筆者の方では、やっと赤豆がまともに対処できるようになりました。一先ず今のところ順調です。ランキング戦は、まあ期限内にやると思います。
ではどうぞ。
この日、ドライバーはとある場所を訪れていた。
そこはなんと軍の施設。しかも、将軍クラスの居そうな部屋に案内されている。こういう時はそれなりの服装で出向くべきであり、グリフィンの制服と言える赤いコートやスーツなのだが、ドライバーは何時もの様にヘルメットとつなぎ服であった。
手前でボディチェックされ、護身用の拳銃等を武骨な軍用人形に小さなカゴに入れて預けた。
『ア、オクビニ ツケテイラッシャル ソレモ、オネガイシヤス』
なんか語尾が不思議な軍用人形が指すのは、首を守るhans(ハンズ)デバイスであった。ドライバーは『え?これもなのか?』とジェスチャーするも、念のため預けてほしいという。もしかして、これが鈍器に見えたのか…?と思いつつ、ドライバーは頷いて、ヘルメットの両脇にある金具から固定してる紐を取り、hansデバイスを首から外し、それをカゴの中に入れた。ドライバーは、それは?と聞く兵士に『これはhansデバイスといって、首を衝撃から守る物だ』と簡単に説明した。というか、これが傭兵としても兵士の装備の内なのかどうかは問われることはなかった。
というか、なぜhansデバイスは外させてヘルメットは外させなかったのか。そしてなんでそれに誰も突っ込まないのか。空気を読んでるのか。そこは不思議である。
少なくともあの人形は、恐らく彼を人形かロボットの類いだと誤認した可能性がある。
ドライバーは部屋に入れてもらうと、奥のデスクに佇む男性に挙手敬礼を送る。態度的にはかなり気安い。守衛の兵士たちはそれを見て『なんだこの傭兵!?』と少し驚く気味。それだけの立場の人間の前に、ドライバーは通されたのだった。
「やあ、遠いところからよく来てくれて感謝する。グリフィンのドライバー君」
デスクに座る中年男性が優しく話し掛けてきた。
―お招きいただき光栄です。ええっと、レミング将軍で合ってます? ―
目の前のイケオジこと、レミング将軍にジェスチャーを送り始める。
「ああ、如何にも!僕がレミングだ。よろしく」
―よろしくお願いいたします…。それにしても、俺みたいなの入れて良かったんですかい?グリフィンじゃ、ある意味でならず者扱いされてるのに―
「ふふふ、君がならず者の類いではないことくらい、よく知っているよ?君のことは、君に調査任務として派遣している彼と、君がオブザーバーと呼んでいる彼の報告から色々伺っている…」
レミングはドライバーに対して微笑みながら話す。そんな彼に漂うダンディズム。こりゃ女が好みそうな面構えだなと思いつつ、そうか、と頷くドライバー。
―レミング将軍、まさか…俺の走ってるオンボードとかも…見ちゃったりとかしてます?…どうでした?―
「あー…輸送科のトップがとても驚いていたよ…これが人間の運転してる車なのか?ってね」
映像をピックアップしてモニターに映し出し 、苦笑いしているレミング。丁度迫撃砲を避けてるシーンや雪崩、そしてこれまでのカーチェイスシーン。
「なぁに、僕も君くらいの歳の頃は、あちこち飛び回っていたものだよ。砲火にまみれた所で車を飛ばしたり、色々あったものでね。あ、元々僕も速い車をより速く走らせるのは好きなんだ。ははは!」
―そうでしたかァ!やっぱ弾は当たらなきゃどうってことないですよね?俺のところは、上司からは危ないからやめてくれっていつも注意されますが…―
「ふふ、それは君を心配しているのさ。その彼女はヘリアントス上級代行官…と言ったかな?いい上司を持ったね。ドライバー君。だが、若い内は冒険をするべきだ。そうだろ?」
―ははは!でしょ~?―
「ああ、そうだとも!」
どうやら意気投合したようだ。ドライバーは空気を読んだのか、レミングが何故自分やヘリアンのことを知ってるのか問うことはしなかった。
「お!そうそう…頼んでおいたモノがあったんだ」
ドライバーは「お、それならこちらに」、懐からゆっくりとDVDのパッケージを取り出す。
すると、レミングが御付きの真面目そうな兵士に目線で合図を送り、その兵士はドライバーに近づいた。
「では、こちらに」
兵士はそう声をかける。ドライバーは「あんたに渡せば良いのか?」とジェスチャーを送ると御付きの兵士と将軍は笑顔で頷いた。
つまりは不審物がないかどうかの再チェックであった。兵士は、うん…うん、と頷きつつ、レミングの「開けたまえ」という指示でパッケージを開け、その中身を確認し出す。
その時の兵士の表情が完全に鼻の下を伸ばしていたを見ると、やはりそういうのが好きなんだなぁ…と思うドライバー。
「異常はありません。将軍」
「特典のCDとピンナップは?」
「はい、バッチリ入っています!イベント限定で配布されたタペストリーも確認しました!」
