いつもの基地から、M16の信号が確認された位置へ向かう最中。
「うおー雪だぁぁ!」
「途中の拠点でスパイクタイヤ履かせて良かった~!イェッフー!」
雪道を走る100の数字が刻まれた鉄血の追跡車両。結局またもや生き延び、なんとか隠れつつ逃げ帰った。鉄血の基地で身体を修復し、この前と同じ改良型車両のスペアに乗って来ている。今回は、それに雪道用のスパイクを途中の拠点で履かせ、走れるように対応させていた。
とあるハイエンドモデルから、雪道の練習用として、またとあるラリードライバーのオンボード映像などのデータを貰い、学習を重ねて来ている。
その前方では…
「イージーレフト、オーバーライト、200、ミディアムレフト、イージーライト――」
軍人は助手席で走行中の道のインフォメーションをドライバー伝えていた。まるでコ・ドライバーである。
ドライバーは黙々とステアを握り、攻めていく。やはりまた追われていた。彼からすれば遊び相手も良いところ。しかし、鉄血の100との追い掛けっこの最中でも、手強くなりつつあるのは承知の上。しかし、やはり鉄血側は少し覚束ないところも未だにある様で、ドライバーに距離を離されつつある。
しかし…
ドライバーの車は道路脇のフカフカに雪の積もったところを乗り上げて、咄嗟に減速。凍結してるのかスピンしかけつつも、なんとか止まった。幸い車は壊れることはなく、好調にアイドリングしている。
ドライバーは軍人を見た。彼は別に怒ったり蔑んだりはせず、軍人に貸したペースノート代わりのタブレットを冷静に確認している。その背後から100の追跡車両も停車した。人形兵たちがようやく捕まえた…と、勝利を確信たのか、ほくそ笑んでいる。
「すまないドライバー、一行飛ばしてしまった…」
刹那、ドライバーは背後から何かを感じた。それは鉄血の気配以外のものであり、彼は軍人に向け、『静かに…何か聞こえる』とジェスチャーした。
「え?なんだ?」
軍人は疑問符を上げつつ、ジェスチャー通りに耳を済ませた。
…すると、なにかがバリバリと割ける音が近づいてきていた。それが何か分かった途端、ドライバーはシフトを入れ直し…
―急ごう―
ドライバーはそうジェスチャーして車を発進させた。
地面には大きな裂け目が走っている。それは段々と大きくなり、広がっていく。
何と、ここは凍った湖の上。
先程までドライバーたち湖沿いの道を飛ばしてしていたのだった。
先程の軍人の読み飛ばしにより道を外れ、凍った湖の上に来てしまった。ドライバーは、一先ず水没から逃れるため、湖の上を飛ばしていく。
鉄血兵たちは拘束具を出そうとしていた矢先だった。急発進していくドライバーに驚く。
「あ、また逃げた!?」
「…あれ?…ん?ねえちょっと…」
鉄血兵たちが見ると、地面の裂け目に囲まれている。
「あ…ま、まずいよ、私らも逃げよう!車を出して!」
「わかった!」
アクセルを踏み込み発進。さらに後から続いてやって来た増援のスノーモービルに乗った鉄血兵たちも、慌てて湖から退散していく。
だが、走り出したタイミング的にドライバーの車と距離に差が出来てしまっており、中々追い付けない。スパイクタイヤをつけても、やはりここは氷の上。思ったようには中々追い付けなかった。
「うわああ!?」
「ちょ、ちょっと!?」
「沈むぅぅ!!?」
「メインブースターがイカれただと!?」
スパイクタイヤの恩恵か100の車は、それでも比較的安定して迫る割れ目から逃げているが、後ろを見ると、増援のスノーモービルたちが次々と湖に水没していくのが見えた。
というか、メインブースターなんてものは彼らのスノーモービルには付いてない。もしこれが浮遊型の乗り物なら話は変わるだろうが。
「えええ!?皆落ちてるよ!?」
「おのれー!グリフィンのドライバー!!アンタ今私らに何をしたァァァ!!?」
思わず叫ぶ運転席の人形。
ドライバーは何もしていない。
叫んだ直後、割れたところから100の車も足が取られ、そこから飲み込まれていった。
「ああああ!?」
「溺れるぅ!溺れるぅ!?」
自然とは何時の時代も侮れないものだ。
鉄血たちを尻目に、ドライバーの車はそのまま登れそうな所を探しつつ走っている。だが背後には氷面の割れ目が迫る。
そして、迫り来る割れ目とのレース中、ついに登れそうな所を見付けた。
しかも、待ち合わせポイントまであとわずか。
―なーんだ軍人、近道してほしかったんなら、早くそう言ってくれよ!はっはっは!―
「わりとマジで間違えたんだけど…」
―…ええ!?…ま、まあ結果オーライだよ!水没しなければな…―
目の前はちょうどジャンプ台のようになっている。
―お、良いところ見付けた。ここから陸地へ戻るぞ―
「おい、ジャンプ台みたいになってるところか!?マジかよ!?」
その頃……
「降ってきたな…」
私、戦術人形M16A1は潜伏先のシェルター付近に待機していた。と言っても、辛うじての補給地点として立ち寄ったところだが。グリフィンに通信も繋がったので、合流地点としてここを指定した。それまで凌げる物資もある…。SOPiiとAR-15も無事との事だ。正直ホッとしている。
M4たちから聞いたが、皆が待ってくれている。生き延び、迎えと合流せねばならないな。
「はーっ」
息を吐くと、タバコを吹かしたみたいに真っ白。こういう時はM4たちと雪だるまとか、かまくらとか作る訓練をして…そこでのんびり冬景色を楽しみつつ呑むのも悪くないよなぁ…日本の鍋料理もいいな…うん。
っておい、誰だ今サボりたいだけだろとか思ったやつは!
