真の勇者なら1人で魔王に勝てるよね 作:お茶に煎餅、お酒にチーズ
2週間振りの投稿です!
忙しくて書溜めはまだ作れていませんが、やはり以前の週1投稿よりも気持ちが楽になりました
それはそうと、2月24日くらいに日間ランキングに入っていたらしく、一気にUAやお気に入りが増えていて驚きました!
ランキングに入ったと気づいてからはソワソワしてしまい、暇ができる度に確認していたのですが、今思い出しても嬉しくなっちゃいますね!
私が見た限りでは日間66位くらいまで上昇して、累計UAは10000突破で、お気に入りも100人を超えるという爆発的な増え方にランキングに入るというのはこんなにも凄いのかと唖然としました
報告はこの辺りにして、最新話をどうぞお楽しみください!
目的地をデルカダール城下町に定めたレイブンとカミュの2人は意気揚々と教会から飛び出した
その道中で幾度となく魔物に襲われたが、牢獄からの脱出という経験を共有したためか。最初こそ戸惑うような素振りを見せていたもの、2度3度と繰り返し襲われるにつれて確固とした連携を作り出していった
「おい、レイブン!」
「わかってる! ──はぁっ! ……カミュ、後ろ!」
「うお…!? くっ……其処で寝てろっ!」
今はカミュが前に出てリリパットという弓を持った魔物に攻撃を仕掛けている。そんな相方の背中を守るように戦っていたレイブンはももんじゃを斬り捨て、返す刃でマンドラを両断する。だが、興奮状態になって次々と襲い掛かってくる魔物相手では多勢に無勢であり、カミュへの攻撃を許してしまう
カミュの背後からレイブンが斬ったももんじゃとは別の個体が体当たりしてきたが、直前に掛けられたレイブンの声に反応したお陰で軽傷で済んだ。そのまま反撃で《スリープダガー》をお見舞いして倒した
「ちっ、キリがねえな……!? こうなったらレイブン、一気に倒すぜ」
「そうした方が良さそうだね。それじゃ、行くよ! 僕に合わせて……!」
「──炎よ、集え──」
「──地よ、叩け──」
「「────《火炎陣》!!!」」
途切れない魔物の群れに業を燃やしたカミュとレイブンは既に何度か試した連携技で、今目の前にいる魔物を一掃することを決める
レイブンの《メラ》とカミュの《ジバリア》を組み合わせて、単体よりも遥かに高い威力を生み出すという連携技による攻撃は瞬く間に魔物たちに狙いを定め、2人の周囲を地雷原の如く爆発させた
案の定というか、この辺りの魔物では万が一にも耐えられない攻撃を受けた魔物は1匹の例外もなく倒れた。《火炎陣》の効果範囲外だった魔物もいたが、それらは数も少なくあっという間に2人によって殲滅された
「ふぅ……。なんとかなったみたいだが、鈍ってるのか身体が思うように動かねえな」
「カミュ、大丈夫……? ──聖なる力よ、我が祈りを導にこの者を癒し給え──《ホイミ》!」
「おっ! ……助かったぜ、レイブン。しかし、弱い魔物でも数がこうも多いと厄介だな」
先程の集団を殲滅したことで、今暫くは2人の周囲から魔物が姿を消した
カミュは鈍ったと言うが、それも仕方がない。道中の会話で言っていたことだが、彼はデルカダールの国宝のような大層な代物を盗んだらしく、それから1年間も牢獄に囚われていたようだ。牢獄にいる間はあの穴を掘っていたので身体は動かしていたが、当然ながら魔物との戦闘は久し振りなので感覚が鈍ってしまっていた
ちなみに、肝心の盗んだ物については頑なに教えてくれなかったのだが、その時にカミュはニヤリと得意げに笑って「デルカダールに置いてきた忘れ物の正体がそれだから楽しみにしてろ」と言っていた
何度か魔物から攻撃を受けてしまっていたカミュの傷を《ホイミ》という魔法で治す。レイブンにお礼を言った後、辺りを見回したカミュはうんざりした調子で死亡した魔物たちが光の粒子に変わるところを眺めていた
先程2人に魔物の群れが襲い掛かっていたが、昨今では珍しいと言うほどではない程度には遭遇する出来事だ。それもこれも10年以上も前からのことだが、ある時を境に魔物の動きが活発になり、現在では世界各地で魔物の被害が起きている
昔は必要最低限の護衛しか連れずに彼方此方に移動していた旅商人は必要最大限の護衛を確保して安全を確保するのが当然となり、それが確立するに至るまで、多くの商人が魔物の犠牲となってしまったであろうことは想像に難くない
この世界〈ロトゼタシア〉に於いて安全とされる場所は少なく、大きな町くらいのものだった。各地の村々では日々魔物の恐怖に苛まれている
