今回も駄文ですが生暖かい目でお読み下さい!
力とは何のために
「力とは何のためにあると思う?」
…誰かが少年に静かに問う
「さぁ?分かんないね。
でも俺にとって力は自分を守るためのモンだよ」
少年はぶっきらぼうに答えた
物心ついた時には、迫害されていた…
物心ついた時には、実の親は居なかった…
そんな少年にとって力は、周りから自分を守るための手段だった
そんな少年の答えに、僅かな微笑みをたたえながら、誰かが静かに告げる
「確かにそれも1つの答えだろうさね。
でもね瑞稀、力とは自分だけを守るものじゃない。
自分の大切な人を、守るためにこそ振るうべきなんだよ。
力ある者には、力なき者を護る義務があるんだ。」
…優しく、それでいて覇気のある言葉だった
「…よくわかんない…」
「あんたにもいずれ分かるよ…」
そう言って少年の頭を愛おしそうに撫でる…
「……夢か…あれは誰だ?覚えがない…でも…凄く綺麗な声だった…」
気怠げに布団を頭まで被り直すのは、美少女と見紛う程に美しい顔立ちをした、金髪の少年
16歳になった瑞稀だった
9歳の時に祖父、鉄平に引き取られ、今は奈良橋家で祖父、鉄平と祖母、敬子と暮らしている
「瑞稀~朝だよ~起きておいで~」
「!!!」
優しい祖母の声が響き、瑞稀は慌てて飛び起きた
「婆さん!今何時だ!?」
急いで自分の部屋から、リビングまで走って来た瑞稀は、金髪の背中まである寝癖のついた髪を整えながら問う
何故か知らんが、祖父が髪を切らせてくれないのだ
「まだ6時前だよ、安心しなさい、寝坊してないよ」
「瑞稀、寝惚けとるのか?部屋に時計があるんじゃ。時間位確認すればいいじゃろうが」
「……はあ、やかましいわ。夢見がよろしくなかったんだよ」
テーブルに座り、水を飲んで落ち着いた瑞稀はぐったりしていた
「…爺さん。何で今日は朝の鍛練、起こさなかったんだ?」
朝食を食べながら瑞稀が鉄平に問う
瑞稀は朝と夜、毎日の様に鉄平と、組手や剣術の鍛練を行っている
かつて鬼崎にいた頃とは、見違える程に強くなっていた
「儂も今さっき起きたからじゃ!!」
「……あっそ…まぁいいや。今日は学校終わったら、信介と唯と王都に買い物行くから。帰りは遅くなるわ」
「そうか、楽しんでくるんじゃぞ?あまり遅くなり過ぎぬ様に。後いい加減彼女つくれ」
「いつもしつこいな…彼女つくれ彼女つくれ、何かといえばそれしか言わないな、このジジイ…」
瑞稀の日常は慌ただしくも穏やかだった…
学校帰りに夕方の王都へ瑞稀は幼馴染の唯と、親友の信介と共に、買い物に来ていた
「ねえ、みーちゃん、このワンピース買ってよ!」
「てめえで買え。俺にたかってんじゃねえよ」
「まぁまぁ瑞稀、そう怒んなよ。唯ちゃんもすぐに瑞稀にたかるのやめようね。コイツすぐキレるんだから」
3人は賑やかに買い物を楽しんでいた
「なぁ瑞稀。遊びに来てる時くらい、その日本刀置いてこいよ。いくら最近物騒だからって落ち着かねえだろ?」
「念のためだよ」
「みーちゃんは唯を守るために持ってるんでしょ?」
「…お前のためじゃねえよ…」
「そう言えば瑞稀、最近変な夢を見るって言ってたけど。それってお前の記憶がぽっかり抜けてるって、言ってた11、12歳の頃の夢じゃねえの?」
「さあ?分からん」
瑞稀は11歳から13歳までの約2年間の記憶が無い
その頃から瑞稀の身体能力、剣術の腕は異常なまでに跳ね上がっていた
ちなみに魔力は今でも全く無い
本来魔力も体の成長に伴い総量が増えるものだが、彼は全く増えていない
「その頃からだろ?お前がめちゃくちゃ強くなったのって。実際お前に肉弾戦で勝てる奴なんて、お前の爺さんくらいしか俺知らねえぞ。お前、魔力なんて全く無いのに、喧嘩じゃ負け知らずだもんな」
「みーちゃんの魔力の無さは逆に凄いけどね」
「…俺は全く覚えてないから分からん…でも決まって夢に出てくるのは綺麗な女の人なんだよなぁ」
「…瑞稀、お前彼女出来無さすぎて欲求不満なんじゃねえの?」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ信介がそう言うと、瑞稀がキレた
「そんなんじゃねえよ!!お前だって彼女いねえじゃん。お前こそ欲求不満なんじゃねえのか?」
「うるせえ!!俺だって…俺だってなぁ…」
信介の涙ながらの訴えが空しく響く
…瑞稀達の日常はこうして賑やかに過ぎていった…
次は瑞稀がとうとう戦う予定です