それでは、どうぞ。
『訓練開始まで後5分です』
訓練施設のアナウンス。
武装した兵士が人形たちと準備エリアに居る。
―よーし、そろそろだ。覚悟はいいな?―
『フーアー!』
そこにいた兵士とは、ドライバーと何時もいる『軍人』。監視席にはドライバーが腰に手を宛てて見守っていた。
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軍人はこの日、ドライバーの基地の演習ルームにてトレーニングを行うための準備を行っている。
ここのところよく来るようになった軍人は、軍の再編に備えてそこでもやっていける様に訓練を積んでおきたいと考えていた。
そこで…
-じゃあ、うちのレンジ使いなよ-
ドライバーの基地にある訓練施設を借りることにした。
「久しぶりに撃つ感じがしてならない…」
-そうか?軍の基地で結構訓練やっていそうだと思っていたんだが-
軍人の体格からすれば怠けている様には感じられなかった。
「実はこの頃、軍の基地では再編で事務仕事とかでバタついてるんだよ…今だにな。上の発表待ち。全く困ったものだよ…」
―再編か…―
以前にも軍の再編の話は聞いていた。
「まだ具体的に配属とかは分からない…だが、任務は継続せよとのお達しが来てる…」
戦後の国家のあり方が変わり、さすれば軍も然り。軍人もその波に飲まれる側の一人だった。本来は軍人も所属している基地にいなければならない筈だが、下々にはどうやら決定権はない。なので、新天地でも仕事ができるように、こうして、射撃訓練でもやって腕を磨いておこうという考えだった。転属先で弾を無駄にする様を晒すのだけは避けたいのだろう。
駄弁りながら屋外射撃場に入る二人。
「にしても、サーキット以外にも有るんだな?」
―驚いたろ?―
今の彼らに緊張感など感じられない。とてもリラックスしている。兵士とレーサーという不思議な構図。所属している人形たちからすると、それはいつもの光景と化していた。
射撃場にはドライバーの基地所属の人形たちの一部も調整のため訪れていたが、少し空いている。どうやらパトロールで出ているそうだ。本日のレンジマスター担当はMP40。
「ドライバーにだってレーサーだったころとかにあるだろ?組織の再編みたいなのって。チームのスポンサーとか、サプライヤーとか変わったり…新入りが入って~とかさ」
ー体制が変わるってか?まぁそういうのは確かにあったかもな……ほら、アサルトライフルの弾薬とスピードリローダーだ。使いなー
ドライバーは棚から持ってきた弾薬の入った箱とリローダーを渡した。ありがと、と軍人は一言礼を言って受けとり、早速スピードリローダーを使って弾を込め始める。
しかし、軍人はふと思った。ドライバーは、訓練をしているのだろうか。車ばかりの彼はその辺どうしているのだろう、と。
「時に、ドライバー」
―何だ?―
「…お前は一体いつ訓練してるんだ?」
それは率直な疑問だった。
ドライバーと行動を共にする『軍人』には射撃訓練やら演習がある。それは、赴いた先で万一E.R.I.Dやらテロリストとの戦闘も当然想定される。しかし、グリフィンはPMC。退役した軍の人だろうとなんだろうと、小火器、せめてハンドガンや護身術くらいの扱いに関する訓練は万一の自衛の為にやっておいて損はない。
となると、ドライバーはどうしているのだろう。
―運転なら外周コースがある、各地の伝説のサーキットのコーナーが備えられててな…かなり鍛えられる―
確かにうねってる箇所もあるし、初心者から上級者からも好まれそうなコースだ。ドライバーの人形たちがドラテクを鍛えるには色々揃いまくっていた。
