いずれ真理へと至る王の物語   作:Suspicion

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ここから数回ほどまたしても過去回に突入です



王と女神の邂逅

俺は…死んだのか?

それとも夢を視ているのか?

 

「瑞稀、今日からこの女性、奏女様に弟子入りしてもらうぞ。勿論拒否権は無い。必要な荷物は既に奏女様にお渡ししている。当分の間、奏女様と二人で暮らす事になる。しっかりと奏女様の言う事を聞くように」

 

懐かしい顔だ。なるほどこれは今まで俺が失くしていた過去の夢か、はたまた走馬灯か

 

じいさんの突然の物言いには、幼い俺は混乱したな

状況説明が足りなさすぎる、アホか

 

「じいさん何言ってんの?意味わかんないんだけど、とうとうボケたの?つうかこのババア誰?」

 

土下座しろ!今すぐに!知らぬとは言え、奏女様になんたる口の聞き方だ!後じいさんがボケてんのは今に始まった事じゃないだろ!

 

「徹平、あんた孫?息子?に対して教育が行き届いてないようだね。この私に向かってババアとはね…このクソ餓鬼、命が惜しくないと見える。今この場で首を落としてやろうか」

 

「─っ!!?」

 

あれはマジで恐かった

それでも幼い俺は、奏女様が放った殺気に当てられながらも、脂汗が吹き出してヤバいけど、咄嗟にじいさんが与えた鍛練用の刃削ぎされた日本刀を抜き放った

俺のアホめ、そんなん役に立たんがな…

 

「─ほう…正気を保つか。震えてもいない、何より私を恐れながらも立ち向かうか。なるほど性根はともかく、根性はあるらしい。気に入ったよ。でもねクソ餓鬼、そんな玩具でどうする気だい?まさか私とやろうってのかい?」

 

実は内心ガクブルでした、本当にごめんなさい

 

「このクソババア!馬鹿にするな!お前みたいなババアに負けるもんか!」

 

喧しいわ!今すぐ土下座しろ!!奏女様に対してババアババアとうるさいんじゃ!このど阿呆が!

 

「あっはっはっはっ!粋がるじゃないか。面白い小僧だね!余計に気に入ったよ!でもね─」

 

奏女様が腰を少し落とした瞬間、地面が吹き飛び姿が消える

やっぱり速いな、今の俺より遥かに速い

 

「お前みたいな餓鬼なんざ、大人がその気になりゃいつでも殺せるんだ。早死にしたくなきゃ相手は選びな」

 

本当にごめんなさい、土下座でも何でもするんで許してください

幼い俺の後ろに立ち、首筋に刀を突き付ける奏女様

幼いながら勝てないと悟りながらも俺は刀を振り上げ、抵抗を続けるが首根っこを掴まれ持ち上げられて暴れるしか出来ずにいた

ははは、ざまあ

 

「奏女様、その辺りで勘弁してやって下さい。その子の性根が悪いのは仕方ないのです」

 

じいさんが俺を庇い、奏女様を諫めるが、これに気分を害したのか、奏女様は催眠魔法で俺を眠らせ、じいさんを睨み付ける

じいさんよ、俺の性根の悪さは半分はあんたのせいだと俺は認識しているよ

 

「徹平。事情は確かに聞いたがね、あんたの教育不足を正当化する言い訳をするんじゃないよ。この子に必要なのは身を護る戦闘技術や強大な力なんかじゃない。愛情だ。人を思い遣る心、人を愛する心、人に愛される喜び。自分は産まれてきてもよかった、世界に生きていていいという、当たり前の自己肯定だ。眼を見りゃ分かる。この子には自己肯定が無い。あるのは猜疑心と自己否定。そして深い悲しみと怒り、怨嗟だ。この子の事を思い、力をつけさせようとするあんたの気持ちも分からんでもない。でもね、力より先に、この子は人としての幸せを知るべきだ」

 

奏女様マジ女神

仰る通り!じいさん!よく聞けよ!

 

「…ごもっともです…」

 

奏女様の言葉に項垂れるじいさん、ざまあ

しかし、その瞳は強い意思を感じさせた

まさか…反論する気か?!非を認めて反省しろよ!

 

「しかし、だからこその貴女なんです。貴女は全次元最強の力を持ちながら、破壊ではなく、深き愛情、母性を根源に持つ御方だ。そんな貴女だからこそ、この子をより良く導いてくれる筈だ」

 

じいさん、それは育児放棄と言わんかね?

