お待たせしました。
それでは続きをどうぞ…。
前回までの『戦場の走り方』は………
森を進み…
「―――現時刻より、ガサ入れ(状況確認)を開始する。軍人、背後を頼む」
無人となったグリフィン基地に侵入。
デンッ
「エラーとか氏ねばいいのに…」
警備室にて端末がエラーを吐くものの、なんとか監視カメラや各種ログデータを復元し回収。
「――誰かが掃除をした後だ。薬品を使った痕跡がある」
「薬品?遺体を運んだからか?」
「かもな。恐らく、鉄血の攻撃が済んだ後に遺体を移動…その後に移動させた証拠を隠滅するためか…どうやらまだ新しい――――」
遺体は持ち出されていたらしく、部屋には血痕とアロマサンドと呼ばれる砂状の芳香剤が床に溢れていた。
自分達が入っていった表口や裏口、通路の窓。
調べてると窓の辺りには土、表口には何もなく、裏口には掃除された後。オブザーバーから借りた端末のカメラで見てみると、薬品の反応が。外には霧吹き型の入れ物が転がっていた。
すると車の音が近づき―――
「―――人形……来ているのか?」
「無論だ。丁度そこにいる…少し観察してみよう」
以上。
………………………………………………
車が入ってきた。車種は黒のSUV。俗に言うクロカンと呼ばれるタイプ。車が停車すると、SUVから、人形が降りて来た。
「ふう…この頃、鉄血が追跡用の車なんて使ってるみたいだから、ここに来るまで時間かかったよ…」
「鉄血どもの癖に生意気ね…」
鉄血の動向に対して吐き捨てるように言う人形。
「まぁ、それもそうだよね…さて、さっさと片付けを済ませて帰ろうよ。流石にこのままじゃ本部にもバレて大変なことになるし…」
「そうね。早速始めましょう」
二人は清掃用具を持って屋内の裏口へ向かっていった。
「なるほどな…」
その会話と行動はオブザーバーが自身の端末で遠隔操作した監視カメラとそのマイクでチェックされていた。
「オブザーバー、奴さんがこっちに来るぞ…!」
オブザーバーは『静かに…落ち着け』とハンドサインを送る。
「あら?それ面白いわね?私にも見せてよ~」
「っ!?!?」
「…?」
俺とオブザーバーの間に、突然サイドテールの女の子が一緒になって端末を覗いていることに気づき驚く。黒地に黄色が入ってるジャケット。片方の目元には縦に傷が入っている。
「ビックリしたァ…」
「あらあら、驚かしてごめんなさいね?」
その少女は笑みを浮かべつつ詫びてきた。
「まるで、バカ殿のナ○コ姫みたいだったな」
オブザーバーが冷静に対応する。そう言ってる場合かよ…!
「あ、わかるう?あれ好きなのよ~」
「ちょっと待て、君は誰だ?つーか一体どこから入ったんだ…?」
「私?私はしがない戦術人形よ」
「もしかしなくてもUMP45か?」
「いきなりネタバレされた!?」
なんなんだこのやり取り…全く掴めんぞ……。オブザーバーにUMP45と呼ばれたその戦術人形は、小さく咳払いをする
「んんっ…えっと、もしやあなたたちって、最近巷で噂の指揮官殺しについて調べてるのかしら?」
「なにか知ってるか。」
「いいえ?でも、流石に私たちが元ではないわね…」
「そうなのか?いつも変な任務ばかり受けてると聞くぞ…?何をしたかは問わんが」
「あらぁよくご存じで。あ、もしかしてぇ…私の事……好きなのぉ?」
モーションかけるUMP45。
可憐な容姿だけど、ちょっとクネクネし過ぎてて、オネェに肉薄された時の様な恐怖を感じた。それに隣のオブザーバーが地味に引いているのを、俺はこの目で見てしまった。
というか、信用できるのか?
「あ、その顔、信用できるのかーって顔してるわね?」
指をピンと立て俺の心境を言い当ててきた戦術人形UMP45
なんで?そんなこと顔に出てた?俺フェイスマスクしてるぞ?
