戦場の走り方   作:ブロックONE

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M4のキャラ崩壊注意。




Vol.9 教(狂)材の効果

引き続き、酔っ払いと化した416の酒乱に付き合わされるM16A1。

 

 すると、拠点ことシェルターの出入り口に

 

 

 

 「そこにいたのね?」

 

 

 また別の声が聞こえた。

 

 「…お前か」

 

 訪れた誰かに向けて、M16は疲れたような声で言った。

 

 「ふふふ♪…もう!416ったら…」

 

 「Zzz…」

 

 「寝てしまったよ。それで?こいつの後始末を付けに来たのか?それだけとは限らん様にも見えるが?つか早く連れ帰ってくれ…」

 

 416の様子を見る『誰か』に向けて、問うM16。誰かは考える素振りをしつつ

 

 「そうね…416のお迎えも用事のうちよ」

 

 「それで、本当の用事は何だ?UMP45」

 

 「ふふ♪そうね、今仕事を終えて帰る途中なの。ついでにそこの酔っ払いを迎えに来ただけよ」

 

 M16は指揮官いないのに大したもんだな、とため息をついて返した。UMP45は明らかに胡散臭そうな笑みを浮かべている。

 

 「この程度は『9』一人でも十分よ。あ、416には休暇を与えたの。結構頑張ってくれたからね。あと、416はあなたに殺意なんてないわ。少し気に入らないだけよ」

 

 「わかってる。だから飲みに付き合った。その結果、この有り様なんだがなぁ…」

 

 「分かってるわ。だからこちらも…ごめん、私普段飲まないの…」

 

 「ハッそりゃ助かった。じゃあ、早速私も移動しよっかな…」

 

 M16が立ち上がると、45が立ち塞がる。

 

 「待って。今帰っても命を落とすことになるだけよ」

 

 「…ほう?試してみるか?私だって16LAB製だ。それより45…」

 

 「なぁに?」

 

 

 

 

 

 

 「胸部装甲について言きゅ…」

 

 

 「立 っ た ま ま ス ヤ れ !」

 

 

 「ウワー助けてくれ416ー」

 

 M16は横にいた416を咄嗟に盾にする。

 

 「ベフゥッ!!?」

 

 45の無慈悲な一撃が416を襲う!

 

 こうかは ばつぐんだ!

 

 416は再び眠りについた。

 

 「スヤァ…」

 

 人形なので身体は無事だが。起きることはないのでそのまま寝かせる。

 

 「って、待て待て!さっきのは冗談だ!餅つけ!じゃなかった落ち着け!」

 

 45をなだめるM16。そして、落ち着いたところで話を切り出す。

 

 「今回の依頼で…何か分かったか?」

 

 「もっと近寄って」

 

 「ん?」

 

 そっと近寄る。すると耳打ちで45は言おうとするが息が掛かる

 

 「ちょ…やめろよくすぐったいな…」

 「…。いいから来なさいっての」

 

 なんか目がマジなので、改めて近づく。

 

 

 

 「『雨が降った、平原に。』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん?キハラさんは雪降るって言ってたぞ?」

 

 「天気予報じゃないっての!…1500から1700の近距離で入手した通信記録よ。検索結果41960個。そのうちあれに言及し基本戦術の常識に合わない文字列は…」

 

 「8・1・ゼ…」

 

 「どこからそんな数字が出てくるの!?そんな要素はないわよ!…興味があるなら、この比較図を見て。さらに重要なのは…」

 

 「なるほど、わからん。誰でもわかるようにkwsk」

 

 

 「あなた、まさかシングルコアだなんて言わないでしょうね…?……まぁ、あなたたちを『生み出した者』なら、この意味がわかるかもね」

 

 M16は45の言っている言葉に対して「どう言う意味?」と疑問符を上げるが、45は寝ている416をかつぎ上げ…

 

 「とにかく、お先に失礼するわ。仲間さんに合ったらよろしく伝えておいて?」

 

 「お前らは死んだって言えば良いんだろ?わかってるよ…」

 

 「デュフフwwwサーセンwwwそれじゃ、ばいにー☆」

 

 45は416を担いで去っていった。

 

 

 

 

 

 「うわ寒ゥゥッッ!!?うぅ…早く帰ろ…」

 

