あの後、郊外でのドライバーとの話やシェルターの話は他言無用となり、軍人はそれを守ると約束した。
今回は機器の不調により調査にならなかったとして、後日出直して調査地区の状況を纏め、報告することになった。
そして、また数日後のことである。
………………………………………………
「失礼する」
何時もの様に基地にやって来た軍人は、司令室の扉の前で一声かけて入る。今回は調査対象となるエリアに変更があったため、急遽相談に来る必要があり、基地にやって来たのだが、どこにも彼の姿がない。
それはドライバーは諸用で昨日から基地を出ていたためだった。それを知った軍人は、基地と人形たちはどうするのだろうか?と疑問に思っていた。
長期に渡り指揮官が不在だと有事の際に混乱が生じる。特に指揮系統。ドライバーの様な突拍子もなく奇行に走る奴でも、一応は責任者。締めるところはきっちり締めている。そのお陰か基地は滞りなく動いてるし、人形たちも適切かつ快適そうに動けている。いや、人形たちは、ドライバーでなくても、『指揮の執れる人間』が居れば、常に効率よく動く事が出来るのだ。簡易指揮機能を持たせた人形がいても、やはりその動きは複雑に思考しても、パターンが決まってしまう。敵はそこから覚えて『パターン入った状態』に陥らせ、畳み込んでくる事もある。なので人間の指揮は必要。あと、基地の運営云々も最終的な意思決定権のある人物が必須である。
「……あれ?」
司令室には見慣れない男がそこにいた。
「ん…?」
静かに振り向いた男は顔に大きな傷がある寡黙そうな男であった。おっさんと言うわけではないが、修羅場を潜ったような顔。
「あ、えっと…」
少し沈黙し…
「済みません、部屋間違えました…」
そっと出ようとする。
「ドライバーなら、諸用で出頭しているよ」
落ち着いた声で傷顔の男が言うと、軍人は『え?』と疑問符を挙げた。
「ふむ、となると、君があいつが話していた『軍人』か?」
「そ、そうだが…」
一瞬見透かされたような感じがして、思わずギクッとしつつ返事をする。
「あなたは?」
「私の事はオブザーバー(監視者)とでも呼んでくれ。よろしく頼む。」
「こちらこそ…よろしくお願いいたします…」
オブザーバーと名乗った傷顔の男と挨拶を交わす。俺からは、彼の顔が傷のせいでどこか霞んでいるように見えた。婆様が昔、顔は看板だと言う話を聞いた事がある。
彼は、正規軍のPMC監視委員の一人であり、奇行こそ素行と言えるドライバーの監視役を担当しているという。
今になってそんなの必要なのかよ?って思うが、実はPMCは素行が悪い奴をきちんと取り締まれないことも度々ある。その結果、要らぬ犠牲を生んでしまう。
特にG&Kの様に都市を経営できるほどに規模が大きな所では、企業ガバナンスなどが一部で形骸化しているまま操業している事もあるそうで、その調査、監視をするのが彼の部署だそうだ。
ドライバーは…まぁ、ある意味で問題行動になるのだろうか。それを任務達成で上を黙らせている感はあるが…。
「やれやれ…あのクソヘルメット野郎め…!アイツは立場を自覚しているのだろうか…いつも彼が迷惑を…」
オブザーバーが言う。ドライバーに対する言葉に毒が混ざっている様に思えた。そして、なぜ謝るのか気になったので聞いてみると、どうやらオブザーバーはドライバーとは旧知の仲らしく、グリフィンの監査監視を担当することになり、その時、ある意味大問題児とされるドライバー専属の監視兼ブレーキ役を引き受けたされたそうである。しかもクルーガーはオブザーバーに臨時の指揮権を彼の許可の下という制限つきで委任することに決定したそうだ。異例すぎる。反対意見もあったそうだ。しかし、クルーガーの決定ならば、と周囲の役員らは引き下がったそうであるだが、ここまで大きいと、多少でも行政による監査や監視は必要なのかもしれないな。以前ならば即デモが起こって叩かれただろうけど…。おそらく情報統制だろう。それならば混乱が起きないし、目が行き届く。そこから是正したりして信頼を築ければ、クルーガー氏にとっても旨味かもしれない。
しかし、あのドライバーが是正するかどうかは分からないが。
この時オブザーバーはクルーガーに向けて『確かに、あのアクセルペダルしか無さそうな彼には、キルスイッチ役が必要でしょうからね』とあきれながら毒舌をぶちかましたそうである。あえてキルスイッチと言ったのは飽くまで皮肉だったそうだが。
と言っても、当のドライバーは急な諸用にて基地を出ており、オブザーバーは奇しくも入れ替わるように基地につくことになったが、各権限はきちんとドライバーから引き継いでいる様だ。しかし、『あくまでグリフィンのルールに則る』、という形であり、俺がドライバーと初めて会う以前から度々あったそうである。混乱してなかったのはそのためか。どんだけ順応力高いんだよこの基地は…?
