いずれ真理へと至る王の物語   作:Suspicion

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何故、今更瑞稀は覇龍に目覚めたのか
そもそも魔王になるまで彼の魔力を封じていたのは誰で、何のために封じたのか

バロムが危惧する[奴]とはなんなのか



垣間見る滅び

「貴様の口上なぞどうでよい!!何を想い、何を語ろうが貴様は二覇龍。厄災そのものだ!今この場で私が滅してやる!!!」

 

「宣うだけなら誰でも出来よう!殺れるものなら殺ってみろ!!逆に俺が貴様を殺してやる!!!」

 

「狂嵐ーーーー!!!」

「天乃ーーーー!!!」

 

2人は互いの存在を滅するために全身全霊、文字通り自らの命を削りながら戦い続ける

 

(ヤバいな…理性が飛びそうだ。覇の理に呑まれはじめてる…)

 

(瑞稀!これ以上は無理だ!一旦退け!このままじゃ暴走するぞ!!)

 

(いや!まだだ!奴を殺すまでは止まるわけにはいかない!!)

 

瑞稀は徐々に覇の理に魔素を浸食され、理性を削られていく

自分という存在が喰い散らかされ、別のナニカに変わっていく様な感覚に苛まれ、少しずつ、しかし確実に焦りを募らせる

 

(おのれ!たかがドラゴン相手に、この私が!絶対神たる我が力が届かぬというのか!!認めぬ!断じて認めぬぞ!!)

 

絶対神もまた焦りを募らせている

絶対神は右目の神瞳で瑞稀の魔素が、徐々に変異しているのが視えている

 

(なんなんだ!奴は一体なんなんだ!?本当に白龍神王なのか…?有り得ない!これだけの力を引き出してなお、()()()()()()()()()()()()()…!おのれ!討伐神め!一体ナニを育てた!?まずいぞ…覇の理の浸食の影響で封印に綻びが生じてしまったら…!!)

 

最早何度目かも分からない鍔競り合いにて、互いに後退する

 

─そしてとうとう瑞稀が限界を迎える

 

「ッ!!!!!」

 

瑞稀から発せられる魔力が不気味に脈動し、魔素が変質しその身が完全な人型ドラゴンになりはじめる!

 

しかし、血の様な紅い炎が瑞稀の身体から吹き出し、刃となり瑞稀を貫いた

 

「これは血の焔だと!?討伐神の封印式か!」

 

人魔戦争の折に暴走した白龍神王を抑え込んだ刃が、再び出現し、瑞稀を取り戻さんと燃え盛る

 

しかし─

 

「グッ…オォ…」

 

瑞稀が自身の意思で、封印の刃を引き抜こうとしていた

 

「オォオオオォォォオォオオォォ───!!!!!」

 

刃は引き抜かれ、封印が完全に解かれてしまった

 

──現れたるは人型の小さな白龍神王

 

「───────!!!!!!!」

 

最早音響兵器の域に達した咆哮で周囲の瓦礫を吹き飛ばし、白色雷を纏う瑞稀だったドラゴン

理性無く、知性も無く、また自我すら無く、破壊衝動の赴くまま、怨嗟を振り撒き暴れまわろうとし始める白き暴龍

瑞稀としての自我すら無くしながらも、絶対神を睨み付ける白龍神王

 

「なるほど…覇に呑まれ狂えども、私に対する怨嗟は消えぬか」

 

絶対神はロンギヌスの矛先に全魔力を集中させ、右目の神瞳で瑞稀の魔素核を正確に捉え、構える

暴走し、力の扱いが乱雑になった今なら、ロンギヌスの一刺しで確実に封印出来るはず

 

(狙うは一刺し、外せば殺られる。決まればこちらの勝利は必定。全身全霊を以て、最強の一撃で仕留める!!)

 

羽々斬を納め、ロンギヌスを両手で構える

膨大な魔力と神威を纏い、瑞稀に迫る!

 

「動き出す前に仕留める!

最終超越技(ファイナルイクシード)!!天破槍・魂接演舞(てんぱそう・たまつぎえんぶ)!!!!」

 

「!!!」

 

白龍神王が動き出す前に、反応すらさせず槍が迫る!

 

「──!!!!」

 

槍が白龍神王の胸を捉え、絶対神の勝利が確定した──

 

「…馬鹿な…そんな事が…」

 

─槍は白龍神王の鱗に阻まれ、貫く事無く、弾かれた

弾いた瞬間、花弁の様な紋様が出現した様に見えたが、その様な事を気にする余裕は、最早絶対神に残されていなかった

 

「グルルル!!ギャオオオォ!!」

 

そして絶対神を認識した瞬間、絶対神に襲い掛かる!

爪で、牙で、尾で、吐息で、吠え声で、翼の羽ばたきで、白き雷で、あらゆる暴力が絶対神を襲う!

