キャラ崩壊注意。
某日。
天候は晴れ。
アスファルト路面の峠の下り道を攻めているグリフィンのドライバー。相変わらずその高い速度を極力キープする走行スタイルは変わらない。その後ろには鉄血の追跡用車両の別仕様と思われるものが三台背後から追い掛けて来ている。
「グリフィンのドライバーめ、ついに ここにも現れたか」
運転席の鉄血人形が一言。まるで悪役のような言われ様である。戦争という状態からすれば、グリフィンは自身たちを脅かす敵なのでそんな風に思われても仕方が無かったりする。しかし、カリーナ曰く、幾らなんでも目の敵にし過ぎではないか、と疑問を持っていた。それは、敵対するという明確な理由が分からないままなのだ。『致命的なエラー』という理由にしても、ここまでやってくるとなると、説明が足りないと感じるのだ。
尚、ドライバーに対しては、代理人は彼を『厄介な存在』と認識し出しており、一部の人形兵たちの私怨の様なものが混ざり、 最早膨張の領域となっていた。
折角自動運転やAIが発達しているのにまだ人間に負けている。
そんな鉄血の彼らには、きっと彼らなりに自尊心が芽生え始めたのかもしれない。
「あいつ、さっきから周辺を悠々と走っていたみたいだぞ。検問を正面から猛スピードで突破していったらしい。門番のダイナゲートたちが、みんな引っくり返ってたそうだ!」
と、話すバックアップとして助手席に座る人形。
「なん…だと…?ていうか、あいつどんだけスピード出してるんだ!?ていうか、いっつも思うけど、こいつホントに人間なの!?」
それに返す運転席に座る人形。
そう…この改良型に乗る二人組は前にドーナツを食べていたあの鉄血人形兵である。残りの二台に乗るのは別の所から応援に来た鉄血の人形兵である。
「でも良かったよね、改良型のボディに換装してもらえるなんて!」
「そりゃ100回も負けてればそうなるだろうな…」
彼女たちの駆る車には『100』と数字が刻まれている。それはドライバーに100回も連敗してたから。しかし、それは彼女たちにとって、一種の良き思い出となりつつあった。
エクスキューショナー(処刑人)が倒された後、それまで身体はマンティコアとの正面衝突で悲惨な状態にあったが、奇跡的にもメモリーチップとメンタルデータが残ってたため、そこから再び人事異動として改良型のボディに移されて受肉することになった。新しいマシンと共に。今度はキチンとブレーキングドリフトを成功させている。
すると、通信が入る。
『 いいか、やつのドラテクに惑わされるな。お前たちは自分の走りを心掛けろ。オーバー!』
誰かからのズレてるようでズレてるようでなさそうな助言。
「…狩人とは、黙って獲物を待つものだ」
通信を切った後、そう一言呟く人形。背後には鉄血マークの四輪車両のライン状のフロントライトがギラリと光る。
そして、その呟いた鉄血人形は、ハイエンドモデルの一つ、通称ハンター。名の通り、趣味は狩猟。
そんな彼女は、まるでサバンナなどに出没する密猟者の様な目をしていた。
「おい待て!あんな犯罪者共と私を一緒にするな!」
すみません…。
………………………………………………
…数時間前…
―さて、諸君…―
いつもの基地の司令室。
M4A1と軍人が司令室に来ていた。
話を切り出したドライバーは、隣で控えていたカリーナに『それでは例のものを…』と伝えると、ホログラム投影装置にある場所の立体MAPを投影させドライバーがある場所をマークし、二人に見せる。
「指揮官、そこはもしかして…?」
―そう。マークした箇所は、SOP iiとAR-15の信号とされるものが確認された位置だ。信号の特徴からして、この二人のものと見て間違いないだろう―
おおー、二人からと声が上がる。
しかし、直後に軍人は不安そうな面持ちで、ドライバーに質問する。
「し…しかしだ、こんな他よりも弾が飛び交いまくってるような所を、一体どう進むつもりだ…?」