「そうなのか…じゃなくて。銃の方だよ、銃の」
軍人はアサルトライフルのグリップを持ち、ジェスチャーしてみる。
―銃か…俺は運転してる方が精度に自信があるからな…―
「そりゃあこれまで横乗りして来たから、俺でもわかるぞ?だが、お前いつも銃使わないだろ?黒いヘルメットが襲ってきた時だって…素手だったろ?」
―アイツらは銃で撃ったところで、強力なボディアーマーでバイタルライン…つまりウィークポイントを守っている。致命打を食らわせるのは正直難しい。なら、柔いところを狙うのさ。あの場では対物ライフル使いを連れてきてなかったのもある。全くプロ泣かせだよなァ…あれでよろけてくれたのが幸いだ―
おいおい、効かなかったらどうするつもりだったんだ…
「奴は何者だ…?あれも鉄血か?にしてはなんか違う感じしたけどな…」
黒いボディの黒ヘル。いかしたマシンに乗り込み、ドライバーに荒唐無稽なくらいに憎悪を向けていた。掠れたサークル状のエンブレム。
―さあね…今過去の犯罪データベースと照合してるんだ。結構古いのも見てるから、確かなことがまだ分からない。人形たちにも説明するために、確認することやら、それをまとめねばならないから何とも言えない…ただ、あいつらは鉄血よりも明確な敵対者。かなり装備をもっているみたいだったな―
「今時、過激派やらテロ組織にも、資金力がある連中はボディアーマーやら強化スーツやらを持ってたりするのがトレンドとなってるしな…となると厄介だよな…」
―まあね。下手するとLAVやらIAVやら持ってくる奴等もいる。グリフィンの基本的な戦力だと、そういうの相手だと焼け石に水も良いところだ。下手に武装すると反発もある―
にしては人形たちはよく格闘術で持ったよな…と思う軍人。
「車にかける金、今度から兵器に回すとかどうだ?」
―それも考えたが、大袈裟なものはうちには不要だよ。過ぎたるは猶及ばざるが如し…それに設置するにも配備するにも圧迫する。ASST外の武器は持たせられないわけではないが…オブザーバーにも相談はしてみたがな。下手に重武装しても、今度はまたトレーニングさせなきゃならない―
「じゃあ…車はどうなるんだ?結構あるじゃないか。維持するのだって大変だと思うけど…」
―あの車たちは、クルーガーのとっつぁんやヘリアンたちからの許可をもらった上でのものだ。うちの整備クルーは車でも何でもやるが、流石に順序がある…他所は人員も人形も色々やってるそうだが、後から報告って余程じゃないと結構信頼に響くんだよ…ヘリアンの小言が増える―
「許可ねぇ…」
貸してやりたい所だが、グリフィン本部と軍の決定の範囲でないとトラブルが起こるし、自らの立場的にも不可能。でも何故車ばっかりなのだろうか。グリフィンに売り込んでる自動車メーカーから軍用車やらSUVやら受理しているのは分かるが。あの一号車みたいな軍用とはかけ離れた代物については、どうやって許可を受けたのか。気になるところ。
―あれでもそれなりにタスクこなしたり、苦労があったもんでな。武器と乗り物。そして人形諸君たちも。説明や届け出も大変だった…さぁて、準備は出来たか?―
おっといけない…そうだ、本日は射撃の訓練であることを事を思いだし、軍人は準備を終わらせ、レンジへと向かっていった。
「じゃあ、行ってくるよ」
―おう、楽しみな―
軍人は武器と弾薬を携え、ターゲットのあるブースへと向かっていった。ゴーイングホットの掛け声で使用開始。呼吸を整えて人形たちに混ざり射撃を開始する。
スタンディング、プローン、ニーリング……つまり直立、伏せ撃ち、しゃがみ撃ちでの射撃を行う。ターゲットの狙った位置に命中。
(よっしゃ!俺イケてるぅっ!)
