「新しい絶対神の就任が決まったそうです」
瑞稀が神々を討ち倒し、戦争で負った傷も癒え、戦後処理や内政にあくせくし始めた頃、神界の新たな絶対神が決まったと、瑞稀のもとにバロムから報告が届く
「そうか。心底どうでもいい。魔界に害が無いならそれで良し。あるなら殺す。それだけだ」
「それがですね、新しい絶対神、女神でかなりの美人らしいんですよ!しかも巨乳!!興味ないですか?私は興味津々です!」
女性、美人、巨乳
それだけでバロムは大興奮、変態である
ちなみに瑞稀も多少興味を示す。瑞稀もまた、変態である
大戦で死にかけ、夢の中でかつての記憶を取り戻した瑞稀は、色々とはっちゃけてしまい、大の巨乳好きという性癖をまったく隠さなくなり、むしろ積極的に見せるようになっていた
つまる所、むっつりがオープンエロになったのだ
「……興味はある。だがそれがどうした?相手は絶対神、俺達は魔族。関わり合いになることなぞない。あるとしたら戦場、敵同士だ。殺し合いになるしかない。まあ…一目拝みたくはあるがな」
「それがですね、その新たな絶対神が近々魔界に来るらしいんですよ!」
「はあ?絶対神が魔界に来る?なんで?また戦か?」
「貴方に会いに来るのよ!瑞稀!ちなみに絶対神じゃなくて代行ね!絶対神はまだ決まってないんだって!」
誰が呼んだか、ドアをすごい勢いで開けメルフェレス様が現れる
騒ぎが起こりそうな所にこの人は大抵現れる
「俺に?なんでまた。あとメルフェレス様、来るなら来ると言って下さい。ていうか貴女は正真正銘この魔界の王なんですから、ご自身で来ないで御呼び頂ければ、こちらから赴きますから」
「いやよ!待てないわ!だって面白そうじゃない!!代行とはいえ絶対神が魔界に来るのよ!それだけでも前代未聞なのに、前任の絶対神を殺した魔王に会いに来るなんて!これは絶対に面白くなるわよ!!ねっ!バロム!」
「そうですね。我々は所詮他人事ですからね、ぶっちゃけ面白いです!」
楽しそうにハイタッチを交わす二人
瑞稀は溜め息を吐き、こいつらもうやだ、と言いたげに天を仰ぐ
そこに続々と瑞稀の妻達も参戦する
「でも何のために、わざわざ瑞稀様に会いに?あちらも戦後処理で大変でしょうに」
「普通に考えたらみーちゃんに会いに来る用事なんてなくない?だってこいつ魔王よ?神様が魔王に用事なんてないでしょ」
「「「「「「確かに」」」」」」
ワルキューレと唯の言葉に全員が声を揃えて同意を示す
「俺も心当たりなぞある筈もなく、検討もつかないな。何のために来るのやら…あと唯、旦那に向かってこいつとか言わない」
「どちらにせよ、面白くなりそうだわ!!」
「お目通り感謝致します。はじめまして、この度絶対神代行を任されました、
後日本当に絶対神代行が来た
前任の天乃と違い、物腰柔らかな慈愛に満ちた雰囲気を湛え、微笑みすら浮かべ、女神は謁見の間にて、師誓将や魔王軍に囲まれているにも関わらず、護衛も連れず一人でやってきた
おそらく敵対心が無い事を示すためだろう
「いえこちらこそ、この度はわざわざ魔界にご足労下さり、感謝申し上げます。改めまして、序列二位の魔王、狂嵐の魔公子、瑞稀と申します。篝殿、歓迎致します」
あくまで魔王として接する瑞稀
辛うじて誤魔化せてはいるが、実際はバロムや魔王軍の野郎連中共々、絶対神代行の容姿に釘付けになっていた