この厳粛な空気に似合わず、発してる言葉のせいでシュールな光景。ここにオブザーバーが来ると更にシュールさが増すことだろう。この兵士は恐らくこういったチェックとかさせられてるうちに、この様な作品にドハマりしたのかもしれないと、ドライバーは察する。
………………………………………………
事の発端は数時間前のこと。軍人は報告会参加のためにドライバーの基地を離れており、そこで諸用から帰り、オブザーバーと交代したドライバーは、自室兼執務室で今後鉄血工造の人形たちに対し、どう対処していくかを検討していた。M4たちAR小隊たちは16LABに戻っている。
オブザーバー本人は軍での業務が忙しいため、ドライバーに依頼する事を思い付いたのかメールを送信してきた。一方で、ドライバーは軍本部のある市街地までに続く高速道で、パトロールと銘打った最高速トライアルと洒落込みたかったところ、なんともタイムリーにやって来たその依頼を快く引き受けることに。
だが、ここでドライバーは用件を聞き、将軍クラスの人間に改めて仁義を通し、お見知りおいてもらえれば、なにかの切っ掛けで得意先になってもらい、さらに信頼がつけば仕事の依頼だけでなく、最新のテクノロジーを自分の牛耳る基地に融通してもらえるかもしれない…!そうドライバーは思い付く。おまけにオブザーバーにも誠意を見せれば、心象も良く、クルーガーに対しての体裁は多少でも良くなる。ならばこんなパシリみたいな依頼でも引き受けない手はない。彼の舵取り次第では属する人形たちの明暗を分ける事もあるため、ここは気合いを入れて車を走らせるのだった。
金や物資だけでは中々得られない人との繋がり。IT全般が高性能化しても、やはり生きた信頼は欲しいところ。裏切った覚えもないのに裏切り者扱いされるリスクを下げるためだ。それでもという場合は、その疑いを晴らす証人、もしくは、それまでの時間稼ぎ等を行ってなってくれる可能性もある。相手次第では裏目にも出る可能性が孕むのもまた然り。
それでも、ドライバーは『ヘルメットの覆面指揮官。変な見た目でも信頼はできる奴』……という、ある種のギャップ萌えを軍の将軍相手に狙いに行くつもりであった。そんなリスクがありそうなことを思い付き、実行に移そうとするのは、この時点ではドライバーくらいしか居ない。喋らずヘルメットを脱ぐつもりはないが、特に情報を変に隠すつもりはない。隠すのは何かしらの仕草や様子で簡単にバレるからだ。知られたら不味いから殺したり抵抗するだろうが、ドライバーは丸腰。強いて言うならば、部屋に通してもらうために先程預けた拳銃等の装備品くらい。結局は消耗品だし。そこまで固執はしない。しかし車は別。無論、銃一丁よりも高価なパーツで構成されているためだ。時代にそぐわない考え方の人間はこれまでも居たが、彼の様な思考回路がどこかイカれてる様な男は余り居ない。
そんなドライバーは将軍にの詳しいことについては、なにも聞かされてなかった。オブザーバーは急いでいたのか、単にレミング将軍に渡しておいてほしいとメッセージを入力していた。
「ありがとう。ドライバー君」
―いえいえ、お礼には及びませんよ―
「ふふふ…お、そうだ、オブザーバー君にもよろしく伝えておいてくれるかな?」
―喜んで。それでは、これにて失礼いたします―
ドライバーは行儀良く一礼し、将軍の部屋を退出していった。
外に出て、駐車場に車に向かうドライバー。堅苦しい空気から解放され、運転前の準備運動として肩を回す。
解放された、という表現が出来たのは彼だけではなかった。
いつもドライバーとエリアの調査で相乗りする『軍人』。彼は報告のために出頭していた。そして、外の空気を吸うために、駐車場の方へ歩いてきていた。
「あ!ドライバー!?」
―お?よお、軍人じゃないか。奇遇だな―
基地までのロングドライブのための準備体操を終えたドライバーが、軽く手を振る
「そうだな…ここに来るとは珍しい。あ、そうそう、次の調査エリアが決まったんだ。また、世話になるかも…」
―そうか!何時でも行けるぞ?何なら今からでも向かおうか?―
「そうしたいが、すまんなドライバー。このところ忙しくて、まだ日程が決まってないんだ。」
ご都合主義とは行かないのが世の常。これもまたやむ無し。
「ていうか、今どこから出てきた?」
ドライバーは軍人の問い掛けに対し、手の平で建物を指して、あっちから来たぞ?…とジェスチャーした。
すると、軍人の顔色が悪くなった。
「おまっ…まさか……」
―ああ、レミング将軍に―
「ええ!?…ドライバー、その人は………」
軍人は少し間を置く。ちょっと言いづらそうにしてドライバーに耳打ちしようと近づく
―…?なんだよ?―
「……レミング将軍は、軍の中央司令部から来た、情報将校だよ……!」
ドライバーはそれを聞き、真顔になった様な仕草をする。
え?待ってくれ。あそこにいたあの人が?あの人、情報将校なの?情報将校って、よくフィクションとかで出てくるミリタリーインテリジェンスの方面の人…?
