戦場の走り方   作:ブロックONE

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前回からの続きです。


ホラー要素はありません←


ではどうぞ。



Vol.30 心臓が縮みあがるような瞬間を幾つも飲み込みながら、指揮官は成長していくもんだ。

『指揮官、ここは私たちに任せて貴方は離脱を!』

 

『わかった…!頼んだぞ!』

 

鉄血の襲来。

 

指揮装置を壊され指揮統制が上手くいかず、倒れる人形。ここは非戦闘員たちを先に離脱させる。その後は人形たちも撤退させるはずだった。が、ハイエンドモデルのデストロイヤーの姿。確か火力が高い。こんなところ直ぐに壊滅に追い込んでしまうだろう。

 

 

「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」

 

 

こんな状況では冗談なんて言ってられるほどの余裕は無いが、これは思わず口に出た。どうやら小さな車に乗って帰ってしまった…

 

 

 

恐らく最後になるかもしれないと思い、ここでしっかりと指示を出し、現存の人形たちを信じて拠点から脱出する。

 

途中で車が故障。どうやら弾幕の中を突っ切った際にオイルパンをやられたらしい。

 

 

 

そのまま徒歩で移動を余儀なくされた。歩きに歩く。せめて最寄りの町まで。

 

この辺りは最寄りとは言っても車がなければ…いや車でもかなりの距離がある。徒歩でなんて言ったら大変だ。

 

おまけに鉄血も出没する可能性があるし…体力もそうだが、やはり神経が張る分、メンタル面でも削られていく。

 

もっと冷静に考え、バックアッププランを事前に練ったり、その上で指揮を促せば良かったことを後悔しつつ、力尽きて倒れ、意識が薄れていく。

 

 

………………………………………………

 

 

グリフィン経営の病院。

 

VIP用の病棟の一室にて…

 

 

―よう!―

 

その威勢の良いジェスチャーを送る、赤いヘルメットのあいつがそこにいた。

 

 

しかも病室の窓から。

 

 

これは何かの幻か?俺には赤いヘルメットの不審者がロープ降下してきて侵入しようとしているようにしか見えないのだが…あれ?グリフィンの身分証じゃないか。

 

 

 

となると…もしかしなくてもドライバー指揮官だった。

 

 

 

―済まないが、部屋の中に入れてくれるか?―

 

 

ええ……(困惑)

 

 

普通に病室入れば良いだろそこ…

 

 

まぁ良いや。入れてあげよう…

 

 

―いやあ悪いね、病室のある階を間違えてしまってね…―

 

 

それより、なんで特殊部隊御用達のラペリングハーネスなんか持ってんの?…って思わず突っ込みたくなったが、こういうのもサプライズも悪くない、いや、さして友人も少ない分、むしろ嬉しい感じもする。

 

 

指揮官同士の関わりなんて余程じゃない限り薄いし…せめて最寄りってもかなり離れてるし接点もない。ドライバー指揮官とは本部時代から兵站にまつわる件で話をしていた事もあり顔見知り。というか同期だ。

 

 

「良いんだ。連絡着いた部下の人形たち以外は誰も来なかったし…当たり前か…はぁ…面目ない…」

 

 

俺は端から見たら基地を投げ出して逃げてきた腰抜けにしか見えないだろう。人形たちは人形たちなりに負い目があるのだろうか。あの時はプロトコルとは言えど、敵の部隊を押さえたり助けられた…。

 

 

―そうか?お前んとこの拠点の監視カメラの映像からだが、あの状況、自分の身を守るのは懸命な判断だったと思うがな。寧ろ、死んだら仲間の思いを無にすることになるし、これはお前の手には戻らなかったと思うぞ?ほら、頼まれたやつだ。これでよかったか?―

 

 

ドライバー指揮官は俺にデータチップの入った入れ物を渡してきた。約束していた物だ。ヘリアンを介して調査に向かっていったドライバー指揮官たちに伝えてほしいとお願いしたんだ。彼と、彼の元で一緒に任務をしている軍の人に、彼の率いる部隊…ああ、大きく巻き込んでるな俺は…

 

 

「そうこれだ…ありがとうドライバー指揮官…!急で悪かった…」

 

 

手渡されて思ったが、確かにそうだ。俺が死んでも、人形たちにはこれの所在は教えてない。いや、直接教えるのは怖かった。

 

 

―良いってことよ。あーそれで…お前の体の具合は?―

 

 

「大したことは無い。かすり傷だよ。でも一応、検査入院で、今週には終わるらしい」

 

 

ドライバー指揮官はそりゃあ良かったな…と安堵したようにジェスチャーを返してくれた。

 

 

―で、その中身についてだが…―

 

 

やはり訊ねてきたか…そうだよな。タイミング的にはどうだろうと、恩人だ。こっちも提出する報告書をまとめる前だし、知っておいてもらった方が今後役立つかもしれない。

 

 

私物として持ってきていた机のノートパソコンに、そのデータチップを挿入し、表示させる。

 

 

「これを見てくれるか?…そのお礼と言ってはなんだけど」

 

 

―それは有り難いな。だが、良いのか?―

 

 

「良いんだ、まだ不確定なことが多いし…」

 

 

そういいつつ、ノートパソコンを操作し、表示させた。

 

 

「たまたま偵察隊が発見してね…それをビデオに記録したものだ…こっちはドローンのカメラが偶然にも捉えた映像で…そしてこれらは…ある人形の不審な行動だ。他にも祈りを捧げている人形も。」

 

 