…ははは、まさかな…。
リアルタイムでそんなバラエティ番組の後付けの天の声があるわけじゃあるまいし…ははは…
「…ん?」
突如、何やらやかましい音が近づいてきている事に気付き、現実に引き戻される。私は、ふとその方向を見る。
何かが雪の塊に乗り上げて飛んできた。
「………うおっ!!?」
それは頭上を飛び越えて行った。私は咄嗟にしゃがんで避けた。一方、飛び越えて行った『それ』は見事に着地し、こちらにクルリと向いた。私は咄嗟に銃を向け、敵味方の判別をする。
『それ』は雪まみれだが、グリフィンのマークとカラーリングをしていた車だった。
私は察した。
このカラーリング、そしてこの軍用車ではなくラリーカーみたいなデカいフェンダーにリアスポ・・・
オマケにこのバリバリとやかましいく響き渡る排気音・・・
隠す気なんて更々ない登場の仕方……
間違いねえ……
あいつだ……
ここで、私はそのクルマに向けて呼び掛けることにした。
「し、指揮官か?」
直後、ドアを開け、手をヒラヒラさせるヘルメットの男……
私は確信して、銃口を下げたんだ……
そうさ……
やはりあいつ(ドライバー)の車だったのさ……
………………………………………………
数時間前。
基地の司令室。
そこにはドライバーと軍人。戦術人形のM4A1とSOPii、AR-15が揃っていた。
AR小隊の未帰還メンバーは、残すところM16A1だけとなった。先程基地に向けて連絡があり、そこを逆探知して座標は特定し、後は迎えに行くだけなのだが…
問題が生じてしまっていた。
その問題とは、雪に足を取られる事であった。天気予報を見ると、現地はかなり積もっているという。おまけに、そう言うところは決まって凍結路面でのスリップやら、タイヤがはまって動かなくなる(スタック)の可能性がある。『雪国あるある』とドライバーは皆に説明していた。
そこで、ドライバーは、途中△※地区の最寄りのグリフィンの拠点に寄り、雪用のタイヤに履き替え、そこから、潜伏するM16を迎えに行く、ということが決定した。ヘリアン曰く、グリフィンの輸送班の運転手でも、スタックやらスリップに見舞われることが頻発する地域のため、ここは素直に、ドライバーの運転技術と経験と見識、そして桁外れの度胸などを踏まえて総合的に判断され、結論として彼に委ねる事になったという。
今回はサポートとしてAR小隊も同行。軍人は無論、軍からの周辺調査の任務の兼もあるため、ドライバーのクルマに同乗する。尚、この前の任務の報告により、不用意に身元不明のロボット(ダイナゲート)を拾ってこないように、と、広告を出してもらえるようになった。今朝のTVニュースでも、それに纏わる特集が取り上げられている。民間から回収して無力化したダイナゲートが見本としてテレビに映っていた。これにはドライバーもこれで厄介なのが減る、と安心している様だった。
現在ドライバーたちは出発するに当たっての打ち合わせの最中であった。
―現在、M16の所在地は、雪が降り積もる△※地区の補給地点にいると確認されている―
「そうなると…車で向かうならば、スパイクタイヤかスタッドレスタイヤが必要ですね」
―そうだな、M4。他にも必要なものがある。さて、それは何だ?―
「えーっと…不凍液です!オイルが凍るとラジエーターの細菅が破裂します」
―正解だ―
「M4、なんだか楽しそうだね?」
「めっちゃ目が輝いてるわよ…?」
「ふぇ!?そ、そう…?」
照れるM4。
―よし、最後に。不凍液使用の際は何に気を付けなければならない?―
「はい、不凍液は濃度の調節に気を付けないと、オーバーヒートをおこしたりして故障します。しかも、原料のエチレングリコールは毒性があり、下水や川に流せません。流すと環境汚染になり法的にもアウトです。おまけに人体にも毒なので、9A91やP7の手の届かない所に置いておかないと危険です。いろんな意味で」
ドライバーは結構。ここまでにしておくか、とオーケーサインを出した。SOPiiとAR-15は「流石は隊長~」と軽く拍手している。しかし最後の部分には不穏さを感じさせる。P7はいたずら好き。では前者の9A91は?と軍人がドライバーに訊ねるが、彼は『聞かない方が良い…』と返した。
