なお、今回の話には『まどか☆マギカ~反逆の物語~』を見ていないと理解できないところがあります。
一応、この話のあとがきでそれに関するネタバレを載せているので、別にネタバレしてもいい、という方は一番下まで移動して、それを読んでからこの話を読んだ方が分かりやすいと思います。
遠坂時臣は子供好き
その日、聖杯戦争は勃発した。
つまり、すべてのマスターとサーヴァントがそろったのだ。
外国で召喚したマスターも揃ったことにより聖杯戦争がついに幕を開く。
遠坂邸
「あの、本当に私たちは何もしなくていいんですか?」
「はい、アーチャー。あなたとアサシンの力が有れば、単体で攻めてくるサーヴァントは苦もなく倒せるでしょう。さらにここは我が魔術工房。マスター対策も万全です。怖いのは精々、サーヴァント同士が手を組むことですが、教会と我が使い魔の監視により、一体を除いたすべてのサーヴァントの状態は把握できています。あなた方の出番はもう少し後です」
「そうなんですか。良かったぁ」
安堵の息をつくアーチャーこと異世界の神、鹿目まどか。そして、その横に寄り添う魔法少女、暁美ほむら。
確かに彼女たちが入れば、大抵の敵は退けることができるだろう。
しかし。
彼らは敵がかつての仲間である魔法少女であることを知らない。
遠坂時臣と言峰綺礼は知っているのは敵の外見だけ。
故に敵が己のサーヴァントの友であるとは分からないのだが、それは無理もないことだ。
「綺礼、あなた………。遠坂さんの部下か何かなの?さっきから一歩引いているけど」
「ああ、私は教会の手の者でね。偶然聖杯に選ばれたので、時臣師の補佐をしているのだよ。彼の願いの成就が最も世界に影響を与えないからね」
「そうなの………。まあ、私もまどかだったら聖杯を譲ってもいいわ。その点、ラッキーだったわね」
「…………ああ、そうだな」
綺礼は内心では本当はもう少し違う関係を望んでいたのだがね、と付け加えていた。
確かに喧嘩されるのも面倒だが、あまりに仲睦まじいというのも考えものだ。
理想としてはアサシンが内心ではアーチャーのことを見下していてくれれば良かったのだが。
「つまり、籠城というものですね!時臣さん!」
「ええ、そうです。アーチャー」
ニコニコ顔で話し合う二人。
本当に時臣師にはアーチャーを自害させる気があるのだろうか?
なんだか、メチャクチャ仲が良い気がするのだが。
「………………むぅ」
そして、面白くなさそうなのはアサシンだ。しかし、どこか微笑ましそうにもしている。
ちなみにこれは綺礼の感想ではない。あの神父にそこまで人の心を推し量る器量はない。
「まどか、少しお出かけに行きましょう?」
アサシンはアーチャーを散歩に誘った。
しかし、今は戦時中である。当然、アーチャーこと善良の塊である鹿目まどかは迷う。
そこで。
「いいですよアーチャー。いざとなれば令呪があります。それに聖杯戦争の間しか現界出来ないのですから、少しくらいは外の世界を見た方が良いでしょう。通信用の魔術を施しますから、何かあったら連絡してください」
以外にも遠坂時臣がOKを出した。
当然ながら、令呪は貴重なものだ。遊びに行っているサーヴァントを呼び戻すためだけに使うような安っぽいものではない。
それでもなお、OKを出した時臣の考えが綺礼には理解出来なかった。
「でも、時臣さん。その、令呪って貴重なものじゃあ………」
「アーチャーはわたくしめの指示に従ってくだされば、令呪など必要ではありませんよ。それとも、アーチャーはわたくしめのいうことを無視する気でもあるのですか?」
柔和な笑みを浮かべる遠坂時臣。
決して高圧的ではなく、嫌味ったらしくないその物腰はまさに優雅な紳士そのものであった。
ちなみにこのときアサシンは内心で10回ほど時臣の顔に唾を吐きかけていた。
「そ、そんなことないです! そうですよね。なんだか私考えすぎちゃってたみたいで………。それじゃあ、甘えさせてもらいますね」
こちらも決してブリッ子などと言葉から無縁の仕種で手を顔の前で振る様子はまさに天使そのものであった。
ちなみにこのときアサシンは内心で10回ほどアーチャーを押し倒していた。
「いこっ、ほむらちゃん」
「ええ、そうね。まどか」
「アーチャー、アサシン。街で何かをご所望のときはこれを」
そう言って財布とおぼしき物を渡す遠坂時臣。
ブランドは当然のように某高級ブランドだった。
そして、中には諭吉が10人以上。
「えっ、これ………」
