戦場の走り方   作:ブロックONE

19 / 41
Vol.14からの続きです。

デリケートな内容…なのかもしれません。


Vol.15 たまには男同士で話したい時もある。 ii

ここからVol.15

 

 

 「つ、つまり…人形側がバグを起こし、独自判断で行った可能性があるって言いたいのか…?」

 

 ―まぁ、それが本当か否かは、分かりかねるが…だが、明らかに人形が異常な行動を起こしてる報告もあるそうだ―

 

 

 軍人は背筋が凍る様な感覚を覚えた。いつも見なれてしまっていた戦術人形がバグを起こして異常な行動?下手すると脅威となるレベルだ。時の科学者たちもそんなこと有り得ないと話していたり意見が別れていたが、現代では鉄血のAIがバグを起こして暴走している程である。そんなことがあってもおかしくはない。しかしそれでも、ついこの前まで仲良しだった人形たちに裏切られることがある可能性があるというのはいろんな意味で恐怖だ。

 

 ―それに、もしそういう個体が同じ姿の人形の中に混ざると、見分けがつかない―

 

 「そういうところは、人形(彼女たち)らしいよな…」

 

 ―だな。やつらの中身は、極論言うと、基本的に人工物の塊だ―

 

 随分と割り切るドライバー。きっとこちらにも分かりやすく伝えてくれているのだろう。しかし、俺はここで疑問が浮かび…

 

 「お前の基地の人形は平気なのか…?」

 

 ― 一応、うちの基地においては、基本的に人形にはメンテの度に最適化と同時に一定の条件付けを施してある。M4A1を助けに行った時に、はぐれたステンMk-iiがいたろ?あの後、あいつも基地で権限を上書きしておいた。AR小隊の奴等はペルシカの所のだから、アイツじゃないとその辺の調整は出来ない―

 

 ドライバーの伝えてきた『条件付け』という言葉の意味を訊ねると、セーフティ機能のアップデートで、身内を始めとする味方への誤射防止に関することだという。俺や外部から加わる協力者などに銃を向けてこないようにすることだとドライバーは一例を解説してくれた。ごく一般的な内容だと思われるが、実際これは重要事項だ。これまでの誤射誤爆の歴史がその重要性を物語っている。後は射線に出ないだけだ。

 

 だが、他所はどうしているのだろう。

 

 

 「そうなのか…それで、だ。その致命的なバグの原因は何なんだ?対処方は?」

 

 

 ―落ち着いてくれ。その所謂バグについての詳しいことは情報が錯綜しててな。だが、何れも指揮官に対する依存性が特に強い、または人間で言う独占欲の強いメンタルの構造をしている人形にその傾向が見られている。それが元々なのか、後発したものなのかは…そこまではわかっていない。ケースは多岐に渡っている…―

 

 「なるほど…独占欲?そんなもの人形にもあるのか?」

 

 ―AIの発達上、人間に近くなったり気に入られようとしたりすると…まぁ、新密度の高いやつはしっかりメンテしてやらんとダメってことさ―

 

 「結局は痴情のもつれの様なこと…?」

 

 ―まぁ、一つはそれに近い…ある指揮官は好意を持たれてる人形に下着を盗まれたり、ある司令部では、指揮官の貞操を奪おうとする人形も居るとか…他にもサイコパス化した人形にストーカーされたり…―

 

 これはもう手遅れに思えるのは俺だけだろうか…ドライバーのジェスチャーからして、ほぼフリーダム過ぎる。人間ロボット問わず、人権団体が聞いたら衝撃を受けるような内容だ。つか下着盗むってどういう性癖だ…。

 

 「そうか…そういや、一つって言ったな?ならもっとあるのか?」

 

 ―まあな。これも可能性があるってだけだが…―

 

 「それでもいい、聞かせてくれないか?」

 

 前置きを置くドライバーに、身を乗り出し、俺はそう言った。

 

 

 ―そうか………さっき伝えた独断による行動の話と被ってしまうが、指揮官に知られないように動き回ってるって可能性もある。自律行動を命令されてないのにだぜ。まぁ、人形の所属や指揮系統、他には、M4たちAR小隊みたいに人間の指揮官が居なくても独立行動できる奴も存在するから、一概には言えないんだがな―

 

 「お前のところはどうなんだ?」

 

 ―俺の指揮してるところの場合だと、警備チームがその一つだ。巡回路を指定し、その時その時に必要な指示を出してからゴーサインを出している。だが、スコーピオンやネゲヴの運転は…あれはどう説明したものか…条件付けをしても中々直る気配がないんだよな…―

 

 

 「その人形の運転を体験した覚えがない俺が言うのも筋違いだが、多分、暴走じゃないと思うんだがそれは…」

 

 むしろ一緒にしてはダメなんじゃないかと思い、俺はドライバーの返答に対して更に返す。すると、彼は驚いた様にこちらを見た。お前もしや自覚してなかったとか言うんじゃないよな?