そりゃあ俺だってあんたみたいなジジイやヨボヨボシワシワのばあさんより、ムチムチ爆乳超絶美女な奏女様の方が良いけどさ~、育児放棄はよろしくないと思うぞ

 

「…はぁ…あんたといい、鬼崎の外道といい、面倒ばかり押し付けるね…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…かなり…拾われたと思われる赤子の頃より実験されていたと思われます。実験期間は予測ですが、一歳前から五、六歳頃まで。時期も長く、この子本来の魔力、魔素が分からない程に歪められています…」

 

そう、鬼崎は幼い俺に対して幾度も実験を繰り返していたらしい

餓鬼の頃の俺の中にはあらゆる種族の魔素が流れていた

元より流れる魔族、人間、詳細は分からんが神。実験による後付けで鬼神、妖怪、邪龍、龍神、天使、堕天使、精霊、妖精、魔獣、神獣、亡霊、不死者

実験によってあらゆる種族の魔素を注入され、それらを取り込んだ俺の魔素核は穢れてしまった

結果俺はその負荷に耐え切れず魔力を暴走させ実験施設を破壊、その力を怖れた鬼崎によって全ての力を封印されたらしい

実は人界を出てく際に、ばあさんから初めて聞かされた

鬼崎マジで許さん

 

実験が行われなくなって数年が経ったこの頃、俺の魔素核は本来の魔素によって少しずつ浄化され始めたが、穢れがあまりにも濃く、本来の魔素を取り戻すのには数十年の歳月を有する。つまり未だに俺の魔素は絶賛浄化中ということだ、マジで鬼崎は許さん

 

「確かに私でもこの子の本来の魔素は感知しきれない。混ざりに混ざった汚泥の様な穢れた魔素しかほとんど感知できない…本当に鬼崎の馬鹿には昔から困ったもんだ…始祖たる鬼崎の鬼神もクズだったが、子孫も負けず劣らずだね…とは言え、断言しよう。この子は凛音、白龍神王、マナスヴェインを宿す今代の二覇龍の片割れだ。どれだけ混ざろうが、餓鬼の頃から見知ってるあの娘達の魔素を見逃すものか」

 

白龍神王も奏女様の世話になってたのか

この人、マジでとんでもねえな。つうかマジであんた何歳だよ?!

 

「やはりそうなんですね…なんとなく予感はあったんです。この子の魔素核を調べれば調べるほど、あまりにもドラゴンの魔素が強過ぎる。しかし、それだけでは無いのです」

 

じいさんの表情が曇り、その物言いに奏女様は疑問を隠さず先を施す

いや、待て。そんなん俺も初耳だぞ

 

「我々、奈落一族はこの子の魔素核を徹底的に調べました。あくまで検査の範疇ですが。すると鬼崎が施したものとは違う封印式が2つ見付かったんです。1つはおそらく白龍神王のものでしょう、強大なドラゴンの魔素はその封印式から漏れ出ていたので。しかしもう1つが分からないのです。独立した5つの封印式を連結し、1つの術式として発動されているのですが、1つ1つですら凄まじく厳重な封印なんです。あまりにも過剰過ぎる。そこまでして封じる、封じなければならないものとは一体なんなのか。あらゆる伝承、伝説、神話、調べられる限りは一族で調べましたが…皆目検討がつかんのです」

 

「…凛音の封印より強力なのかい?」

 

「遥かに」

 

いやさ、俺ってマジでなんなの?

じいさんの答えに奏女様は黙りこみ、数十秒程の熟考を終え、鬼気迫る表情を浮かべ問う。マジで恐いです、ごめんなさい

 

「つまりはあんたらはこの子を持て余してるわけだ。このまま成長して、将来この子が白龍神王に目覚め、最悪その封印を破るかもしれないと危惧している。なるほど確かに。凛音を抱え、二覇龍以上の化物を抱えたこの子は、このまま成長してしまえば世界を滅ぼす絶対悪と成るだろう。怖ろしかろうさ。危惧もしようさ。しかし今なら修正をかける事も叶う。それで?奈落一族は…あんたらの始祖、真奈のクソ餓鬼はこの子をどうするつもりだい?兵器にするため傀儡と成すか?はたまた次代の希望と成さんがために私に託すのか?」

 

言い逃れや有耶無耶に煙に撒く事など赦しはしない

答え如何によってはお前達を滅ぼそう

奏女様の表情は、殺気と覇気は言葉にせずとも雄弁に語っていた

俺を想ってそれほどまでに怒ってくれたんですね、ちょっぴり感動

 

「…真奈様はこの子を殺すべきと仰いました…しかし、私はこの子を生かすべきと考えます。この子の幸せのため、世界のために。何度でも言います。そのための貴女なのです。貴女なら瑞稀に人並みの幸せを教えれる、瑞稀が将来、その力を正しく奮える様に育てて下さる」

 

だからさ、じいさん?それは育児放棄ではないのかい?

 

「……ハァー…分かった…この子は私が導こう。全霊をもって護ると誓おう。それでいいんだろ?」

 

じいさんの真摯な態度に奏女様は不承不承と瑞稀の面倒を引き受けた

いいんかい?!いや俺としては最高です!

 

 

言葉や態度とは裏腹に、奏女様の眼はひどく穏やかだった

 




 
瑞稀の素はこんな感じです
彼は真面目ですが、実はおっぱい大好きな変態さんです

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