「キュゥべえ………!」
「まさか君たちまでこっちに来ているとは思わなかったよ。まったく因果というものはつくづく理解できないね。まるで人間みたいだ」
白き侵略者『インキュベーター』
こいつまで、現界しているとはアーチャー、アサシンともに考えもしなかった。
自分達が呼ばれたのは偶々だと思っていた。
いや、それよりも再会に驚いたり、喜んだりで考える暇がなかったのだ。
しかし、アサシンことほむらの行動は速かった。
盾の中に潜ませているハンドガンを取りだし、キュゥべえを撃つ。
元の世界で何度も繰り返してきた攻撃だ。
しかし、キュゥべえは元の世界と違い、これを避ける。
(やっぱり、こいつもサーヴァント………! ステータスの恩恵を受けているのね)
「おいおい、いきなり物騒だね、ほむら。少しは落ち着いて話をしようじゃないか」
「あなたと話すことなんてないわ、インキュベーター」
「ちょっ、ちょっとほむらちゃん! 駄目だよ撃ったら!」
「………? どうして止めるの、まど―――」
そう言ってから周りに人がいたことを思い出す。
これはまずい。
そう思ったほむらははハンドガンを盾のしまう。
まどかは必死に周りに対してフォローしている。
「インキュベーター。お前は『いつ』のお前なの?』
「言っている意味が理解できないよ、ほむら。それよりもこっちには話しておきたいことがあるんだ」
「そう、答えないならもう良いわ」
『時間停止』
ほむらの魔法少女としての能力。
魔力を消費して、時間を止める能力。
再度、ハンドガンを取りだし、キュゥべえに向けて発射する。
その銃弾はキュゥべえを貫き――――はしなかった。
キュゥべえはさっき避けたときと同じように銃弾を回避した。
「………っ!?」
これにはほむらも驚きを隠せなかった。
今まで、元の世界でも時間停止中にこいつが動けたことなんてない。
なのに、どうしてこいつは動ける!?
「理解できないかい、ほむら? けれど、考えてみれば、分かることなんだよ。君たちを魔法少女にしたのは僕達インキュベーターだ。ならば、君たちにできることが僕達にもできるということは自明の理なんだよ」
まあ、全てが出来るわけではないけどね。
そうインキュベーターは心の中で付け加える。
「だったら、何故元の世界でそれをしなかったの………?」
「したところであの結末は回避出来なかった。事実、まどかがあんなことを願うまでは順調に進んでいたんだ。僕は殺されても特に痛くないから、無駄にエネルギーを使ってまで魔法に抗う必要はなかったからね」
それに。
そうインキュベーターは続ける。
「いまさら知ったところでどうするんだい?」
「……………」
「過ぎ去ったことよりも先のことを考える、というのが、人間では美徳とされるんじゃないのかい?」
「それとほむら。さっきの質問だけど。君にとっても都合が良いだろうからここで答えておいてあげるよ。
僕は知っている。君がまどかから力を奪ったことを」
やっぱり。
インキュベーターは知っていた。
「けれど、まどかには言わないでおいてあげるよ。僕としても、まどかに力が戻るのは好ましくない」
………?
これは、もしかして。
「君が力を持っているうちはまどかはただの魔法少女と同じ程度の力しか出せない。君もまどかの前で力は出せない」
インキュベーターはまどかに力が奪われた記憶があることを知らない………!
「さて、もうそろそろここは退散させてもらうよ」
「………あなたは何のためにここに来たの?」
偶然とは思えない出会いにほむらはついつい質問してしまった。
「偵察さ。サーヴァントの大まかな位置は分かっている」
それだけ言ってキュゥべえは走り去っていく。
もう必要のなくなった時間停止を解除する。
「…………………あれ、キュゥべえがいない」
「逃げられてしまったわ。インキュベーターも今まで通りの敵ではないみたいよ」
元の世界では殺されても痛くもないから、無駄なエネルギーの消費を防ぐために魔法に対抗しなかった。
だったら、何故、あのインキュベーターは
結論はただ一つ。
この世界のキュゥべえにはストックが存在しない。
考えてみれば、当然だ。この世界に呼び出されたのがインキュベーターだとしても、一度に何万何億ものサーヴァントを呼び出せるとは考えにくい。
ならば、今の奴は一度殺せば死ぬ。
それもおそらくハンドガンでも充分殺傷出来る。
今回のキュゥべえは迂闊に過ぎた。
まどかに力を奪われた記憶がないと誤解していることを露呈し、自らのストックがないことを露見した。
確かにあの能力を厄介だ。
『インキュベーターの科学力』とでも言うべきだろうか。全ての魔法少女の力を扱えるという能力。
しかし、ハンドガンで殺せるとなれば話は別だ。
殺り方はいくらでもある。
「ねえ、ほむらちゃ―――っ!?」
まどかに抱きつくほむら。
「まどか、お願い。信用できないかもしれない。信頼できないかもしれない。それでも、少しの間でいいから私のことを信じて。必ず、ちゃんと話すから。全部全部、話すから」
「ほむら、ちゃん。――――――うん、わかったよ。私、ほむらちゃんのこと信じるよ。だって、私の本当に大事な友達だもん」
「まどか………」
つらい。
まどかを騙すことが本当につらい。
不意討ちをした私のことを信用してくれたまどかを――――――また裏切ることになるかもしれないことがつらい。
ごめんなさい。
でも、私は悪魔と呼ばれてもいいから。
あなたと一緒に過ごせるあの日々を取り戻したいの。
その頃、一方キュゥべえさん。
「ねえ、君、僕と契約して魔法少女にならないかい?」
着実に駒を増やしていた。
改めて、「ああ、これ、めっちゃ二人称と三人称混じってるなあ」と思う今日この頃。
以前、二人称と三人称を混ぜすぎてめちゃめちゃ批判された思い出がフラッシュバックします。
おかしいなあ、分かりにくくはないと思うんだけどなあ。西尾維新のスタイルをリスペクトしている自分には今さら変えられない―――のかなあ。
という訳で、二人称と三人称が混じりすぎていて分かりにくいという所があったら教えてください。
最大限、善処します。
それではまた。