 

 「思い当たることはないのか?」

 

 ―うーん…一体どこで間違えたんだろうか…あ!一つ思い当たるぞ―

 

 ドライバーはポケットから端末を取り出して映像を見せてくれた。それは基地の運転教導のオリエンテーションに使ったという、ドライバーによるデモ走行。何時もの彼の車でのドリフト走行やら大ジャンプやらこんなの見せたらアカンと言われる代物だ。

 

 問題のシーンに出てくる車はいつものではなく、軍用の4WDカーである。スローモーションで流れるシーンがあり、縁石や段差に乗り上げて本の一瞬だけ片輪走行の様になっている箇所がある。

 

 カメラアングルと編集はカリーナが行ったという。まるで映画とか、近年のとても綺麗なグラフィックのレースゲームのOPとかイントロの様だった。

 

 「片輪走行…ん?ここだ。もしやこれか?」

 

 先程の軍用4WDカーのシーンで一時停止貰う。ドライバーは『これ単に勢い良く突っ込んだから軽く浮いただけなんだよな…』と当時の状況を教えてくれた。

 

 いや待て、M4A1に貸した教材が間違えてバーンア○ト渡してたりもっとあると思うのだが…

 

 

 「まぁ…結局のところ、お前の所の人形は大丈夫だってことは分かったよ」

 

 ―それは何よりだ。こちらも話すことを話した甲斐がある。釈迦に説法かもしれないが、ヤバイ時はアンタ自身の身を守ってくれ。だが、最初に会った時にも伝えたが、ドライブバイだけは場所を考えてくれよ?でないと怪我しちまうからな。俺も運転中は自他関係なく気を付けてるが、同僚が昔腕を持ってかれそうになったからな―

 

 「ドライバーが銃を撃ってるところ、想像つかないんだが…」

 

 ―そうか?そうだなぁ…運転に集中しているからな……さて、そろそろ戻ろう。今回の事やシェルターの事は他の指揮官や軍の人間には他言無用にしてくれるか?良からぬ混乱を生むかもしれないからさ―

 

 「ああ、了解した」

 

 そして、戸締まりをしてから、電源を全て落とし、再びナイトビジョンを付け、ドライバーと共に車に乗り込んだ。

 

 シェルターの外に出てナイトビジョンを外してドライバーに返却する。

 外はまだ明るく、解放感を感じる。

 

 

 帰り道は山道を下る。ドライバーは少し道を変え、再び通信装置を起動した。

 

 すると

 

 『指揮官様~!指揮官様~!あ、繋がった!今どちらに!?』

 

 ドライバーは後方幕僚のカリーナが捲し立てるように言うのに対し、一言詫びてから調査と偵察をしていたら接触不良か通信装置がおかしくなっていた、他は問題ないと伝えた。

 来る時の言い訳とは二転三転してるようだが、後で調べたら、確かにここには地磁気が特別荒れてたりということはなかった。

 

 『な、なるほど…』

 

 ―それより、基地の状況は?―

 

 『はい!滞りありませんよ!ご安心をっ』

 

 ハキハキとカリーナは返す。何時にも増して表情豊かだな、軍にもそういうの居てくれたら職場もモチベーション上がるのに。しかし、購買で言い値で買わせにくるのはちょっとな…

 

 

 『ところで~指揮官様~軍人様~…新商品が入荷しましたわよ!』

 

 

 

 これ、基地まで来たら買えってことじゃんか…

 

………………………………………………

 

 

 

 一方、鉄血の基地では…

 

 

 「ZZZ…」

 

 

 「代理人さん代理人さん…出番ですよ…!」

 

 

 

 立ったままスリープモード中の代理人を鉄血人形兵の一人が呼び起こした。

 

 

 

 「ハッ…いかん、いかん危ない危ない危ない危ない…」

 

 

 

 「完全にスリープ入ってましたよ?」

 

 

 

 「すみません…不甲斐ないところをお見せしましたわ…」

 

 

 

 コホン、と咳払いし、キリッとした顔で立ち直る。

 

 

 

 「こんなに出番が無いというのは、サク=シャというやつの仕業なのでしょうか」

 

 

 

 「それは……うーん…どうなのでしょう?」

 

 

 

 「時に…デストロイヤーの方はどうなりましたか?」

 

 

 

 「実は…」

 

 

 

 ………………………………………………

 

 鉄血の特設訓練施設。

 

 

 

 「もう!何よこれ!またエンストしたわ!」

 

 

 

 ぷんすか怒るデストロイヤーに対し…

 

 

 

 「あらあら?これでは作戦開始は当分先かしらねぇ…」

 

 

 

 ハイエンドモデルの一体、ドリーマーの姿があった。

 

 

 

 「ふふふ!諦めたらそこで試合終了よ。がんばってねー?」

 

 

 

 

 「まだ諦めてないわ!見てなさいよ!」

 

 

 




急にこんな内容となってしまい申し訳ありませんでした。


このVol.14~15では、現実世界にある『AIに物事を委ねる事に関しての懸念』というのをほんの少しだけ混ぜてたりしてます。


うまく伝えられず恐縮ですが、現実世界では有益となる存在となることを信じたいところ…(˘ω˘;)



ドライバーのヘルメットのバイザーは、なんとナイトビジョンを搭載してます。ドルフロの年代ならそんなとありそうかなって思いまして。


今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)

  • 劇中に世界の名車を登場。
  • AR小隊vs404小隊のレース対決。
  • スオミを走らせよう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。