ここのエリアは鉄血との交戦が頻繁に起こっていると報告に上がっている。軍人は、出来れば近寄りたくないと考えていた。管轄内であるドライバーとしても、ここが危険であることは理解していた。SOPiiとAR-15は運悪くここに迷い混んでしまっている。結局、回収するならばその真っ只中を進んでいく他無く、軍人はその内情をまとめ提出せねばならない。 グリフィンに協力することを命ぜられ、しかもドライバー達の元にいる以上、やはり相乗りする事になる。
―たしかにこれでは弾幕が激しいな。楽しそうではあるけど…。そこでだ!途中で寄り道し、奴等の通信基地のあるエリアを制圧し、命綱となってる鉄血のネットワーク施設を制圧する事にした。敵さんらは人形部隊と共に動きつつ片付け、そこで、不用心になったところを、空き巣をするが如くサッと忍び込んで統制を断つ。さすれば攻撃も止むはず。でないと、SOPIIとAR-15を回収する側だけでなく、される側も危険だ―
最初の方の『楽しそう』ってどう言うことだよドライバー…軍人は心の中で突っ込んだ。確かに奴からしたら走り甲斐のあるアドベンチャーなステージにしか過ぎないのだろう。ついこの前だって迫撃砲の降り注ぐ中を慌てることなく運転していた程なので、今回もきっと同じ感覚なのかもしれない。
「あの…」
そこで、控えめに挙手したM4。
―はい、M4君―
「指揮官、今回は私が車の運転を代行しましょうか…?」
この瞬間、ドライバーは凍り付いた。
確かに、指揮官に死なれると管轄内の基地スタッフや人形たちは路頭に迷ってしまうし、しかも代行を買って出たのはM4からの厚意と考えるのは、決して理解できないわけではない。まるで父親思いの娘の様な眼差しをするM4にキュンとくる事だろう。
しかし、それでも易々と頼むことが出来ないのには理由がある。作戦だから公私が云々という理由以前。
「えっと…指揮官…?」
―あ、いや…気持ちは嬉しいんだよM4。でも…―
「ドライバー…あんたはしょっちゅう走り回ってるし、今回くらいは彼女に任せても…」
軍人も、指揮官であるドライバーの決定権を尊重しつつ説得しようとする……が。
―軍人、早まるんじゃない―
「え?」
「安心してください!これまでたくさん練習してきましたから!イ○Dで!」
軍人は、寒波入れず伝えてきたM4の発言の最後の部分を聞いて真顔になった。
ん…イ○D?
軍人は一瞬不穏なものを感じ取ったような感覚に見舞われた。なにかの聞き間違いではないか、と。
―イ○Dってそれゲームじゃんか…―
「大丈夫です!秋○雪だってスペシャリストのタイムを出せるようになったんですから!」
自信満々に言うM4。
雪道、つまり滑りやすい路面だってヘッチャラだZE!…とでも言いたいのだろう。そうなると、最早論外だった。恐らくM4も理解してるとは思うが、今回は雪道は走らないし、現地で積雪は無い。というか、ゲームでこれだけ出来るからリアルでも出来ると判断したM4に全力でツッコミを入れたくなる。
「それに、指揮官だってお休みの日とかにSE○A RALLYとかやってましたよね?あれと同じです!」
―あれは単に娯楽目的でやってただけだし!―
どちらもS○GAのゲームじゃないか、と軍人はツッコミを入れようとするが不毛だし話が進まなくなるので、ここは抑えた。
カリーナ曰く、一応しっかりしたドライビングシミュレーターはあるとのこと。
ちなみに、M4自身は基地で身体のメンテを受けた後、カリーナやメカニックたちの手伝いをしてた時はとても意欲的で、そつなくこなしていたため、メカニックたちからもかなり好印象。とても優等生然としていた。
しかし、整備作業中は妙に嬉しそうだったり、カリーナにこっそり頼んでドライバーのオンボード映像を幾度となく再生して、なにか分析してたり。もはや奇行も良いところである。それでも、与えた仕事は無論、的確に行ってくれるので大変助かっている。M4は経験不足を補うために意欲的であるのだとプラスに捉えてあげるべきかもしれないが。それにイ○Dだって、きっとM4の冗談に決まっている…そう軍人は思っていた。
