今回はちょっと派手さに欠けるかな?
「…馬鹿な…何故瑞稀が魔力を持っている?」
「おいおい、あいつは生まれつき魔力を保有してないんじゃなかったのか?」
「神兄、刃兄、どっちみちあいつが落ちこぼれなのは変わらねえだろ!さっさと殺しちまおう!」
鬼崎兄弟は膨大な魔力を放出する瑞稀に動揺こそすれど、すぐに持ち直し、自分達も魔力を放出し始める!!
3人の魔力は炎となり、瑞稀の炎を相殺する!!
「…3人掛かりで俺1人の炎を相殺するのが精一杯とはな…思ってたより大した事無いんだな…鬼崎ってのは」
「ほざけ!!魔力が有ろうと貴様が俺達鬼崎に勝てると思うなよ!出来損ないが!!生まれながらの天才とお前の様な出来損ないの差を教えてやる!!刃真!優真!合わせろ!!」
長兄神真を中心に、3人の魔力が更に高まり、中空に巨大な魔法陣を描く!
「「「炎よ!龍の吐息となり、遍く全てを焼き尽くせ!!!フレアオブカタストロフィ!!!!」」」
3人掛かりで発動した魔法は周囲を破壊しながら、瑞稀に襲い掛かる!
瑞稀は避けようともせず、直撃し、爆発する!
燃え盛る炎の威力は凄まじく、瑞稀の周囲数十メートルを焼き尽くしていく!!
「…フレアオブカタストロフィが直撃だ…無事では済まない…所詮瑞稀ごときではこの程度か」
爆炎が晴れ、土煙が収まり現れたのは、無傷の瑞稀だった
周囲には、真っ黒な柄が付いていない刀身が無数、浮遊していた
「鬼崎の炎はこの程度か?つまらんな…次はこちらが攻める番だな」
瑞稀が左手を正面に突き出す
すると浮遊していた刀身の切っ先が、鬼崎に向けられる!
「簡単には死んでくれるなよ?━影の太刀・放殺刃」
無数の刃が一斉に3人目掛けて射出される!
広範囲に渡り放たれた刃は、周囲を無差別に貫いていく
鬼崎は結界を張り、防ごうとするがそれでは足りず、各々回避もしくは、神器で捌き、何とか防ぎ切る
「はぁ…はぁ…馬鹿な…最上級魔法の直撃に耐えて…しかもこれほどの魔法を行使するなんて…」
「この程度で根をあげるなよ…鬼崎は天才なんだろ?出来損ないの挨拶代わりの魔法で、潰れてくれるな。まだまだこれからなんだ…鬼崎の力ってやつを見せてくれよ」
瑞稀は酷薄な笑みを浮かべながらまた新たに黒い刀身―影の太刀を出現させる
「次は少しレベルを上げるぞ?━影の太刀・流殺刃」
またしても影の太刀が射出されるが、先程とは違い、範囲は狭く、ピンポイントで3人を狙っている!
結果先程より攻撃の密度が上がり結界を一瞬で貫き、回避、防御どちらも間に合わない!
「くそっ!!」
3人は何本もの刃に貫かれるが、何とか致命傷は免れていた
その様子に瑞稀は酷薄な笑みを更に強める
自らの復讐心が満たされていき、嗜虐心を隠そうともしない、その様は正に残酷な魔王に相応しい
「…なんだ、この程度か。この程度の相手に俺は…ガキの頃とはいえ、負けていたのか…情けない…天才だなんだと言っても、たかがこの程度の魔法すら捌き切れないとは」
「ふざけるなよ!もう手加減はなしだ!殺してやる!!刃真!優真!
そう言うと3人は莫大な魔力を溜め始める!
その威力は凄まじく、場合によっては大魔導すら凌駕する事もある
「「
「
神真と刃真が合計200の炎を瑞稀目掛けて放ち
優真が高速で爆炎を纏った刀を振り下ろし、斬擊を炎として飛ばす
「…下らん真似を…
巨大な魔法陣が地面に出現し、上空目掛けて瑞稀の紅蓮の炎が火柱となり放たれる
3人の炎は瑞稀の放った巨大な火柱に呑み込まれ焼き尽くされる!
「…馬鹿な…俺達の炎が…たかが瑞稀に…」
「冗談キツいぜ…あれは…紅蓮に燃ゆる煉獄の炎…俺達でさえ使えねえのに…」
「嘘だ!!俺の炎がアイツの炎なんかに負けるわけねえ!紅蓮の炎!?あり得ねえ!!なんで出来損ないのアイツが!?」
「もういいか?まだ奥の手があるなら使え、俺は貴様等の力の悉くを焼き尽くしてやる」
3人は魔力の過剰消耗により息を切らし、地に膝をついていた
「そうか…この程度か。残念だ」
そう言うと瑞稀は左手を3人に向ける
すると影の太刀が凄まじい数で3人を全方位から囲む様に現れる!
「…もういい…死ね━影の太刀・八方流殺刃」
3人に全方位から刃が襲い掛かろうとした━瞬間
3人の後方から、凄まじい勢いで魔力が衝撃波となり、飛んでくる!!
「っ!!!」
その魔力は意表を突いたとはいえ、瑞稀に防ぐ暇すら与えず、瑞稀を吹き飛ばす!!
