大変お待たせしました…!
「…瑞稀よ。そなたの言い分は分かる。だが納得は出来ん。覇の理を使うのは待て。まだやれる事はある。メルフェレスだけではなく、他の魔王に協力を仰げば、少ないだろうが応じる者もいる筈じゃ。それだけではない。聖界、霊界、龍界、獣界、妖界、機界など呼び掛ける世界はまだ多い。これらの世界も協力してくれればセレス撃退も可能なのではないか?」
瑞稀が神の座を捨ててまで覇の理を使用する事を容認出来ない最高神が、瑞稀を説得しようと他の世界との協力を提案する
それはどうしても瑞稀を神の座から堕としたくない最高神の抵抗でもあった
それで瑞稀が少しでも考え直してくれると、淡い期待にすがりたかったのかもしれない
「無理だ。聖界と霊界はディアレストの攻撃を受けてから日が浅い。こちらに回す余裕などない。龍界は以前、黒龍王を俺が討ち倒してるから協力はしてくれない。獣界は他の世界の争いに干渉する事に消極的だから無視を決め込んでる。妖界は内紛に忙しくてこちらの事なぞ興味もない。機界は神界や魔界など比較的魔素が豊富な世界を狙ってるから、むしろ敵側だ。つーか機界を除いた世界には既に声を掛けたがさっき言った理由で断られた。現在こちらの戦力は神界と、その麾下に天界と人界、そしてメルフェレス魔界が協力して戦線を構築している。他の魔王は己の利益にならないと無視を決め込むか、漁夫の利を狙って共倒れを望んでるかの違いはあれど、今は不干渉を決め込んでるよ。分かっただろう?外部からの戦力は期待できない。これ以上、戦力を増強出来ない現状を覆すには、白龍神王の力が必要だ。俺が本来の力を取り戻せば、確実に奴等を蹴散らせる」
「…確かにそなた本来の力、覇の理や白色雷を使えば戦況は確実に覆す事が出来る。しかしこの争いが終われば、次はそなたが全ての世界に敵として認識される可能性が高い。全次元を相手に戦争でもする気か」
「そんなつもりは俺には無いよ。護りたいから戦うだけさ。他の世界が俺をどう思うかなんて、クソ程の興味も無い。ただ救いを求める声に、もうこれ以上耳を塞ぎたくないだけさ。それでも世界が俺を否定するなら、勝手にすればいい。俺の大切なものを傷付けるなら、蹴散らすだけだ。それに俺の力は神には向かない。何せ最凶最悪のドラゴンの力だからな。神が振るっていい力じゃない。本来の力が出せない俺なんかより、紗矢彦の方が絶対神に向いてるよ」
少し自嘲気味に言う瑞稀に呆れる最高神
「はぁ…。もう良い。そなたの覚悟は分かった。好きにするが良い。覇道を歩む上で救いの道を行くならば、決して敗北は赦さぬ。しかし、何かあれば儂を頼れ。儂はそなたの味方であり続ける事を、努努忘れるなよ」
「ああ。貴方の親愛を裏切りはしない。次は勝つ」
覚悟を決めた瑞稀の目は赤く、紅く輝いていた
「…挨拶は終わったんですか?」
「ああ。ワルキューレ、面倒をかける」
館に戻った瑞稀を迎えたワルキューレは瑞稀を抱き締めた
「大丈夫です。貴方は貴方の信じる道を歩んで下さい。私達はどんな選択でも構いません。貴方を支えてみせます」
ワルキューレの言葉には愛が満ちていた
「ありがとう…」
「イチャついてるとこ悪いんだけど、出発はいつになんのかな?あとさ、みんな魔界に連れて行くの?」
ワルキューレに見せ場を取られた唯が不機嫌そうに問う
「いや…魔界に戻るのは俺とバロム、斬鉄、刻龍だけだ。他にはゼルガノン、リューン、リア、冬史を連れて行く。ワルキューレ、唯、篝様、鏡様、天狼様は引き続き、戦神として神界に残って欲しい。とはいえ館は魔界に戻すから別居はしない。魔界から通う事になる。転移門を俺が常に開く様に術式を作ったから心配はしなくていい」
「唯達は神界にお残りかぁ…まあ、しょうがないね。紗矢彦だけじゃ心配だしね」
少し残念そうに唯がため息混じりに言う
「すまない。頼りにしている。俺が居なくなった後の神界を支えてやってくれ」
皆に頭を下げて謝る瑞稀
なんやかんや神界も心配なのだ
そして頭を上げた瑞稀は、沈痛な面持ちで妻に語った
「それと…もしも…これ以上、俺と一緒にいたくないと思ったのなら…離婚する事も出来る。みんなも知っての通り、俺は自分に嘘を吐くのが苦手だ。我が儘で、自己中だ。自分の信念を曲げたくないし、人の忠告を聞くのも嫌いだ。正直、自分でも馬鹿だと、本当に頭が悪いと思ってる。それでも多分…これから先も俺は、俺の思う道を往くだろう。これから先も、君達に迷惑をかけるだろう。それでも俺は…我が儘に…身勝手に進むと思う。付き合い切れないと、そう思うなら…俺と共にある事が自身の幸せに繋がらないと、そう感じるなら─」
「瑞稀様。そんな悲しい事を言わないで下さい」
ワルキューレが瑞稀を強く抱き締める