…と言いたげにジェスチャーする。
軍人は少し青ざめた様な面持ちで頷いた。情報将校というのは、まさに軍の『ミリタリーインテリジェンス』と呼ばれる部署の関係者である。
下手すると、グリフィンに対しては既に目を付けている。いや、入札して都市運営権を入手し、各地に司令部やら前線基地を敷き、正規軍程ではないにせよ、軍備力そのものを持っている時点で、既に目を付けられても不思議ではなく、言い逃れなど最早不可能。
彼らは嘘と真を巧みに扱い、引き出し、またはわざと探らせて掴ませ、そこから相手の正体や性癖まで確実に暴き出す。変幻自在で、あらゆる手段を講じてくる。正しく切れ者揃いという言葉が相応しい。
それについてドライバーは…一瞬口許に手を当てるが、直ぐに肩を震わせ笑う仕草をする。
―……どうやら、他の指揮官ではお会いできない様な、所謂『やべー人』に出会っちゃったみたいだなぁ…!…まぁ、仇を売った訳ではないから安心しな、軍人。今回はオブザーバーのお使いで来てるだけだからよ。じゃあ、次の日時が決まったら、また基地で会うとしよう。それじゃあな!―
「ああ、またな。気を付けて」
そして、いつもの飄々とした態度に戻り、軍人がまた会おうと見送るなか、車に乗って走り去る。
ドライバーの報告:無事にお届け完了。粗相はしなかったぞ?オブザーバー。
オブザーバーの報告:ご苦労。助かった。この前の妖精の時連絡が遅れたことは不問にしておいてやる…有り難く思え。
その夜。
レミングは仕事を終え、自室にて、一人DVDプレイヤーにディスクを挿入すべく、手袋を着用しパッケージを開いた。毒針が仕込まれているかもしれないために、と解釈するべきだろう。たしかにそれも有るが、なによりDVDに傷が入らない様にするためである。
DVDプレイヤーに他のディスクが入っていないのを確認すると、早速パッケージからディスクを挿入、再生した。
そして椅子に座り、視聴する。
……が、もう一度パッケージの中身を確認し出す。すると、パッケージのカバーの裏に薄い入れ物に収まったマイクロSDと小さな紙を確認する。それらをそっと抜き取ると、手紙にはこう書かれていた……。
"レミング将軍へ。
この手紙を見ていると言うことは、既にグリフィンのドライバーから、こちらのパッケージを受け取り、心がぴょんぴょんしている頃でしょう。
さて、本題に移りますが、ご依頼された調査について、マイクロSDに納めましたので、お時間ある時にご確認くださいませ。
PS:DVDのご感想、いつかお聞かせくださいね?
オブザーバーより"
レミング将軍からの連絡:やあドライバー君。今後はオブザーバーくんを通じ、何か頼み事をするかもしれん。その時はよろしく頼む。
ドライバー の お得意先 が 増えた ?
今回出たレミング将軍のイメージは、00な英国スパイ映画のあの人。レミングが本名かどうかは不明…(オイ)
やはり何時ものノリで書くとシリアル+シュール(失笑的な意味で)という感じになってるなーって思うこの頃。バランスムズいですね。
また次回!
今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)
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劇中に世界の名車を登場。
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AR小隊vs404小隊のレース対決。
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スオミを走らせよう。