???side
「なんだったんだよ、こいつ………」
目の前に倒れている男を見下ろす。
手にはナイフを握っていることから危険人物であるのは間違いない。
手にタトゥーがはいってる。ヤクザか?
いや、ヤクザだって殺人鬼じゃないんだから無差別に襲ったりしないだろうし。
襲われる理由は思い付かない―――のは当然か。
記憶がないんだから。記憶喪失なんだから。
それに
「誰だよ、この女………」
「龍之介………。あなたは非道を尽くし過ぎた。こうなることは必然だったのです」
いきなり現れたこの女は誰だ?
この通り魔の知り合いか?
「気にしないでください。彼はいつかこうなる運命だった」
「いや、何言ってるのか分からないんだけど………。あんたは誰だ? この通り魔の知り合いか?」
「私はもうすぐ消え去る存在。気にしないでください」
「いや、まったく答えになってないんだけど………。あんた家がないのか?」
すぐに消え去るとかの意味は分からなかったけど、俺なりの解釈をする。つまり、家なし少女のこいつは通り魔の男の世話になっていた的な解釈になるわけで。
というか、この子はいわゆる中二病ってやつなのか?
さっきから言っている運命だとか消え去るだとかもそうだし、なによりその格好が異常だ。
全身ではないものの、体の要所を守るように付けられた鎧のようなもの。そして、それに似つかわしくない青いドレス。実用性があるようには見えない。
さらに極めつけは腰に着けている装飾過多な剣。
ここまでくるとむしろ感心するし、本物の騎士のようにも見える。でも、やっぱりコスプレだよなあ。
このコスプレは本人の意思なのか、それともこの通り魔が変態野郎だったのか。
なんか死にかけの時、やたらハイになってたし。
頭のおかしいやつだったのかもしれん。
「私に家、ですか………。そうですね。もはや私に帰る家などない。ここにも向こうにも」
あー、なんか本人の趣味っぽいな。
でも、家がないってのも本当そうだし。
「だったら、ウチ来るか?」
「しかし、あなたはマスターでは………………? え、何故あなたに魔力が………? ということはあなたも魔術師………?」
なにやらマスターだとか魔力だとか魔術師だとかの中二ワールド全開の様子だ。
まあいいや、袖振り合うも多生の縁。こんな子を放っておいたら、またこんな感じのやつに騙されるかもしれん。
だったら――
「いいから。俺に記憶はねえけどお前には常識がない。だからそれを教えてやるよ。またこんな感じの奴と一緒になるかもしれないのに放っておくのは俺の良心が痛むしな」
「えっとつまり、マスターにしろ、ということですか?」
マスター?
さっきから言ってるが、どういう意味なんだ?
ニュアンス的には自分を家に泊めてくれる人のことだと思うんだが。
まあ、わからんものは仕方ない。
そう考えて進めるか。
「まあ、そうだよ。そのマスターとやらになってやるよ。だから、消え去るなんて言うなよ」
手を差し出す。
どうやら、記憶喪失前の俺は随分なお人好しだったようだな。自分のことだが、客観的に見ることができる。
俺という人間は困ってる人どころか、自分の価値観に従ってお節介もやいてしまう善人だったようだ。
そして、それをうざったがる人間がいることも理解している。
つまり、結局良い人だ。
複雑だ。まるで借りものの体を使っているようで。
「いいのですか………? 命の危険すらあるのですよ? それでも私に手を差し伸べるのですか?」
泣いて、いるのか?
命の危険?
なんなんだ、そんなに危険な目に合っているのか?
もしかして、この通り魔の男はヤクザよりもヤバイ奴なのか?
いや、だとしても………。
「命の危険? だったらなおさら放っておけねえよ。だから――――とりあえず俺の手を取ってみねえか?」
「…………………はい」
涙声で俺の手を取った彼女。
名前すら知らないのに多くのことを知った彼女。
自分も記憶喪失でメチャクチャなんだが、おそらく前の俺はさらにメチャクチャな人生を歩んできたのだと思う。
だって、記憶喪失だと知ったときも今も大して動揺していないのだから。自然体でいられる。
これを期に記憶を取り戻せるかもしれない。
わずかにそんな期待が出てくる。まあ、無理だとは思うけど。
龍之介さんは現実からログアウトしました。
???さんがログインしました。
最後の一組
???&???(セイバー)
ステータス
筋力A
耐久B+
敏捷B+
魔力B+
幸運A
宝具A+
クラススキル
対魔力A
騎乗B
次回、聖杯戦争本格開始。