それでもドライバーはゴーサインを出す様子はなく、現地に派遣する人形と共に動くようにとやんわりと伝える。戦闘での効率において、M4A1たちAR小隊の人形の右に出る者は現段階ではそうそう少ないのが理由。これは運転を許可しなかった理由とはまた別。事実を使って欺瞞してる様にも思えるが。
M4は、ご命令なら…とそれを了承する。
―生きて帰ってくれば、チャンスは何れ与えるさ…―
変に勘ぐられないようにドライバーはそう伝える。
「了解。頑張ります!」
その反応にドライバーは、『命拾いした…』と言いたげに胸を撫で下ろす。
―というか誰だ、人形用のVR訓練ファイルにイ○Dをぶち込んだヤツは!―
ドライバーは、思い当たりそうな人物…カリーナを見る。彼女は慌てて口笛を吹きながら目線を反らした。
…やはりお前か。
そして、各々準備して出発。偵察として先にドライバーと共に車を出すことになった。今回彼の車には、膝を抱えさせれば人一人分無理矢理押し込られそうな大形のケースを積載している。中身については『開けてみてからのお楽しみ』とのこと。
今回走る事になるエリアも、担当地域故に知らぬ道ではなかった。そう、今回もドライバーの地の理の内に入る場所。それに作戦となれば、これほどに心強いものはないのもまた事実。セッティングはドライバーがレコードを樹立したときの物らしく、それが一体何のレコードなんだろうかは、軍人はあまり想像しようとはしなかった。
尚、大荷物を入れたりすると重量配分が変わるとドライバーはジェスチャーで伝えていたが、それでもセッティングはそのままで走るつもりらしい。なにか考えがあるのだろうか。軍人は車の故障について懸念して問うが『この程度で壊れるほどヤワではないから安心してくれ』とドライバーは自信を持って返答していた。
基地を出たその途中、どうせ死地を往くのだから、と軍人は揺れる車内でドライバーに質問を投げることに。
「人形って、あんたみたいによく運転するのか?」
ドライバーは『まぁ、するやつはするぞ』とジェスチャーする。現にヘリコプターが出せない時は、ジープや装甲車に乗って移動せざる得ない状況になったりすることはよくあるからだ。途中までヘリ、そこから車…という感じに乗り継いでいるのだという。ドライバーはそんなことを聞いてどうする?みたいなことは言わなかった。
軍人はここで、M4に運転させなかった理由をあえて訊ねてみる。先程、ドライバーがM4が運転すると言った時に固まってしまっていたのがどうしても気がかりだったためだ。察しはつくが、所詮は憶測にしか過ぎない。
―それならば今、ハッキリ教えとこう。特にM4のやつは、AR小隊の中で運転が下手なんだ―
待ってましたとばかりにドライバーはそう伝えてきた。
「そうなのか?お前の言う下手っていうのが、あんまり想像つかないんだが…」
―なら例を挙げよう。峠道でタイヤを路肩の溝に引っ掻けて、そのままスタックさせて立ち往生させるし、インベタの更にインとか言い出して、崖からジャンプさせようとするし…しかも、壁ギリギリを狙っていこうとする。動きもぎこちない。ありゃ昔のテレビ番組のギリギリマ○ターなんかに出したら優勝確実だな!―
「随分とアグレッシヴだな…!?」
疑問は解決した。つまり、単に危なっかしいから運転させなかっただけ。ドライバー曰く、運転してるときのM4A1は、『目がイッてる』とのこと。
―まあ、スコーピオン達とかに比べれば幾分マシな方かもしれない…―
「マシって…もっとひどいのがいるってのか?」
―ああ。先ずスコーピオンだが、あいつは何もない所で車をコカしやがる。弾ばら撒くどころか、部品ばら撒いてる。こちらが何があったか聞くと、片輪走行の練習してた、とか言っててな。あいつはスポーツ走行とスタントの違いが今一つわかっちゃいない!MG(マシンガン)のネゲヴなんてもっとひどいぞ?あいつは車を必ずと言っても良いほど凶器にしやがる…。この前なんて、作戦中に乗った軽乗用車で、敵の装甲車をぶつけて止めようとしたんだぜ?ありゃもう正気の沙汰じゃないよ。装甲車に乗ってた鉄血の装甲人形兵がドン引きしていたくらいだ。しかも、帰ってきたら『あの車ガリ弱い』とか言い出すんだぜ?―
