戦場の走り方   作:ブロックONE

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シリアル(?)なオブザーバーさんの話が一段落したので、ここいらで休憩話を入れさせていただきます。


これが平成最後の投稿です。


ではどうぞ!


Vol.X3 UMAとU.M.A

ドライバーの属するグリフィン第○○地区基地。

 

 司令室にいるドライバーと軍人は、同じ列の席に座っている。しかし、二人はあまり表には出さないものの、『眼前の何か』に対してひどく困惑し、そして同時に強い警戒心を抱く。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 (どうすんだよこれ…チャカ持ってるよ?しかもこっち見てるよ?なにこれ、新手の企業圧力?)

 

 

 

 (というかドライバー、こいつもしかしてお前んところの人形じゃないのか?潜入用とか…)

 

 

 (潜入用だって…?こんなあからさまにやベーのなんて、見てくれから客寄せパンダ程度の使い道しかねえぞ?つーか、お手てのチャカ見たらキッズたち泣いちゃうよ?それにこんなずんぐりむっくりしてるやつ居ないし…あ、スパス12ならさっき食堂で見掛けたな…)

 

  

 引き合いに出されたスパス12本人が聞いたら、きっと怒るだろう。

 

 

 (じゃあ、強化スーツか?ボ○太くん的な…グリフィンはIOPと16LABにコネがあるんだろ?)

 

 (まぁ、グリフィンの企業間のコネは本当だが…つーか、そんなもの発注した覚えがないんだがな…ラインナップにもなかったぞ…)

 

 

 

 (もしかしたら、16LABのイタズラか?)

 

 

 

 (あー…あいつら時折かなり暇人だからなぁ…それにペルシカもたまーに…いや待てよ…)

 

 

 

 (なんだ?)

 

 

 

 (うちに属してる人形にイタズラ好きが居てな……)

 

 

 

 片手のみのジェスチャーによるドライバーと、小声の軍人による審議は続く。軍人は一応兵士であるので銃を身に付けており、ドライバーも一応戦術指揮官なので銃を携帯している。

 

 

 そして、『眼前の何か』…それは、全身白くてもこもこ、けも耳に尻尾。首には赤いスカーフ。手には防弾ベストを貫きそうな弾を撃てる拳銃。ホルスターを持っていないのか。

 

 

 そんなナマモノがそこに座っている。愛嬌のある顔。瞬きもする。

 

 

 これまでこの世界では、可愛いツラしてやることがエグいキャラが沢山世に出てきている事もあり、ドライバーと軍人は『油断したら殺られる』という共通の意思が芽生えていた。

 

 

 しかし…このままでは埒が明かない。

 

 

 (軍人、ここは…さいつよ正規軍として、どうにかしてほしいんだが…)

 

 

 (無茶言うなよ。ここで堂々と鎮座してるということは関係者だろ。でなきゃ、基地の外に追い出されてる筈だ。となると俺よりドライバーが適任だよ…つーか、俺元々ゲスト側じゃん…)

 

 

 (うーん……まあ一応俺も指揮官だし…よし…やってみよう)

 

 

 

 ―あーそのー、お前…誰だっけ?―

 

 

 

 ベターな質問を投げ掛ける。ジェスチャーはどこか辿々しい。

 

 

 

 

 

 

 「だーかーらー Five_Sevenだってば~」

 

 

 猫的なナマモノはそれに対して応答して見せた。

 

 声からしてFN小隊の戦術人形Five_Sevenが発している声であった。喋り方もそのまんま彼女のもの。

 

 ダミーだろうか?と思って手持ちの端末で識別すると、MFと検知されたのだった。

 

 

 ―しかし、なんで猫に?―

 

 

 

 「え?これフェレットよ?」

 

 

 「フェレットねぇ…」

 

 ―フェレットならもっと細身だろう?FALの肩に乗ってるあいつみたいに。猫じゃないのか?―

 

 「もしかして…!ドライバー、これまで猫を轢いた事は?」

 

 軍人は思い付き、ドライバー問う。

 

 

 ―猫?轢いた覚えがないな。……成る程。これはつまり、『猫の怨返し』ってか?―

 

 

 

