いずれ真理へと至る王の物語   作:Suspicion

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今回は日常回です
戦闘無しです



触れ合う温もり、抱く矜持

「おーい、瑞稀様!買い出しかい?良い肉が入ったんだ、見てっておくれよ!」

 

「おばちゃん、ちなみに何の肉だ?前はそう言ってヘルハウンドの肉を売り付けられたからな。あれは不味かった、パサついて食えたもんじゃない」

 

「悪かったって!ありゃ私も卸売りの奴等に騙されたんだよ!でも、今回は大丈夫だよ!ベヒモスの肉さ!うちの旦那が仕留めてきたのを私が捌いたんだよ!安くしとくよ?買ってっておくれよ!」

 

「…分かったよ、買ってくよ。またパチもんだったら怒るからな?」

 

賑やかな市場を、背中に赤い逆十字の紋章の入った黒いコートを着た瑞稀が、夕飯の買い出しに来ていた

市場の者達は瑞稀を見付けると皆片っ端から声をかけていた

 

「瑞稀様!こっちも見てってくれ!今日はリヴァイアサンが入荷したんだ!こいつぁ旨いぜ!生で良し!焼いても良し!何しても旨い!」

 

「ほう、珍しいな、リヴァイアサンが入荷するなんて。よし!貰おう!」

 

「ありがとよ!またご贔屓に!」

 

「瑞稀様!食後のデザートに、果物なんて良いんじゃないのかい?買っておくれよ!」

 

「だぁめ!瑞稀様?食後のデザートはやっぱりケーキよね?何なら…私と二人で…食べさせ合いなんて如何?」

 

「色仕掛けなんて汚いよ!?」

 

喧騒に包まれながら瑞稀は買い物を終え、帰る時には両手に荷物がいっぱいになっていた

 

(…買い過ぎじゃろ…誰がそんなに食うんじゃ…)

 

天空剣は呆れ果てていた

瑞稀に買い出しに行かせると毎回、市場の連中に押し売りされまくり、とんでもない量になる

 

「みんな熱心に言って来るもんだから、つい…」

 

瑞稀が魔王になり、内政を取り仕切る事になり、早半年

瑞稀はまず、内政を執り行うに当たり、現状を知るために魔界の端から端まで自ら徒歩で視察した

そこで会った人々、一人一人に声をかけ、相談に乗ったり、雑談に興じたり、はたまた魔王への不満不平を一つ一つ丁寧に聞いて回った

結果魔界の住人達は瑞稀に親しみを抱き、何でも話す様になった

視察が終わり、瑞稀が内政に取り組むと今まで放置されていた様々な問題を解決していった

 

病院などの医療関係の技術、機器不足など解消

義務教育の教育体制の強化、貧民層への支援強化

道路の整備や老朽化していた工業施設の改修などのインフラ整備

そして瑞稀が一番力を入れたのが犯罪の取り締まりだった

今までは、力こそ全てであり、強い者が何もかも好き勝手にして、元より取り締まる為の法が無いということもあり、魔界は完全に文字通りの無法地帯だった

特に性犯罪が後を立たず、魔界の少女は体を成長させるための魔素が豊富な為、成長が早く、瑞稀が聞き込みをした結果、十代で強姦された事が無い女性は1人も居なかったほどである

瑞稀はその現状に、それを良しとしていた魔王達に激しい怒りを覚えた(バロムは今まで内政を行っていたということもあり、1週間文句を言われ続けた)

瑞稀はこの状況を打開するべく4つの法を作った

 

同胞を害する者、死して償うべし

同意無き性行為に及ぶ者、死して償うべし

秩序を乱し、魔界の平穏を脅かす者、死して償うべし

これらの裁決は魔王・瑞稀の名の下に断罪する

 

これらの政策にて魔界はかつてないほどに平穏を謳歌していた

民衆は瑞稀を魔王史上、最高の賢王と讃えた

そして瑞稀は、視察を完全に終えた今も、1日に1度、街に散歩と称して顔を出していた

街行く人々は、老若男女問わず瑞稀を見掛けると、話し掛け、時には人生相談をしたり、世間話をしたり、まるで家族の様に、瑞稀に接している

 

瑞稀も魔界の住人達を本当の家族の様に思っていた

人間達に裏切られ、見捨てられ、何もかも信用出来なくなっていた自分を、暖かく迎え、受け入れてくれた魔界を気付けば、心から愛していた

魔王として、彼等を護れる自分を誇りに思っていた

自らの全てを賭けて、魔界を護る覚悟を決めていた

 

「みずきさま~!ばいばぁい!またね!」

 

「はい、ばいばい。気を付けて帰るんだぞ」

 

学校帰りの子供達と挨拶をしながら夕暮れ時、魔王は城に帰っていく…

その胸に、揺るぎない王の矜持を抱きながら…

 




魔界のみんなが大好き!魔界印の瑞稀様!
魔界の住人に大人気です。本人も精一杯内政に精を出してます
もしかすると人界に居た頃よりやる気になってるかも?



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