戦闘描写は少な目になります
「我が名は魔王、銀狼のバロム。今日は貴様らに宣戦布告を告げ、ついでに貴様らの王の首を貰いにきた」
銀狼の姿がかき消えると同時に王の首を、銀狼が噛み砕いた
誰もが呆然としていた
何が起きたのか、誰もが理解出来なかった
「…陛下?…首が…うあああああ!!!」
誰かが喚き叫ぶ
そうしてようやく皆が状況を理解した
目の前の獣畜生が王の首を喰った!
「貴様ぁ!!よくも陛下を!!」
将軍の1人が銀狼に斬りかかった!
鋭く振り下ろされる一刀を軽やかに避け、銀狼は溜息を吐く
「…そう焦るな。言ったはずだ、今日は宣戦布告と、ついでに王の首を貰いにきたと。お前達が死ぬのは戦場だ。1ヶ月後、我らは魔王軍を率いここを攻める。それまでに身の回りの整理をしておけ、どうせ皆死ぬのだからな」
そう言って銀狼は魔法陣を足元に一瞬で描き出した!
魔法陣が光を放ち、収まった時には銀狼の姿はそこにはなかった
「くそっ!転移魔法!逃げられたか!」
「…いや、あのまま戦えば我らに勝ち目はなかった。皆殺しにされていただろう」
銀狼の圧倒的な力を前に、その場にいる全ての者が沈痛な面持ちとなっていた
「とにかくこんな状況だ。陛下の弔いを済ませ、すぐにでも次の王を決めなくては」
大臣が気持ちを切り替え、人界の混乱を少しでも収めるために発言する
「…そうだな、陛下には悪いがすぐにでも次の王を決めなくては民衆の不安も積もる一方だからな」
「…明日には王を決めるため、全体会議を行う。陛下には世継が居ない故、王家以外から排出されるだろう。場合によっては民衆の意見を聞くためにも選挙を行うかもしれん」
…人界は今、混乱の極みにあった…
「それで、民衆の投票はどうなった?結果は?」
結局全体会議では次の王は決める事が出来ず、銀狼の襲撃から3日後、時間が無いのもあり、4日間だけ選挙を行い、襲撃から8日後の今日、民衆の投票が終わり結果が出る
「…最悪だ…よりにもよって…」
大臣は結果を見て頭を抱えた
「…将軍達よ…落ち着いて聞いてくれ」
「勿体ぶらずに早く言え。民衆が選んだ次の王は誰だ?」
将軍達は新たに仕える王の名を聞き逃すまいと、皆身を乗り出す
「…民衆の約7割が奈良橋瑞稀に投票している…よりにもよって奴か…」
「なんだと!?何故だ!?何故たかだか粛清部隊の奴がそんなに支持されるのだ!?」
将軍達が皆驚きと嫌悪感を露にする
「先の龍王との戦争の功績で奴は民衆にとって、今や英雄だ。しかも天空剣の担ぎ手でもある。魔王襲撃を知った民衆は強い王を望んでいるのだろう…」
誰もが大臣の言葉に沈黙した
確かに奴は強い、むしろ強さの次元が自分達とは違いすぎるほどに強い
何よりもここで奴以外の者が王座に就けば、民衆からの反発を受けかねない
ならば表面上だけでも奴に従うしかない
皆がそう決断するのだった
「唯ちゃん!聞いたか?瑞稀が次の人界の王になるらしいぞ!」
「…知ってるよ、みーちゃん本人から聞いたからね。でも信介君も情報早いね。正式発表は明日らしいよ?」
「まあね、色々噂になってるしさ。なんだよ?あんまり嬉しそうじゃないな?」
「…唯はちょっと心配かな。あの人無茶ばっかりするし。ああ見えて脆い部分もあるからさ…」
「…確かにあいつ学生の頃から無茶ばっかりするな」
付き合いの深い2人は瑞稀を心配していた
瑞稀は弱者を救うためなら、自らの全てを賭して戦う
まして今回は鬼神将、氷龍鱗、銀狼と魔王の中でも最強クラスが相手だ
間違いなく瑞稀も無事ではすまない
負けて死ぬかもしれない
「…最悪、唯も戦場に出ようと思うよ」
実は唯は生坂と言う人界五大貴族の次期当主であり、家の流派を継承していた
その流派は格闘技を主とした魔法を得意としている
戦闘力は極めて高い
「でも、唯ちゃんが戦場に出るって言ったら瑞稀、怒ると思うよ?」
瑞稀は唯が戦場に出る事を頑なに拒んでいた
「そうも言ってられないよ。相手は魔王なんだからさ。間違いなく前の黒龍王より、3柱の魔王は強いだろうし、みーちゃん1人じゃ無理かもしれない…」
唯は瑞稀の反対を押し切ってでも、瑞稀が危なくなりそうならば、戦場に出るために準備を始めた
人界の王宮前に沢山の人が集まっていた
今日、新たな王が即位し演説を行うのだ
新しい王を一目見ようと、皆王宮前に足を運んでいた
「…陛下、お時間です。壇上へどうぞ」
「ありがとう、大臣。私の様な者が王となり、不満も大層あるだろうがよろしく頼む」