「すまないが、いきなりナ○コ姫みたいな登場しておいて、信用しろってのは無理があると思うんだが…」
声を殺してやんわり突っ込む。
「ふふふ、そうよね。ならば信頼は勝ち取らなきゃね♪ここは謎の美少女人形45ちゃんに任せてくれる?」
ああ、容姿だけは褒めてやるさ…。
いきなり初見でこんな振る舞いされて困惑してるし、初見の彼女には失礼だが、剽軽通り越して寒気がするぞ…?キャピキャピしすぎて逆に引かれるパターンのキャラだなこいつは…。
だが、手に持ってる獲物からして、その子が戦術人形であることは本当であった。うん、動きが良い。
「ではUMP45、あいつらを捕まえるから、あいつらの目を盗んでくれるか」
「了解よ」
「軍人、奴らを捕まえるぞ。正面からだいしゅきホールドすると120%危険だから、背後からそっと抱き締めるんだ」
「今さらっとすげー単語が聞こえたんだが…要するに捕縛しろってことだな」
「何か妬けちゃうわ~」
「君まで何言ってんの!?」
咄嗟に突っ込む俺。オブザーバーとUMP45って、もしや知り合いなのか?空気的に明らかにノリが良すぎるんだが…。
「やつらの目を盗んだわ。うん、確実にこっちに向かってきてるよ」
「そうか。そのまま奴らをモニタして位置をこちらに伝えてくれ。これは無線の周波数。後は私たちが何とかする。…行くぞ」
「よ、よし…!」
俺とオブザーバーはUMP45にこの場を任せて部屋を出た。こちらに向かってる人形たちの整った容姿からして、背後から襲うなんて犯罪臭が漂うが、真実究明には必要だ。
あれ?元々これってエリアの調査だったよな?
…ま、いっか!
「目標に近づくから、肩甲骨をよく回しておけよ?銃は最終的な手段だ。いいな?」
「お、『ゼロレンジ』をやるのか?よし…」
肩をグルグル回す。身体は緊張すると強ばったりして動きが鈍るために、ウェイブっていう波の動きをイメージして動かして筋肉の緊張をほぐし、動きのロスを減らし、素早く敵を制圧するという、近接格闘術だ。つーか人形に効くのかは不明だ。だからこそ、背後から接近しろとオブザーバーは言っていたのだろうけど…。
そして、『俺たちは狩る者だ…俺たちは狩る者だ…』と言い聞かせるのを忘れない。ただ、俺は声に出ていたのか、オブザーバーから奇特な視線を向けられていたのはここだけの秘密だ。
銃を使わないとなると、逮捕って感じだろうか。オブザーバーは、直後に『一先ず殺さず捕らえろ』と小声で伝えてきたので、そう言うことで間違いはなさそうだ。
………………………………………………
「さーて、今は亡き指揮官のお部屋…っと」
自律人形たちは、掃除用具片手にロビーへとやって来ていた。
「本部には、指揮官の自殺ってことにしてるんだっけ?」
「そうよ。私たちがやったなんて知られてしまったら…」
「グリフィン内部はお前たちを消しに来る。そうなれば君たちの都合が悪くなるし、守りたいものが脅かされる」
「「!?」」
背後からの声に驚く人形たち。
「今です!」
オブザーバーの号令で接近。
自律人形たちは銃を構えるが、手首を捻り上げ、一瞬銃を握る力が緩んだところで取り上げた。
「きゃあっ!?」
「そこまでだ。大人しくしろっ!」
こちらは捕縛に成功。オブザーバーはというと…
「ああっ久しぶりの人間の温もりぃ……じゃなかった!ちょっと!やめっ…へんな所さわんないでよ!?」
「良いではないかー良いではないかー。ちょっと署までご同行するだけではないかー」
オブザーバーはそれっぽい台詞を棒読みで言いながら、腰に手を回して押し倒しているだけ…というか、この自律人形のメンタルも大概である。
おい、さっきの『ゼロレンジ』はどこ行った。あの肩甲骨を回す動作は何のためだったんだよ!?
オブザーバーが自律人形から離れると、自律人形は今度は素早く銃を振り抜き、オブザーバーに突き付けた。
「おいおい、そんな物騒な物はしまってくれないか。自分の立場を悪くするだけだぞ?」
「うるさい!い、いいい、いきなり後ろから抱き付くモ○ゾーもどきの変態に言われたくないわよっ!」
自律人形の目に涙が浮かんでいる。これでは、まるで貞操を奪われそうになってる乙女ゲーの主役の女じゃねえか……!!
「おい!!武器を捨てろ!!」
俺は珍しく声を張り上げた。オブザーバー両手を上げているが、嫌に冷静に語り掛けるのだった。
「おいおい、それではモ○ゾーに失礼だろう?どうせ人間は、死んだら誰とも口は聞けなくなるんだ。なら教えてくれないか?今君に変態と罵られた私でも、ピロートークくらいは付き合ってやれる程には紳士さ……………お前たちがここの指揮官を殺したのか?」
ピロートークっていきなり何言ってんだお前ぇぇぇ!?
今のは紳士とはほど遠い、明らかに下心丸だしの変態だったぞ!?
