今回は長々と説明を垂れ流してるだけで終わります
「瑞稀!貴様、またしても我等知識神に無断で戦神を増やしおって!事前に我等の審議を通せと何度言えば!」
「知らぬ。戦神の人選は全て俺に一任されている。貴様等に許可など求めぬ。文句なら俺に一任した最高神にでも言うのだな」
知識神が集う社にて、怒り心頭の知識神が怒鳴り散らす中、絶対神になり、一年程が経った瑞稀が澄まし顔で宣う
「それに何故貴様!部隊長を純血の神以外の者ばかり選ぶ!?遊撃部隊の篝殿以外に純血の神の部隊長がいないではないか!!部隊長は古来より、純血の高位軍神が勤めるのが仕来り!それを貴様!!」
「下らぬ。その様なカビ臭い仕来りなど知らぬ。そもそも、その仕来りに従ってきた結果、ほぼ全ての戦神が粛清された。そして俺の眼から見て、今の戦神に部隊長を任せられる者は、今の部隊長達以外に居ない。あなた方知識神の純血主義は古臭いと言わざるを得ない。少しは最高神を見習い、柔軟に物事を見るべきでは?」
「貴様!元魔王風情が我等知識神を愚弄するか!!立場を弁えよ!!」
「あなた方こそ弁えるべきだ。あなた方は知識神、俺は絶対神。元魔王であろうがなかろうが、今は俺の方が立場は上だ。それが不服ならば、絶対神の任命権がある最高神にでも文句を言ってくれ。魔王だった俺を絶対神に推したのも、あの御老人なんだから」
「儂がどうかしたか?」
怒鳴り散らす知識神達と、それに辟易としている瑞稀の集う社に、実に意地悪い顔で最高神が現れる
「最高神様!?何故こちらに!?」
「いやなに、瑞稀がまた外から戦神を連れて来たと聞いてな。瑞稀が選んだ新たな戦神の人となりを聞いておこうと思って、こやつの館に出向いてみれば、こちらに報告に来ていると聞いたのでな。待つのも面倒故、直接儂が出向いた次第だ。瑞稀よ、こやつ等に報告する前に儂の所に来ぬか。順序が違うだろう。そなたの上司は儂だぞ?こやつ等は管轄外だ。先ずは儂の所に来ぬか」
狼狽える知識神達に、嫌味を込めて最高神が瑞稀に告げる
それを理解している瑞稀は、大層申し訳なさそうな表情で頭を軽く下げる
周りの知識神達はバツの悪い顔で俯いている
最高神は瑞稀を気に入っている
自分達に怒りが向くのは避けたいのだ
「知識神と戦神では役割が違う。人員の把握は必要であろうが、管轄が違う故、こやつ等に報告する必要など如何程もない。そなたの報告をもとに、儂からこやつ等に話を通す故、そなたが直接報告する必要はない。今後はその様にせよ。そなた等もそれで良かろう?どうせ戦事なぞ、聞いてもよく分かるまい」
「は、はい!我等に異論はございません!瑞稀よ、人員の件は今後、最高神様に報告する様に。下がって良いぞ!今日はご苦労であった!」
「はいはい…では俺はこれで失礼させて頂きますよ…最高神様、詳しい話は俺の館でしよう。新しい茶葉が入ったのでな、落ち着きながら話そう」
「おお!良いな!そなたの所のメイド、フィンと言ったか?彼女の淹れる紅茶は美味故、儂のお気に入りなのだ!すぐに行こう!」
こうして最高神と瑞稀は社を去って行った
残された知識神達は最高神の登場で冷えた肝を落ち着けるのに、大層時間がかかったとか
「あやつ等の純血主義にも困ったものよ。今は昔と違い、神以外の者にも優秀な人材が多い。何よりも純血の神は駄目だ。先入観から他の種族達を見下す者が多い故、争いが絶えぬ。過去の遺恨さえ未だに癒えぬと言うに。これ以上の争いの火種なぞ、御免被る」
「確かに。絶対神になって分かったが、神界て敵が多いのな」
神界は現在、精霊達の住む霊界、機械達が支配する機界、龍達が治める龍界、妖怪達が支配する妖界と冷戦状態にあった