背中まで伸びた艶やかな黒髪を、白い布でポニーテールに纏め、下は緋袴、上は金細工の施された水干と呼ばれる和装
優しく垂れた切れ長の瞳、綺麗に通った鼻筋、薄く紅を引かれた艶やかな唇
かなり整った容姿をしている
なにより男達の目を引くのは、体型が隠れてしまう和装を纏って尚、一目で分かってしまう
バロムや魔王軍はガン見、瑞稀は平静を装いながらチラ見
魔界の男は皆、ただの変態である
「それで早速本題に入らせて貰いますが篝殿、何用で参られたのでしょうか?代行とはいえ絶対神である貴女が、何故魔王である私を?」
『瑞稀、まともに女の乳も見れんとは、魔王も大変だな』
(凛音うるさい、会話に集中しないとどうしてもおっぱいに目が行くから話しかけんな)
『この変態め』
心の中で白龍神王、凛音にからかわれながら平静をなんとか装う瑞稀、少しだけ悲しそう…
「…瑞稀殿、貴方は何故前任の絶対神を討ったのでしょうか?私はそれが聞きたかったのです。最後の戦い、あの状況ならば討たずとも魔界の勝利は確定していた。聞けば貴方も覇の理の暴走で生死の境をさまよったと聞いています。何故そうまでして天乃を討つ必要があったのでしょうか。貴方が苦しんでまで、自身の命を削ってまで討つ必要があったのでしょうか。何が貴方をそこまで駆り立てたのでしょうか。それをお聞かせ願いたいのです」
彼女は真剣そのものだった
何故そうまで痛みを自身に強いるのか
そこまでして天乃を殺さずとも、戦争に勝つだけなら他にも方法はあった
それなのに何故
彼女はそう問おていた
瑞稀もまた、彼女の問いに先程まであった浮わついた気持ちを失くし、王として毅然とした態度に変わる
一応王様だから、変態だが切り替えは早いのだ
「そんな事ですか。簡単です。奴をあのまま生かしておけば、必ず犠牲が出る。奴がどの様な神か、知らぬわけではありますまい?祈りを捧げる者を救う事も無く、助けを必要とする者を助ける事も無く、そのくせ自身を崇めねば不条理に天災を起こし人々を苦しめ、自身の邪魔だと感じればどの様な汚い手段を取ろうと排除する。その様な神なぞ害悪でしかない。篝殿、私はね、奏女様の、討伐神の弟子だったんですよ」
「奏女様の弟子!?そんなだってあの方は天乃に…」
「はい。幼い頃、私を庇って目の前で殺されました。奴は師の仇でもある。何より私は奏女様の教えを破りたくなかった。あの人の信念を守りたかった」
「奏女様の信念…力有るものには力無き者を護る義務がある…」
「そうです。それこそ奴を討った理由であり、あの人から託された私の信念です」
その場に集った魔界の者達は皆、誇らしげだった
見たか、新たな絶対神。この方こそ偉大なる我等の王だ
皆がそう思った
「なるほど、理解しました。貴方は私が思っていた以上に偉大な王ですね。素晴らしい。それでこそ会いに来た意味もあると言うものです」
嬉しそうに笑う篝に瑞稀除く男達は目がハートである
見たか、新たな絶対神。これこそが魔界名物、HENTAI魔族である
「そんな貴方に相談があります。実はこちらが本題なのですが、聞いて頂けますか?」
「相談?神が魔王に?まあ、貴女は天乃とは違う。単身、魔界にご足労下さったのだ、無下にしません。聞きましょう」
「ありがとうございます!ああ!貴方は本当に素晴らしい人ですね!」
嬉しそうに笑う篝、目がハートな魔界のHENTAI共
ちなみに瑞稀も少しだけときめいている、少しだけ
(なぁなぁ凛音、この絶対神可愛くない?)
