いずれ真理へと至る王の物語   作:Suspicion

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またかなり間が空いてしまい申し訳ありません!



かの王が抱くは王道か、それとも怨嗟か

 

「人界の阿呆共が我等魔界に宣戦布告をしてきました」

 

天魔戦争が終結して事後処理に追われていた瑞稀にバロムが苛立ちを隠さず告げる

神を至上とする人間が天界を攻め落とした魔界を神々の敵として排除すると言い出したらしい

 

「…今の人界の王は馬鹿なのか?俺を欠いて魔界に勝てると本気で思ってるのか?」

 

「さあ?どうなんでしょうね。ちなみに貴方が失脚させられた後に王になったのは、鬼崎宗家の四男らしいのですが。知ってます?」

 

鬼崎の名を聞き、瑞稀の顔が嫌悪に染まった

当然だ。瑞稀は未だに幼い頃自分を迫害した鬼崎を良く思っていない

 

「…ああ、知ってるよ。名は優真。鬼崎の中でもちゃらんぽらんな放蕩息子だ。実力も長男次男に比べればかなり劣り、頭の出来もよろしくない。三男に比べれば少しはマシだがな。性格なぞ語るもおぞましい愚物よ。女癖が悪く好みの女はどんな手段を取っても手に入れる。他者を利用し糧とし蹴落とす事も厭わない。そのくせ自分は優しい、自分ほど慈悲深い者はそうは居ないとほざく本物の阿呆よ。よく人王になどなれたものだ。成る程奴なら無謀にも魔界に喧嘩を売るのも分かる。大方一部の政府の連中と市民に焚き付けられたのだろうよ。少し考えれば今の人界には魔界に勝てるほどの戦力なぞあるまいに。つくづく救い様の無い阿呆よな」

 

「…ボロクソですね…」

 

バロムがドン引きするほどの言い様である

 

「鬼崎が嫌いだからな。それに事実しか言っていない」

 

嫌悪を隠さずバッサリ断言する瑞稀

 

「それで?人界の宣戦布告、如何対処致しましょう?まぁ、こちらには貴方がいますからね、まずは対話でしょうね。貴方も人界と争うのは心が痛むでしょう?」

 

バロムが元人王の瑞稀を気遣い、まずは対話にて対処すべきと提案する

命を賭けて護っていた人間と争うのは、瑞稀にとって非常に辛い戦いになるとバロムは考えたのだ

仮に対話で止まるなら、それにこした事はない

なによりもこの心優しき王のために、争わなくてもいい様に最善を尽くすためにも、まずは対話を試みるべきだと考えたのだ

しかし当の瑞稀は不思議そうな顔をしてバロムに問う

 

「何故対話などしてやらねばならぬ?奴等は宣戦布告を突き付けてきたのだろう?ならば正面から蹴散らせばよかろう。それに対話で止まるなら宣戦布告などしてこないさ。鬼崎の放蕩息子が王ならば脅しも大して効果が無いだろう。阿呆故脅されても深く考えずに、まぁ何とかなるだろう程度にしか思わんよ。1週間後にでも人界に攻め込むぞ。メンバーは俺とお前達の3人とうちの魔王軍だけで十分だ。人界に宣戦布告、受けて立つ。1週間後に攻め込んでやると叩き付けてやれ」

 

「し、しかし!よろしいのですか!?かつて貴方が命を賭けて護っていた人間と争うのですよ?」

 

「良い。気にするな。第一に奴等は俺を裏切った。とにかく1週間後、人界に攻め込む。準備を進めよ」

 

「…分かりました。その様に」

 

「それと今回は()()()を連れていく」

 

「もう大丈夫なんですか?」

 

「ああ、問題ない」

 

「分かりました。いざという時は我々でフォロー致します」

 

「頼んだよ」

 

「では進軍の準備を始めます」

 

「…そうさ、今さら人猿ごときにかける情などありはしない…」

 

瑞稀の言葉には隠し切れない憎悪が篭っていた…

しかし次の瞬間には瑞稀は王の顔になっていた

魔王は魔界の誇りに賭けて人界を攻め落とすために準備を始める…

その傍らには()()()()()()()()()()()()

 


 

「陛下。魔王・瑞稀が宣戦布告に対し1週間後に進軍すると宣ってきました」

 

人界の王宮謁見の間は騒然としていた

大臣と将軍達は恐怖した

人界を滅ぼさんと奴が魔王になって帰ってくる

自分達が裏切り、蹴落とした、かの王が復讐のために帰ってくる

かつてより力を付けて自分達を殺しに帰ってくるのだ

しかも今の王は自分達の思い通りに動く傀儡としては最高の王だが、奴と戦うには頼りない

 

「…マジで?瑞稀の奴本気かよ?あいつの事だからビビって泣き寝入りすると思ったんだけどなぁ」

 

そう言うのは玉座に座る新たなる王。鬼崎優真だ

かつて幼い頃、鬼崎の養子だった瑞稀を虐め抜き、迫害した者の一人だ

彼等鬼崎は幼い頃の瑞稀しか知らず、かつて龍王や魔王を降した事すら詳しく知らない

彼等にとって瑞稀は魔王になって魔力を取り戻したとしても、未だ出来損ないの弱者に過ぎないのだ

どう足掻いても自分達の様な産まれながらに強大な力を持っている、選ばれた者に勝てる訳がないと、本気で思い込んでいるのだ

 

「まぁいいや!あんな弱え奴に負けるわけねえし。うちの兄貴達も出張るって言ってたし。マジで攻めてきたらぶっ殺してやるかな!久々に俺の烈火霜害も使ってやんないとなぁ。なぁ?霜?」

 

「はい。マスター。この烈火霜害、愛するマスターの神器としてあまねく全てを焼き尽くしましょう。」

 

傍らにいた美女が淡い赤の炎を纏いながら優真に寄り添い語りかける

彼女こそ優真が担ぎ、鬼崎が保有していた炎を操る神器の1つ。烈火霜害

その炎は霜の様に敵を覆い焼き尽くすと言われている

 

「とにかくあいつが攻めてきてもいい様に準備だけはしとけよな、将軍」

 

「…畏まりました…すぐに準備に取り掛かります」

 

人界もまた魔王の進軍に備え準備を始める

…自分達が死なないために…

そこに誇りになどあるはずもなく…

あるのは瑞稀への恐怖だけであった…





次回は魔王VS人間再び!
ただし今回はかつて人間を護った王が魔王として攻めてくる!

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