いずれ真理へと至る王の物語   作:Suspicion

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前回、今回から次章と言いましたが、あれは嘘です!!

ごめんなさい。計画性がなく本当にごめんなさい



誰が為に

鬱蒼と茂る森の中を、ただ進み続ける

その眼は惑い、覇気もない

しかし、その身からは絶えず力を放ち続ける

力を放ち続けなければ、この森の中でまともに歩く事すら出来ないと知っているから

 

「……」

 

何かを探して、周囲を見渡しながら歩みを進め、見覚えのある場所に出る

懐かしさ、安堵、悔恨。様々な感情が入り乱れる

 

「…ここはあの頃と何も変わっていないな…」

 

ここは魔の森の中央部

かつて瑞稀が師と共に在りし頃の思い出の地

 

絶対神代行・篝から、絶対神への誘いを受けて6日が経ち、明日には答えを出さねばならない

そんな状況でありながら、未だ瑞稀は迷っていた

 

魔王として、魔界を護りたい。彼等の王として、彼等と共に在り、彼等を護る事こそが自分の為すべき事。そう在れかしという魔王としての矜持

 

神と成り、あらゆる理不尽から全てを護りたい。あまねく全てを導き、生きとし生ける者が分け隔てなく幸福を謳う。そんな世界にしたいという理想論

 

瑞稀は答えを出せずにいた

世界を変える理想と、魔王としての矜持の狭間で揺れていた

故に赴いた。自身の原点、自身をここまで導いてくれた師が眠る、この場所に答えを求めたのだ

 

「…何のためか知らんが、結界が張られているな。凛音、お前が張ったのか?」

 

『私じゃないぞ。あの時は、目覚めてすぐに姐さんに封印式をブチ込まれたから、そんな余裕はない。それにこれは時止めの結界だな。姐さんの封印が経年劣化で解けるのを防ぐ為に天乃が張ったのかね?うーん、でもこの結界、失伝魔法(ロストミスティック)なんだよなぁ。あいつが使えるとは思えないな。しっかし、こんな古臭い魔法の使い手が、今の時代に残ってるとはね』

 

時止めの結界とは、その名の通り、結界内の時間経過を止める強力な魔法

強力ではあるが、活躍する場が限られ過ぎて、廃れてしまった失伝魔法(ロストミスティック)と呼ばれる、失われた魔法の1つなのだ

そんな魔法、使い手はかなり限られる

 

「時止め?じゃあまさか、中はあの頃と変わっていない?」

 

『見た感じ、そうだね。おそらく私達が逃げて、すぐ位に張ったんじゃないかな。だとすると中はあの時から止まってる状態だと思う』

 

「…っ…」

 

結界内があの時と同じだとすると、瑞稀の師、琥牙奏女太刀乃神の遺体がそのままという事になる

 

『あの人の遺体を見ることになるが、大丈夫か?辛ければやめてもいいんだぞ?今日1日よく考えればいい事だ。無理をするな』

 

「凛音の言う通りです。マスター、無理せず戻りましょう?」

 

「…いや、行こう。あのまま冷たい地べたに寝かせ続けるのは心が痛い。ちゃんと奏女様を弔わないと。じゃなきゃ叱られる。この恩知らずが!そんな風に育てた覚えはない!てね」

 

凛音と夜宵に心配されながらも、思い出し笑いを浮かべ、瑞稀は意を決して結界を破る

 

王として君臨するか、神と成り導くか

どちらを選ぶにせよ、奏女様を弔い、しっかりと過去の痛みの精算を行わなくては前に進めない

 

「…奏女様を探そう…凛音、案内を頼む」

 

『分かったよ。だが無理だけはするな。あまり精神に負担をかけすぎると、覇の理の暴走を引き起こしかねないからな?』

 

「ああ、理解している。無理はしないよ」

 

瑞稀は凛音の案内を頼りに、1人森の中を進む

 

 


 

「遺体が無いな」

 

『うん、綺麗に遺体だけが無いな』

 

凛音の案内で、かつて天乃により奏女様が封印された場所に着いたが、遺体が無い

時止めにより、当時から変わらず乾いていない大量の血、瑞稀と凛音の暴走で吹き飛ばされた木々

間違いなく場所は合っている

けれども在るべき場所に遺体が無いのだ

 

「ちなみにさ、あれ、なんだと思う?」

 

『真っ赤な炎。火炎球。色こそ似てはいるが、多分姐さんの炎ではないと思う。ただこれ、相当ヤバい火力だぞ』

 

「やっぱりそうだよな。なんなんだ、あれ」

 

本来、ここにはない筈の紅い炎の塊がそこにはあった

時止めの影響か、はたまたそういうものなのか、その炎は周囲を一切焼くことなく燃え続けている

途轍もない魔力を発している事から、魔法なのは間違いないのだが、誰が、何のために、どうやって、この様な場所に魔法を設置したのか、全てが謎なのだ

 

「…とにかく遺体が無いんじゃあ弔いは無理そうだな。あの炎も俺の手に余るし、小屋に行こう」

 

『分かった。まあ、あれだけの炎だ、放置するしかないな』

 

念のため、周囲に被害が及ばぬ様に、瑞稀が炎の周りに結界を何重にも張り、その場を後にする

かつて師と2人で住んでいた小屋へと向かいながら、瑞稀は凛音と奏女様との思い出を語り合った

 

『私とリーベ、ああリーベてのは黒龍神王の事な、二覇龍の片割れ。とにかく私ら二覇龍はさ、餓鬼の頃、奏女姐さんに育ててもらったんだ。まあ5年位の短い間だがね』

 

「へえ…その頃は奏女様は若かったのか?」

 

『そうだなぁ…少なくともお前が知ってる姐さんよりは若かったな、見た目は。中身は何も変わっちゃいなかったがね。いや、少し穏やかになってたかな?』

 