ちなみに不凍液は寒冷地向けの車だと濃い目に入れられている。特に△※地区は氷点下など日常であり、付近の拠点の車両などは当たり前の様に調節されている。
M4にこんな質問をしていたその意味は…
―AR小隊は俺の車の予備を貸す。それに乗って付いてきてくれ。M4A1、運転を頼む―
そのジェスチャーの後、SOPiiとAR-15の背中が一瞬で凍りついてしまう。二人は、そのままではマズイ!と声を上げてきた。
「指揮官!?ちょっと待って!?」
「ほ、本当にM4に運転させるつもりなの!?」
「あら?私が運転がそんなに嫌だったかしら?」
二人の発言に、ちょっとだけむくれるM4。
「いやいや、そういう意味じゃないよ!?そういう意味じゃないけど…ねぇ?」
「ええ…。ねえM4、どうか早まらないで?私たちもいるから…ね?」
AR-15とSOPiiは、M4の運転と聞き、青ざめる。何とかごまかしつつ、『運転なら私たちでも出来るから』と、要するにM4A1から運転を変わろうとするも……
「安心して!これでも練習してきたから!………」
「イ○Dで、とかは無しよ?」
AR-15が最後の部分を言い当ててみせた。
「なんで分かったの!?」
「あなたいつもそう言ってたじゃない。秋○雪をスペシャリストのタイムで走れるからって、現実のドライビングはゲームみたいにそう簡単にはいかないものなのよ?そうですよね、指揮官!」
AR-15はM4のことをよく知っているらしい。流石はAR小隊、互いをよく知っているんだな…と、軍人はその点については感心している。
そして、AR-15の言い分は言えていた。ドライバーはシムも現実もやり込んでるためか、そのギャップは確かにあることを身に染みて理解していたからだ。
―ああ……―
ドライバーは頷いた。
そこで、コンパクトディスクの収まるプラスチックのケースを手渡した。今回の練習教材はイ○Dではなく、ドライバーがM4に貸していたものだった。
これは帰還後に書類仕事をM4が手伝っていた時、彼女の練習用にと思い、ドライバーがご褒美として、棚から取り出しそのまま貸与したそうである。
「こ、これは…?」
「なにこれ…?」
「ドライバー…これって…」
それを手に取るAR-15とSOPii、そして軍人が見ると、なにやらそのコンパクトディスクに収められている内容のタイトルが刻まれていた。それは……
"W○C 7"
この公式ラリーシムのタイトルを見て、AR-15とSOPiiは「お?」と一言声を上げ、少しはマシになったのかも、と多少期待するが、そこで軍人は何かを懸念したのか、AR-15とSOPiiに待ったを掛け、ドライバーに問い掛ける。
「安心するのは早いぞ二人とも。ドライバー、中身を開けてもいいか?」
それに対して、どうぞ、とドライバーはジェスチャーで返す。恐る恐るケースを開く。
その中身のCDを見て驚愕。ドライバーにそのまま見せる
そして、それを見たドライバーはフリーズしてしまった。ヘルメット越しにでもわかるくらいのリアクションである。
中身のCDには、ある別のタイトルが刻まれていたのだ。
そのタイトルは……
" バーンア○ト パラダイス "
友達にゲーム貸した時あるある(ない…?)
そして私は住んでる所ゆえか、あまり雪道の走行経験あまりないので、そこは流石に調べたりしてます…
(間違えとかあったらごめんなさい…)
さて、ついにM4A1が運転解禁されましたww
果たして、無事に雪の△※地区を走破し、M16A1の元へ辿り着けるのか……
そして、イントゥルーダーに出番はあるのか…
次のお話をお楽しみに!
M4A1「Don't Miss it...!(ネイティブ)」
今後、【戦場の走り方】内で見てみたいものは?(もしかしたら反映されるかもしれません)
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劇中に世界の名車を登場。
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AR小隊vs404小隊のレース対決。
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スオミを走らせよう。