いずれ真理へと至る王の物語   作:Suspicion

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大変お待たせしました




告げられる出来事、王の目覚め

「バロム様、単刀直入に聞きます。瑞稀様が絶対神戦で使った力はなんなんですか」

 

瑞稀の妻達が険しい目付きでバロムに詰め寄る

 

プラエトーリウム・ソムヌスにて瑞稀の回復の目処が立ち、瑞稀の妻達を代表し、瑞稀が使用した力を知っているであろうバロムにワルキューレが問う

 

「本当に単刀直入ですね。正直私にも何が何だかさっぱりで─」

 

「冗談はやめて下さい。貴方は、貴方方3人はあの力を知っている。そうですよね?バロム様、刻龍様、斬鉄様。戦いの後、瑞稀様を運ぶ際、貴方方3人が深刻な顔で話しているのを目撃した人がいます。何か心当たりがあるようですが?」

 

ワルキューレが殺気すら滲ませ、バロムだけでなく、刻龍、斬鉄の2人にも問う

 

「……」

 

「えーと…それは~…」

 

「…はぁ…」

 

刻龍は黙り、斬鉄は明らかに動揺を示す

そんな2人を見てワルキューレ達は更に怒気を増させる

そんな状況にもう誤魔化しが効かないとバロムは判断する

 

「…分かりました。お話します」

 

「バロムさん、しかし今は!」

 

「そうだ!まだ早い!」

 

刻龍と斬鉄がバロムを制止しようとするが、バロムは普段のおちゃらけた雰囲気は微塵も見せず、真剣そのものだった

 

「目覚めてしまったものは仕方ない。むしろ奥方達に説明しないのは道理が通らない。おそらく既に瑞稀様は深層意識内で白龍神王とある程度繋がってしまった。再封印は現実的じゃない。何より暴走してはもう今の我々では止められない。ならば奥方達には説明し、暴走のリスクを最小にするべきだ」

 

バロムの剣幕にその場の誰もが気圧された

それほどまでに事態は深刻なのだと告げる様に、バロムは重苦しい程の真剣さを見せた

 

「さて、順に説明しましょう。まずあの力は覇龍化(ジャガーノートドライブ)と呼称されるものです。その身にドラゴンの力を宿す者が使う、ある種の覚醒状態です」

 

「ドラゴン?みーちゃんにドラゴンの力が?」

 

「あります。とんでもないドラゴンが瑞稀様に宿っています。そのドラゴンの名は、真なる白龍神王マナスヴェイン。二覇龍、と呼称される、全次元史上最悪のドラゴンの片割れです」

 

「二覇龍?!あの全ての世界を滅亡一歩手前まで追い込んだって言われてる、お伽話に出てくる、あの二覇龍ですか?!実在していたなんて…!」

 

ワルキューレが信じられないとばかりに声を荒げる

 

「実在したんです。他者の魔素核の最奥、深層魔素に封印され、現代に至るまで宿主を替えながら存在し続けている。そして瑞稀様は今代の宿主なんです」

 

瑞稀が史上最悪のドラゴン

先の戦いで瑞稀が使った覇龍化が、信じがたいバロムの発言を真実なのだと証明している

 

「二覇龍は通常、休眠状態にあり、宿主に与える影響は非常に少ない。しかしなにかのきっかけで目覚めた場合、最終的に宿主の意識を喰らい尽くし復活。二覇龍同士で争い、その都度、とある人物に討伐されてきました。まあ今はこの話は割愛します。とにかく瑞稀様が先の戦いで使った力は白龍神王の覇龍化です。魔素核が傷付いてしまったのは、その力を抑え切れず暴走したからでしょうね」

 

「…意識を喰らい尽くすとは具体的にどのような状態になるのですか?」

 

「言葉通り、瑞稀様としての意識、魂が白龍神王に乗っ取られます。正確に言うなら瑞稀様の魔素核が白龍神王の魔素核に書き換えられ、瑞稀様という存在は完全に消失します。即ち、瑞稀様を生贄とし、白龍神王の完全復活を意味します」

 

「…そんな…防ぐ方法はないんですか?」

 

「魔素核への浸食が始まれば止める事は出来ません。瑞稀様の存在を繋ぎ止めるという意味なら、白龍神王が瑞稀様を喰らい尽くす前に、瑞稀様を殺す事くらいです。そうすれば瑞稀様は瑞稀様のまま死ねます。しかしその前に白龍神王が完全復活してしまえば、瑞稀様という存在は消失し、再び世界は滅亡の危機に晒されるでしょう」

 

バロムの説明に全員が絶望する

目覚めれば瑞稀は消え、世界が滅ぶかもしれない

 

おそらく瑞稀自身、こんな事は望まない。基本的にお人好しで、自分より民の幸せを願う王。魔王として敵対者には冷酷非情になるが、決して非道でも、残酷でもない。

 

「世界が滅ぶ事は瑞稀様自身、望む事では無いでしょう。いっそ、その前に─」

 

「その前に、なんだ?バロム、お前が俺を殺すか?」

 

「そうです。望まぬ滅びを背負わせるなら私が──はい?」

 

「?」

 

バロムと瑞稀の目が合い、そこで皆が瑞稀の存在に気付いた

 

何を驚いているだ?こいつはお馬鹿さんなのかな?と言いたげな瑞稀の顔がムカつく

 

「瑞稀様!?目を覚まされたのですね!良かった!本当に…良かった…このまま目を覚まさないかと…ずっと不安で…!」

 

安堵のあまり、泣き崩れるワルキューレを抱き止める瑞稀

もう離さないと言うようにワルキューレは、瑞稀に抱きつき、静かに涙を流す

 

「ワルキューレ、すまん。いらぬ心労をかけた。もう大丈夫だよ。こんな綺麗な女をほったらかして、死ねぬよ。どこにも行かない。傍に居るよ、もう大丈夫だから」

 

「はい…!どこにも行かないで…傍に居て下さい…!もう…置いていかないで…」

 

優しくワルキューレを宥める瑞稀に刺客が迫る─!