「良いのです。気にしないでください」
アーチャーは恐縮そうにしていたが、これ以上遠慮するのは逆に失礼だと思い直して、素直に財布を受け取った。
「それじゃあ、行ってきますね。時臣さん!」
「ええ、行ってらっしゃいませ。アーチャー」
満面の笑みを浮かべて手を振るアーチャーとそわそわしているアサシン。
それをにこやかにアーチャーを送り出す時臣と真顔の綺礼。
アーチャーたちが出ていってからすぐにソファーに座り込む時臣。手は顔を覆っており、項垂れているようにも見える。いや、実際に彼は項垂れていた。
「………? 師よ。どうなさいましたか?」
いくら外道神父であっても自分の師の異変に気づいたようで声をかける。
しかし、綺礼からすれば、今の時臣は自分のサーヴァントを甘やかしまくっているロリコン親父であった。若干の軽蔑の視線を向けてしまっても仕方ない。
しかし、顔を上げた時臣はまるで魔術師と戦った後かのように疲労を滲ませていた。これには綺礼も驚いた。
そんなにアーチャーを襲うのを我慢していたのですか、
軽蔑の念が深まる。
しかし、実際にはまったく別の理由があった。
「………恐ろしいものだね、被庇護スキルというのは」
被庇護スキルとはアーチャーが持つ固有スキルだ。
鹿目まどかの慈愛の性格にまつわるスキルで、その最大の特性は『すぐに仲良くなる』。
今の時臣はそのスキルと戦っていた。
ある一定以上仲良くなると最後に自害させる時に躊躇いができてしまう。
だからこそ、時臣は踏みとどまっていたのだが、これ以上は無理だとは判断し、アーチャーたちのお出かけに賛成し、令呪を無駄遣いしてもいいというような発言をしたのだ。
「師よ………。まさか、そのような闘いを繰り広げていたとは。疑ってしまった私をお許しください」
「………? 疑い?」
「いえ、なんでもありません、師よ。しかし、私の方はなんともなかったのですが、大丈夫なのでしょうか」
話題を反らす綺礼。
本当は自分にはそのようなスキルはあまり効き目はないだろうと思っていたが、話題を反らすのに質問する。
「私にも分からない。なにせ神のスキルだから。個人差なのか、付き合いの長さなのか………。マスターを弄絡するスキルを持つなど、流石は神といったところか」
そう言って時臣は出口へ向かう。
「私は少し休ませてもらうよ」
「はい」
「万が一、アーチャー達から連絡か敵襲があれば、起こしてくれ」
そう言って時臣は寝室へと向かった。
「お大事になさってください」
真顔のまま綺礼は礼をする。
(しかし、時臣師の言うことは本当なのだろうか? 本当はロリコン爆発させているのをそれっぽい理由をつけているだけなんじゃないのだろうか。そう考えたら、なんだかそんな気がしてきた。第一、時臣師の話には根拠がない。本当にアーチャーに被庇護などというスキルがあるのか私は知らないし、影響を受けていない。だったら、本当に時臣師はロリコンをこじらせてしまっているのかもしれない)
飽くまで綺礼は真顔で礼をしていた。
まどか&ほむらside
「ほむらちゃん! 次はあっちを見に行こう!」
「ええ、そうね。まどか」
アーチャーとアサシン、つまり、まどかとほむらは街中ではしゃいでいた。
本来のただの女子中学生らしく。
元いた世界では一ヶ月の間しか一緒にいられなかった。
その一ヶ月もキュゥべえとの闘いの日々だった。
何のしがらみもなく、遊べた回数は片手で足りる程度しかなかった。
だからこそ、今は時臣の厚意に甘え、存分に遊んでおきたい。
そう考えていた。
少なくともまどかは。
しかし、ほむらは違った。
彼女は確認しておきたかった。
いったい、このまどかが『いつ』のまどかなのかを。
ただの魔法少女時代のまどかではないのは分かる。
今は隠しているが、再開したときの存在感からして、一度は神になったのだろう。
ならば、このまどかは概念としての神になったときのまどかなのか。
それとも、自分が堕とした方のまどかなのか。
前者であれば、問題ない。このまま遊んでいられる。最高だ。
しかし、後者で私のしたことを覚えていたら―――。
『やっと捕まえた』
『………! 何やってんのさ、ほむら!』
『やめて、ほむらちゃん! わたし、裂けちゃう!』
『もう離さない』
私は助けにきたまどかを捕まえて、さらに力を奪った。
恨まれても仕方ない。
でも………。
まどかの方を見る。
相変わらずの無邪気な顔だ。マジ天使。
さっきから何も言ってこない。もしかして、このまどかは何も知らない………?