「ドライバー…お前のとこの人形はバラエティ番組の出演者か?」
それについてドライバーは…
―そんなわけ…あ、どうだろうな…あいつら大半が民生品ベースだし…まぁ中には。というか、今時バラエティでもあんな芸はやらせないよ。やっても有料放送くらいだ―
……と返すドライバー。漫画の真似とスタント走行と危険運転。どれもヤバイ。
しかし、軽で装甲車をぶつけて止めようとするのは、流石に有料放送の芸人たちでもやらないのでは…と軍人は思うのだった。
そして…気がつくと、鉄血製の働きアリこと、ダイナゲートたちが控える検問を突破していた。
「今のは何だ!?」
―あれはダイナゲートだな。鉄血の機械だよ。ペットロボットみたいだよな―
軍人の問い掛けに、ドライバーは皮肉を交え、ダイナゲートのことを説明しはじめた。
―たまに民間人が拾って帰ったりする事があるんだが、そこからやつらに人間側の情報を与える事になるから止めてほしいもんだよ―
中身を改造して飼い慣らしたりする司令部もあるらしい。
―奴等は普段はうちの戦術人形のG41にかじられてるか、充電してて寝転がってるかのどっちかだな―
「かじられてるって…。というか、あんなちっこいやつらに検問させてるのか?手抜きも良いところだな…」
―どうやら通信して人形兵と連絡を取って対処していた様だ。それに、数が多いだろ?―
軍人は冷静に思い返す。確かに20機くらい待ち構えていた。
「確かに、多かったような感じがするぞ…何か、みんな引っくり返ってたが…」
恐らく、躊躇うことなくかっ飛ばしてきた車飛び付こうとするのは危険と判断し、避けようとしたらバランスを崩していったのでは…と軍人は推測する。どうみてもそれ以外考え付かない。
―RFの人形だと、対処仕切れず被害を被る事例がしょっちゅうある―
「確かに…押し寄せてきたらそりゃビビるわな…」
―犬嫌いにはたまらないトラップだよ。こういう箇所はよくある。そんときゃ手榴弾投げ込んだり、フルオート可能な銃で掃射するなりするといい。小さいし動きが早いからな。AIMに自信あるならボルトアクションでも弓矢でも使って挑戦しても良いが、正直お勧めはしないよ―
冗談混じりに伝えるドライバー。
「よし、一応、レポートにも書いておこう」
ドライバーは『是非そうしてくれ』、とジェスチャーする。
というか、挑もうとする奴はそう居ないだろう。ドライバーはそのまま車で突っ込んでるが。恐らくは急いでる緊急時では有り得るかもしれないが、こんなあたかも何時ものように突っ切って行けるのは彼くらいなのでは、軍人は思う。
しかし、軍人はもしや…とドライバーに問う。
「…待て、まさかもう激戦区なのか!?」
―そうだが…―
「それを早く言え~!」
……慣れとは怖い。軍人は次第にドライバーのノリに順応しつつあると感じ、なんてことだ…と思わず頭を抱えた。
そしてドライバーは、ダミーたちと共に配置に付いた人形部隊に号令を掛けるべく、通信装置をいじり、ジェスチャーを行った。
―…人形部隊の皆、配置についたか?よーし、作戦開始!―
かくして、人形部隊の皆は拠点の制圧に。ドライバーは軍人を連れてひたすら道を飛ばしていく。人形たちの仕事の早さのお陰か、結局寄り道はしないで済みそうである。
………………………………………………
その頃、SOPiiとAR-15はというと…
「ねぇ、AR-15…」
「どうしたの?また珍しい部品でも見付けた?」
「それもそうだけど…じゃなくて、M4とM16たちのこと。今頃、どうしてるんだろうって…」
心配そうな表情のSOPii。
AR-15は至って冷静にこう返すも、『ていうかその手が持ってるパーツは何だろう…』と一瞬目線が行く。
「そうね…取り合えず、あの先まで行ってから、もう一度M4たちに連絡してみましょう」
「…そうだね!あ…あれ見て…!」
