「なあ、ライダー。確かに僕はマスターとして未熟かもしれない。それは認める。でも―――」
現代風の服を身にまとっているライダー。
別に有名コーディネーターが手掛けた訳でもないのに、その装いは完璧だった。
いや、服が完璧なのではない。それを来ているライダーが完璧だったのだ。
初対面の時は動揺していて、あまり気がつかなかったが、ライダーはかなりの器量良しだ。
いや、端的にいえば、超絶美少女だった。
欧米圏出身だと分からせる金髪は天然特有の輝きを放っており、そこらのパツキン日本人とは全く比べ物にならなかった。
「―――なんで食い歩いてんだよ!!」
「ほふぇ?」
イカ焼きを頬張りながら振り向くライダー。
長くはない金髪が頭に連動して動く。その様にウェイバーは見惚れ―――。
(ってバカかっ! イカ焼きくわえてんだぞっ? なに、見惚れてるんだ、僕は!)
悶々とするウェイバー。
そんことは関係なしにイカ焼きを咀嚼するライダー。
ゴクンと飲み込む。
「そうは言ってもマスター。具体的に何をするのよ?」
「そんなの色々あるだろ。少なくとも食い歩くこと以外に」
「色々って?」
「そりゃあ、敵のマスターの情報を手に入れたり、戦術を考えるとか………」
「情報ねえ。じゃあ、マスターは出来るの? 情報収集。私はそっち方面は全くの門外漢だからね?」
ウェイバーの最近の悩みはサーヴァントが思ったよりも自分に従順じゃないことと意外と正論を吐くことだ。
彼女の言う通り、情報収集はマスターの仕事である。これがアサシンなどであれば、また違ってくるのだろうが、彼女はライダー。当たり前だが、戦闘クラスである。
そして、彼女は今までに公言したことに「私、戦闘以外からっきしだから」というのがある。
そして、それは別に責められることではない。
さっきも述べた通り、情報収集はマスターの仕事。サーヴァントは敵サーヴァントを倒せばいいのである。
そういう面で見たら、ライダーの食事行為は腹が減ってはなんとやらの通り、利にかなっているのかもしれない。
理屈ではそうだが、ウェイバーにはなんとも歯痒い思いだった。これはウェイバーの気性の問題であるが、何かしていないと我慢できないのである。
時計台では評価されることはなかったが、彼自身はいたって真面目で勤勉な学生である。才能の絡まない分野であれば、十分な『優等生』である。
………才能と血統に大きく左右されるのが魔術であるのは彼にとって不幸なことだが。
とにかく、彼は今の時間が無為に感じられた。
「じゃあ、戦術! それだったらいいだろ?」
今のウェイバーは少し空回り気味だった。
彼自身は別に戦術を習ったことはないのだ。そんな彼がいったい何の戦術を練ろうというのか。
「マスター、ちょっと落ち着きなさいよ」
そんなウェイバーの心をライダーが見透かしたわけではない。ただ単にもう少し食い歩きがしたかっただけだ。
「戦術なんて私もあなたも知らないでしょう?」
ウェイバーをあしらうように言うライダー。
次はたこ焼きに目をつけたようだ。
「お前、戦いは任せろっていっただろ? だったら―――」
「戦いは、ね。私はスタラティアじゃあないから、本当に戦闘専門よ。残念ながら、こう見えて肉体労働専門なのよ」
「スタラティア………?」
「軍師って言うらしいわね」
たこ焼きを購入したライダー。
ちなみに購入財源はウェイバーの財布であり、その財布のお金はウェイバーの泊まっている家の老夫婦が持たせてくれたお金である。ウェイバーの捨てたはずの良心がキリキリ痛む。
「しかし、食文化も随分発達したものね。私の頃は………」
そこまで言うとライダーの言葉尻はしぼんでいった。
ウェイバーが不審に思ってみてみると、たこ焼きを2個まとめて食べたライダーは「あげる!」と言ってたこ焼きの入ったパックを押し付けてくる。
「お、おい! どこ行くんだよ!」
「帰るのよ。戦術、練りたいんでしょ?」
何故かは分からないが、ライダーはやる気になったらしい。
ウェイバーはそのことに安堵しつつも、疑問が残っていた。
しかし、わざわざやる気が出てきたところを止めるのは無意味だと思って、そのままライダーに着いていった。
一方、ライダーは昔のことを思い出していた。
つい自分の口からこぼれてしまった生前のこと。
自分は悪くなかった。
それは間違いない。間違いなく被害者だった。
しかし、いつまでも人は被害者ではいられない。
それを思い出したから、彼女は聖杯戦争へのやる気を再燃させたのだ。
そして、もう一つの理由は―――。
『僕と契約して魔法少女になってよ!』
懐かしい声。
幻聴かと思った。昔の友達だったころを夢想したのかと思った。
しかし、視界の端には白い影が女の子と共に映っていた―――。
ウェイバー「おい、ライダー!」
ライダー「なによ、早く来なさいよ」
ウェイバー「そっち家と逆方向だぞ!」
ライダー「」