 

技術が伴っていない故、攻撃を捌く事は可能なれど、一つ一つの破壊力、攻撃速度が尋常ではなく、確実に追い詰めれていく絶対神

 

「おのれ…!この様な事が…!断じて認めん!ドラゴン如きに私が劣るなど!!認めるわけにいくものか!!!」

 

僅かな隙を突いて槍で、刀で、魔法で、拳で、蹴りで、持てる全てで反撃する絶対神

しかし、それでも、それら全てをその身に受け、なおも白龍神王揺らがず。その龍の鱗は全てを弾いた

 

「──────!!!!」

 

まるで勝ち誇るかの様に咆哮をあげる白龍神王

その口内には白く輝く雷が集束していた

 

(──!!あの密度の魔素、白色雷、流石に防げないな…よもやここまでか…)

 

絶対神は白龍神王が放とうとしている雷を前に、為す術など無く、ただ睨み付けるしか出来なかった

ただ眼を反らす事無く睨み続ける

故に、視てしまった。神瞳によって視えてしまった

 

──貴様等理の神は何も変わらぬのだな!!何故過去の失敗を繰り返す!?この世界が、この様な世界があの御方の望んだ世界か!?否!断じて違う!!世界が変わらぬのなら、貴様等が変えられぬと宣うならば、私が今在る全てを滅ぼそう!!!今再び原初へ還り、悔い改めろ!我が憤怒と怨嗟の焔で燃え尽き、滅びよ!!!愚かな生命共よ!!!!

 

世界が真紅の焔で焼き尽くされていた

あらゆる生命が死に絶えていた

村が、街が、国が、星が、あらゆる理が跡形も無く焼き尽くされた後の虚無

 

(これは!?狂嵐?いや、違う。奴の魔素核の奥、深層魔素よりも奥で眠る何者かの記憶?そんな馬鹿な…これではまるで…)

 

それは地獄ですらなかった

絶望ですらなかった

虚無。地獄すら無く、絶望すら無く、全てが消え去った後の虚無

それはまさに、正しく世界が終焉を迎えた後の光景だった

 

「──は、はは…」

 

その光景の前に全ては無力

 

「ふはははははは!!ははははははははは!!あっはははははははは!!ひゃははははははははは!!!」

 

絶対神は理解してしまった

()()()()()()()()()()()を、視てしまった

()()()()()()()を、理解してしまった

()()()()()()()()()()()()を、知ってしまった

 

「────!!!」

 

白龍神王の咆哮と共に放たれた雷に呑まれ、絶対神はその生涯を終える

 

「────────────!!!!!!!」

 

白龍神王の勝鬨の咆哮が響き渡り、いよいよ世界に白龍神王を止める事が出来る者が居なくなり、世界が終焉へ向かおうと──しなかった

 

「──!?」

 

突如白龍神王が炎上し始めた

その炎は白龍神王の内側、瑞稀の内より発生していた

 

「──!!!」

 

苦痛もがき苦しむ白龍神王

その炎は紅蓮よりなお紅く、深い真紅の炎だった

 

やがて炎に呑まれた白龍神王の姿が龍から人に変わり、瑞稀に戻った

炎は瑞稀が戻ると同時に鎮火され、瑞稀は傷1つ無い姿で気を失っていた

 

「瑞稀様!!」

 

ワルキューレや唯、師誓将達が瑞稀に駆け寄る

 

「…外傷は無くなっていますが…魔素核の損傷が激しい…!このままでは非常に危険です…!」

 

「そんな…バロム様、なんとかならないのですか…!」

 

「………私の力では……」

 

沈痛な面持ちのバロム

バロムですら手の施しようが無いと聞かされ、ワルキューレが膝をつく

このままでは、瑞稀は助からない─

 

「…そんな……」

 

「ワルキューレさん!しっかり…!………そうだ!!奈落一族なら!なんとかなるかも!!」

 

唯の一言に皆が希望を見出だした

 

「みーちゃん奈落一族から勘当されてるけど…奈良橋のおばあちゃんなら!多分力になってくれると思う!」

 

「すぐに瑞稀様をお連れしましょう!」

 

こうして師誓将は人界へ向け、転移門を開き、奈良橋邸を目指す

 

「おい、バロム、さっきの炎…」

 

「分かっている…分かってはいたが…」

 

「…まさか、本当に……まったく…難儀な事ですよ…」

 

バロム、斬鉄、刻龍は何かを知っていた、知っていたが故に、思い悩む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ…此度は私の封印は解かれなんだか…あの神擬きめが…余計な事をしおって…まあ良い。今は待つとしよう。瑞稀よ、お前は今、どの様な夢を見ているのだ?瑞稀よ、お前はこれから──何を視て、何を感じ、何を目指すのだろうな…はたして此度こそは絶望に屈する事無く、希望を抱いて、いずれは真理を掲げる日は来るのだろうかな…あまり時間は残されていなさそうだが…今はお前の生き様を眺めようか。瑞稀よ、絶望に足を止めるな。希望を捨てるな。決して屈する事無き様、己の持てる力の全てを鍛えよ。滅びは既に動き始めてしまった…』

 




暴走して死にかける瑞稀
絶対神が視てしまった瑞稀の正体
謎の炎の出現
最後に出てきた謎の声

詰め込み過ぎた感が…

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