 「何その坂道を自転車で掛け登る復讐劇みたいなの!!?字が違うわよ!!それに、ナイスバディだけどデブじゃないわよデブじゃあ!」

 

 

 

 57を名乗る白いナマモノが鋭く突っ込む。

 

 「そこ自分でナイスバディって言っちゃうんだな…」

 

  

 

 

 

 

 

 …数分後…

 

 ―…メンテを受けたら、こんなのに入ってた、と?―

 

 「そうなのよ…」

 

 

 ―技師は?―

 

 「それが…」

 

 

 「あ、居た!指揮官~!!」

 

 突如FALが駆け足でやって来た。120¥の値札がくっついているのはもはや言うまでもない。

 

 

 ―FAL?一体どうしたんだ。―

 

 

 「ああ…遅かったかぁ…」

 

 その場にへたりこむ。

 

 ―一体なんだ?―

 

 「それが…」

 

 

 FAL曰く、人形のメンテナンスルームにて何者かがイタズラし、57(MF)のコアがこの遊び用の白いナマモノのボディに移設されてしまったらしい。Five_Sevenはそのまま出歩いてしまった様である。Five_Seven本人曰く、慌てたら負けと思い、冷静を保ち、取り合えず司令室にたどり着いたという。

 

 

 

 それを聞いたドライバーは、誰がやったのか、あらかた予想が付いていた。

 

 

 

………………………………………………

 

 

 別の部屋。

 

 「くっくっく…!困惑してる困惑してるゥ…!」

 

 修道服姿の人形。P7が笑みを浮かべて司令室のカメラを覗いていた。

 

 そう、十中八九彼女の仕業であった。

 

 メンテナンスルームは有事に備えて人形でも扱える様に訓練を行っている。そのために、P7もそのシステムの扱い方は知っていた。そこから、ジョーク用に購入したフェレット的なボディを仕込んで移設させた。

 

 

 「さて、そろそろネタばらしの準備をっと………」

 

 

 

 

 

 

 すると、P7は突然背後から肩を掴まれびくりと身体を震わせた。

 

 

  

 

 もしや…と思い、恐る恐る背後を見ると………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―…一体いつから――お前の仕業だと気付いてないと錯覚していた…?―

 

 

 

 

 

 

 「し、ししししし指揮官!!?」

 

 P7は突然背後から現れたドライバーに驚く。

 

 

 ―P7。面白いことをしてるな?―

 

 

 

 

 「え?何のこと…ってうわあ!?何するの!?おーろーしーてー!!」

 

 

 ドライバーは『真に無言』のまま、P7を抱えて連行していく。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、FN小隊が基地の敷地で走行練習をしている時、本来の身体に戻したFive_Sevenが運転している車の屋根に張り付けにされ、悶絶していたという。

 

 

 

 

………………………………………………

 

 さらに数日後。

 

 P7とドライバーがPCに向かって何かやっているのを、次の調査の打ち合わせでやって来ていた軍人は通りすがりに見つけてしまう。嫌な予感がしたのでそっと見守ることにした。

 

 

 その日は、遊びに来たモシン・ナガンが、どうせだからとメンテナンスを受けていた。バックアップを取り、予備の身体となるダミーにメンタルを移すのだが… 

 

 

 「…終わりました?」

 「ええ…まぁ…」

 「少し基地を回りますね。指揮官ところ面白いものあるし!」

 

 元気よく振る舞う彼女に技師は困惑したような様子を隠せない。

 

 しかも、モシン・ナガンの視線よりも上を向き頷いていた。

 

 「あのー…」

 

 技師スタッフは恐る恐る声を掛ける。

 

 「なぁに?なにか付いてる?」

 

 「いえ…その…お口が動いてないっていうか…」

 

 

 

 

 「ええっと…それってつまりどういうこと?」

 

 

 モシン・ナガンは問うしかし、明らかに技師は自身の視線よりも上を向いて話し掛けている。

 

 何かがおかしい。しかも姿勢が四つん這いになってるし、茶色でもふもふしている。毛皮なんて着ていないのに。この毛並みの良さは何なんだろうか。

 

 技師は苦笑いしつつ…

 

 

 「走行性能は折り紙つきです。いつものボディはメンテナンスが終わったら引き渡しますので…そ、それでは~…」

 

 

 …と引き下がった。すると、その背後の窓から、ドライバーとP7が笑い転げているのを発見し…

 

 

 「もしかして…!」

 

 馬に乗ったモシンナガンはダミー。ということは反射して映ってるのは……馬?