術者が吹き飛ばされた事で、3人を囲っていた影の太刀は消失、3人は助かった
「…この魔力…来たか…出来れば来て欲しくはなかったな…久しぶりだな、唯…」
「…みーちゃん…どうして魔王なんかになっちゃったの…どうして…こんな事をするの…みんな、みーちゃんが護ろうとした人達だよ?なのにどうして…」
3人を助け、瑞稀を吹き飛ばしたのは、瑞稀の幼馴染の唯だった
「…唯、退け。俺が憎いのは俺を裏切った人間共と、鬼崎だ。お前を傷付けたくはない」
「ちゃんと答えて!!どうしてみーちゃんが魔王なんかになって人界と戦争なんてするの!?おかしいよ!命懸けで護った人界をなんでみーちゃんが!!!みんなもおかしいよ!!あんなにみーちゃんに護られて、助けられて!なのに魔族の血を引いてるってだけで追い出して!殺そうとして!おかしいよ…狂ってるよ…答えてよ…みーちゃん…なんで…」
唯の叫びはただただ悲痛だった
かつて命懸けで世界を護った王が、自らの手で世界を傷付ける
かつて命懸けで護った民を、王自らの手で殺す
かつて命懸けで護られた民が、王を殺そうとしている
命懸けで護られたのに血筋だけで裏切った民
命懸けで護ったのに血筋だけで裏切られた王
唯には全てが狂ってるとしか思えなかった
「なんで俺が魔王になったか?救われたからだよ…俺は人間共に裏切られて、全てに絶望し、魔界に救われ、希望を知った。唯、俺はね、魔王としての自分に誇りを持ってる。俺にとって魔界の民は家族同然だ。家族を護るのは当たり前だ」
瑞稀の答えに唯は何も言わなかった
いや言えなかった
瑞稀は唯が見たことがない程の本当に優しい顔をしていた
瑞稀の言葉には唯が知らない瑞稀の強さが込められていた
「…そっか…分かったよ…」
唯の言葉には悲しみが込められていた
そして━
「…彼らを殺すなら唯を先に殺して」
鬼崎の3人を、その後ろで震えている人間を庇う様に、両手を広げ立つ
「…なに…を言ってるんだ…唯…退け…俺は…お前を傷付けたくない!退け!!」
「いやだ、退かない。彼らを殺すなら唯を殺して」
毅然とした態度で唯は瑞稀に立ち塞がる
その眼は決意に満ちていた
そんな唯を前に瑞稀は、動揺を隠せない
唯が自分と戦うなら潰すつもりでいたが、殺す気はなかった
しかし唯は事もあろうか戦わず無抵抗なまま殺せと言う
「唯!退け!!退いてくれ!!!頼む!!俺にお前を…殺させないでくれ…」
唯は瑞稀の言葉を意に介さず動かない
瑞稀自身、復讐心より幼馴染の唯に対する情が上回っていた
それでも諦め切れない
鬼崎への復讐、人間達への復讐
自分が求めて止まなかった復讐の機会
逃したくはない
奴等を生かしたくはない
でも唯を殺したくない
かつて
━━誓った?
いつ?どこで?誰がいた時?
━眩暈がする
━頭が割れるように痛い
━身体の奥から何かが暴れ出てくるような錯覚がする
しかしそれもすぐに収まる
「…興醒めだ…全軍撤退!!魔界に帰還する!!」
「瑞稀様!?何故!?今なら人界を落とせる!!チャンスですよ!?」
バロムや魔王軍が驚愕に声をあげる
しかし瑞稀は唯を一瞥すると転移魔法を発動させ始める
「ふざけるな!!ここまでやって終いだと!?鬼崎を愚弄しておいて!!!」
「そうだぜ!瑞稀、俺達との決着がまだついてねえぞ!!!」
「出来損ないのお前がこれで俺ら鬼崎に勝ったつもりか!?ナメんなよ!!このクソヤロウ!!」
鬼崎が撤退しようとする瑞稀に待ったをかける
今まで出来損ないと思っていた瑞稀に完膚なきまでに叩き潰され、あまつさえ命まで見逃されようとしている
彼らのプライドはズタズタにされた
「興が削がれた。撤退するぞ!!!人界との戦争はこれで終わりだ。どちらにしろ貴様等人界はほぼ壊滅、こちらはほぼ無傷。俺達の勝ちだ。己の無力さを噛み締め、俺に喧嘩を売った愚かさを悔いろ」
「しかし!瑞稀様!それでは貴方の怨みは━」
「バロム…もういい。奴等への怨みなぞ我ながら下らぬ事に執心していた。最早どうでもいい。退くぞ」
瑞稀は無表情で魔王軍に撤退を再三告げる
ここまで瑞稀に言われてはバロム達魔王軍も退かざるを得ない
「…了解です…撤退します…」
不承不承ながら瑞稀に従い魔王軍は撤退する
1人残った瑞稀に唯が呼び掛ける
「待って!みーちゃん!!行かないで!!!」
「…唯…ごめんな…出来る事なら…お前には傍に居て欲しかった…ごめんな…さようなら…」
そう告げて瑞稀は消えてしまった
後に残ったのは悲しみに暮れる唯と、傷付き疲弊した人界の者達と、魔王・瑞稀によって破壊された荒野だけだった
「…みーちゃん…唯だって…みーちゃんの傍に…」
荒野には唯の嗚咽が響いていた
可哀想な唯ちゃん!
完全にヒロイン枠なんですが瑞稀には既に奥様が…
と言うかワルキューレにも散々良いこと言っておきながら、幼馴染の唯ちゃんにも良いこと言ってる瑞稀は、完全にタラシですね
浮気性ですね
真性のクズですね
ここまでボロクソに言っておいてこの世界では重婚は当たり前です
作者もクズでした
ちなみに今回いきなり出てきた
まだ上があります
更に威力はかなりヤバめですがその分消耗も激しく、使う人と使わない人がいたりと、かなりばらつきがあります
ご了承下さい