「…はい、全力を尽くさせて頂きます」
大臣が瑞稀に頭を下げ、壇上へと瑞稀を送る
瑞稀の背中を見送る大臣の目には侮蔑の感情がうつっていた
「…忌々しい、粛清部隊にいたせいで我々政府の裏の部分を知り尽くしているせいで、下手に奴に手出しが出来ない…」
粛清部隊として、政府の邪魔者を暗殺してきた瑞稀の存在は、政府にとって自らの首元に突き付けられるナイフも同然だった
瑞稀は政府の表沙汰に出来ない汚い部分の全てを知っている
そして瑞稀が壇上に上がり、演説が始まった
瑞稀が姿を見せると、民衆は大歓声にて新たな王を迎え入れた
「ありがとう、私の様な者が王として貴方方に選ばれた事を誇りに思う」
そう言う瑞稀の声は優しく、微笑みさえ浮かべ、王宮前に集まった民衆を見渡した
一転して瑞稀の目が鋭くなり、民衆の心を鼓舞するように声を、雄々しく張り上げる
「今回約千年ぶりに魔王達が人界に攻め込もうとしている!魔王軍の力は強大であり、率いる魔王もまた、先の龍王すら超える力を持っている!無論!我々もただ指をくわえて負けるわけにはいかない!!貴方方人界の民は私が命にかえても必ず護る!!民衆の皆もどうか諦めずに戦って欲しい!!我が神器、天空剣と我が名に誓い、揺るぎ無き勝利を人界に住まう生きとし生ける全ての民に、捧げよう!!」
「おおおおお!!瑞稀様!瑞稀陛下万歳!!」
王宮前は新たな王を讃える歓声に包まれた
そして早1ヶ月
とうとう魔王達が人界に攻め込んできた…
「チクショー!!強すぎる!魔王軍が一気に雪崩れ込んできやがる!!」
「諦めるな!もう少しで瑞稀陛下が前線に到着する!そうすれば、押し返せる!」
数十万の人界の兵士に対して、3柱の魔王が率いる三千の魔王軍に、 劣勢を強いられていた
純粋に人間と魔族では魔力も、身体能力も違いすぎるのだ
何よりも魔王軍が放つ強力な魔法が厄介だった
人間が使う結界ごときでは防ぎ切れず、1発の魔法で戦線を崩されてしまっていた
絶対的な数の有利など、そもそも何の役にも立たない程、人界軍と魔王軍には差がある
「たかが1人の人間が加わった所で、うちの魔王様達に敵うわけもない!!大人しく、滅びろ!人間共!!」
容赦なく人界の兵士を、強力な魔法や高い身体能力に任せた一撃で吹き飛ばしていく魔王軍
そこに一陣の風が駆け抜けた
「すまない、待たせた」
瑞稀が天空剣を左手に携え、前線に到着した!
「天空扇!!」
到着と同時に天空扇を放ち、魔王軍を一気に斬り崩していく!
戦線は瑞稀の一撃で魔王軍の優勢から人界の優勢に逆転する!
その隙を突いて人界の魔法部隊が畳み掛ける様に魔法を放ち続ける!!
「押し返せ!!これ以上奴らの好きにさせるな!!我らの背には人界全ての命がかかっている事を忘れるな!!」
瑞稀が兵士に怒号を飛ばし、鼓舞する
それに応じて兵士の士気が跳ね上がる!
雄叫びを上げながら戦線を押し返していく人界
すると、魔王軍後方から巨大な火柱が立ち上る!
そして戦場に片刃の大刀を肩に担いだ鬼が現れる!
「勇ましいねぇ!お前が奈良橋瑞稀か?」
鬼が瑞稀を視界に捉え、そう問う
「いかにも、私が人界王瑞稀だ。貴様は魔王か?」
鬼は満面の笑みを浮かべ答えた
「おうよ、俺は魔王。鬼神将斬鉄だ。よろしくな、すぐお前は死ぬがな!」
そう笑う鬼に対して、瑞稀は挑戦的な笑みを浮かべながら言う
「鬼神将?なんだ、鬼か。てっきり喋るゴリラの珍獣かと勘違いをしてしまった。こいつは失礼。魔王軍は動物園でも開くのかと思ったよ」
ゴリラと言われた鬼は赤い顔を更に赤くして叫ぶ
「俺ゴリラじゃねぇし!!珍獣じゃねぇし!!動物園じゃねぇし!!鬼神だしぃ!!」
むきになって否定した…
魔王軍は腹を抱えて笑い転げ、人界の兵士も戦場である事を忘れ、笑いを堪えていた
「お前ら笑うなぁ!!てんめぇ!よくも俺をゴリラと!バロムと同じ事を言いやがって!もう怒ったぞ!!本気で行くからな!?泣いて謝ってももう許さねぇかんな!?チキショー!!!」
鬼神将(ゴリラ?)と瑞稀の激闘が始まる?
唯ちゃんは戦場に本当にでてくるのでしょうか?まあ出ないでしょうね
そしてとうとう瑞稀が王様になりました!!大出世ですね!
さて魔王の1人、鬼神将(ゴリラ?)が瑞稀と戦います!
この魔王ちょっと馬鹿っぽいですね(笑)
こんなお馬鹿な魔王ですが強いんですかね?それは次回のお楽しみです!
ちなみにゴリラは禁句みたいです(笑)