 外の寒さに驚く45だった。

 

 一人残されたM16は、後は合流地点にグリフィンの仲間が来るのを待つのみだった。

 

 

 

 

………………………………………………

 

 

 一方。ドライバー一行の方では…

 

 

 一般車両通行禁止の看板を通り過ぎつつ、冬景色の交差点を四輪ドリフトしながら左折していく二台の車。先行する車はグリフィンのドライバーが、そしてその彼が指揮しているAR小隊のM4A1が後続する二号車を駆る。看板を倒さなかったのはドライバーなりの思いやり。

 

 ……でもあるのだが、正直のところ、看板に当てるとそれ自体の弁償だけでなく車のバンパーを傷だらけにしてしまうことを避けたかったため。

 

 グリフィンカラーのその二台は、そのまま道なりを飛ばし、M16が指定してきたグリフィンの拠点ことシェルターを目指していく。この辺りは近道できそうな所もある。ドライバーの方では軍人がタブレットからペースノートを読み上げつつ、走らせ続けている。M4たちはデータをインストールしてあるため、単一でも走れている。

 

 

 

 

 同時刻、その先にひっそりと設置されている鉄血の司令拠点では、鉄血人形のハイエンドモデル、イントゥルーダーが待ち構えていた。お昼のロードショーを電波ジャックして視聴していた真っ最中であった。

 

 

 「ふふふ♪この大きな音は……来ましたわね。グリフィンのドライバーさん。…そろそろアクションシーンはいかがかしら?」

 

 アクションものの『御約束』を守って部下の人形兵部隊たちを送り込む事を考え付いたイントゥルーダー。微笑みつつ見据える…が、ドライバー一行からしたらありがた迷惑この上無い。

 

 一応、処刑人やハンターなどとは異なり指揮タイプの彼女からして、ドライバーと真っ向から勝負すると、一緒に攻めた部下の貰い事故に巻き込まれ兼ねないため、先ずは離れたこの位置からメガホンを取ることにした。

 

  

 

 「あら?に、二台…?」

 

 何かおかしいと感じてズーム機能で見てみると、グリフィンのドライバーの車が二台確認できた。おかしい、自身のカメラは正常だと自己診断の結果が出た。そうなると、車体に刻まれているアラビア数字を確認すると、二台体勢でやって来たということを理解する。どちらがドライバーなのかはわからない。

 

 (先頭かしら?いやいや、こういうシーンって映画とかだと本物は後続だったり、またはどちらでもなかったりしますわ…どちらなのかしら…?)

 

イントゥルーダーは、よく海外ドラマや映画で見かける、実はヘルメットや服装で変装してわからなくしていた可能性もあると判断していた。が、結局そんなことしなくてもドライバーが先頭なのだが、イントゥルーダー側からしては、どうにも勘繰ってしまい、断定は出来ずにいた。

 

 すると、部下の人形兵たちから連絡が入ってきた。

 

 『こちら100(ワンオーオー)、スパイクタイヤに履き替え、追撃準備が整いましたー』

 

 『こちらはスノーモービル部隊、スタンバイOKでーす』

 

 『ポイントブラボー、挟撃準備完了!』

 

 

 

 「よろしいですわ。では、スタント無しの一発撮りで決めますわよ。では…作戦開始(アクション)!」

 

 

 イントゥルーダーの掛け声で人形兵たちは行動を開始。100の追跡車両とスノーモービル部隊はドライバーの一号車とM4の二号車の追跡を開始。挟撃のための別動隊も待ち構えることに。

 

 

 「さあて、グリフィンのドライバーさん?どの様に魅せてくれるのかしら…?」

 

 イントゥルーダーは、ワクテカしながら正座で映像を見ることにした。

 

 

 

………………………………………………

 その頃。

 

 『M4から指揮官へ!鉄血の追跡部隊が接近中!』

 

 二号車のM4からの通信。

 

 

 ―了解だ。……うん、この絶妙なタイミング…アイツらを誰が寄越したか、検討は付いてるぞ―

 

 「一体誰なんだ?」

 

 ―鉄血のハイエンドモデル、イントゥルーダー。カタログからして指揮を専門とするタイプらしい。しかも、あいつは鉄血人形の癖して海外ドラマや映画のファンなのか、戦場を金曜ロードショーか何かと勘違いしてやがる―