それに続き、皆が瑞稀を優しく抱き締めた
「私は、そんな貴方が大好きです。どこまでも真っ直ぐに理想を、夢を追いかける貴方の背中が大好きです。貴方はそのままで。いえ、そのままの貴方が良いんです」
ワルキューレが告げる
─彼の高潔さを知っている、無謀でも諦めない強さを知っている─
「唯もね、みーちゃんの事大好きだよ!唯はバカだからみーちゃんの夢とか理想とかは、難しくてわかんないけど、昔よりイキイキしてて良いと思うよ!」
唯が告げる
─彼のかつての絶望を知っているからこそ、思うまま振る舞う彼がいい─
「私も瑞稀の事、大好きよ。なにより貴方を絶対神にしてしまったのは私でもあるのよ。これからもずっと貴方を支えてみせます。貴方の夢を一緒に見させてください」
篝が告げる
─彼の語る夢の果てに希望を見た、彼と共に夢の果てを見てみたい─
「私だってお姉様に負けないくらい、瑞稀君が大好きです。貴方は私にとっての光です。優しくて、あったかいお日様なんです。ずっとそばに居させてください」
鏡が告げる
─ずっと姉の影に隠れていた、そんな自分を彼は優しく照らしてくれた─
「姉さん達より私の方が瑞稀さんの事、大好きですよ。普段から貴方は王としてみんなの事ばかり考えて、自分の事は二の次、三の次なんですから。貴方は優しすぎるんです。だから我が儘なくらいが良いんですよ。私が受け止めますから」
天狼が告げる
─彼の優しい笑顔を見ていたい、不安に曇った顔なんて見たくない─
「私だって!お前の事が好きだぞ!そりゃお前は自分勝手で猪突猛進でどうしようもないヤツだけど!お前は…私をちゃんと見てくれるから…だから!大丈夫だ!私だってずっとお前のそばにいるから!」
冬史が告げる
─あまりにも強すぎる力を持つ故に誰もが自分の力を恐れていた、でも彼は力ではなく自分を見てくれた─
「私も瑞稀が大好きですよー!貴方は誰よりも強く、誰よりも理想にがむしゃらです。でも、誰よりも繊細でもあります。心を許した相手に嫌われる事を、置いていかれる事を誰よりも怖がっている。孤独を誰よりも恐れている。大丈夫。私達は貴方を独りなんてしませんよ。いいんです。私達の前では弱くなって」
フェリアが告げる
─彼の恐怖を垣間見た、それを無くす事はきっと出来ない。それでも自分達なら感じさせない様に癒す事は出来る─
『マスター。私も貴方を愛しています。絶望に沈んでいた私を貴方が救い上げてくれたんです。この身は貴方の盾と成り、刃と成る。終生、私は貴方と共に在り続けます』
夜宵が告げる
─母が世界から去り、自分は捨てられたと感じた、そんな自分に彼は共に歩もうと救い上げてくれた─
「みんな…」
瑞稀が涙を流しながら皆にしがみつく
本当は離れて欲しくない
でも愛しているからこそ、幸せになって欲しい
不安だった
自分のそばにいては彼女達が不幸になるんじゃないか
自分の我が儘に振り回されて嫌気が差すんじゃないか
それでも曲げられない自分の信念が、馬鹿さ加減が嫌いだった
─でも彼女達はそれでもいいと、そんな自分がいいと、受け入れてくれた─
「ありがとう…みんな、ずっと一緒にいよう。ずっとそばにいてくれ。みんなは俺が護る。絶対に護るから…」
瑞稀は皆の愛を知った
いや、元々知っているつもりだった
それでもこれほど、深い愛情を向けられていた事に彼は気付いていなかった
ずっと不安に苛まれていた
魔王だった自分が、二覇龍という災厄を宿す自分なんかが、本当に彼女達に愛されてもいいのか
災厄を宿す自分なんかが、本当に彼女達を愛してもいいのか
災厄を宿す自分なんかが、本当にこの世界に生きていていいのか
良いのだ。愛されても良いのだ。生きていて良いのだ
幼い頃より、心の奥底でずっと抱いていた不安が解きほぐされていく
彼女達の愛で満たされていく
『それでいいんだよ。人は誰もが幸せになれるんだ。私が言うのもなんだが。瑞稀、お前だってみんなに愛されて、みんなを愛していいんだ。幸せになれよ。なっていいんだ。私も護るからさ』
凛音が優しく告げる
凛音は瑞稀が幼い頃から、深層魔素から彼を見守ってきた
最初は奏女様への義理立てだけだった
それでも年月を重ねる毎に情が移ってしまっていた
今では息子の様に思えてしまう
幸せになって欲しいと心から願っている
だから辛かった
自分を宿してしまったせいで、瑞稀の心が壊れていくのが、本当に辛かった
そんな瑞稀の心を、彼女達が救ってくれた
彼女達の深い愛情が、瑞稀の心を満たしてくれた
─かつて鬼崎によって人として壊され獣と成り、奏女様の愛に救われ人と成り、天乃によって愛を奪われ人を捨て龍と成り、魔界に救われ王と成り、そして今、瑞稀は愛する彼女達の愛で再び人に戻り、真の救いを得た─