 

 

 それを察した途端、ドライバーたちを追った。それを察知したP7は……

 

 

 「逃げよう指揮官!」

 

 ―何時でも出られるぞ―

 

 いつもの一号車車に乗ったドライバーとP7は基地を出発。エンジンは始動済み、出るタイミング的にもエンジンが暖まった状態。

 

 基地から演習用の移動に使う道に出ると、その背後からパカパカ、パカパカ、とヒヅメを付けた動物が駆けてくる音が聞こえてくる。

 

 

 

 「待ちなさーい!!!」 

 

 

 

 

 「うわ!?もう追い付いてきた!?」

 

 

 ―P7、シートに深く座っていろ!―

 

 

 その様子を、カリーナと軍人たちは基地のドローンのカメラ映像から観戦していた。

 

 『現在トップは指揮官様です!そのすぐ後ろ、メンタルを馬型ロボットに載せ換えたモシンナガンさんが猛追している!』

 

 『端から見ると随分シュールな光景だな…あの馬は一体…ていうか、乗ってる人形が無表情なんだが……』

 

 何故か実況席に付いている軍人。

 

 『あれはU.M.Aという試作品で、モシン・ナガンさんのコアとメンタルを載せてます。』

 

 『な、なんだって!?』

 

 『元は、ある方々から騎馬隊を復活させたいというロマン溢れるご意見から開発していたものなんですが…思いの外上手く出来過ぎてしまいまして…ほら、どう見てまさしく本物の馬でしょ?』

 

 『そんなのにあいつ(モシン・ナガン)のメンタル載っけて平気なのかよ!?』

 

 

 『そこは大丈夫です!IOP製二世代戦術人形用コアの処理能力に加え、それに対応した高精度な操作インターフェースのため、元々その身体であったかのように操作が可能です!…そして!この個体は強靭なフレームと最新の人工筋繊維を採用しているので、蹴る力と瞬発力は理論上『生きた馬以上』です。蹄鉄(ていてつ)も無論専用に設計!一応全速力にすると時速200km以上は出せると実験で証明してます!耐久性も抜群!』

 

 技師はサムズアップして答えた。実に良い笑顔である。

 

 …と言うことは、万一に追い付かれた場合、ドライバーとP7はお仕置きとして後ろ足で蹴飛ばされる、或いは、頭をかじられる可能性がある。

 

 

 『直線ならまだ指揮官様に分があるみたいですね?』

 

 『確かに…しかし、そのままテクニカルセッションに来ると良い勝負になるかもしれません』

 

 『ん?どういう事だ?』

 

 『あー、実は指揮官に直々にU.M.Aの挙動監修をしていただきまして…』

 

 

 

 『あいつ監修してたのかよ!?』

 『指揮官様って乗馬出来たんですね?ていうか、何時の間にその様なことを…』

 

 ドライバーが車ばかり乗っているイメージしかなかったカリーナと軍人も、流石に驚きを隠せなかった。

 

 

  

 

 

 

 にしても、U.M.Aに乗るモシン・ナガンのダミーは、相変わらず無表情。遠心力に負けており、激しく揺さぶられるあまりヘッドバンキングしている様に見えている。こんなシュールな光景でも、モシン・ナガンのMFはマジである。

 

 

 『そんなこんなで、テクニカルセクションに突入です!』

 

 ふと映像に視線を戻したカリーナが告げる。

 ………………………………………………

 

 一方、テクニカルセクションに接近するドライバーたちは…

 

 「指揮官!?なんでモシン・ナガン(U.M.A)が追い付いてくるの!?ねえ!?」

 

 助手席に座るP7がサイドミラーを見て、声を上げる。これでは馬に追い回されている様に見えていたからだ。

 

 ―あの馬型ロボットの挙動は、俺が監修した。車では入れないところを全力疾走出来るようにするためだ―

 