 

 ドライバーのジェスチャーに唖然とする軍人。『また随分とフリーダムな奴だな…』と言いつつ、再びペースノートをまた読み上げていく。

 

 「おっと、次はミディアムレフト!500!プラス、プラス!イージーライト―――」

 

 プラスとは『加速していけ』、という意味合いで使われる用語。二つ連続すると『もっと加速しろ』となる。軍人も、以前よりもドライバーのやり方に確実に慣れてきていたのだった。

 

 

 

 M4たちも頑張って付いてくる。しかし、彼女の教材はイ○Dとバーンア○トであることを留意してほしい。

 

 

 ドライバーは先程の拠点到着後からM4が荒すぎる運転をしてないことを、ミラー越しにちょこちょこ確認している。今のところは無い。しかし敵の追跡車両が来た。しかも100(ワンオーオー)の改良型も。そのさらに背後からスノーモービルに乗った鉄血兵たちが迫ってくる。

 

 すると、前方に分かれ道が見えてきた。右は湖、左は緩やかな森の道路。

 

 

 「マップからすると、どっちへ言っても待ち合わせ地点に行けるみたいだが…」

 

 ―その様だな。M4、敵の数が多い。一旦分かれて分散させるぞ。左の道へ行ってくれ―

 

 『了解!』

 

 指示に従い、M4たちは左、ドライバーは右の道へ進む。

 

 そして、ドライバーは100を引き付けるため湖沿いを進んでいく中、M4たちの方にも、後方から追っ手のスノーモービルや追跡車両が複数追ってきていた。

 

 

 「迫ってきた!」

 

 「え、M4…頼むから無茶なことだけは…ひゃあっ!?」

 「めっちゃ押し寄せてきてるよ!」

 

 

 「心配ないわ二人とも、この日に備えて、ロードレイジとクラッシュモードをこれでもかってくらいプレイしてきたんだから!!」

 

 

 M4の発言に驚愕するSOPiiとAR-15。冷や汗が出て寒気を感じる。

 

 この二つの単語は、シリーズを知るものからして言うまでもなく大変リスクの大きな行為である。

 

 

 「余計に心配よ!?」

 

 「それに、ぶつけたら指揮官に怒られちゃうよ!?」

 

 思わず声を上げる。

 確かにそれもある。車を大事にするドライバーからの借りもの。壊して恩を仇で返す真似は避けたい。しかし、このまま何のアクションも起こせないまま敵に捕まっても、それこそドライバーの顔に泥を塗る事になる。常にヘルメットでガードしているのだが。

 

 

 

 

 前方では…

 

 「ふふふ、どうやらドライバーじゃないな!さあ止まるがいい!!ここでぶつけて免停など嫌だろう?ホラホラホラホラ~」

 

 挟撃のため待ち構えていた鉄血のスノーモービル。鉄血人形用のためのものか、軽やかな動きで翻弄しようとしてくる。というか、

 

 しかし、M4はここでアグレッシブな走りが出る。

 

 「あ、おい!からかっただけじゃないかうわなにするやめr」

 

 M4が駆る2号車は突如ペースを上げてバンパーで押してきた。押されたスノーモービルの人形兵はそれに驚いてバランスを崩し転倒する。

 

 

 挑発に乗った訳でなく…

 

 

 「すっごーい!レースしてりゅぅぅぅぅ!!!」

 

 

 むしろ楽しんでいた。俗に言う目がイッている状態。助手席のAR-15と後部座席のSOPiiはM4のまさかの一面に絶句。

 

 「……ちょ、ちょっと、M4どうしたの!!?」

 

 「し、指揮官大変!M4が壊れちゃった!!」

 

 

 ある意味異常事態。SOPiiは指揮官に繋げた。

 

 

 ―ビビってないなら大丈夫だ。だが、乱高下させないように。なんでもいい、こうなれば、M4の士気を維持させるんだ―

 

 「士気を上げるって言ったって…あ!」

 

 そう言えば指揮官の車って…と、思い、ステレオシステムを開く。いろんな曲がズラリと並ぶ。多分これもカリーナってやつの仕業。

 

 『AR-15、聞こえる?』

 

