いずれ真理へと至る王の物語   作:Suspicion

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新たな動乱の始まりです
天使と悪魔(魔族)の宿命の戦いが始まろうとしています!


正義=虐殺、世界の悪=魔王の正義

 

魔王城は今、騒然としていた

先日、天界の長、大天使長が代替わりした

そして新たな大天使長は魔界の辺境にヘブンズゲート、天界からの転移門を出現させ、数百の天使を送り込み近くの村を襲い村民は皆殺しにしたのだ

その報告を受けた魔王達は狼狽えていた

新たな大天使長は、何を考えているのか

確かに、天界と魔界は数万年にも及ぶ冷戦状態にあったが、今までの大天使長は別段魔界を攻める事などしなかった

魔王達はここに至り、天界と戦争に乗り出す事を尻込みしているのだ。一部例外を除いて…

 

「……」

 

騒ぎ立てる魔王の中で1人、一言も口を開く事も無く無言の憤怒を撒き散らす瑞稀

…瑞稀に気付き、魔王の1人が声をかける

 

「新入り、気持ちは分かるが…早まった事はすんじゃねえぞ。今回の件、ほぼ間違いなく神界の絶対神が一枚噛んでる。天界だけでもやべえのに、神界まで相手にしたら俺らの命がいくつあっても足りゃあしねえ」

 

その言葉に瑞稀の理性が吹き飛んだ

魔力を乗せた拳打を床に叩き込む。床全体にヒビが走り、直接叩き込んだ場所は小さなクレーターが出来ていた

 

「貴様ら…それでも魔王か?魔王たる者が揃いも揃って天使ごときに怯え、神々に頭を垂れ、同胞が理不尽に殺されても騒ぎ立てるばかりで報復すら出来ない。情けない事この上無い。俺は天界のクズ共を決して許さぬ。一切の慈悲も無く狩り尽くしてやる。俺は明日、天界に攻め込む。俺に続く気概がある魔王だけついてこい」

 

瑞稀はそう宣言すると静かに広間を後にし、魔王城最上階、メルフェレスがいる謁見の間に天界進軍の進言をするために向かう

…そんな瑞稀に続く者がいた

バロム、刻龍、斬鉄、セシルの4人と瑞稀が従える魔王軍だ

 

「瑞稀様、我等狂嵐魔王軍、どこまでも御身と共に」

 

「私も行くわ。私達魔王を虚仮にされて黙っていられないわ」

 

セシルは魔王序列3位の中でも、かつては斬鉄に次ぐ強さを誇り、現最強と言われている

魔界での二つ名を、蹂躙暴殺の嬢王

他の世界では、その非常に好戦的な性格と、強者との戦いを嬉々として受け入れ、戦場でも崩さぬ微笑みから、デストロイスマイルとも呼ばれている

 

「ならば続け。我等魔王に喧嘩を売ればどうなるのか、天界のクズ共と、その後ろで視ている愚かな神々に思い知らせてやるぞ」

 

瑞稀もまた好戦的な笑みを浮かべ魔王軍を焚き付ける

 

「「はっ!!この身は王の命ずるがままに怨敵を蹂躙し尽くしてみせましょう!!」」

 

魔王軍の士気が一気に最高潮まで跳ね上がる

それを受け、瑞稀の纏う覇気もまた、跳ね上がる

 

「メルフェレス様、狂嵐の魔公子瑞稀。御身に進言させて頂きたく参りました」

 

「入りなさい」

 

メルフェレスの言葉と共に謁見の間の巨大な扉が、魔力により開かれる

瑞稀を先頭に他の者達が続き、玉座の前に片膝を着き跪く

 

「何用か?進言とはなんだ?申せ」

 

「はっ…既にお耳に入っているとは思いますが、先日、天界が我が魔界を襲撃、辺境の村にて村民を虐殺するいう暴挙に出ました。これは明らかに我々魔王に対する侮辱に他なりません」

 

「確かに。近くの村は襲撃に怯え、酷い有り様と聞く。すぐに警護のため、我が魔王軍を派遣したが、何をするつもりだ?」

 

瑞稀は眼光を鋭くし、下げていた頭を上げ宣言する

 

「警護だけでは足りませぬ。明日の明朝、ここに集う我が狂嵐魔王軍、セシル率いる魔王軍で天界に攻め込みます」

 

この発言には流石のメルフェレスも思わず素が出るほどにビックリである

 

「…瑞稀、分かってる?それは神界も相手取るという事よ?総じて言えば魔界以外の全てを敵に回しかねないのよ?最悪魔界が滅びてしまうかもしれないのよ?」

 

メルフェレスは魔界を滅ぼしかねない瑞稀の進言を、受け入れる事が出来ない

…だが、瑞稀の気持ちは痛いほど分かる

魔王として、大切な魔界の住人に手を出されて泣き寝入りするしかないなど、受け入れ難い屈辱だった

 

「全てを敵に回す?構うものですか!奴等は魔界の民に、我等の家族に手を出した!!彼等の怒り、悲しみを背負い、晴らさずして何故王を名乗れましょうか?!俺は魔界に手を出した奴等を1匹残らず狩り尽くす!ここで引けば俺に魔王を名乗る、いや彼等の上に立つ資格は無い!」

 

瑞稀の言葉にメルフェレスは言葉が続かない

瑞稀の決意は揺らがない

 

「誰が何と言おうが俺は行く!天使だろうが神だろうが魔界に仇なすというのなら!俺が魔王として滅してやる!!彼等を護れずに何が魔王か!?」

 

瑞稀の気迫にとうとうメルフェレスの心が折れた

玉座に項垂れ、力無く微笑みを浮かべ、改めて魔界王として宣言する

 

「分かったよ、瑞稀。貴方の言う通りだね、ここで引けば魔王の価値は無いよね?ならば!魔界王として瑞稀に命ずる!ここに集う者達を率い、天界を潰しなさい!!神共がでしゃばるというのならそれすら蹂躙しなさい!!敗けは許されない!必ず勝って、生きて帰りなさい!!」

 

「御意!必ずや奴等の悉くを潰し、生きて魔界に帰ってきます!!」

 

 

悪魔を滅するという天界の正義

民を、家族を護るという魔界の正義

ここに天界と魔界の戦争が開幕する!!





魔王になった瑞稀がとうとう動き始めます!
次回はとうとう魔力を取り戻した瑞稀が戦場で暴れます!

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