いずれ真理へと至る王の物語   作:Suspicion

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狂嵐、解き放たれた狂気の本能

 

ドラゴンが空を覆っている

かつて魔界と神界の戦場跡地の荒地の空を、たった1人を殺す為にドラゴンが空を覆い尽くしている

 

ドラゴン達は困惑していた

何故、殺せない?

何故、死なない?

何故、同胞は地に墜ちていくのか?

何故、奴は戦いの最中に笑っている?

自分達はドラゴンだ。最強の幻想種だ。その気になれば世界を蹂躙する事も容易く出来るだけの力がある

なのに何故、我々は今、たった1人の敵に蹂躙されている?

アレは一体何なのか?神?魔王?ドラゴン?

いいや違う

アレは恐怖だ。生きとし生けるものの天敵。滅びの化身だ

逃げたい。でもきっと逃げれない。逃がしてくれない

本能で解る。アレに牙を剥いた時点で、自分達の死は決まってしまったんだ

ドラゴン達は本能で理解してしまった。死にたくなければ、眼の前の滅びを殺すしかないのだ

 

王は歓喜していた

神に成ってからずっと抑圧されていた本能を呼び覚ました喜びに打ち震えていた

嬉しい。掛けられた首輪が外れて、本来の力を出せる事

爽快だ。どれだけ魔法を行使しても尽きない魔力と、解き放たれた闘争本能に身を任せる感覚

愉しい。久々に全力で戦える

 

嗚呼…本当に…

本当に愉しくて仕方ない!!

 

「もっとだ!もっと俺を愉しませろ!久々に覇龍になったんだ!すぐに壊れちゃ面白くないだろ?!最期まで足掻け!どうせ死ぬなら生命尽きるその瞬間まで抗え!ドラゴンは最強なんだろ?!この程度で壊れるなよ!楽しもう!生命尽きる瞬間まで!!」

 

覇龍化した影響で極度の興奮状態に陥っている瑞稀が吠え続け、暴れ回る様は知性を感じさせず、本能のままに目に付く全てを壊す獣そのものだった

 

凄まじい数の魔法を行使しているのに、覇龍化の影響で魔素が活性化しており、むしろ魔力は減らず増大し続けている

その身に留められず、あふれ出した魔力は大気中の魔素とぶつかり、次元震すら引き起こし始めた

 

「フハハハ!!思う存分力を振るえるのは最高だ!!やはり俺は神などではなく、魔王であり、覇王であるべきなんだ!だって暴れられる事をこんなにも愉しいと感じてる!神の時にはあんなに億劫に感じていた戦いが、こんなにも愉しいと感じている!狂嵐の魔公子とは俺の為にある名だ!!本当に愉しいなぁ!愉しくて愉しくて気が狂いそうだ!理性を保つ事すらどうでもいい!!本能に身を任せる快楽に支配されそうだ!こんなにも愉しい戦いは初めてかもしれないな!」

 

『アハハハ!そうだな!私も最高の気分だ!お前が神に成ってからは力を使う事すら禁じられていたからな。再びこうしてお前と暴れられる事を嬉しく思うよ!!』

 

『あぁ!マスター、こんなにも愉しそうに笑う貴方を見るのは初めてです!この夜宵、貴方の神器として幸せです!どうぞ思う存分にお愉しみ下さいませ!!』

 

最早彼等を縛るもの等ありはしない

ディアレストの理の騎士すら、今の彼等の前では単なる有象無象でしかなく、引き連れているドラゴン達と大差無い

騎士もその他ドラゴンも、等しく獲物である

 

騎士達は勘違いしていた

自分達は最強の存在であるドラゴンであり、理の騎士という、圧倒的な力を持つ強者なのだと思っていた

相手が何であれ、圧倒的な暴力で以て蹂躙する側の存在なのだと思っていた

これだけの力を持つ強者が10体もいる自分達が負けるワケが無いと思っていた

 

しかし騎士達もここに来て、やっと理解した

自分達は狩られる側なのだ

最強の幻想種?理の騎士?だからどうしたというのだ

どれだけ圧倒的な力を持っていようと、自分達は生物だ

だがアレは違う

生物としての範疇を超えている

生物としてのナニカが壊れている

アレは埒外のバケモノだ

理解した。勝てない。逃げなければ

とにかくアレから逃げないと、殺される。どうしようもなく壊される

 

─だから逃げた

脇目も振らず、部下を捨てて逃げた

それがどの様な結果をもたらすか考えずに

 

その瞬間背後に幾万の雷が降り注ぎ、部下のドラゴン達を皆殺しにした

 

「おい。何逃げてんだよ」

 

地獄の底から響く様な冷たい声だ

さっきまで愉しそうに笑っていたアレの声だ

 

「びっくりして全部壊しちゃったぞ。まだまだ愉しめそうだったのに。勿体無い事をした」

 

怖い。心が凍えてしまいそうな冷たい声だ

あまりの恐怖に逃げる身体が止まってしまった

思わず振り向いてしまった

そこにいたのは、心底つまらなそう顔をしたアレだった

 

「なぁ、お前達は理の騎士なんだろ?強いんだろ?何で逃げるんだよ。戦おう。本気で戦えるのは久しぶりなんだ。もっともっと戦いたいんだ」

 

アレがナニカ言っている

でも判らない

恐怖のあまり言葉の意味を理解出来ない

いや、言葉と認識すら出来ない

 

『瑞稀。コイツラは駄目だ。心が壊れてる。もう戦う気力なんて無い』

 

『マスター。凜音の言う通りです。残念ですが、お愉しみは終わりの様です』

 

「…そうか。残念だ」

 

アレが目を閉じた

今なら逃げれる

今しかにげれ─

 

それ以上騎士達が何かを感じる事は無かった

瑞稀の魔法により、跡形も無く消し飛ばされ、痛みを感じる暇すら無く絶命したのだ

 

「…終わったな。魔王城に合流しよう」

 

『分かった。覇龍を解かなければすぐに魔王城まで飛べるだろうから、このまま行こう』

 

『魔力、魔素の汚染、どちらもありません。問題無く覇龍を維持出来ます。マスター。行きましょう』

 

「…ああ。行こう」

 

理の騎士率いるドラゴンと瑞稀の戦いは、瑞稀の圧勝で幕を閉じた

いや、あれは最早戦いでは無く、瑞稀による一方的な蹂躙だった

 

 

 

 

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