 M4に聞こえないように、AR-15に通信を繋げた。

 

 『な、なによぉ…?』

 『M4を誉めて!誉めるの!』

 『誉める…?そうね…!了解よ!』

 

 「い、いいわ…ひゃあっ!?い…良いわよM4!」

 「良いよ!行っけぇM4!…それとミュージックスタート!」

 

 SOPiiが適当に選んだ曲は……

 

 

 

 

 "B'○ Fricti○n"

 

 

 

 

 「うふふふ!うふふふふふ…!」

 

 

 ((なにこれこわい…))

 

 

 

 

 「…奴の車が迫ってくぁwせdrftgyふじこlp」

 

 不意に幅寄せしてきた二号車に、鉄血の追跡車両がコントロールを失い、失速していく。

 

 「M4!い、良い感じだよ!」

 

 荷重移動や凸凹、接触の衝撃で揺れる車内。その後部座席からSOPiiはM4を褒める。

 

 「きゃあっ!?いいわM4!このまま鉄血共をぶっちぎっちゃいなさい!ひぃ!?ぁぅぅ…」

 

 恐怖で若干ゃ涙目になりつつ助手席のAR-15も続く。

 

 

 

 

 一方…

 

 「おい!なんだよいきなり!ってうわっ…!?」

 

 鉄血の追跡車両はM4に幅寄せや接触を食らい、避けようとしたが急操作によりコントロールを失い、路面の凹凸に乗り上げたり、衝撃で跳ね返ったりして、派手に横転してしまった。スノーモービル部隊の人形兵は混乱して何が起こってるのか認識しきれないでいる。

 

 続いて、挟撃するために来たが間に合わず並走しようとしてきた追跡車両に接触。接触された追跡車両は接触により、道を外れて木々に激突し、クラッシュ。スノーモービル部隊も自ら転倒したり、ぶつけられて吹っ飛んでいく。

 

 尚、接触した二号車には、塗装に傷が入っていた。

 

 「や、やったね!またテイクダウンが決まったよ!」

 

 「こ、これまでにない上手さよ!M4!(ああっ、神様ぁ~……)」

 

 無理矢理テンションを上げるSOPiiに、一方AR-15の表情は絶望の色に染まっていた。

 

………………………………………………

 

 「ドライバー、M4A1たちは…どうなってると思う…?」

 

 ―想像したくないな…だが、メカニックたちに頼んで二号車に取っ付けさせた『装甲アウターパネル』の強度を信じるしかない…―

 

 

 ドライバーは基地を出る前、メカニックに二号車に細工を施させた。本来はヘリアンの肝を冷やさないためにクルーと悪ノリして作った頑丈なアウターパネル。一応は装甲板なので、鉄血の追跡車両ならぶち当ててもビクともしない。フェンダーやバンパーが何時ものと同形状のため、空力が変わらない。しかし、重量が増加するため、あちこち強化補強してあるとは言えど、支えている足回りなどに対してデメリットも孕んでいる。本当はドライバーは速く走れないからと言って付けたがらないが、M4に渡した『アノ教材』が原因で凶行に及んでも良いように取り付けさせていたのだった。

 

 「装甲?二号車にそんなもんつけてたのかよ…!?」

 

 軍人は出発前にシャッターがしまっていたのはそれに換装していたためだったと合点が行った。

 

 「一応聞くけど、もしや、余ったリアクティブアーマーみたいなものとかじゃないよな?」

 

 ―あれは16LABから譲り受けた普通の装甲母材だ。それにこの車とスペアの車は、元から装甲板なんて付いてないから、変にリアクティブアーマー仕込むと、炸裂した時に車内も危険が及ぶことがある―

 

 「なるほど、通りで基地の二号車のところだけシャッターが閉まってたわけだ」

 

 ―ああ、準備中の時にメカニッククルーの皆に頑ってもらってたんでな。こうなりゃ、二号車が自走可能な状態で帰ってくることを祈るしかない。軍人、次のコーナーから続きを頼む―

 

 「わかった!……4ライトタイトゥーン ドントインカット!200!2レフトオープン オーバークレスト イントゥ 2ライト!80!コーション――」

 

 ―スオミのやつが新しく書き加えた所だな…良いだろう、続けてくれ―

 