『めっちゃ可愛いな。不覚にも私、少し滾ってきたぞ』
(お前は女だろうが)
民がHENTAIなら王もHENTAIだった
宿主がHENTAIなら白龍神王もHENTAIだった
互いに魔界に影響されたのだろう。そう思いたい
「現在神界は、先の戦にて古い神々が討たれ、立て直しが非常に難しい状態にあります。しかも最高神様がこれを機会に、二度と天乃の様な神が出ぬ様にと、裏で悪事を働いていた不貞な者共を大規模粛正し、お恥ずかしい事ですが、殆どの戦神が粛正されるという結果に。それもあり、現在、戦神が機能しない、絶対神選出も出来ぬという状態に」
「あー…なるほど。つまり我々のせいで立て直しがきかないと。それで?我等魔界になにか?」
篝の発言に一瞬申し訳なさそうな顔をした瑞稀だったが、次の瞬間には逆に剣呑な雰囲気を醸し出す
敗戦国の分際が、戦勝国に責任でも取れと言い出すつもりか。そちらから戦争を仕掛けておいて、支配下に置かれなかっただけ、有り難く思え
言外にそう言いたいのだ
「いえ!元はといえば我々神界から始めた戦ですし、戦神の粛正はこちらの内部問題です故、貴方方魔界に非はありません!ただ、それにより有力な絶対神候補が存在しないのです。ですので、瑞稀殿、貴方に…絶対神になって頂きたいのです!!」
「は?俺?」
「「「ハァァ!?魔王が絶対神?!」」」
その場に集う皆が驚愕した
当然だ。過去、一度たりとて魔族が戦神になった事など無い
ましてや瑞稀は、先代絶対神を殺した張本人
本来あり得ない事だ
「…理由を問おても?今や瑞稀は魔界の英雄。はいそうですかどうぞ、とは言えない。魔界の民も認めはしない。生半可な理由で渡すわけにはいかない。渡す道理もない」
今まで口を挟まず、玉座にて見守っていたメルフェレス様が、微笑みを浮かべながらも、剣呑な雰囲気で問い質す
「理由は3つあります。1つ目は彼の人柄です。覇の理を掲げた覇王であるにも関わらず、民を思い、民を護るために戦う。力無き者を護り、力無き者のために政を執り行う。その様な方こそ絶対神になるべきです。2つ目は彼の戦闘力の高さです。驕るわけではありませんが、神界は理を護り、全次元を導くべきです。必然的に強大な力を持つ者を絶対神に据えるべきです。彼が絶対神足り得る力の持ち主であるのは明白です。3つ目は彼の力の危険性です。最高神様は、瑞稀殿が、正確には白龍神王が、いずれ全次元の驚異になりかねない、と考え、絶対神に据え、最高神様御自身の力で、瑞稀殿の暴走を未然に防ぎたい、とお考えの様です」
「…なるほど。絶対神に据える以上、瑞稀の人柄の良さも理由だ。と言い訳にし、結局の所、あなた方神は、瑞稀を王としてではなく、白龍神王として、生物兵器として手元に欲しい。もしくは最悪、暴走するなら早々に封印、または抹殺するために手元に置いておきたい、といった所かしら?」
未だ微笑みこそ浮かべているが、殺気すら滲ませ、メルフェレス様が篝に問う
「そんな!違います!!確かに白龍神王の力は危険だと考えておりますが、最高神様は瑞稀殿は絶対神足り得る器の持ち主であると仰っておりました!!それに、私の個人的な意見ですが、瑞稀殿は今の世界の在り方に疑問を抱いておりますよね?」
「…確かに。護られるべき、力無き者が護られず、意味も無く散り逝く今の世界は間違いだと、魔王に成ってからずっと思ってはいます」
「ならば!貴方自身が神となり、世界を変えるのです!私はここに来るまでに可能な限り、貴方の事を調べました!だからこそ分かる!!貴方ならば全ての命を護る事が出来る!貴方ならば世界をより良いものに導ける!出来るだけの力と意思がある!!」
「─ふざけるなよ。どんな綺麗事を宣った所で、貴様等神が、瑞稀を王ではなく、白龍神王としてしか見ていないのは一目瞭然ではないか!!絶対神足り得る器?全ての命を護る?ふざけるな!!自らの我欲のために瑞稀を裏切り、貶め、魔界に追いやった人間共まで、護れと言うのか!?我等の民を殺し、魔王の誇りを傷付けた天使共まで、護れと言うのか!?瑞稀の恩師を、最愛の人を殺した貴様等神すらを!!護れと言うのか!?自らの感情を捨て去る事が絶対神足り得る器か!?ふざけるな!!!その様な戯れ言、私は魔界の王として、瑞稀の主として、断じて許しはせぬぞ!!!!」