映像にはIOP製の自律人形がなにやら端末に接続したまま微動だにしていない様子が映っている。

 

 

「人形たちのフリーズなんて先ずあまりに聞いたことがない事象だ。あの大容量でその分の処理もできるコアやメモリが備わっている筈なのに」

 

 

―人形の構造上、プログラムや見聞きした情報から学び、人間の動きを覚えて真似る奴がいてもおかしくない。亡者へ祈りを捧げるやつもいる位だ。…それで?―

 

 

「今見せた人形たちの様子は、最近騒がれてる指揮官不審死事件の起こる直前に確認されたものだよ…この前被害者となった指揮官の基地に職務で向かった際、たまたま見掛けた。でも何時も見る戦術人形のものとは、あまりに妙に感じてね…」

 

 

―そうだったのか…しかし、なんで給湯室なんかに金庫を?いくら硬かろうと、危うくデストロイヤーに丸ごと吹っ飛ばされる所だったぞ?瓦礫の下に押し潰されて行方不明になっててもおかしくなかった―

 

 

「そこしかなかったんだよ…俺も悪手だったと思ってる…だが、狭い分、コーヒーや茶葉を取り出している様にしか見えないだろうって思って…」

 

 

―それでこの日までよく持ったよな…―

 

「まぁ…ね。そうだ、拠点の人形たちを見掛けなかったか?撤退させた子達を再編して、調査に向かわせていたんだが…」

 

 

ドライバー指揮官は身に付けたヘルメットのバイザーに映像を出力して見せてくれた。

 

 

「そんな…」

 

 

無惨なショックのあまり目を覆いたくなった。この前見舞いに来た部下の人形もそこに混ざっている。

 

 

―残念だが……見たところ、コアが酷く損傷している。壊された人形たちはヘリアンの方で回収したというが、アップロードした後に記録されたデータがあった場合、それについては…―

 

「ああ…分かってるさ…」

 

―落ち込むよな。こんな目に遭えば。だがな、自分の身を守ることも、指揮官において時に重要な要素だ。お前が仮に死んでもしたら、コレはお前の手には戻らず、もしかしたらなにも知らない連中の勝手で潰されていたかもしれない。知るべき事実や手掛かりも。お前の部下の思いも…―

 

 

「そう…だな…」

 

 

嫌に煽ってくるな…。

 

でも、確かに…襲ってくる鉄血たちにより証拠が消えるところだった。それが例え鉄血が狙っていたとしてもだ。

 

しかし、これは証拠になるのだろうか。生憎人間というのは全ての情報を知ることなど出来ない。これは断片でしかない。然るべき所なら、もっと分析したりしてるだろうけど。

 

おまけに、部下の人形たちは恐らく事前に記録したり残ったメンタルデータを元に、新たなボディに入れ換えになるのだと容易に想像出来る…となると、何があったのかを説明する必要があるかもしれない…。

 

 

「お前なら…何があったか人形たちに言えるか?」

 

―当然だ。使ってる側の人間がきちんと教えてやらなくてどうするのさ。言わない方こそ無責任にも程がある―

 

 

一般的な指揮官の風貌と比較して、ふざけた外見に似つかわしくない真面目なジェスチャーをしてきたドライバー。やっぱりお前も指揮官なんだなって思う…。

 

 

 

 

 

 

―それで?病院からヘリアンにどう送るんだ?―

 

 

 

「ああ、それならヘリアンからメッセンジャーが…そろそろ来るはず…」

 

 

 

―そうか…じゃあ俺はここいらでおいとまするよ…じゃあまた…―

 

 

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちはぁ♪お加減どうですかぁ~?」

 

 

病室に丈の短いナース服に身を包んだUMP45が入ってきた。

 

 

ドライバーは見てはならないものを見てしまったかのように驚く。

 

 

すると、45はそっと拠点指揮官に近寄る。

 

 

「データチップ、ヘリアンさんから言われてきました…お預かりいたします…」

 

「あ、はい…」

 

すると、拠点指揮官はデータチップをノパソから抜いてカバーにしまい、それを渡す。

 

 

それを受けとり、45はポケットに仕舞い込む。

 

 

「あらあら、窓が開いてるわ。閉めますね~?」

 

 

と45は目を窓に向けるが、そこにドライバーの姿は無かった。ラペリングのロープも片付いていた。

 

 

 

 

…………………………………………………

 

 

 

 

病院の駐車場。

 

 

一号車の鍵を開けてラペリングのロープとハーネスを外して運転席に座る。ドアを閉め、今度は六点式ハーネスを装着するドライバー。

 

 

 

 

 

 

―さて、あの指揮官の処遇も気になるが、基地に戻るか…―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーヘリアンさんとこまで乗せてってよ~しきか~ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声に、思わず六点式ハーネスを着ける手が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

恐る恐るバックミラーを見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な ん と 後 部 座 席 に ア イ ツ (U M P 4 5)が 座 っ て い た 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

t o b e c o n t i n u e d .

 

 

 

 

 

 

 




……ってなわけで今回はここまで。



今回は多機能フォームを使ってみました。如何でしたでしょうか…?



45姉すこすこ。



さてさて、ゲームではヴァルハラコラボが始まりましたね。今回も皆様共々生き残りましょう…(˘ω˘;)



それでは、次回もお楽しみに。










UMP45「君の心に、ブーストファイア!」

今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)

  • 劇中に世界の名車を登場。
  • AR小隊vs404小隊のレース対決。
  • スオミを走らせよう。

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