Fate/まどか☆ゼロ   作:西渡学

6 / 11
間桐雁夜回


まど☆マギ勢・降☆臨④

間桐臓硯side

 

目の前の我が子孫を見る。

もう、なんでそんなところから血管浮き出ちゃってんのよ状態を過ぎて、常時出血するようになっている。

床に出来た血溜まりには『蟲』の幼虫とその残骸が混じっている。

 

『蟲』が術者の魔力以外も糧とする第二段階を越え、術者をただの苗床と見なす第三段階に移行しつつあるようだ。

 

『おれが参加してやるよ……。聖杯戦争になッ!!』

『ただし、俺が勝ち残ったら桜ちゃんを解放しろッ!!』

『今に見ていろこのバケモンじじい!!』

 

「はあ」

 

威勢の良かった頃の雁夜のことが頭に浮かぶ。

そして、現実の肉塊を見て、その映像が頭から離れていく。

まったく溜め息をつかずにはいられない。

儂は威勢の良い雁夜が良い具合に蟲に苦しんでいる姿が見たかったのだ。決してこんなゴミを作るために蟲を雁夜に渡したわけではない。

 

これでは召喚したサーヴァントともまともに話さえ出来ないだろう。

それどころか現代の怪奇『蟲男』みたいな感じに引かれる。

 

 

 

………と思っていたんだが。

 

「雁夜さん聞こえますかー?」

 

なんで普通に話しかけられる。

しかも体に触れてすらいる。このような小娘が何故そのようなことが出来る?

いや、伝承通りならば、この精神力も納得だと言えるのかもしれない。

 

狂気と剣の英霊。

バーサーカーの美樹さやか。

狂化の召喚によって呼び出した英霊。

 

青色を基調とした装飾品の多いドレスを着た彼女は召喚してすぐに儂ではなく転がっていた雁夜がマスターだと感じたようで、儂に敵対心を向けていたが、事情を説明したら、以外とすんなり言うことを聞いた。

バーサーカーである以上、一度は殺されるかと思っていたのだが、肩透かしを喰らった気分だ。

 

しかも、人語を解している。

これはバーサーカーでは今まで例を見ない。

というよりも、バーサーカーで知性を宿しているということは特性の狂化があまり発揮できないということになる。

理性を失い、暴力に特化した存在のアイデンティティの喪失に等しい。

 

しかし、それが今の雁夜にとって吉と出ているようだ。

本来のバーサーカーは基本的に主人の命令に積極的には従わず、霊体化させるのも一苦労だ。

そのうえ、現界している限り、通常のサーヴァントの二倍以上の魔力を消費する。

そうなっていれば、録に言葉を発することのできない今の雁夜は魔力を搾り取られていただろう。

ここにきて悪運を発動とは、ついているのかいないのか。

 

「雁夜さんが苦しんでいます。なんとかしてあげることはできませんか?」

 

さっきからこのサーヴァントは同じことを繰り返し聞いてくる。本当にバーサーカーなのか疑わしく思う発言だ。心配をするなんぞ。

 

「残念ながら、ないのぉ。有ったら儂とて大事な息子のためになんとかしてやりたいんじゃがのぉ」

 

何故、雁夜が苦しんでいるのか。

これには素直に話しておいた。

無茶な魔術回路の構築によって起きた弊害だと。

 

「それにこのことは雁夜も重々承知のうえじゃ。そのうえで戦うことを決めたのじゃよ」

「…………そう、なんですか」

 

バーサーカーは俯く。

まるで人間のように。理性を宿しているかのように。

 

「お主まったくバーサーカーらしくないのぉ。過去に行われた聖杯戦争でもお主のように言葉を話すバーサーカーは居らんかったぞ。精々うめく程度しかなかった。何かあったのか?」

 

暗に『お前はバーサーカーじゃないんじゃないのか?』と言ってみた。狂化の術式を施行した儂が言うべきではないのだろうが、もしかしたら本人は何か知っているかもしれない。

そんな単純な考えで、だからこそバーサーカーは素直に答えると思っていたのだが………。

 

「すみませんが、それに答える前に聞きたいことが有ります………。こんなになってまで叶えたい雁夜さんの願いってなんだったんですか?」

「………………」

 

