いずれ真理へと至る王の物語   作:Suspicion

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今回で瑞稀の過去編、終了です
基本的には今まで回想だので出ていたものに少し手を加えただけの手抜きで申し訳ない


師から弟子へ繋がる矜持、散り逝く安らぎ

「ねえ、瑞稀。あんたの力は何のためにあると思う?何故貴方には力があるのだろうね?」

 

「さぁ?分かんないね。でもおれにとって力は鬼崎や周りから自分を守るためのモンだよ」

 

確かにそうだ。かつての俺はそうだった

 

物心ついた時には、鬼崎や世間から、魔力を持たぬ出来損ないと迫害されていた

物心ついた時には、ぬくもりを、愛情を、人を人足らしめる情を教える親は居なかった

 

そんな俺にとって力は、周りから自分を守るための手段でしかなかった

俺を…俺として認めぬ世界を壊すための手段でしかなかった

 

「確かにそれも1つの答えだろうさね。でもね瑞稀、力とは自分だけを守るものじゃない。自分の大切な人を守るためにこそ、振るうべきなんだよ。覚えておきな。力ある者には、力なき者を護る義務があるんだ」

 

覇気に溢れ、それでいて諭す様な優しさに満ちた言葉

今の俺を俺足らしめる矜持、誇り、信念

全て、この人から教わり、与えられた

獣ではなく人として、王としての生き様だ

 

「…よくわかんない…なんで強いからって弱いヤツをまもらないとダメなんだよ…」

 

「…誰もが好きで弱いのではなく、弱きに甘んじるしかない者も少なからず存在するのさ。そんな者達を護れるのは力ある強き者だけなんだ」

 

そうだ、その通りだ

誰もが強く在りたいと願う。それでも強くなれぬ者の方が多い

肉体的に強く在りたい、精神的に強く在りたい、誰もが願う

それでもそう在れるのは一部でしかない。様々な理由でどう足掻いても強くなれぬ者は存在する

 

「強いから、力があるから絶対にまもらないとダメなの?」

 

「そうだよ。望む望まぬは別として、貴方には凄い力が眠ってる。その力は必ず貴方の大切な人を護るための力になるのよ。全てを護れとは言わない、それは無理な話だからね。でもせめて自分の大切な人や、貴方を必要とする人のためにその力を振るいなさい」

 

…本当に貴女は善き師だ。貴女の教えがあったればこそ、俺は魔王として民を護れた

 

「…やっぱりわかんない。だって他人なんて自分達が理解出来ないモノ、自分達と違うモノ、自分達よりも劣っているモノにはどこまでも冷酷で、残酷で、慈悲なんて無く迫害するんだ!全部ヤツらがおれにやった事だ!やり返して何が悪いのさ!?おれにとって大切なのは爺さんと婆さんと唯とかなめ様だけだ!他のやつらがどうなろうが知ったことか!」

 

なんとも醜い、我ながらこれは酷い

なんたる浅慮、視野狭窄。情けなくて笑いが込み上げてくるわ

 

─だが、今はそれでいい。その想いが彼女を呼び覚ますのだから

 

「今は分からなくてもいい。世界が必ず貴方を受け入れ、貴方を必要する時が来る。いずれあんたにも分かるさ。なにが罪なのか、大切な人達と共に在る世界を護ると言う意味がなんなのか。焦らなくていい、いつか分かるよ」

 

「…急にどうしたの?珍しく真面目なこと言って」

 

「たまにはね。師匠らしいことしないと」

 

終わりの時は近いな…

 

嗚呼、俺はまた…貴女を喪う悲しみを味わうのか…

また何も出来ず、ただ貴女に護られ、見ている事しか出来ないのか…

 


 

原因は単純だった

あの人の力はあまりにも強大すぎた。俺との修行中、ずっと奴に感知されていた

それでも強すぎるが故に奴は魔界に居る事は分かれど約2年もの間、奏女様の正確な居場所を割り出せずにいた

しかし、それでも2年も時間があり、なおかつ奏女様が1ヶ所に留まっていた事も合わせれば、奴が奏女様の居場所を特定するのは当然だったんだ

 

「─!結界が破られた…しかもこの魔力は…天乃のクソガキか…よりにもよって今か…」

 

そう、よりにもよって今。奏女様が俺という足手纏い、お荷物を抱えている今、奴は奏女様を葬るために、ごく少数のロイヤルガードを率いて来た

 

「かなめ様?どうしたの?」

 

「逃げるよ。しっかり付いて来な」

 

「なんだよ、急にどうしたんだよ」

 

「っ!!!瑞稀!!!」

 

木々の合間から呪詛や封印式を込めた矢が襲い掛かる

奏女様は俺を庇い、全ての矢をその身で受け止める

 

何故だ!何故貴女は炎を使わない!?貴女の炎ならその程度、焼き払うのは容易いのに!!