鉄血の追跡車両が通り掛かるのを発見した。どことなく暇そうな様子。
「一度隠れましょう…」
「うん…!」
ここはAR-15に従い、通り過ぎるのを待つ。仮に奪っても、検問でバレてしまい、厄介なことになりかねない。騒動を起こしてはグリフィンや他のAR小隊と合流どころではなくなる。
物陰から様子を伺っていると、鉄血兵が降り、何か話していた。
「お疲れ様。ところで…」
「何~?」
「さっきたまたま南の検問所を見てみたんだ。そうしたら…配備しておいたダイナゲートたちが引っくり返ってたんだ…」
「え?あいつらはいつも呑気に寝転がってるじゃないか。何かの見間違えだろ?」
「それならこんなことで話はしてないさ…」
「お、おう…まさか、破られたのか…!?」
「そうみたいなんだ…。車が通った跡がある。敵は攻撃してくる様子はなかったそうだ。そのまま突っ切って行った楊で…しかも、メモリーを見たら…やたら高い速度で通過してった様で…」
すると、聞いていた鉄血人形兵が、あ…またあいつか…とその正体を察する。
「グリフィンのドライバー…だっけ…」
「そう、そいつだ…困ったもんだよ…」
(指揮官じゃん…)
(指揮官ね…)
こんな所にも出没してるとは。となると、グリフィンの前線がここまで来ている可能性を感じたSOPiiとAR-15は、もしかしたら、タイミングよく出くわして連れ帰ってくれるかもしれない…と思い付く。
「ねぇAR-15…もしさ…M4が運転してきたら…どうする?」
「こっ…怖いこと言わないでよ…!」
こちらが怪我してなければ、運転を変わってあげよう…絶対に。AR-15とSOPiiは誓うのだった。
すると
「ん?撤退?」
「あ、ホントだ。こっちにも来てる…」
「じゃあ帰ろっか。乗ってく?」
「それでは、お言葉に甘えて…」
鉄血達が突如撤収し始めた。
「…あれ?」
「撤退…?」
落ち着くまで様子を伺う。鉄血達の撤退から少し後、その背後から車の排気音が近付いてきた。
一方、ドライバーの車の車内では…
『こちらM4A1。指揮官、各通信拠点を制圧しました』
M4からの通信。人形部隊は拠点の制圧に成功。そこから敵はプログラムに則り、退いていく。
―ご苦労、よくやった!敵は面白いくらい見事に引いていってるぞ―
『それは何よりです!』
「はぁ…やっぱヤバイよドライバー…ふぅ…」
とは言っても、前よりは持ち堪えられている軍人。
―そうか?これでも結構セーブしていた方なんだが―
「本当かよ…」
そして、ドライバーたちの進行方向にはAR-15とSOPiiが見えてきた。
対する向こうも、ドライバーの車が近付いてきたのに気づく。
―よーう、お嬢さんたち―
「あ、見て!あれ指揮官じゃない?」
「指揮官…!」
途端、AR-15とSOPiiは運転席がドライバーであるのを見て胸を撫で下ろす。
―話は後だ。一先ず乗れ。ここを離脱するぞ―
ドライバーの指示に従い、後部座席に乗り込む。やはり彼女たちも六点式は着け慣れている。
「着けました」
「こっちも着けたよ」
ドライバーはそれに了承したとジェスチャーを送り、バックさせ、360°(サブロク)ターンを決めて前進させる。
「ひゃあっ!?」
ターンの時の衝撃で、AR-15から声が漏れる。
「指揮官お見事~!」
その隣で喜ぶSOPii。
「SOPii!あんた今の怖くないの…?」
「全然!」
「嘘でしょ…?指揮官…どうか安全運転で…お願いします…」
AR-15からのお願いに、ドライバーは『任せておけ』と親指を突き立て返す。軍人は来た道とは違う所を通っていくことに気付いて、ドライバーに訊ねた。
「どこへ行く気だ?」
―ルート変更だ。『例のプール』に向かう―
後部座席のAR-15とSOPiiはこの発言に疑問符を上げている。こんな時期にプールだなんて、いきなり何を言い出すんだろう?と。
―ああ…そうそう…―
ドライバーは間を置き…
―今通信するのはやめておけよ。傍受をされている可能性があるからな―
「「!?」」
「ちょっと待て、通信拠点は潰したんだよな?」
