲も満足にコントロール出来ないんじゃったらいよいよこいつも報われんがの」
虫の声は一瞬止んだが、またすぐに聞こてきた。
耳障りだ。
「ワシを攻撃するぐらいならば、少しでも魔力を節約したほうがようぞ?
流石に聖杯戦争に参加せずに死なれるのはつまらんからのぉ」
………――――。
「どれ、仕方あるまい」
むしはおれの手を持ち上げた。
「召喚の魔力はワシが代行してやろう。まあ、ちょいと痛むがの。なあにすぐに済む」
そう言って虫はおれの手の中に指を突っ込んできた。
指?
虫の指ってこんなに太かったっけ?
見てみる。
「あ、ああ、あああああ!!?」
なんだこれ。
熱い熱い痛い熱い痛い熱い熱い痛い熱い熱い熱い熱い痛い熱い痛い熱い痛い。
「さて、では召喚を行おうか」
むしが、なにかを、いった?
言峰side
「綺礼よ。考え直す気はないのか?」
「父よ。申し訳ありませんが、それはできません。
「そうか。いや、私もお前の父だ。お前の気持ちは理解できる。できるつもりだが………」
「………心配しないでください、父よ。時臣師との協力関係は継続します」
「しかし、お前のさっきの言い分では、お前は聖杯を―――」
「ええ、使います」
「五体のサーヴァントを殺害後に時臣師を殺せば、聖杯を使用することは可能でしょう?」
「―――本気なのか?」
「信じてください。決して邪なことには使いません。
それならば教会にとっても構いますまい」
「た、確かに遠坂と手を組んだのは聖杯を有害な目的のために利用されることを防ぐためだ。
ならば、いや、しかし………」
「聖杯の悪用はしません。
父よ、私を信用してください」
「………………いや、やはり―――」
スルッ
「………これは?」
「魔術師の間で使われる契約書です。時臣師より頂くことができました」
「いつの間にそんなものを………」
「この契約書は我々でも使うことができます。加えて絶対の拘束力を持ちます。破ることはできません」
「父としても万が一ということは起きてほしくないでしょう。私が聖杯を悪用しないようにこの契約書にて誓います」
「………………」
「再度言います。
私を信じてください」
「………………分かった。お前を信じよう。
しかし、この契約書は一度こちらで調べさせてもらう。きちんと効力を発揮するものか分かり次第契約を使用しよう」
「―――感謝します」
トコトコトコトコ
ガチャッ
「………綺礼よ。お前を無条件に信用できない私を許してくれ」
「理解しています。父の行いもまた世界を思ってのことです」
「………………。済まない」
キィ バタン
「さて、今の内に
『①・言峰綺礼(以下甲)は此度(こたび)の聖杯戦争において聖堂教会から一切の命令・指示を強要されない。
②・①が一度も破られなかった場合、甲は聖杯に以下のことのみを願う。
甲の実娘カレン・オルテンシア(以下乙)をどこに居ようと、甲の元につれてくること。
及び乙の身の安全の保障。
この契約書に書名した者は以上のことを遵守することを誓う』
「拙い文章だな。どうやら私には文才はないらしい。まあ、あとで書き直させればいいか。内容はこれで決まりだが」
prrrrri
「ふむ、時臣師からの電話か」
『そろそろ召喚の儀を行う。君もそのつもりで』
「分かりました、師よ」
ブツッ
「そろそろ召喚の時か………。さて時臣師は一体どのような英霊を召喚するのか」
「私もすぐに行動を起こせるようにしておかねばならないな。時臣師のサーヴァントの弱点をつけるように」
ガサゴソガサゴソ
スッ
トコトコトコトコ
ガチャッ
キィ バタン
龍之介side
出演者は現在作業中のためお休みいたします。
「「「「「「来たれ、天秤の守り手よ。我が呼び掛けに応じてその姿を現したまえ」」」」」」
第四次聖杯戦争。
本来の史実とはねじ曲げられて開幕。
待っているのは希望か絶望か。