かつては最大の宿敵だった魔界は、魔王だった瑞稀が絶対神になった事で、今では友好的になりはしたが、非常に敵が多いのは事実
原因は神々の驕り、傲慢さが原因なのだ
神こそが至上、神に従う事こそ生きとし生ける生命の役割
従わぬ者は異端であり、存在する価値すら無い
信じる者は救われる、信じぬ者は救われぬ
言い方を変えればそれは、従う者は救われる、従わぬ者は排除する
それがこれまでの神々の考え方だった
「儂が神に成った頃はこうではなかったのだがな。いつしか神々は驕り昂り、世界の均衡は崩れ始めてしまった」
「なんだ?あんた、純血の神じゃなくて、後天的に神に成ったのか?」
自身の館のテラスで紅茶を飲みながら、不思議そうに尋ねる瑞稀
「そういえば言ってなかったな。儂は元々人間だったんじゃよ。かつて、人間として生を受け、存命であった創造神様より祝福を受け、神と成ったんじゃ。どうだ?凄いじゃろ?」
「マジか…そりゃ凄い」
「そうじゃろそうじゃろ!もっと尊敬してもいいじゃぞ?」
すごい自慢気な最高神は鼻高々である
しかしそこは人を小馬鹿にするのが瑞稀である、素直に尊敬の念を示すわけもなく
「うん、凄い。そんな昔から生きてたなんて、すげえジジイじゃん。いや、ジジイジジイだとは思ってたけど、そこまでジジイだとは思わなかった。むしろジジイというか化石?」
「き、貴様は!本当に人を馬鹿にするのが好きな奴じゃな!!奏女を思い出すわ!!」
「いやだってあの人の弟子だし」
「変な所まで似んでいいわ!!腕っ節と志だけ似ろ!!性格まで似んでいい!!!はあ~!あやつは碌な育て方をせんな!!」
「そんなに褒めんなよ。照れるじゃん」
「褒めとらんわ!!そういう所もあやつにそっくり!嫌になるわ!!」
なんやかんや仲の良い2人なのだ
「そう言えばさ、創造神てどんな人だったの?伝承では奏女様に似てたとか言われてるけど」
「そうじゃな、見た目は結構似とったな。性格は全然じゃが。というかそなた、夜宵様と契約しとるなら、夜宵様から聞けばいいじゃろ。あの御方は創造神様が生み出され、契約しておられた神器なんじゃから」
「いや、夜宵に聞いてもあんまり教えてくれなくてさ」
「…ふむ?あの御方なりに考えが有っての事かの…」
「でも奏女様に似てるなら気になるじゃん?だから教えてくれよ」
「うーむ、どうしたものか…」
考え込む最高神に、尚もせがむ瑞稀
そこにバロムが合流する
「何の話をしているんですか?私も暇なんで混ぜてくださいよ~」
「えぇ…お前が居るとまともに話が出来なくなるからな…まあ良いけどさ…」
不満そうな瑞稀、ウキウキなバロム
バロムは大体話の腰を折るので、瑞稀に邪険にされている
「バロム殿。元気そうじゃな。今、こやつに創造神様の話を聞かせていたじゃよ」
「創造神様のお話ですか?なんでまたそんな話してるんです?」
「こやつが聞きたいと言うでな。思い出語りのつもりで話しておったのじゃ」
「なるほど~!いやぁ、私も気になりますね!伝承では相当の美女だったと語られていますからね!私も聞かせて頂きますよ!で?どうだったんです?やっぱり美人だったんですか?スタイルは?胸は?」
女となればこれである
彼にとって、創造神であろうと、女性ならばそういう対象なのだろう
「バロムはすぐこれだ…だから嫌なんだよなぁ…」
「まあまあ、良いではないか。そうじゃな、今思い出しても凄く美しかったな。慈悲深く、いつも全ての生命を見守り、慈しんでおられた。まさに慈母と言う感じじゃったな」
懐かしむ様に眼を閉じ語る言葉には、言葉では表し切れない尊敬が込められていた