 

 

 冷静にジェスチャーする。

 

 

 「嘘でしょ!?なんてもん作ってんのさぁ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さあ、行くわよ!」

 

 U.M.Aの姿のモシン・ナガンは、ドライバーの車に続き、コーナーに突入、そのまま姿勢を倒し、まるでスキーがターンしていくが如くスライドさせ、コーナー出口から再び足を動かし駆けていく。これもロボットの身体だからこそできる技なのか。

 

 

 「何あれ!?あんな滑らせて足折れないの!?」

 

 ―四足ドリフト……はははっ面白くなってきた!―

 

 ドライバーは上機嫌。しかし、彼としては前に出られるのは癪なので、正直喜んではいられないのも事実。この直後にドライバーは『少しペースを上げるぞ』とジェスチャーを送ると、P7は衝撃に備えた。

 

 

 というか、何時の間にレースになったのやら。

 

 

 『さっき勢いよくコーナー流してましたけど、何ですかあれ…!?悪い夢でも見てるんでしょうか…』

 

 『指揮官も恐らく驚いていることでしょう…』

 

 

 

 『ドライバー…!』

 

 

 手に汗握る展開。

 

 気が付くと、軍人はドライバーが何時もみたいに勝つことを願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この様子は基地に属する他の人形たちにも中継されており…

 

 

 「これだからこの基地は辞められない!」

 

 「あのU.M.Aってボディの挙動、指揮官が監修したのってこマ?」

 

 「というか、指揮官って乗馬もできたんですね?初耳です~」

 

 「P7と指揮官がなんかしてたと思ったら…なるほど…どちらも良い走りだな」

 

 

 

 いろんな意味で注目の一戦となっていた。

 

 

 一方、フィニッシュラインに勝手に指定されている直線の前では、たまたま基地に来ていたRO635がチェッカーフラッグを持ち、コース脇で控えていた。

 

 排気音と馬の足音をセンサーでキャッチすると、ROはチェッカーフラッグを振った。

 

 いち早くチェッカーを受けたのはドライバー。その少し後ろにモシンナガンのメンタル宿すU.M.A。にしても、どこかバテている様子。

 

 

 その後、ドライバーはP7と共にモシン・ナガンに説教されるのだが、彼女本人も楽しんでいたそうなので、ここはクワスのボトルを奢ることで許されたという。

 

 無論、このレースの様子はグリフィンの社内報にも『自動車vs馬型ロボ!?突然のバトルの行方は…?』と、大きく掲載されることになった。結果はドライバーの勝ち。レース中の大きな写真と内容を記した文章が載せられている。

 

 

 

 「その様なことがあったとは…あやつの基地は相変わらずじゃのう…」

 

 社内報を読みつつモシンナガンから話を聞いていたM1895は一言。

 

 「ほんと、後ちょっとだったのよね~」

 

 と、ぼやくモシン・ナガン。勝つ気でいたらしい。

 

 「なんか面白そうですね!たまには指揮官のところに行ってみようかな…?」

 

 ワクワクが止まらないスオミであった。

 

 

 

 「あら、近いうち皆でいってみましょ?スオミと指揮官のレースかぁ…」

 

 「腕が鳴りますっ」

 

 「待てお主たち!拠点はどうする気じゃあ!?」

 

 

 

 

 

 to be continued…?




閲覧有難うございました。



無理矢理終わらせた感…まぁドラマでもよくあるよね?(偏見
 
 魚を抱える白いモコモコは猫かな?って思ってましたが、お知らせよく見るとフェレットでしたかこれは…
 
 モシン・ナガンの方は、かの有名なレースゲームの隠し要素を足しました。
 
 え?はい、モシン・ナガンの件はP7と、それに悪ノリした指揮官(ドライバー)の仕業ですね。技師はただロマン溢れる意見からU.M.Aを作っただけなので多分不問…かも知れません。


尚、これが平成最後の投稿となります。本編含め、次回以降は令和になったときにまた投稿していきます。




それでは、令和でお会いしましょう m(_ _)m

今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)

  • 劇中に世界の名車を登場。
  • AR小隊vs404小隊のレース対決。
  • スオミを走らせよう。

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