しかし、彼の発言はどうであれ、耳に入ったオブザーバーの話し方に少し寒気みたいなのを感じていた。確かに第一印象は鉄面皮っぽく冷徹そうな奴だとは見た目から感じていたが、ここまで感情の籠っていない話し方をする人間は、今まで見たことも聞いたことがない。
「っ…!なんでそれを…」
「この頃、指揮官の不審死が相次いでいる。それを知られていないとでも思ったかい?」
このオブザーバーの発言にビクリと肩を揺らす人形。
「一人や二人までならば、暗部の仕業と言われても納得出来ただろう。しかし、こうも短期間で複数名の被害者を出されてみろ、不審に思わない方が不自然だ。そして場所が場所だ。現に無闇に指揮官を殺してしまったために、こうして混乱を生み、敵の侵攻を許し、前線が狭まり、結果として市民の首を絞めてしまった。それが果たして、君たち戦術人形の使命なのか?」
すると、人形の手元が震え出した。
「どうした?撃ちたければさっさと私を撃てば良いだろう。君や君たちの守りたいものが、それで守れるのならばな…だが、それを私にもやれば…わかるよな?」
「おい、あんた何言ってんだよ!?早く抑えろって!」
「落ち着け、そしてソイツをそのまま捕縛して床に伏せておけ…」
オブザーバーは振り返らず、そう言った。俺は一先ず自分で抑えた人形を床に押し付け、体勢を低くした。
「さて……指揮官の死体はどこに隠した?」
「そ、それは……」
「まあいい、それは嫌でも話してもらうことになる。しかし、犯罪とはなんら関係のない身内殺しを行った以上、決して罪は軽くはないぞ?武装を解除しても、お前さんらはどうなるのだろうな…ま、それは心ある人間の判断だ。さあ、祈れ…!」
「黙れっ!!」
人形はオブザーバーの声に怯えたのか、それを振り払わんと銃を向けなおし、引き金を引こうとした。
しかし……
「ふんすっ!」
オブザーバーのディザームにより武器を奪われ、バランスを崩して転倒する人形。
待て、今のディザーム、早すぎてワケがわかんなかったぞ…!?
オブザーバーは奪った銃を人形に向けることはしなかった。証拠を取るためだろうか…。
人形たちは抵抗しなくなったので、ロビーに捕縛。
ところが…
少し目を離した途端…
「「にーげるんだよおおおおお!!!」」
捕まえた人形が捕縛を解いて逃げ出した。
「あ!こいつら!!」
「停めてある車に走って行ったわよ!?」
「やはり亀甲縛りにでもしておくべきだったか…」
「そんなこと言ってる場合か!?」
「慌てるな。こんな事もあろうかとッ」
オブザーバーは端末を弄る。
「さて、UMP45。君はやつらの車を追跡してくれ。あのモデルにはトラッカがついている筈だ」
「あのクロカンね?わかったわ!」
「よし、では君たち、私に続いてくれ」
「私も?」
「そうだ」
「現場は?」
「心配ない。人知れず私の方で増援を呼んでおいたのさ!…やあ、私だ。今どの辺りだ?オーバー」
『急行中です、オーバー!』
「了解だ。私は逃走犯を追う、オーバー」
『了解。現場は保存しておきます。お気をつけて。オーバー!』
「心配要らん。後で会おう。アウト」
オブザーバーは通信機を切った。
すると、走行音が近づいてきた。なにかと思って確認すると、先程の商用車が無人で走ってきた。どういうことかオブザーバーに聞くと、オートパイロットでこちらに向かわせたそうである。
どんだけ準備が良いことやら…
「まさかこの商用車でクロカン追っ掛けるの!?あなた正気!?」
「私に任せろ。二人とも乗れ。出発するぞ」
UMP45と俺はオブザーバーに誘われるまま商用車に乗り込み、運転席に座ったオブザーバーは急発進させ、逃走したクロカンを追い掛けていくのだった。
………………………………………………
オブザーバー一行の出発後、兵員輸送ヘリの内部にて…
「皆、指揮官の話していた通り、ヘリボーンで降下し、現場を押さえるわよ」
黄色いフード付きのジャケットに黄色とオレンジのオッドアイが特徴の人形がそう伝えた。彼女が隊長である。
『間もなくぅ、降下ポイントォ、降下ポイントでぇ、ございむぁす…』
操縦用の人形が車掌口調でアナウンスする。
「着いた様ね?」
ハンドガンを持つ戦術人形が冷静そうに話す。
「なんか映画っぽくて良いよね!ワクワクする~!」
LMGを持った人形が楽しそうにしており、銃をチェックする。
「ビビっちゃだめ…ビビっちゃだめ…!」
SMGの人形が自身に言い聞かせる様に呟く。
「さあ皆、準備して!」
基地に到着し、ホバリングすると、パイロットを除く機内の人形たちはヘリから垂らしたロープを掴む。
「降下開始!」
人形たちは手際よく降下し、展開していった。
to be continued.
ここまで読んでいただき誠に感謝します。
今回のオブザーバー編についてですが……もうちょっとだけ続きます。因みに、やっと従来の『戦場の走り方』らしさにもどります(笑)
尚、次回くらいでオブザーバー編は一旦終了すると思います。
それでは、m○veのRage y○ur dreamでも聴きながらでも良いので、ごゆるりとお待ち下さいませ。
次回
『爆走、オブザーバー!(仮)』
Don't miss it !!
今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)
-
劇中に世界の名車を登場。
-
AR小隊vs404小隊のレース対決。
-
スオミを走らせよう。