銃を一度下ろしてセーフティを掛けた。
勝ち誇ったように鼻から息を吐く。
―よお軍人、ゼロイン調整は済んでるか?―
「な!?ドライバーお前どこから……あ…」
軍人は驚くも真上のホログラム映像を発生させる小型ドローンを確認する。
「お、驚かすなよ…クレー射撃のクレー的なのかと思ったぞ…」
―ははは、いきなりで済まん!キルハウスをやってみるか?簡易ではあるがな―
キルハウス…確か軍人の故郷である、とある英語圏の軍にはそういう屋内戦等の特殊訓練に使える設備を保有している。ドライバーの基地にはその簡易版があるとのこと。どうやらオブザーバーが進言したそうで、CQBのトレーニング様にとためしに製作してみたそうな。それは面白そうだと、ドライバーの姿が表示されたドローンと共にエリアへ向けて移動。
ドライバーの所に来てる人形ちも使っているらしく、一緒に使わせてあげるとのこと。
すると少し古ぼけた家屋が現れる。
―ようこそ、『風雲オブザーバー城』へ―
「なんだその名前…」
―進言した本人が付けていったんだよ…文句なら奴に言ってやってくれ―
軍人は、一瞬オブザーバーの顔を思い出すと、ここは正直聞くのはやめておこうと判断した。きっと元ネタは東洋の伝説のコメディアンの一人が昔やってたものであることは明白だった。
一先ずドライバーに案内に従い入っていく。
すると戦術人形MP5たちが居た。
「あ、軍人さんですね?こ、こんにちは!」
「こんにちは…ここがその…」
「はい。風雲オブザーバー城ですっ」
…名称は人形たちにも定着していた。
今回はじめて組むが、今後の同行を考えるとそれも悪くないように思えていた。
その場の人員で臨時編成することもあるだろう。
……………………
そして現在に遡る。
『フーアー!』
その如何にもな掛け声と共に人形たちと突入。
よくある重箱の隅を突っつく様なターゲットの配置。
やるものに対する嫌がらせにも思える位置には、なんと棚の上にもターゲットが設置されていた。
「棚の上とか妙な位置にあったな…」
回ってみてからの感想。
やっぱそう思います?と人形たちにも軍人の一言に反応していた。
どうやら意表を突かれる敵に対する為オブザーバーが設置したらしい。扉を開けたら即こんにちは…もよくあったりする。度々変わっており、この前は洋服ダンスの中だったりと目を向けることがなさそうな所に設置されてたり、頭を柔らかくして挑む必要がありそうなものになっていたという。
無論、屋内のトレーニング室のVRでは更にひねっくれた趣向の正しく『風雲オブザーバー城』が多数用意されてるらしい。クリアしたのはオブザーバーただ一人だけらしい。当たり前だ。考案者すらクリア不能とかクソゲーにもほどがある。
「まぁ、確かに、敵対者も巧妙になるから…頭も使うし良いのかなぁ…」
軍人は、巧妙化する脅威に対する免疫付け……と、反省会にて半ば無理矢理納得するしかなかった。にしても、今回は訓練としては面白いと感じていた軍人だった。
そして、軍人帰投後……
―うん、悪くはないぞ…―
ドライバーはあの後、軍人の風雲オブザーバー場での射撃スコアを見て頷く。鉄血のストライカーをひっくり返らせた時の射撃からは見違えている。いや、あれはドライブバイの時だからまぐれでも仕方ないよな…と思えてしまうが、どうやら下手な射手ではなかったようだ。
―さて…―
ドライバーはオブザーバーに送られた書類を取り出した。そこには厳つい顔の面々が揃い、その人物の戦歴等のプロフィールが記されていた。モヒカンとハゲの率が圧倒的に多い中、一名だけ写真がないもの見つけ、迷わず手に取った。その写真がないプロフィールは、なんと戦歴は白紙のまま。
―さぁ、この『名無しのゴースト』は何処へ…―
ドライバーは一先ずオブザーバーにメールを一通送信すると、その書類を仕舞い、金庫にロックを掛けた。
to be continued.
閲覧ありがとうございました。
時期的には雪の降るエリアにお住みの方はどうかお気をつけてくださいませ…(老婆心)
それでは、また次回にご期待ください。
代理人「君の心に、ブーストファイア!」
今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)
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劇中に世界の名車を登場。
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AR小隊vs404小隊のレース対決。
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スオミを走らせよう。