「儂が神に成ってからは、よく世界について語ったものだ。あの御方はいつも言っておられた。いつかあまねく生命達が、互いに助け合い、慈しみ合い、愛し合う、そんな世界になって欲しいとな。本当に優しい御方じゃったよ」
「ふーん。まさに生命の母て感じ。確かに性格は奏女様に似てないな。本質は似たようなもんだが」
「確かにそうじゃな。奏女もなんやかんや優しい奴じゃったからな。封印宮に閉じ込められ、不自由を強いられておったにも関わらず、あやつはいつも笑っておったよ。これでいい。自分の力は強大過ぎるし、争いにしか役に立たないから、争いが無いのなら自分は不要。こうして人目につかぬ様にひっそりとしていればいい。いつもそう言っておった」
「奏女様らしい。口は悪いし、気性も荒いけど、本心では思い遣りの塊みたいな人だからな」
2人が思い出に花を咲かせている傍らで、バロムは不貞腐れていた
「お二人が大変素晴らしいお人柄なのはよく分かりました。しかし聞きたいのは別の事です。スタイル!胸!おっぱい!私が聞きたいのはそこです!!」
「お前は二言目にはそれしか言わんな…」
「当たり前でしょ!!それ以外の何に興味を持てと!?」
「……」
瑞稀は呆れ果て、バロムは欲望のまま叫ぶ
そんな2人を見ながら押し黙る最高神
「そう言えばさ、創造神て創造の真理を司る神じゃん?他の理の神てどんな奴なんだろうな…ちょっと気になるな」
「えぇ…そんな事よりおっぱい…」
瑞稀の何気ない言葉に、バロムは残念そうに囁く
「まあ、語ってもよいのだがな。どうしたものか」
「おっ!気になる!教えてくれよ!」
「おっぱい…」
なにやら言い辛そうにする最高神、好奇心剥き出しの瑞稀、尚も胸の話を聞きたい
「…良かろう。まず真理の神とは、創造を司る、全ての生命の母たる創造神様。そして滅びを司る、全ての生命の終着点たる滅びの神の2柱の事を言うとされている。創造神様はあらゆる万象を産み出し、操る力を持つとされ、滅びの神はあらゆる万象に死を与え、終焉をもたらす力を持つとされている。この2柱はかつて、世界が産まれるより以前、世界の有り様をめぐり、互いに争っていた。創造神様は世界を愛で導こうと仰り、滅びの神は自らの力で世界を治めるべきだと言った。2柱の神は議論を続けたが、互いの意見が交わる事はなく、滅びの神が痺れを切らし、争いが始まった。永きに渡る戦いは創造神様の勝利、滅びの神の敗北に終わったと言い伝えられている」
「へえ、2柱の戦いか…想像も付かないな…」
「まあ、本当の所は儂も知らん。あくまでも創世神話で言い伝えられているだけじゃ。創造神様にその様な事を聞く事もなかった故、真実かどうかすら儂には定かではない。実際に滅びの神が実在したのかすら怪しい。創造神様は確かに存在していたが、滅びの神の存在を立証するものは創世神話以外に無い。実在していたとして、創造神様に敗北し、死んだか、何処かで封印されたか、はたまた逃げて何処かに存在していたのかすら分からん」
「ふーん…」
「次は理の神々の事を語るとするか」
「お願いします!」
「おっぱい…せめて話の中におっぱい成分を…」
ウキウキな瑞稀、尚も胸の話をせがむ
対称的な2人に苦笑いを浮かべる最高神
「やれやれ。理の神とは創造神様が産み落とした5柱からなる神々でな。五行、
「へえ、すげえな…でもさ、そんな神は神界に居ないぞ?理の神は実在しないのか?」
「いや、実在する。あの方々は各々自らの神殿を持ち、そこにおられる。神殿は空間が歪み、こちらからは干渉する事すら、本来は出来ない」
「本来は?どういう意味だ?干渉された事でもあんの?」
瑞稀が疑問を口にする
本来は干渉出来ない
それをわざわざ口にすると言う事は、なんらかの手段を用いて干渉した者がいるのか?
