「瑞稀様が理の騎士と交戦を開始しました。セレスももうじき目視で確認出来る距離に差し掛かる頃です」
バロムの報告を聞き、その場にいる全員が戦闘態勢を取る
「よっしゃ!旦那がこっちに合流する前に、俺がセレスを説得してやるぜ!絶対にな!!」
斬鉄が決意を新たに固め直し、吼える
「説得?何のつもりかは知らんが、お前達と交わす言葉なぞ、私は持ち合わせていない。ただ滅びろ。かつてお前達が我等ディアレストにした様に燃え尽き、朽ち果てろ」
「「「!?」」」
突如現れたセレスの殺気に一瞬、その場の全員が呑まれた
「?絶対神はどうした?奴無しで私と戦うつもりか?」
「っ!あの人なら今頃、貴女の騎士達と戦っています」
冷静さを取り戻し、心を立て直したワルキューレが答える
「単独で我が騎士に挑むか。愚かだな。奴では我が騎士には勝てん。単独ならまだしも、全員を相手にして、勝てる筈も無い」
セレスは絶対の自信を持って宣言する
我が騎士に敗北は有り得ない、と
理の神の加護を授けられた騎士の強さは、時に生物としての枷すら外す
「セレス!頼む!俺達の話を聞いてくれ!お前はただ利用されてるだけだ!!俺はお前を助けたい!だから話を聞いてくれ!!」
斬鉄が叫ぶ
彼の行動原理はとにかく単純明快
ただ助けたい。それだけなのだ
この場の誰よりも頭は悪いが、純粋でもある
彼の言葉に裏は無く、純粋に助けたいから、言葉を投げ掛ける
「下らん。聞くに堪えん妄言だ」
「頼む!少しでいい!俺の話を聞いてくれ!」
「聞く価値すらない」
「俺はお前を助けたいだけだ!頼むから話を聞いてくれ!!」
「何から助ける?私は誰かに助けられなければならない様な状況に陥っていない。妄想も大概しろ」
「違う!お前は気付いていないだけだ!お前はディアレストに利用されてるんだ!」
「大概にしろと言った。ディアレストが私を利用している?馬鹿馬鹿しい。」
斬鉄とセレスはどこまでも平行線でしかない
そこに痺れを切らしたバロムが口を挟む
「冷静に聞いて貰いたいんですがね、理の神自身が他次元に攻め込むメリットは何です?デメリットの方が大きいと思いますよ。それで?貴女の臣下は、貴女を止めましたか?」
バロムが苛立ちを感じさせる声音で捲し立てる
「て言うか貴女自身、自分の存在の重要性を理解してます?理の神である貴女が死ねば、貴女の世界は滅びますよ?そんな初歩的な事すら解らないんですか?だから簡単に利用されるんですよ。討伐神様の不在はどうにかして調べた様ですが、その他の実力者の情報は?こちらの魔法体系の対策は?こちらの理の神が出張ってきた際の対策は?こちらの保有する神器の能力、それらへの対策は?各界の協力関係、敵対関係の情報収集は?何よりもこちらの最大戦力の確認、対策は?どうです?今私が言った事の、どれだけの事を行いました?答えなくて結構。解りますよ。行って無いでしょ。貴女の戦運びは杜撰なんですよ」
周りがドン引きするレベルのマシンガントークである
セレスも顔が引きつっている。怒髪天である
「貴様っ!好き勝手良いおって!」
「反論なぞ結構です。事実ですから。おつむの足りていない貴女に分かりやすく説明しましょうか。これまでの貴女の侵略成功は、4つの偶然が重なった奇跡に過ぎません」
「なに?!」
「まず1つ目。どこぞのクソ野郎が討伐神様を封印した、その封印が機能してしまった事。本来のあのお方の力なら封印なんて力ずく振りほどけるですがね。それにあのお方がご健在ならば貴女なぞ視界に入った瞬間、灰すら残りませんよ。2つ目。こちらの理の神が貴女の対処に出張れない程弱っている、ないしは干渉出来ない事。5柱それぞれ理由は違えど、下界に干渉出来ない理由が有りますからね。3つ目。此度の白龍神王が非常に宿主に対して友好的な事。もしも今までの様な白龍神王ならば、未知の理の神が攻め込んで来たら、面白がって宿主を喰らい尽くしてでも戦いに来ますよ。そして4つ目。瑞稀様が絶対神だった事。あ!これはもう違いますね。なので貴女の快進撃は本日を以て終了です。お疲れ様でした」
鬱憤を晴らすが如く、早口で捲し立てるバロム
言い終わった後はなんか満足したのか、すっきりしている。いい笑顔である
「お、おいバロム。何もそこまで言わなくても…」
「斬鉄。この手の馬鹿は、馬鹿正直に助けたいんだ!って言っても聞かん。頭が悪いから自分が追い詰められている事も、利用され捨てられる事も、理解出来ない」
めちゃくちゃ言われているセレスを不憫に思い、斬鉄がフォローしようと口を挟むが、それすらバロムは苛立ちを隠さず黙らせる
「そもそもディアレストを護りたいなら、軍事侵略ではなく、平和的に対話するべきだったんですよ。それをわざわざ、大して対策も立てずに侵略って。なんと頭の悪い。大方その頭の悪さに嫌気が差した連中に、いい様に言いくるめられたんで─」
バロムが言い終わる前に斬撃が飛ぶ
「黙れ。不愉快だ」
「図星でしょ。貴女は復讐を口にしながら実行しない。本当は聖樹の苗木を探してるんでしょ?それとも自分の力では実現出来ないから、その力を求めて紅爪桜花ですか?」
「黙れ!!貴様に何が分かる!?」
「分かりませんね。貴女の様な能無しの考えなど、理解出来るわけもありません」
「理に触れる事すら出来ぬ下賎な者が私に知った風な事を言うな!!」
「ほら、すぐに感情に任せて吠えるばかり。だから何故私がこんな風に貴女相手に神経を逆撫でしてまで、しゃべっていたのかすら分からない」
バロムが言い終わった瞬間─
白銀と真紅が辺り一面を彩る
「─良く時間を稼いだ」
「いえいえ、相手が思っていた以上に馬鹿だったので楽でしたよ」
真覇龍と化した瑞稀が合流したのだ
「…まさか、絶対神か?なんだ?その姿は?」
「絶対神か?と聞かれれば違うと言うのが正しいだろうな」
姿形が変わり、魔力や魔素すら変質している瑞稀に戸惑いを隠せないセレスを無視して、瑞稀は真っ直ぐメルフェレスの下へ向かい、跪く
「メルフェレス陛下。現時刻を以て、狂嵐の魔公子瑞稀、魔王への復帰をご報告致します」
「─お帰り…待っていました」
必要最低限の会話ですらない、報告
しかし、それでいい
万感の思いが込めれている
それでいい
此処に、狂嵐の魔公子が正式に復活を遂げた