 

「み゛~ぢゃ~ん!よ゛がっだよ~!じんばいさせんなよ~!」

 

涙と鼻水と涎で顔ぐちゃぐちゃの唯が両手を広げ、飛び掛かる!

 

「心配かけたな、唯。すまんな。でも泣きすぎ。涙と鼻水と涎で顔ぐちゃぐちゃだぞ。人に見せられる顔では無いぞ。はっきり言って汚い。顔拭け。おい!その顔で俺に寄るな!汚い!鼻水!涎!付く!拭け!まずは顔を拭け!!」

 

唯を抑えながら、叫ぶ瑞稀。いつも通りである

 

そこからは抑えが効かなくなった皆が、泣きながら雪崩れ込む

 

「ダーさんのバカ!心配させ過ぎよ!いくらなんでも自愛を持ってよ!!」

 

ルーシアが抱き付き

 

「瑞稀さん、もう大丈夫なんですか?!暫くは絶対安静ですからね?!」

 

「まあ、確かに信じてはいましたがね。でも暫くの間は大人しく休んでもらいましょう」

 

真央、火皿が案じ

 

「瑞稀さんがあの程度で死ぬわけないじゃない!なんたって瑞稀さんは最強なんだから!」

 

「そうだ!瑞稀は余の夫だからな!最強なのだ!故に心配などする必要は無かったな!」

 

ハル、ロザリンドがはしゃぎ

 

「未だ目覚めたばかりなんだぞ、油断は出来ん。が、ひとまずは安心、といったところか」

 

マリーが安堵する

 

「…信じられん!覇龍化であれほど弱っていたのに…!もうお目覚めになるとは…なんという頑強さ…!」

 

バロムは想定を超える瑞稀の魔素の頑丈さに驚きを隠せない

 

「あの御方の力は我々の想定を越えていた…ということですね。私としては喜ばしい誤算ですがね。とにかくよかった…本当によかった」

 

「だんな~!よかった~!!」

 

刻龍、斬鉄は純粋に瑞稀の目覚めを喜ぶ

 

「マスター、お帰りなさいませ。御帰還をお待ちしておりました」

 

夜宵が寄り添う

 

「おい!誰か助けろ!!病み上がりに唯の馬鹿力はヤバい!!というかどいつもこいつも離れろ!目は覚めたが病み上がりだ!怪我人だぞ!いや病人か?とにかく痛いから!ホントに痛いから!!後ずっと寝てたから腹減ったし飯食わせろ!!煙草も吸いてぇんだよ!!だから頼む!!離れろ!!!」

 

瑞稀の目覚めの報せは瞬く間に魔界中に知れ渡る

 

民は歓びを謳う

 

「瑞稀様が目を覚ましたらしいぞ!!今日はめでたい日だ!!王の目覚めだ!!」

 

「やったー!!我らの英雄の、偉大な王が目覚めたぞ!!!」

 

敵対者は怨嗟を謳う

 

「口惜しい!!狂嵐め!目覚めやがった!!」

 

「銀狼共め!どこに奴を隠してやがった!!見付け出してトドメを刺してやろうと思ってたのに!!!」

 

ある者は称賛を述べる

 

「へぇ、凛音の力に飲まれなかったか。面白いな。こんなの初めてだ。しかもあの小僧から感じるこの魔力は、姐さんの魔力だ。こりゃ面白く成りそうだ。さて、蛇が出るか、鬼が出るか。いやこの場合は龍が出るか、王が出るか。これが正しいかな。精々愉しむとするかね」

 

そしてある者達は──

 

「我が主よ、先の神界と魔界の大戦で絶対神を屠った白龍神王、狂嵐の魔公子が目覚めた様です」

 

「─そうか。まあ、魔王如きどうでもよい。いくら凛音と言えど儂の下にはたどり着けまいよ。警戒する必要は無い」

 

様々な思惑の中、尚面白いと嗤う者

白龍神王を知り、尚警戒は必要無いと宣う者

 

『はてさて。これからが大変だぞ、瑞稀。私の力を巧く手懐けろよ?さもなくば覇の理はお前を喰らい尽くす事になるぞ。姐さん、これで、良かったんだよな?姐さんに受けたかつての恩は、姐さんが愛したあの子に返すよ。私も出来る限り協力するからさ、あの子を見守ってやってくれよ』

 

かつて受けた恩義に報いるため、深層魔素から見守り続けた瑞稀の、力と成ると誓う白龍神王、凛音

 

そして──

 

『ふむ、白龍神王の力を得る。此度は回り道が好きだな。それもまた、一興か。歩みは遅く、道程は未だ遠い。滅びは遥か先。裁定の時は今ではない。だが、そう遠くはあるまい。龍が滅ぼすが先か、自ずと滅ぶが先か。はたまた、此度こそは終焉へと至るのか。微睡みながら待つとしよう』

 

深層魔素、その更に奥底、微睡みに揺蕩う者も目覚めが少しずつ、少しずつ、近付いている

 

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