 ペースノート通りに走っていると、やはり雪崩により雪でうまり、道幅が狭まっていた。スオミの話していた書き加えたところである。しかも、ドライバーのペースノートはイージー、ミディアム、オーバーとコーナーの角度を記していたが、スオミが書き加えた部分は、より細かく明記されていた。記号の読み方まではやり過ぎてるとは思うが、それはスオミの几帳面さなのだろうとドライバーと軍人は思うのだった。

 

 

 ………………………………………………

 

 「Yah○oooo!!」

 

 

 その頃、激しい走行に謎の掛け声を上げるM4に…

 

 AR-15は…

 

 「ぐ、グー○ルぅぅぅ~!!」

 

 SOPiiは…

 

 「ルナス○ープぅぅぅ~!!」

 

 と、謎の掛け声で続いていた。ドライバーの言っていた『装甲アウターパネル』と、M4が『教材』から学んだことのお陰により、追ってきた鉄血の追跡車両とスノーモービル部隊を掻い潜る事に成功していた。無惨な姿になった追跡車両と転倒したスノーモービル部隊たちがそれを物語っている。

 

 車は接触はしたが、多少の傷が入っただけで済んだ。流石に中身へのダメージは分解してみないとわからないが、今のところは無事である。

 

 

 ここまで続いていたこのノリについて、ワケがわからなくなってきたSOPiiとAR-15は、とりあえずそろそろ落ち着かせても良い頃合いと見て、BGMのボリュームを下げる。

 

 「やったよ!オールクリア!」

 

 SOPiiは敵が追ってこなくなったことを喜ぶ。

 

 

 「はあ、ヤバイわこれ…はぁ…ぅぅ…」

 

 「AR-15!?しっかりして!まだ付いてないよ!」

 「SOPii、安心して、生きてるから…ちょっと混乱してるだけ…やったみたいね?」

 

 「後は指揮官とM16姉さんと合流すること…この先にいるみたい」

 

 興奮が収まったのか、M4は冷静に言う。

 

 「と、止まってるって事は…」

 「M16の所だね!」

 「このまま真っ直ぐ行くわ」

 

 「「え?」」

 

 SOPiiとAR-15は耳を疑った。目の前の道は急な下り坂。

 

 「待って!そのまま乗り上げてジャンプは流石にマズイわよ!?」

 

 「下手したらぺしゃんこだよ!?『マジやられた!』どころじゃなくなっちゃう!!」

 

 「大丈夫、ここは任せて!今年のコ○ンズ・クレスト賞は私がもらったわ!」

 

 

 

 「「ここはスウェーデンじゃなーいッッ!!!」」

 

 

 

 

 

 SOPiiとAR-15の叫びが木霊した。

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

 そして、現在…

 

 ドライバーたちは一足早く到着していた。目の前で銃を向けられるも、味方だとわかったのか、すぐ下ろされる。

 

 「あれは人形か?今銃を下ろした、あの黒髪で金メッシュのが …ええと…」

 

 ―そう、間違いない。アイツがM16A1だ。合図を送ってみよう。おーい―

 

 ドライバーは窓から手を出してヒラヒラさせる。

 

すると、M16がドライバーの車のところに近寄ってくる。途中、雪で少し足を取られ、こけそうになりつつも、近くまで来た。

 

 

 「やっぱり指揮官だったか!はぁ、ビックリしたぞ…?久しぶりだな」

 

 ―ああ、元気そうでなによりだ。そこから近道してきたんだ。帰りは別の道を走った方が良いが…―

 

 湖の方を指してドライバーはジェスチャーを送る。

 

 すると、M16に向けて砕けて粉になった雪が背後から降り注いだ。

 

 M16は咄嗟に背負ってるガンケースみたいなものを盾にして防ぐ、ドライバーはワイパーのスイッチを入れて払う。収まったのを確認して恐る恐る確認すると、そこにはM4たちの二号車が停まっていた。

 

 突然の登場に思わず沈黙するドライバーたち。

 

 「SOPii、AR-15、着いたわ!……あれ?」

 

 ダメージはないが、またぐったりしているSOPiiとAR-15を見てM4は驚愕する。どう見ても自身の運転が招いていたの気付いてはいなかった。

 

 「あ、姉さん!」

 