町の外に出てしまえば1分も経たずに魔物が襲ってくるほどなので、例えば〈薬草〉などを求めて外に出た市民が行方不明になると言う話は枚挙に暇がなかった
閑話休題
小休止を終えて移動を再開した後も魔物は襲ってきたが、先程のように大きな群れで一斉にということはなく順調に歩みを進めた
何度か魔物と戦う内に、カミュも少しずつ戦闘勘を取り戻してきているようで見るからに動きが良くなっていた。幾つかの技も身体の動かし方を忘れてしまった影響で使い物にならないとのことで苦心していたが、この調子ならばそう遠くない内に以前の感覚を思い出せそうだ、と手応えを感じている様子だった
教会のシスターから聞いた噂話によると、レイブンとカミュの2人は極悪犯として指名手配されているようなので正門を通って城下町に入るわけにはいかない
更に言えば、カミュの目的の物は正門から入っても2度手間になるということで、別の入り口から城下町に入ると言っていた。具体的には、一般市民の居住区となる中層と貴族や金持ちが居を構える上層とは遮断された、破落戸や孤児など、訳ありの人たちが暮らしている下町に用があるようだ
正門とは異なり、下町に繋がる通路には見張りの兵士が常駐していないようだった。お陰でレイブンたちは最低限の警戒を保ってはいるが、特に不安を感じる必要もなく堂々とした態度でデルカダールへと戻ってきた
下町に入ると其処は雑然とした雰囲気の場所だった。元気に走り回っている子供たちの服は解れが目立ち上等とは言えない代物で、よれよれの服を着た男は満足に食事も取れないのか細い身体で目の下には隈が見て取れる。ゴミが其処らに撒き散らされており、ガラの悪い男たちが大きな声で騒いでいる
「上の城下町とは違う雰囲気で驚いたろ? 破落戸たちが暮らす掃き溜め……………此処もまたデルカダールの1つの顔さ」
「……そうみたいだね。同じ国の城下町で、上と下に分かれているだけなのに随分と違う」
家を持たない人も大勢いるらしく、そういう人たちは襤褸切れで作られた天幕の中に敷かれた布の上で寝転がって眠るようだ。もちろんお金は取られるので、そのお金すらないならば地べたでということだろう
その他にも木製の家の屋根上には木の板で乱雑に繋げられた足場があり、テントを張り休んでいる人の姿も見えた
どうやら奥に行くほど立派な建物が多いようだった。全て木製だが、明らかに正しい建築知識を持つ人物が作ったと素人目でもわかる代物である
「……1年前、俺は相棒のデクと協力し古代からデルカダール王国に伝わる秘宝〈レッドオーブ〉を盗み出した。まぁ下手を打って捕まりはしたが、予めオーブは後から回収できるよう安全な場所に隠しておいたのさ」
キョロキョロとレイブンが下町を眺めていたら、少し悩むような素振りの後にカミュが此処に置いてきたという忘れ物について語り出した
レイブンの祖父テオは有名なトレジャーハンターだったので、旅の途中で暇潰しに話していたことを思い出す。遥か昔、それこそ年代もわからないくらい古代からデルカダール王国が守り続けてきたと言う“赤い宝玉”を〈レッドオーブ〉と言うのだと教えられていた
そんな物を盗んだのであれば彼処に囚われていたことの辻褄は合うだろう
「真っ直ぐ進んだ先に城下町のゴミを集めたでっかいゴミ捨て場がある。その奥を掘り返してオーブを埋めたんだ。奴ら、自分たちが出したゴミの中に自分たちのお宝が隠されてるなんて夢にも思ってないだろうぜ」
などと言って、カミュはニヤニヤ悪い顔で笑っていた。確かに友好的な手段ではあると、レイブンも呆れながらも頷いていた
このような場所に慣れていないことがわかるのか、目的のゴミ捨て場に向けて歩いていると何度かレイブンに視線が集中していた。それをカミュが周りに睨みを効かせて牽制したお陰で絡んでくる相手もいなかった
その後で、アレは品定めをしていたとカミュに教えられてなんでそんな簡単なことに思い当たらなかったのかと驚いた、というような一幕があったとか
「着いたぜ、此処だ。すぐにオーブを回収するからお前は邪魔が入らないよう見張っててくれ」
其処は話に聞いていたよりも汚く、ゴミが散乱している光景は気分の良いものではなかった
カミュもそんな様子に気づいたらしく、或いは長居するつもりがないだけかもしれないが、手早く探し物を終わらせると作業に取り掛かった。その間、レイブンは邪魔者が寄ってこないようにゴミ捨て場を漁るカミュの姿が見えないよう背中の陰に隠しながら見張りをしていた
しかし、どうもカミュの様子がおかしい
「間違いない………。確か……この辺りに…………。………………………………………………。………………無い」