「その話なら私も知ってますよ」
ここでバロムが口を挟む
「なんでお前が知ってんだよ」
「私も最高神様並に古い時代から生きてますからね!ではここからは私が説明しましょう!」
自慢気なバロムが咳払いをして説明し出す
イマイチ乗り気じゃない瑞稀は嫌がるが、それでも好奇心が勝ってバロムの説明を聞く
「ゴホン!そもそも理の神々は絶対神などと同様に、代替わりします。理由は力の劣化を防ぐために、新たな力の器、次代の理の神に継承を行うためです。理の神々が司る力は世界にとって、非常に重要なものですから、力が弱まり、機能しなくなっては大変です。世界の均衡が崩れてしまいます。それを防ぐための代替わり、力の継承ですね」
「詳しいな。最高神、こいつの話、本当かぁ?バロムの言う事だからなぁ、イマイチ信用に欠けるんだよなぁ」
露骨に疑いを隠さず、瑞稀は最高神に問う
バロム、ショック。最高神、苦笑い
「本当じゃよ。嘘を吐いても儂にバレる故、大丈夫じゃ。真実しか語るまいて」
「ふぅん。ならはよ続きを話せ。力の継承とさっきの話、なんの関係がある?」
「酷い!まぁ良いですがね。理の神々の1柱である、成長を司る神は力の継承を、唯一行ってないそうです。とある男に奪われたんですよ」
「奪われた?つまり自分の意思ではないと?」
「はい。神殿に攻め込まれ、無理矢理奪われたみたいですよ」
「なるほどね。でも待てよ?確か理の神々の力はかなり強大で、しかも理の神の加護を受けた騎士が理の神を護ってるって神話には記されていたが、嘘か?神話は誇張されてんのか?」
「多少の誇張はありますが、ほぼ神話の通りですね。騎士達の力も、個人差はあれど、かなりのものですし」
「なのに奪われたのか?馬鹿なの?」
「ゴホン!まあ馬鹿なのかどうかは知りませんが、成長の神が力を奪われたのは事実です。もっとも奪った本人も、後に別の者に神殿に攻め込まれて、出し抜かれたらしいですがね」
「…それさ、本当に成長を司る神なの?馬鹿なの?」
「さあ?馬鹿なんじゃないですか?」
「やれやれ…理の神に対して失礼な奴じゃ」
瑞稀とバロムは成長を司る神に呆れ果て、最高神は瑞稀の頭を小突きながら苦言を呈する
「しっかし、理の神て奴らは酷いな。下界がこんなに争いに明け暮れていても、調停しようとすらしないなんてな」
瑞稀が紅茶を1口飲み、2人の話を反芻しながら呟く
「だってさ?神話は誇張されず、ほぼ事実なんだろ?」
「そうですね」
神話には理の神々の凄まじい力が記されていた
その眼は全ての事柄を見通し、全ての魔素を従える
その耳はあらゆる声を聞き、声無き声すら捉える
その言霊は全ての生命を縛り付ける絶対の強制力であり鎖
その魔力は世界を覆い尽くす程に膨大であり、世界を原初に還す事さえ可能にする
その魔素は全ての生命の源であり、大気に満ちる魔素は理の神によって生み出されている
現存している神々の力なぞ、足元にも及ばない
比べる事すら烏滸がましい
「神話に伝わる通りの力があるのなら、争いをやめさせるなんて簡単だろうに。二覇龍の出現だって止められたんじゃないか?」
瑞稀は、己の内に封印されている白龍神王、凛音と対話を、今でも繰り返している
凛音の生前の話、奏女様との思い出話、対となる黒龍神王の話
色々な話を聞いた
かつて彼女が人間として生を受け、人間として生きていた事
何の因果か、龍の力を宿し、逸脱者として戦場を駆け抜けていた事
原因は覚えていないが、龍の力を暴走させてしまった事
対となる黒龍神王と争い、殺し合いの末、2人とも封印されてしまった事
対話を繰り返す内に、凛音は戦闘狂ではあるが、決して全次元を滅ぼす様な邪龍ではないと感じていた
力の暴走さえ起こさなければ、凛音達二覇龍は全次元を滅ぼしかける事なんてないと感じていた
「なんで理の神々は何もせず、全次元が滅びかけるまで傍観していたんだ?未然に防ぐ事も出来ると思うんだが」
「それは…」
「それはな、あの方々は極力下界の問題は、下界で解決すべきであり、自ら干渉するべきではないと定めたからじゃ。それに理の神々といえど全能ではない。未来がどうなるかは分からんのじゃ。二覇龍の暴走は誰もが予測出来なかった。故に世界は後手にまわってしまったんじゃ。理の神々も然り。予測出来なかったんじゃよ」
『確かにあの暴走はあまりにも突然だったからな。兆候すら無かった。私も気付いたら封印されてたし。はっきり言って予測は不可能だったろな』
凛音が瑞稀に語りかける
その声は優しく瑞稀を諭す様でありながら、どこか諦念を含ませていた
自分達の暴走は誰にも止められなかったし、防げるものでもなかった
言葉には出さないが、彼女はそう考えていた
「…理の神々でさえ、全能ではない…か。本当にそれだけなのかね…」
誰に問うわけでもなく、瑞稀は小さく呟いた
自分のケツは自分で拭け!
その結果、世界がどうなろうと自業自得であり、滅びさえしなければ大体OK!
間違えて滅びたらリセットして何度でもリトライすれば良いのさ!
極論ですが、それが理の神々が定めた事
きっと過去、それを良しと出来なかった者がいたかもしれませんね