玉座から立ち上がり、普段は浮かべている微笑みすら引っ込め、メルフェレス様が叫ぶ
瑞稀を思い、憤怒を撒き散らす
普段は見せない王として激しさ、魔力を惜しみ無く撒き散らす様に、その場に集う全ての者が、押し潰されそうな重圧を感じていた
─瑞稀1人を除いて
「メルフェレス様、お静まり下さい。その様に恐怖を振り撒くのは、貴女ではなく、他の魔王の役目でしょ?皆が不安がります故、いつもの様にどうか微笑みを絶やす事無き様、お願い致します」
この場で最も怒りを覚えているであろう瑞稀の言葉に、メルフェレス様は言葉を失う
穏やかな瞳、微笑みすら浮かべ、瑞稀がメルフェレス様に跪き、諌める
「…っ………………ごめん。そうね、瑞稀の言う通りね。篝殿、先程の暴言、深くお詫び致します。皆もすまなかった。魔王のお茶目と笑って許せ」
玉座に座り、篝に頭を下げるメルフェレス様
先程までの殺気は嘘の様に無くなっていた
「篝殿、申し訳ないが時間を貰いたい。急な話故、俺もすぐには返事は出来ぬ。1週間後に答えを出そう。それで構わぬか?」
抑え切れぬ怒り故か、敬語が無くなる瑞稀
瑞稀の瞳が魔力の昂りに影響され、瞳孔が細長くなり、真っ赤になっていた
「構いません。むしろこの様な話を最後まで聞いて頂き、感謝致します」
早々に話を切り上げる瑞稀
これ以上は危険だ。メルフェレス様がまたいつキレるか分からない
師誓将も怒りを覚えている
自身も怒りを抑えるのが難しくなって来ていた
「バロム、篝殿を客間に案内して差し上げろ。"くれぐれ"も失礼の無い様。他の者達にもそう伝えよ」
比較的冷静なバロムに篝を任せる
それでも念のため、釘は刺す
二重の意味で釘を刺す
決して危害を加えるな、加えさせるな
あと、手を出すなよ。性的な意味で
バロムならあり得る。彼はHENTAIの中でも特級だから
「畏まりました。では篝殿、こちらへ」
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
バロムが先導し、篝を客間に案内する
瑞稀の言葉の意味をしっかりと分かっていた故か、バロムは去り際に瑞稀を怨めしげに見つめる。残念そうに去るのだ
やはりバロムは変態である
そして2人が十分離れたのを確認して、メルフェレス様が吼える
「マジでありえないんですけど~!!!なにあれ!!魔王に絶対神やれってだけでもありえないのに!!なんなの!あの言い草!!な~にが、貴方自身が神となり世界を変えるのです、よ!!ふざけんなっつうのよ!!偉そうに宣うならてめえがやれや!!な~にが、白龍神王の力が全次元の驚異になりかねない、よ!!分かってるわ!!だから制御するための訓練だってしてるのよ!!な~にが、最高神様自身の力で白龍神王の暴走を未然に防ぐ、よ!!うっせえわ!!出来るわきゃあないでしょ!!出来たら苦労しねえわ!!そんな事、出来るなら理の神々も苦労しなかったしぃー!!1人の力で白龍神王を抑え込めるなら、全次元が滅びかけるわきゃあないでしょ!!なんなの!?アホなの!?アホなのね!?神共はアホしかいないのね!?よし!!滅んじまえ!!その方がきっと世界はうまくまわるわ!!」
「どうどう。落ち着いてください」
「落ち着けるか!!瑞稀はムカつかないの!?あんな露骨な事言われて!」
「ムカつきはしますがね。彼女自身は悪かないでしょうね。おそらく最高神辺りの考えじゃないですか?」
「かぁー!!このお人好しは!!どうせあの女が巨乳で美人だからでしょ!!この変態!!!」
「…いや、流石に私情は挟みませんよ。バロムと一緒にしないで下さい」
メルフェレス様は子供の癇癪の如く怒鳴り続ける
瑞稀にまで八つ当たりしながら地団駄を踏みまくる
瑞稀は怒りを通り越し、疲れを全面に出す
他の師誓将はメルフェレス様のブチギレ様に、怯えている者すらいる
この場に集まった魔王軍に至っては、怯えて気絶する者すら出ていた
「…はぁ…もう嫌だ…疲れた…」
(世界を変える…か。奏女様、俺はどうしたらいいのでしょうか…)
「クソがよぉーー!!!!!!」
次からは次章です
また間隔空くかなぁ…
申し訳ありません