2人が思い出話に花を咲かせる傍ら、人型になった夜宵は、瑞稀の後ろを歩きながら考え事をしていた

 

(…あの炎、まさか彼の?いや、それにしても強力過ぎる。出力は私ですら超えている。彼にそれ程の力は無い。何よりあの子は既に力を失っている。魔力は彼のものに非常に似てはいるが、あまりにも強力過ぎる。では一体誰が…彼の継承者?いや、理由が無い。それに彼の継承者と言えど、あれ程の炎を操れるか?おそらく無理だろう。となると私が知る限りでは、候補は母しかいない。しかし創造神である母は、とうに消えた筈。私との契約の繋がりが消えた以上、それは間違いない。それにマスターの師、琥牙奏女太刀乃神の外見が母に瓜二つであることも気になる。マスターの夢の中で見た限り、性格はまったく似ていないが、外見は似ている。母の胸を少し大きくして、身長を伸ばし、髪を茶色にすれば、見分けは付かない程に似ている。彼女は一体、何者だったのか、あの炎はなんなのか…彼なら知っているかもしれない。あの病的秘密主義者め、追及する必要がありそうですね。)

 

「夜宵?どうした?なにやら苛ついてる様だか」

 

「へ?いえ、何でもありません!苛ついてなんかいませんよ?」

 

『なんだぁ?偉大なる夜宵様は、愛しのマスターを私に取られておこなのかな?ん?おこなの?ねえねえ、おこなの?ヤキモチ妬いちゃったのかなぁ?お姉さんに素直に言ってごらんよ?』

 

「あぁん!?別にヤキモチじゃないですけど!!鬱陶しいんで絡まないでくれます!?あと、私の方が年上ですから!!」

 

『なんだ、ババアか。生娘の上にババアとは、救い難い年増よな』

 

「…!!誰がババアですか!!いい加減にしてください!!!」

 

『お?ババアは否定しても、生娘は否定しないんだな。世界創造から生きているのに処女とは、見た目と言動はイケイケなのにな。そっか!処女拗らせてイケイケ痴女みたいになったのか!なるほどなぁ。瑞稀、気を付けねば犯されるやもしれんぞ』

 

「誰が痴女だと!?失礼にも程がありません?!それに世界創造から生きていると言っても、私は母が居なくなってすぐに封印宮で砕けた(自決)ので相手なんか居るわきゃあねえでしょう!!あと、私はマスターの神器ですよ!?マスターが望むのならバッチ来いですが、私から無理矢理など出来るわきゃあねえでしょうが!!そりゃしてえけどよ!!処女にはハードル高過ぎだろ!!この、アホドラゴン、少しは物事考えてから言ってもらえねえでしょうかね!!」

 

凛音にウザ絡みされ、夜宵様は泣きたかった

キレ過ぎて最早ヤケクソである

 

『…私が悪かった…その話は瑞稀としてくれ…』

 

「…聞かなかった事にする…」

 

「マスター?!」

 

そうこうする内に小屋に到着した瑞稀は、先程までの喧騒が嘘の様に、静かに扉を開いた

 

「………」

 

本当に何も変わらない

つい先程までここには瑞稀と奏女様の2人が居たかの様に、当時のままだった

 

訓練に使用していた2本の刀、飲みかけの水が入った2つのコップ、夕飯にと切り分け焼かれた肉、食べたあとに入ろうと温められた風呂、2人が寄り添い眠っていた布団

全てが変わらず、そこに在った

 

「…あ…」

 

こら!瑞稀、起きたなら顔洗いな!

 

瑞稀、好き嫌いせずに食べな!大きくなれないよ!

 

刀を振る時は腕だけで振ろうとするな!身体全体で振るんだ!

 

ダラダラしてなくていいから早く風呂に入りな!

 

さ、寝るよ。おいで?

 

「…っ…」

 

瑞稀の中で思い出がフラッシュバックする

ずっと抑えていた感情が一気に膨れ上がる

 

「アアァアアァアアァアァアァァ!!!!!!!!!!!」

 

大粒の涙を流しながら、抑え切れない感情に任せて叫ぶ

悲しみが止め処なく溢れ出し、瑞稀の心を染め上げていく

 


 

どれほど泣き叫んだだろうか

喉は枯れ、涙も枯れ果てたかの様に、瑞稀は微動だにしなくなっていた

 

『無事か?』

 

「マスター…」

 

2人が語りかけ、やっと反応を示す

その眼に迷いはなく、強い決意を宿していた

 

「…俺は神と成る。そして全ての絶望からあまねく希望を護る盾と成り、全ての希望を犯す絶望を斬り伏せる刃と成る。世界がこの様な理不尽を許すなら、俺がそれを滅する神と成る。あまねく世界を導き、全ての悪を滅ぼそう」

 

瑞稀は絶対神になる事を決意した

希望を奪われ、互いを想い合う者達の幸福が理不尽に奪われる、この様な痛みを二度と繰り返させないと、誓いを新たにしたのだ

 

魔界だけでは駄目だ

変えるべきは世界そのもの

全ての世界を変えなければ、この様な理不尽は必ずどこかで繰り返される

もう十分だ、そんなのは俺達で終わりでいい

これから産まれ、生きていく新しい生命には無用な痛みなのだ

 

永きに渡る闇夜を照らす光と成ろう

救いを求める者には救いをもたらそう

罪無き者には庇護を与えよう

罪を犯す者には鉄槌を下そう

あらゆる罪悪に絶対的な滅びをくれてやろう

その為に神と成る、絶対神と成り、平和な世界へ導こう

 

それがあの人が教えてくれた、俺自身の信念だから─

 




次からは本当に次章が始まります!

本当だよ…
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