そう思い、若干安堵していたほむらだった。
「次はあれ食べようよ」
そう言いながらクレープ屋を指差すまどか。
やっぱり最高。
思わず微笑を浮かべてしまうほむら。
クレープ屋は空いていたので、すぐに買うことができた。ベンチに腰かけて一緒に食べる二人。
「おいしいね。ほむらちゃん」
「ええ、そうね。まどか」
私はあなたを味わいたいわ。
そんなことを考えているかもしれないほむら。
変態かもしれない。
「ねえ、ほむらちゃん」
「なに、まどか?」
「あのね、聞きたいことがあるの」
胸騒ぎがする。
少し動悸が激しくなる。
「な、にかしら」
もしかして、もしかして。
「私ね」
このまどかは知っている?
「元の世界でね」
嗚呼、これは駄目だ。
このまどかは知っている。
「神様になってたんだけどね」
知っている。
そうさせてしまったのは私たち、魔法少女だ。
そして、その力を奪ったのは私だ。
「キュゥべえがほむらちゃんにひどいことをしてね」
そう、そして、そのあと、私が、あなたに、ひどいことを。
「それを助けに行ったの」
助けにきた、あなたを捕まえて、わたしは。
「さやかちゃんにも手伝ってもらってね」
美樹さやか。
円環の理の一部。
百江なぎさとともに現れたあの世界のイレギュラー。
「そこから聞きたいんだけどね、ほむらちゃん」
私の息も汗も動悸ももうすごいことになっている。
「ほむらちゃん、そのときに―――」
私が願うだなんて筋違いかもしれないけど。
お願い、助けて神様!
「やあ、久し振りだね。まどか、ほむら」
そこにやって来た奴は私たちの話を中断させた。
その意味では神は私を助けたのだろう。
しかし、これはなんという皮肉か。
あるいは私に対する罰か。
変わらない赤色の瞳。
垂れ下がる奇妙な耳。
女児向けしそうな可愛らしい体躯。
白い、漂白剤のような虚無の白。
感情なき侵略者。
『インキュベーター』
そいつは当然のようにそこに現れた。
反逆の物語~ネタバレ~
原作でまどかが神となった世界。
そこで円環の理の存在に感づいたキュゥべえはほむらを人質にして円環の理であるまどかを誘き寄せようとします。
なんやかんやあってキュゥべえの企みを破ってほむらを助けにきた円環の理ことまどかですが、ほむらはまどかが現世にやって来たのをチャンスだと思い、不思議パワーでまどかから神様としての力を強奪して、新たな世界を構築してしまいます。
神様から人間になってしまい、神様としての記憶を失ったまどかとかを連れて新たな世界にほむらは閉じ籠ります。
そして、キュゥべえをボコボコにして、『私は悪魔』とか言い出します。
反逆の物語~ネタバレ~は以上です。
本当はもう少し色々あるのですが、詳しく知りたい方はやっぱりwiki見てください。