―そうだが、敵は、まだ全部撤収してるわけじゃない。あれはほんの一部だ。どこかでハイエンドモデルか電子戦タイプか何処かに潜んでる可能性がある―
そして、コンソールをいじくる。すると、モニターからノイズ音を検知していると警告が出る。
「盗聴ノイズか…?」
―かなり広い周波帯をカバーしてる。これ誰かが下ネタをぶっ放してたら、鉄血に丸聞こえになるところだったな。やつらに下ネタを解するだけの知能と羞恥心があればの話だが…―
ドライバーはそうジェスチャーして車を走らせていった。
……
一方。
「聞こえないな~」
「聞こえませんね~」
ハンターとその部下が傍受を試みていた。通信拠点が制圧され、感度が落ちているのに気付き、部下たちと立て直しを図ろうとしていた。一先ず電子戦で情報を集めたりしているが、中々傍受等ができない。すると、ある周波数にヒットした。
『なぁ…今日…ツ』
「ん?」
ハンターは何かの会話音声らしきものを拾う。
さらに調節し『筒抜けだぞ?』と一言告げてやろうとした時。
『なぁ...何色のパンツはいてんの?』
男性の声。かなりねっとりしている。
「うわああああ!?」
「落ち着け!ただのイタズラだ。全くタチが悪い…」
というか、この時代になってもまだその様なイタズラが行われてるなんて…とハンターは思うのだった。
「ハンターさん、どうしましょう…」
(困った。周りの部下はそんなもの穿いてなさそうなのばかりじゃないか。私も…)
ハンター率いる部隊一同は、まるで刑事ドラマのネゴシエーターが対応に困っている時の様な状態にあった。
しかし、遊びに付き合ってはいられない。なのでハンターは無視して切ろうとしたその時だった。
『パンツの色を教えてくれたら、ぽまいらの探してるやつの居場所を教えてやっても良いお』
「なん……だと……?」
この時、ハンターたちは唐突に選択を迫られた。嘘でも良いから繋いで何色か教え、『探しているやつ』の居場所の情報を引き出す。しかし、もしこれが罠なら今後自分達の無線にあの変態がなにかといたずら無線をしてくる悪循環ができてしまう。そうなれば「作戦中に堂々と変態の戯れ言に付き合った」と他のハイエンドモデルから軽蔑されかねない。しかし、『好きなことをして生きていく精神(メンタル)』のハンターには、狩りのためならなんでもするズラ…と貪欲さがぶつかっていた。自分の名誉を引き換えに貪欲になるか、または違う方法を模索するか…
(くそっ…これなら代理人からド○キンのビデオだけでなく、こういうイタズラへの対処マニュアルも貰ってくるべきだったな…しかし…現にこれはどうにかしないと…)
ハンターは思考の迷路にハマってしまう。好きなことして生きていくには代償も必要だ。考えるのはバカらしい。そこでついに答えを出した。
「光沢のある黒だっ…………こ、これでいいか…?」
と、咄嗟に思い付いた色を応える。
すると…
『形状は?』
「…は?」
『だから、どんなタイプ穿いてるん?』
次なる質問が帰ってきた。
「おい、言われた通り色を答えたじゃないか!早くM4A1の位置を教えろ!この変態!!」
顔を赤くして罵倒するハンター。取り乱しすぎである。
『ぐふふふ―ぐふふふ――』
それを嘲笑うかのように、気味の悪い笑い声が妖しく響く。
昔こんな迷惑電話とか流行ったよね…
コミカル(?)な面が強いですけど、鉄血もグリフィンも一応大真面目ですww
Vol.6に続きます。
今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)
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劇中に世界の名車を登場。
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AR小隊vs404小隊のレース対決。
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スオミを走らせよう。