 ギヤを入れ直し、発進させる。粉砕した雪の塊が段差になっているので、車体を激しく揺らしながらM16の方を目掛け、勢いよく迫ってくる。

 

 

 

 

 「うわあ!?待て待て待て!M4か!?止まってくれ!止まれー!?」

 

 と、慌てて後ろに下がるM16。車は彼女の直前で停車した。下手するとドライバーも巻き込まれかねないため、ドライバーと軍人も肝を冷やす。

 

 

 ―ナイスブレーキング……―

 

 「どこがだよ!!危うく轢きそうになってたじゃねえか!!?」

 

 

 軍人が突っ込む。

 

 

 

 「もしかして…M4、だよな…?」

 

 M16がそう声を掛ける。すると、二号車の運転席側のドアが開き…

 

 「M16姉さん!う、寒っ……」

 

もしかしなくても…運転席から出てくるのはM4である。

 

 車から勢いよく出たは良いが、気温の低さに肩を擦るM4。SOPiiとAR-15は車内に入り込んだ外気により、寒さを感じて目が覚めた様に意識が戻る。

 

 M16を引っ叩こうと体勢を立て直すM4。しかし手を上げた途端、脇から冷風が入り込んでM4は脇を押さえしゃがみこんだ。震えている。

 

 

 

 「サムイ…!サムイィ…!!」

 

 

 

 M16本人からすれば、妹の運転する車に轢かれそうになっただけで、もう十分にお腹いっぱいである。

 

 

 

 「わ、分かったから!!私が悪かった!!だからM4、先ずは腰に巻いてる上着を羽織ってくれ、ほら…」

 

 

 

 「あうう、姉さん…」

 

 

 

 ドライバーは、カリーナ連絡しヘリアンに合流したと伝えろと連絡を入れた。

 M4とM16の今のやり取りを見て、感動的再会なのにどうしてこうも素直に感動的と思えない空気感なのだろうか。軍人はドライバーと審議をしている。

 

 一先ず降り、二人に改めて声を掛けに向かうことにした。最悪はM4が体勢を立て直して、M16に渾身のファ○コンパンチを叩き込もうとするのを取り押さえて阻止しなければならないからだ。周囲を確認しつつ背後からM4の背後にそっと回り込もうとした。

 

 ドライバーの気配に気づいたのか、目からハイライトが消え、しかも半泣きで助けを乞う様な眼差しを向けるSOPiiとAR-15と目が合うも、ドライバーは驚くも口元に人差し指を押し当て、ちょっとだけ大人しくしててな?とジェスチャーを送る。この時、バンパーやフェンダーの傷を至近距離で直視した彼は、思わず顔を一瞬伏せてしまった。それより先ずはAR小隊の事を優先しようとドライバーは割り切ろうとした。

 

 ―これで全員揃ったな―

 

 AR小隊のメンバーが揃ったのを見てジェスチャーする。

 

 「その様だな、指揮官…アンタから来てくれるとは…」

 

 「指揮官!?いつの間に!」

 

 M4は気付いてなかった様だ。

 

 ―M4、もう勘弁してやれよ。心配してたのは分かるが、さっき危うくM16を轢きそうだったじゃないか?万一轢いてしまってたら、悲しいお別れになっていたぞ?―

  

 「う、それは…はい…ご心配掛けました…皆、ごめんなさい…私」

 

 

 「はは、良いさ。今戻ったぞ、M4。SOPii、AR-15も…っ!?」

 

 M16は生気を失いそうになってるSOPiiとAR-15の様子に驚いた。タイミング的にも、ここで事の経緯をドライバーが説明した。軍人が持ち帰ったデータにより其々の位置を特定し、早めに救助に来れたことである。M16はここで改めてドライバーと軍人に挨拶し、二人とM4たちに一言礼と詫びの言葉を伝えた。しかし、気になるのはM4がどんな運転をしたらSOPiiとAR-15の目からハイライトが消えてしまうのか。知らない方が幸せかと思考したのか、あえて聞かなかった。

 

 M16は少し辿々しい敬語ではあるが、感謝の意は伝わってきていた。軍人はドライバー達のように普通に話してくれて構わないと許した。え、そうか?と、いつものフランクなしゃべり方に戻る。

 