…分かってる。俺が居るから…炎を出せば、そばにいる俺を巻き込みかねかないから出せない…

 

「くそ!!魔力封じの封印、呪詛か!!」

 

「かなめ様!?」

 

そこからの奏女様の行動は素早かった

状況を理解出来ず、戸惑う俺を抱え森の中を駆けていく

木々の合間を縫い、決して抱きかかえた幼い俺を離すまいと、奏女様が駆けていく様は一層美しくさえあった

 

「決して逃がすな。別動隊と連携、囲いに誘導し追い詰めよ」

 

「はっ!!」

 

憎き天乃の声が聞こえた

それだけでハラワタが煮えくり返りそうな程の怒りが沸く

俺自身がこの過去に干渉出来たなら…奴の喉元に喰らい付き、確実に噛み砕いてやるものを…

嗚呼、なんと口惜しい…目の前に奴らが居るのに喰ラいツク事すらでキなイ

 

「…くそ…!誘導されてる。せめて瑞稀だけでも…」

 

「かなめ様!前から7人、左と後ろから10人ずつ来てる!」

 

!!魔力感知が鋭敏化されはじめた。彼女が目覚めはじめたか…

 

(っ!凛音の魔素!まずい、目覚めかけてる!駄目!凛音、お願い。この子を連れていかないで…!)

 

「仕方ない。瑞稀、逃げなさい!奴等の狙いは私だ!!あんたは私をおいて逃げて!!」

 

「嫌だ!!かなめ様をおいて逃げるなんて、出来ないよ!!おれだって戦える!!おれだって奏女様の弟子だ!!」

 

「馬鹿を言うんじゃないよ!!あんたみたいな餓鬼にどうこう出来る相手じゃない!!私に庇われてた分際が、偉そうにほざくんじゃないよ!!あんたを護りながら戦う余裕はもうない。魔力が上手く放出出来なくなってきた…お願いだから…貴方だけでも逃げて…お願いだから…貴方だけでも…生きて…」

 

あア、この時の俺ニちカらがあれば、ヤツラをミナゴロシにしてヤれるのに…!

 

奏女様と俺が言い合っている間に奴らに追い付かれ、木々の合間から呪詛や封印式を込めた矢が再び襲い掛かる

 

「瑞稀!!」

 

奏女様が俺を庇い、抱き締める

矢は悉く奏女様の背中に突き立てられ、奏女様は地に伏し、瀕死の重症を負ってしまった

 

…俺が弱いせいで…

 

「かなめ様!嫌だ…おれをおいていかないで!立って!一緒に逃げよう!?」

 

幼い俺の悲痛な叫びが森に木霊し、奏女様は刀を杖代わりにして、立ち上がる

 

お願いだ…もう立たないで… 

 

「…私が…護る…この子をあんた達なんかに傷付けさせやしない…」

 

全身から血を流し、血塗れになりながらも、必死に立ち塞がる奏女様

泣きながら奏女様にすがり付く幼い俺

 

何故、俺はまた見ている事しか出来ないのか…

魔王になり、力を付けたのに奴らから貴女を護る事すら出来ない…

 

「…あんた達が殺したいのは、私だろ…この子は関係ない…この子に手を出すな…」

 

「そうはいかない。確かに我々が殺したいのは貴女だ。だが彼は貴女の弟子だろ?我々にとって貴女の弟子だというだけで彼は十分危険だ。ここで一緒に死んで貰う」

 

天乃…!

忌々しい…!今すぐその喉元に喰らい付き、噛み砕いてやりたい…!

 

「それは…ロンギヌスの槍…私を封印するつもりか…」

 

「そうだ。貴女は殺しても時が経てば蘇る事すら出来るだろ?ならば封印するしかない。いくら貴女でもロンギヌスならば封印出来るはずだ」

 

やめろ!やめてくれ!!

 

「さらばだ。遍く厄災を焼き尽くした無双の神よ」

 

やめろおおおぉ!!!

 

「ごめんね瑞稀、約束守れなくて。どうか私の教えを忘れないで。強く生きなさい。自分の力に溺れる事なく、大切なものを護るために、力をふるいなさい。憎しみに囚われるなとは言わない。でもそれが全てと思わないで。強く在れ、瑞稀。私は…ずっと…貴方を愛している」

 

笑顔を浮かべたまま、奏女様は動かなくなった

何が起きたか、幼い俺は理解出来ない

 

歩み寄り、触れた

冷たい。いつも温もりを与えてくれた熱はなく、少しずつ冷たくなっていく

 

「かなめ様…起きてよ…」

 

揺さぶり、声をかける

返事はない。いつも安らぎを与えてくれた柔らかな声はなく、沈黙だけが答える

 

抱き締める

少しの温もりが奏女様から逃げない様に

 

しかし、少しずつ理解していく

奏女様は死んだのだ

 

彼女が与えてくれた温もりも、安らぎも、もうない

奴等が殺した

 

俺から大切な奏女様を奪った天乃が再び目の前にいる

コろシやる…もう一度、コロシテヤル!!!