最初は記憶を頼りに一箇所のみを掘り返していたのだが、探し物が見つからず手当たり次第にゴミを放り捨てながらオーブを探していた
だが、後もう少しで底が見えるくらいに探しても見つからなかったらしく、呆然と黙り込んでしまった
レイブンも途中から見張りのため最低限の警戒だけは続けたままにその姿を見ていたが、座り込んでいても仕方ないと思ったのか僅かに興奮した様子でカミュは立ち上がってブツブツと呟き始めた
「バカな! なんで無いんだ!? この場所を知ってるのは俺と、後は彼奴ぐらいしか…………。まさか…デクの野郎………オーブを持ち逃げしやがったのか!?」
其処まで呟くと、カミュは顔を顰めた。そして、拳を強く握り締めた
自分ともう1人しか場所を知らないとなれば、〈レッドオーブ〉が見当たらない理由なんてそう多くはないだろう。其れこそ、可能性は1つか2つに絞られるのだからその考えに至るのは不思議ではなかった
相棒と言えども互いに盗賊だったと言うのだから、義理よりも利益に目が眩んだ可能性はあるかもしれない
「くそっ………デクの野郎! 見つけ出して、締め上げてやる!」
もうカミュの中では決定事項のようで、裏切った相棒に怒りを燃やしている。信じていた相棒に裏切られたかもしれないということで、短絡的な思考になっているようにも見えた
レイブンもなにが起きたのか理解できたが、特になにも言うつもりはないようだった。デクというカミュの相棒がどのような人物か知らないし、部外者に彼是と口出しされるのも良い気はしないだろうと考えた結果だ
「お前にも彼奴を探すの手伝ってもらうぜ。デクの足取りを追うんだ!」
「うん。なにか案はある?」
「ああ。この先に俺たちが昔ねぐらにしていた下宿がある。2階建ての建物だからすぐにわかるはずだ。まずは其処へ行くぞ」
と言って、指差した先には2階建ての建物が見えた
案内するために先導してくれるカミュは複雑そうな顔をしていた。レイブンが話を振ると、やはり彼としても相棒を疑うようなことはしたくないと零していた。しかし、状況証拠から疑わずにはいられないということだ
その疑いを払拭するためにもデクの足取りを追う必要があるのだろう。だからこそ、カミュも“まずは”と前置きしていたのだった
程なくして下宿に着くと、カミュは勝手知ったると言わんばかりに入っていくのでその後に続いた
「懐かしいな。全く変わってないぜ。此処は俺とデクが盗賊だった頃、随分と世話になっていた下宿なんだ」
カミュと相棒のデクとやらがねぐらにしていたと言う下宿の中に入れば、外装と比べて内装の方がしっかりとした造りだった。恐らく下町でも3本指に入るくらいに良質な宿であろうことがわかる
1年振りということもあってか、カミュも懐かしそうに下宿の中を見回しているのが印象的だった。先程まで昂ぶっていた気も僅かに落ち着いたのか、穏やかに笑って秘密基地を自慢する子供のようにそう告げた
「おい女将っ! 女将はいないか? 俺だっ、カミュだ! 聞きたいことがある!」
そうやって下宿の中に叫ぶが、少し待っても反応がなくシンとしていた。どうやらお目当の人物はこの場を離れているようだった
2人もそのことに気づいたらしく、一瞬顔を合わせた後にカミュが気まずそうに目を逸らして頭を乱雑にガシガシと掻いた。そして、どこか落ち込んでいるように見えるのは、彼にとって1年振りの再会なのに機を外したことで少しきまりが悪いのかもしれない
「女将は留守か………。弱ったな。あの人ならデクの居場所がわかると思ったんだが。まあ焦ったところで仕方がないか。まずは女将を探し出してデクの居場所を聞き出そう」
「それは良いけどね。探すのはどうやって……?」
「レイブンは町の東側にある火の見櫓から女将を探してくれ」
「わかった。火の見櫓だね」
「女将は見ればすぐにわかるぜ。この辺りじゃただ1人の赤髪だからな! 俺は別の場所を探すとするぜ」
というわけで、2人は手分けして下宿の女将を探すためにその場を後にした
レイブンとは反対方向に行ったカミュを尻目に、火の見櫓へと向かう。体調でも崩したのか咳き込む女性、保護者らしき姿もなく犬と2人きりでなにやらしている少女などに目を遣りながら、レイブンは態度の大きそうな門兵に眉根を顰めながら櫓を登っていく。その姿も見ていたはずなのに、兵士は我関さずという様子だった
火の見櫓の上から女将とやらを探していると、やはりというか矢鱈と偉そうな門兵の姿が目についた
