本編はもうちょっと待ってください…。
番外編:神罰への反逆
0083 11月13日
「…やっぱさぁ…隊長。これ正気じゃねえと思うんだわ。」
押し留めいていた物がついこぼれ出た様な言葉がデニスの口から出てきた。
「まぁ普通に考えればそうなんだけど、今の状況が普通じゃないし何よりこれしか手がない。」
そうこともなげに返すのはデルタ中隊きっての射撃のエキスパート、極まった変態トップ3第2位(本人は否定)のアランだった。
「いやまぁそりゃそうですけどね?いったい誰がコロニー落とされる事を前提とした地対大気圏外狙撃用タングステン杭発射機構なんかマジで開発するんですか。」
「うちの基地の連中に決まってるだろ。」
様々な兵器開発、兵科研究の最前線の一つのオーガスタ基地では過去凄惨な被害を出したコロニー落としの対策を勿論検討した。
ジオン残党が確実な勝利を狙うとするならば初期のギレン・ザビが取った手法を再び行うしかあるまい。すなわちジャブローにコロニーを落とすという悪夢の再演である。
勿論それが行われる可能性があるのなら対策を行わなければならない。だが前提条件がおかしいのだ。なにしろ宇宙から気象条件が良ければ落ちてくる様が見える程の質量弾を落とされるのだ。無論予防、警戒しか出来ることはない。
だが人は安心を求めたがるものである。彼等ならば…と希望を背負わされる生贄がいなければいけなかった。故に彼等は理解の埒外にある様な装備を渡されたのだ。
設定された条件は迅速に移動、展開可能な対コロニー用高射砲を用い50万分の1の縮尺でクレーターが辛うじて見える程度の被害にする事。
しかし結局の所地上からの確実な破壊は限りなく不可能に近いという結論が出た。
そう限りなくである、絶対では無い。
ではその条件とは?一体究極の質量兵器と言っても過言ではないコロニー落としを妨げ撃ち砕く武装とは?
MS搭載式対コロニー用多段薬室型600mmタングステン杭発射機構 通称「バベルの塔」
MSを発射機構の一部に組み込む人の英知が作り上げた神の怒りを砕く化け物である。
正式名称だけでキチガイじみた一品である事は察していただけると思う。ではそのバベルの塔がもしかしたらコロニーを破壊出来るかも知れない、となる条件はなんなのか
コロニーの質量40%以上を既に喪失させた状態で射程ギリギリの大気圏突入前のタイミングで
コロニーの真下から杭を撃ち込む事である。
賢明な読者諸兄ならばお分かりだろう。不可能だと。だがその不可能を可能にするかも知れない部隊があったら、装備を渡すだけ渡してみたくはないか?その結果がこれである。
対コロニー用600mmタングステン杭使用型高射砲 通称「バベルの塔」
MSを発射機構の一部に組み込む人の英知が作り上げた神の怒りを砕く化け物である。
「ですねえ…砲手?」
「やめてくれよ…失敗しても成功してもダッシュで逃げなきゃいけない役なんだから。」
「にしてもネーミングセンス悪すぎるでしょ…天から降ってくるものは神様の意志だ、って言うのをうるせえ死ねって言うためにバベルなんてコードネームつけて…。」
「まぁやるだけやるさ。
…やっとこさ戦争が終わったんだ。終わったらバカンスなんだからサクッと終わらせてくるさ。」
「ご武運を、隊長殿。」
「さてと…なるべくちっちゃくなっててくれよ…。出来ればリル基準の微塵切りくらいが丁度いいんだけどな…。」
宇宙からコロニーが降ってくるのは3度目になるだろうか。そうあまりよろしくない事を考えながら目の前の現実を直視する。
教官達は上手くやったみたいだ。ヘッドセットからは隊長達がコロニー内部から核を起動させてバラバラにしようとしたらしい。だが妨害が酷かったらしく3分の1しか切り離せなかったらしい。
それにゴーグルハゲがソーラシステムを使ったらしいがやはり無理だった。まるで落ちてくる運命は変えられないみたいに。
だが教官の読みは恐ろしいほどに当たった。首脳部は満場一致でジャブローを狙うと予想をした。当然だ、誰だって敵の本拠地を一瞬で壊滅出来る武器が手に入ったら迷わずそこに向けるだろう。
だが教官は穀倉地帯を狙うと言って秘密裏に僕をここに向けた。
その読みは大当たりって感じだ。僕は今コロニーの真下にいられる。
「やっぱり残ってるな…だけど大分無くなってるな。これなら直撃させればいけるか…?」
つい独り言が口から溢れる。
「やっぱやだなぁ…何万人もの命を背負うなんて…。あー…考えていいのは晩飯の献立だけにしよう。」
『隊長、予定時刻6分前です。』
ホアの声が射撃予定時刻が迫っている事を告げる。
マニュアル通りに待機させていたシステムを起動していく。
「ありがとうホア。
…射撃姿勢、クリア。
各機関部連結開始…クリア。
弾頭装填…、クリア
炸薬装薬開始開始…クリア。
照準補正システムと同期開始…、」
『…隊長。』
「どうしたんだいホア?後は同期させればいつでも撃てるよ?」
『もちろん分かっています。…その…こんなこと言うのは侮辱と取られてしまうかもしれませんが…』
彼女は言うか言うまいか迷いつつも意を決した様子で次の言葉を口にした。
『どうか失敗なさったとしてもご自分を責めないでくださいね。』
「…そりゃまたどうして?」
呆気にとられた声が出てしまう。やる前から失敗の事を考えてどうすると言うのだろう。
『元々1人で最終防衛ラインを担うことがおかしいのです。貴方方三人は平然と担ってしまいますが、それはおかしいことなんです。』
『ですから、死なない事だけを考えて下さい。私からの一生のお願いです…!』
そう伝える彼女の声音は本当に耐えられないと悲鳴を振り絞って声にしたかの様で、つい口から慰めの様なよく分からない釈明が飛び出した。
「…有り難いけど、そんなワガママを言って良い人間じゃないんだ。」
「僕の手はドス黒いんだ。だから、汚れてない人の分まで戦わなければいけないって僕自身が決めたんだ。」
「僕は死ぬまで戦うよ。殺して来た人達の分まで、その人たちの恨みを背負って生きるさ。」
「だから、奴らが神様気取りで振らせてきた天罰もどきは絶対止める。」
「僕の矜持にかけて。」
「やっぱり射程に入るとでかいなぁ…。」
薄もやが掛かった様な対象が見える。倍率を上げなくても十分に確認出来ると言う事実はそれの巨大さを否が応でも思い知らせてくる。
「まぁやることは1つだ。」
そんなことは関係ないと射撃姿勢を取ったジムスナイパーカスタムを飲み込んだ「バベル」はその銃口を天に向けた。
銃身全長106m、
薬室数4つ、
使用炸薬量50kg×4、
弾頭重量8000g、
有効射程4800m
恐らく人類史という範疇で見ても最長の狙撃となるだろう。なにしろ成層圏の向こう側を狙うのだから。
「そこだ…!」
スーパーコンピュータのアシスト、自身の腕を信じて狙いをつける
「…砕けろ!」
神罰に向かって今、引き金が絞られた。
果たして結果はどうなったのかは読者の皆様方にお任せします。
更新の感覚が空くなら
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時系列順で各戦争のイベントだけ抜き出せ
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時系列関係ないからMS開発の部分書け
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とりあえず続きをだな…?