 

(お前の怨嗟、確かに聞き届けたぞ。奴等を殺せ!!あの人を殺した奴等を殺し尽くせ!!さあ、謳え!!私の怨嗟を!!お前自身の怨嗟を!!)

 

凛音の声が聞こえた

幼い俺と凛音の声が重なり覇を謳う

 

「「我に宿りし救われぬ白龍よ!

怒りのまま解き放て!!

 

我が内に眠りし銀光の白龍よ!

再び天へと君臨せよ!!

 

全界を創造せし神々よ!

我を封じた理の神々よ!

汝等に封じられし我が真の力を思い出せ!!

 

汝等、我が銀幽たる雷にて滅せよ!!」」

 

「「愚かなものなり、理の神よ!!!!」」

 

「「完全覇龍化(ブレイカブルジャガーノートフルドライブ)!!!!!」」

 

「まさかこれは…!?白龍神王か!!おのれ!討伐神め!!とんでもない置き土産を置いて逝きおって!!」

 

アまネく神々よ、悉く滅セヨ

俺カラ最愛のヒトをうばッタ罪をツグナエ

 

「─駄目。凛音、その子を返しなさい」

 

「─!!!」

 

奏女様の紅い炎が巨大な刀身となり、我が身を貫く

そしてその刃は封印式となり、白龍神王を抑え込み俺の自我を取り戻させる

俺自身すら…また覇の理に呑まれかけていたのか…

なんとも情けない限りだ…

未だにあの人に助けられるとはな…

 

「凛音、その子は私の大切な人だ。手を出すんじゃない」

 

『やれやれ、分かったよ。こいつが私の力を求めない限り覇龍化はしないと約束する。姐さんも私の封印に力を使っちまって自分の封印を振り解くことも出来ないだろうし、取り敢えずこの場を切り抜ける程度で今回はまた寝るさ』

 

凛音は遥か上空にまで羽ばたき一気に加速、その場を離脱した

そうか、俺はあの時、凛音に助けられたのか

そして人界に帰還したというわけか

 

「凛音…頼んだよ………」

 

「…ちっ…白龍神王には逃げられたか。まあ、よい。討伐神を封印出来たのだ。最優先の目的は果たせた。どちらにせよ、あのまま戦えば全滅は免れまい…」

 

天乃、貴様はこの時、俺を追うべきだったんだ。そうすれば俺を殺せたのに

詰めが甘かったせいで、結局貴様は俺に殺されるんだからな

 

『そうだな、天乃はあの時、私達を殺すべきだった。人界に着いた時には私も残りの力を使い果たし、眠りについたしな』

 

凛音か。これは夢なのか?それとも末期の走馬灯か?

 

『夢さ。お前は死んじゃいないよ。天乃との戦いで覇に呑まれかけ、今お前は瀕死ではあるが生きている。回復も進んでる。良い機会だからな、お前が封印されていた過去の記憶を夢として、私が見せたのさ。これからのお前にはおそらく必要な事だからな』

 

そうか。ありがとう、凛音。俺に大切なあの人との記憶を見せてくれて

夢とはいえ、奏女様の顔を見れて、声を聞けて、ぬくもりを感じられて、嬉しかったよ

 

『なら良かった。これからお前は私の力を制御出来るようにならなきゃいけない。そのためには力を付け、何よりも決して覇の理に呑まれぬ覚悟と強い意思が必要だ。姐さんが教え、お前が受け継いだ矜持と王としての覚悟で乗り越えて見せてくれ。私も永い間、宿主を転々とするのにも疲れた。そろそろ腰を落ち着けたい。だから死んでくれるなよ?』

 

ああ、俺は死なん。あの人に助けられたんだ、早々に死ねんさ

絶対に覇龍の力をものにしてみせる

 

『その意気だ。私も出来る限り協力するさ。逝っちまった姐さんのためにもな』

 

ああ、世界に魅せ付けてやろう。あの人が残した俺という残り火を

 

俺は王として誓う

焼き尽くそう。この世のあらゆる全悪を

護り切ろう。俺を必要とする全ての民を

君臨しよう。あまねく理の頂点に

在り続けよう。誰よりも誇り高き王として

 

燃え尽き、灰に成ってしまった…あの安らぎの日々を無に帰さぬために…

 





白龍神王、凛音と本格的に意志疎通が出来る様になりました!
やったね!これでパワーアップは確実だね!

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