 回復したSOPiiとAR-15も加わり、再会を喜ぶ様子を、ドライバーと軍人は静かに見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし。

 

 

 ドライバーは、体と首はAR小隊に向けているものの、目だけは、M16が潜伏していた拠点こと、シェルターの出入り口から続いている、自分達や彼女たちのものではない足跡の方を見ていたのだった。

 

 少し積っているので消えかかっていたが、ドライバーはただ静かにその方を見つめている。その様子は、ヘルメットのバイザーのスモーク、身体の向きもあってか、誰も気付いてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドライバーは、雲行きから天候が晴れつつあることを感じ、『撤収だ』と伝える。M16と合流した事で長居は無用と考え、ナガンたちの拠点へと戻ることにしたのだ。

 

其々は車に乗り込み、エンジンを始動。湖はもう氷が割れているので走れず、マップから本来通る筈だったルートの逆方向を通ることに。

 

 

 「えっと…指揮官。私はどっちに乗れば良いんだ?」

 

 M16は帰り道にどちらに乗るのか疑問に思った。どちらも空いている。しかし、片方はM4の二号車であることを知っているため…

 

 「…お!指揮官の方が空いてるなぁ!よーしそうしよう!そうしよう!」

 

 M16は二号車に危機感を感じ、うまく取り繕ってドライバーの車へと乗り込もうとするも…

 

 がしっと両腕を掴まれる。

 

 恐る恐る振り向くと…満面の笑みを浮かべるSOPiiとAR-15。一人抜け駆けは許さぬ…と言わんばかりの表情。

 

 「M16、どうしたの?こっちはまだ一人分は乗れるわよ~?」

 「そうそう!M4のドライビング、ビックリするよー?」

 

 

 「ヒェッ…」

 

 ―そ、そっちに乗るのか…?なら、M4、帰りも頼むぞ。頼むから落ち着いて運転してくれよ?―

 

 「了解しました。ほら、姉さんも早く乗って!」

 

 「「さあさあ!」」

 

 「え…ちょっとお前ら…待ってくれ…待ってくれよ!おいい!?」

 

 終わった。SOPiiとAR-15にズルズルと牽引されていく。ドライバーと軍人は謝罪と供養を込めた合掌を行う。

 

 M16はAR-15とSOPiiにより後部座席へ。ハーネスを取り付けられる。もう逃げられない。

 

 ドライバーの一号車に続いて出発。

 

 

 

 『うふふふ、うふふふ~』

 『おいM4!?ひぃぃ!?せ、せめてスピードを落としてくれぇぇぇ!!』

 

 M16は、あれから進化した(?)M4の走りに悶絶することになり、楽しそうなM4の歓声とM16の悲鳴が木霊する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その背後から

 

  

 

 「ま、待ちなさーい!グリフィンのドライバー!」

 

 イントゥルーダーが追跡車両と共にやって来た。

 

 

 「完全に出るタイミングを間違えましたわ…!!皆の者、であえー!であえー!」

 

 イントゥルーダーは残りの人形兵やらを集めて追い掛けるも…

 

 

 「ん…?何です?この音は…」

 

 

 『イントゥルーダーさん大変です!雪崩!雪崩です!…もうダメ!逃げられまs……』

 

 通信が強制的に切れる。

 

 「え!?ちょっと待って!?…きゃああ!?…こんな結末いやあああああ!!!」

 

 

 

 イントゥルーダーが叫びながら雪崩に巻き込まれていく。まさしく映画のオチにありそうな敵の退場の仕方である。イントゥルーダー自身は壮大なアクションを期待していたが、これではまるで、コメディ系アクション映画に出てきそうな、間抜けな敵ボスみたいな終わり方である。

 

 

………………………………………………

 

 

 

 一方、またとある鉄血司令室にて。

 

モニターでイントゥルーダーの部隊の状況をチェックしている代理人と、その背後に小柄な人形が一緒にいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「イントゥルーダーの霊圧が消えた…?」

 

 

 

 

 

 

 反応のロストに対して代理人は一言。ドライバー一行をアイスでブレイクしようとした矢先、反ってイントゥルーダーたちがブレイクされてしまうとは。

 

 尚、アイス(氷)というより、雪(スノー)。もっと厳密に言うと、アバランチ(雪崩)である。

 