さて、ここは言うべきか言わないべきか。

素直に話すと言う選択肢はおそらくない。

素直に話して『実は雁夜の好きだった女の娘を引き取って今はグロテスクな虫の蠢く蟲蔵に閉じ込めているのを知った雁夜がその娘を助けるために儂と取引した結果、予想以上に蟲に侵食されてそうなったんだよ。』とは言えない。言ったら多分怒られる。そして斬られる。

まだ桜に心臓を移動させていない今は不用意に死ぬのは得策ではない。

 

よし、隠そう。

 

「………儂もそのことに関しては知らぬ。こやつ自身が儂に教えようとしなかった」

「そう、なんですか」

 

信じたようだ。見た目通りのバカのようだ。

 

「あの、私のことなんですけど、実は自分でもよく分かってないんです。聖杯戦争のシステムに関してはあなた方の方が詳しいと思います」

 

とさっきの儂の質問について返してきた。

半ば予想通りではあったが、「その前に一つ」などというから御大層な理由が有るかと思ったのだがな。

それに理由に関してはある程度儂には検討がついている。おそらくステータスの『狂化』のランクが低いのだろう。人語を解すということはDランク程度か?

狂化の影響は殆ど受けないランクだな。

 

サーヴァントは雁夜を担ぎ出す。

 

「すみません。雁夜さんとお話がしたいので、どこか部屋を貸してくれませんか?」

 

お話?

このバーサーカーは人語だけではなく、蟲男の言語すら解すのか?

嘲笑してしまう。

 

「ああ、よいぞ。そやつにもしばらく休息が必要じゃろうて。儂の使い魔を同行させるから付いていけばよい」

「はい、ありがとうございます」

 

そう返礼し、バーサーカー美樹さやかは蟲蔵から出ていった。

 

「ふう」

 

一息つく。

まったくバーサーカーと思っておったから特に対策はしておらんかったのじゃが。

まさかあのようなやつが来るとは。

おかげで久しぶりに話術を弄さなければならなかった。

それに。

 

モゾモゾ

 

今いる場所は蟲蔵だ。

当然蟲蔵では桜が教育を受けている。

バーサーカーに理性がなければ、別にそのままにしておいても良かったのだが、理性があるとなると話は別だ。

事情説明はめんどくさい。

 

モゾモゾモゾモゾ

 

なので、蟲と桜は隠しておいた。

蟲蔵の蟲風呂は深い。死角が多い。

蟲風呂の外からは見えないが、少し覗きこめば中に何があるか分かる。

 

モゾモゾモゾモゾモゾモゾ

 

「さあ、もう普通に戻っていいぞ」

 

蟲たちが蟲風呂の端から湧いてくる。

そして、蟲風呂はすぐに蟲で埋め尽くされ、元の姿に戻る。そう、元の姿に。

 

そこには当然、桜の姿がある。

いつもよりも密集したためか、いつもより脱力しているように見える。

もっとも、蟲風呂に対する抵抗など最早残っているとは思わんが。

その少女を助けるために今日もまた雁夜は蟲で苦しむ。

まったく、救われん男だよ。

 

そう思い、ついつい口角をあげる。

ニヤニヤが止まらない。

そして、再確認する。

何年生きようと人の辛苦は良いものじゃのう。

 

そして、儂は蟲風呂と桜を弄ってから蟲蔵の出口へ向かう。

此度の聖杯戦争。勝てる要素はまったくない。

 

しかし。

理性のあるバーサーカーに死に体のマスター。

このような組み合わせが見られるとなれば、面白いことになりそうではある。

 

上がりきった口角を直しもせずに儂は蟲蔵から出ていった。




今回召喚されたのは青色の魔法少女『美樹さやか』です。

間桐雁夜&美樹さやか(バーサーカー)

ステータス
筋力B-
耐久B+
敏捷B-
魔力C+
幸運D-
宝具B+

クラススキル
狂化B-
…理性を失う代わりにステータスを上昇させる。
さやかはバーサーカーとしては特例である。

そして、雁夜おじさんはどこまでいっても報われない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。