しかし、オブザーバーはまさしく指揮官っぽい印象だ。ドライバーが風貌から変わり過ぎているから余計にそう見える。
そんな彼は、『まあ、私も君も、同じ軍の人間であるから、同郷の友人の様に接してくれて構わんよ?』と、俺に気安い話し方を許可していた。つまり『ため口でええんやで?』って言いたいのか?
「わかりま…いや、わかった。オブザーバー」
「ああ。それでいいぞ、『軍人』」
でもね…?
何か胡散臭ぇ…!!
ポーカーフェイスとはいえ、多少口角が上がるも、それがホントに笑ってるのか、それともわざと笑ってるのか、ぜんっぜん掴めん…!
「ふむ、調査任務の事だったな。ドライバーの奴からは聞いているぞ。では、話を始めようか」
まぁ、とりあえず話をするとしよう。ドライバーに振り回されてる様だが、基地の設備は詳しい様だった。
「じゃあ、ええと、このエリアの事なんだが…」
相談内容の説明を始める俺。
うーん……なんかね、ため口許可されたってこうも風格ある感じだと反ってやりにくいんだよな…どうみたって俺より軍人っぽいし、同郷の友人つっても、リアルそんな胡散臭そうな振る舞いしないし…というか、俺あんまり同郷に友人居ない…
「なるほど…それなら直ぐにでも準備して行こう。ドライバーはそう直ぐには戻れないそうだからな」
「え?あんたと!?」
聞き間違えだろうか。
「ん?妙か?ふむ、私が知る限りでは、戦術指揮官という仕事は、現場に出向くこともあるケースもある。ドライバーほど出すぎることはあまり無いが…」
どうやら、俺は聞き間違えではなかった。こいつも現場に出るのか…というかドライバーお前どれだけの権限委任たんだよお前…!
「そ、それならオブザーバー…正直に聞くけどさ、あんたって戦えるのか?下手すりゃ死ぬこともあるし…」
同郷の友人のように接してくれて構わんのなら、裏切り者ではないならば、やはり知る人たちや同胞には死なれたくない。俺は未熟さ故か、そんな不安が隠せずオブザーバーに聞くことにした。確かに風格からはそれっぽいけど、見てくれだけな人間って色々いるし…同期の顔に傷のあるコワモテな奴も、実は飼い猫に盛大に引っ掛かれて大ケガしてたためだったと赤裸々に語ってたし…。
「心配要らない。元々前線勤務だったのでな。PMCの監査と監視をする要員というのは、前線で活動することだってある。それに…ドライバーが勤めるこの基地は、その位置からして敵とはかなり近い方だしな。逆に聞くが、腰の据わらん奴が、命令とはいえ、果たして、こういう所にすんなり来ようと思うだろうか?」
オブザーバーは淡々と答えた。特に怒ったりする様子はなく、そして、冷静に疑問を投げ返してきた。
「確かに…並の神経ではここに来ようとしないだろうな……因みに、あんたの得意な戦術は?」
仏頂面の彼に意表を突いてみようと思いそう聞いた。
すると……
「敵の寝床で早朝バズーカ(物理)」
この発言で俺は確信した。
うん。こいつやっぱりドライバーの友達だわ。
新キャラで顔面大破系男子(キズメン?)こと、オブザーバーさん登場。
監視役なのに、ドライバーさん専属のキルスイッチ役になった現場上がりの謎の不運な男。
オブザーバーとは本来は『監視者』とか、そういう意味です(作者調べ)。
権限与えちゃうとか…多分それはクルーガーってやつの仕業なんだ(マテ
『人物データ』に纏まり次第後々追記しておきます。
では、次話をお楽しみに。
次回、『城之内、タイキック』
デュエルスタンバイ!
今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)
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劇中に世界の名車を登場。
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AR小隊vs404小隊のレース対決。
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スオミを走らせよう。