 

 

 そして…

 

 

 

 

 

 

 「…これで、グリフィンのドライバーは、天変地異すら操る程度の能力があることが判明しましたね」

 

 

 

 

 「いやいや、これどう見たって事故だよね!?ロケ地での事故よね!?」

 

 小柄な人形が代理人の突拍子のない発言にツッコミを入れた。

 

 「という事で、デストロイヤー、次はあなたの出番です」

 

 

 小柄な人形こと、デストロイヤー。彼女は『一部の大きなお友だち』には大好評なハイエンドモデルの人形である。 

 

 「ええ…まぁ、いいですけど…」

 

 「そう言えば……デストロイヤー、あなたペダルに足届きましたっけ?」

 

 「あ…そうだった…!どうしよう…」

 

 代理人の指摘通り、デストロイヤーの体躯では車のペダルに足が届かない。追跡車両すら足がプラプラしていたことを思い出していた。仲間の仇討ちをしようにも、これでは追いかけることもできない。それを考え、がっくりと肩を落としてしまう。

 

 「落ち込むことはありませんよ。ちょっとお待ち下さいね?」

 

 

 

 すると代理人は一旦カメラからフケた。

 

 

 

 「ふぅ…これを使ってください…」

 

 「こ、これは…!?」

 

 代理人は何かを持ってきて見せた。すると、デストロイヤーの表情は光が差した様に明るい表情に変わる。

 

 

 

 

 

 

 果たして、それは一体何なのか。

 

 

 

 

 

 「これなら私でもやれるわ…!見てなさいよ、グリフィンのドライバー!」

 

 

 

 

 尚、鉄血のモニターがタッチスクリーン式なのにキーボードが付いている、他でもない、デストロイヤーのためである。

 

 

 

………………………………………………

 

 後日。

 

 

天候は落ち着き、M1895たちはドライバーの指揮で除雪作業と事後処理のために出向くことになった。ドライバーは除雪車を運転し、軍人と人形たちも周囲を調査していると、雪に埋もれた何かを見付けた。

 

 

 

 

 そして…その更に後日、16LABに機能停止した鉄血人形たちがクール便で運ばれてきて、研究員たちは全員真顔になった。運ばれてきたものの中には、まるでFXで有り金全部溶かした人の顔みたいな表情で機能停止したイントゥルーダーの姿もあったという…。

 





これでAR小隊は全員揃いましたね。ここで一応はAR小隊救出編は終わりです。



…というか、ハイエンドモデルの方々が倒される(?)度に、代理人が名言使ってリアクションするのが本作の定番になりつつあります()

 
  

そして、一時ながらですが…ついにM4がぶっ壊れてしまいましたね…


 
 ドルフロSSでは、ヤンデレなM4たちをよく見ますが、こんなM4たちだって居ても良いよな?と思い、執筆を続けていく内に、気が付けばこうなってしまいました………(^ω^)ドウシテコウナッタ
 

 (イ○D+バーンア○トで育まれたドライビングとかこれもうわかんねえな)


補足ですが、現実世界におけるペースノートはドライバーとコ・ドライバーとの打ち合わせの上、分かりやすいように語源等や読み上げる早さを決めている様で、一概には言えません。おまけに、コーナーとコーナーの間の距離とかも考慮しなければならないので、やはり各々の感覚なのでしょう。

コーナーの難易度を示す部分においては…


ドライバー(指揮官)の表現→イージー、ミディアム、オーバーの三段階。大雑把…?

スオミの表現→コーナーの難易度(角度)を数字で細かく記していた。几帳面…!



しかも、ここまで書き終わっておきながら思ったんですけど、ドライバーは良いとして、素人なのにいきなりペースノート読むの任され、しかもキチンと出来てた軍人、お前一体何者だよっていうwww

(それでも湖のところで読み間違えたり、読み始めるタイミングとかはドライバーが途中「次のコーナーから読んでくれ」って軍人に伝えてましたけど…)





そんなVol.9、M16と合流した途中でちょっと何かありましたけど、また次話をお楽しみに…!


代理人「君の心に、ブーストファイア!」

今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)

  • 劇中に世界の名車を登場。
  • AR小隊vs404小隊のレース対決。
  • スオミを走らせよう。

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