例えば、腰の悪いお婆さんがのそのそと近づいていくと、人相の悪い顔つきで上から睨みつけた後に、その姿を確認してから犬を追い払うような仕草で追い立てるような場面があった。その後に仕立ての良い服を着た中年の男が近づいてくると、またもや横柄な態度で見下ろして心付けを要求しているようだった
破落戸が集まると聞いていたが、まさか国の兵士までもがあのような者だとは思わず、世間知らずではないつもりのレイブンでも驚かずにはいられなかった。整然と指示に従う王城の兵士を事前に見ていたから、尚のことである
その後もついつい探す合間に見ていれば、綺麗な踊り子が目の前を通り掛かると胸を不可視の矢で撃ち抜かれたような仕草を見せて、彼女の後をフラフラとついて行こうとする
職務放棄までするのかとなぜかレイブンが憤っていると、踊り子に見惚れて気づいていなかったのか、少女と一緒にいた犬がジッと見つめていた。ジリジリと迫る犬に後退りする門兵。数瞬の硬直の後に威勢良く犬が吠えて、大人の男である門兵は生娘のようにひゃあっ! と情けない声を上げて逃げ回り始めた
小気味いい光景を眺めてレイブンも思わずといった様子で笑っていると、期せずして見張りのいなくなった門から1人の女性が現れた
恰幅の良い赤髪が特徴的な女性を見て、本来の目的を思い出したレイブンはあの人が女将だろうと確信した。下町の住民にしては仕立ての良い服に堂々とした態度、と何処かの誰かに似た雰囲気もあって、確かにカミュの言う通り一目見ればすぐにわかる人物だった
「………全く、女将は何処に行ったんだ。お前の方はどうだった」
レイブンが櫓を降りた時に、ちょうど良くカミュが駆け寄ってきた
下町を駆け回って探したのか、どうにも少し草臥れたような様子だった。女将とは行き違ってしまったらしく此処に来るまでには会えなかったようだ
其処の門から恰幅の良い赤髪の女性が下町に入ってきたことをレイブンが話すと、その人で間違いないとカミュは頷いた
「おお! ふくよかな赤髪のおばちゃんが下宿の方に向かったんだな。なら話は早い。早速、女将に会いに行くぞ」
その言葉に頷き、2人はもう一度下宿へと戻った
下宿の中に入ると、先程レイブンが見た恰幅の良い赤髪の女性がいた。棚の整理をしているらしく、まだ此方には気づいていないようだった
カミュは何処か嬉しそうにしながらも、それを隠すように表情を取り繕い、照れ隠しか手を腰に当てたままという横柄にも見える態度で女将を呼んだ
「よお、久し振りだな女将」
「いらっしゃいましー。今日はお泊りかし………。……あ、あんた、まさかカミュちゃんかい!? 城の連中に捕まってたんじゃないのかい!? ひょっとして城下町を騒がせてる脱獄囚ってのは……………」
其処で言葉を止めたのは、カミュの表情からなにかしら察したからだろう。或いは、破落戸が蔓延る下町で生きていくのにはそういった察しの良さは必須だったのかもしれない
俯いた顔を上げた女将は呆れたように笑っていたが、その表情が哀れんでいるようにも、寂しそうにしているようにも見えたのは気の所為ではないだろう
「……どうやら訳ありみたいだね。やれやれ、相変わらず危なっかしい子だよ」
「そう言うなよ。アンタに迷惑は掛けないさ。………デクの野郎を探してるんだ。何処にいるか知らないか?」
「おやまぁ、懐かしい名前だこと。けど、最近この辺りじゃ見掛けないね。なんでも城下町のお城の近くで店を始めて随分と忙しくしてるらしいよ。羽振りが良くて結構なことさ」
デクについて女将に聞けば、なにか知っているようだった。カミュの相棒ということで隠す必要も感じていないらしく、知っている情報を教えてくれた
城下町のお城の近く、つまり貴族やお金持ちが居を構える場所に店を出しているのだとか。商売は上手くいっているようで、下町で暮らしている女将の耳にも噂が届いてくるほどのようだ
しかし、カミュはそれを聞いてもなにやら納得がいかないのか驚いた表情だった
「おいおい、店を始めるったって彼奴そんな金持ってなかっただろ…………。しかも、城の近くと言えば1等地じゃねえか。いや、待てよ……。まさかオーブを………?」
「おっと、他人の事情には首を突っ込まないのがこの町のルールだ。これ以上知りたければ自分で聞いてみるんだね」
店を開くほどの金が無いはずのデクが、よりにもよって城の近くに店を構えている。自分の頭を整理するためなのか、独り言を呟いていたカミュはハッとなにかに気がついて顔を上げた
2人が此処に来た理由、カミュとデクが盗み出した〈レッドオーブ〉の行方がわからず仕舞いだった。隠し場所を知っているのは盗み出した2人だけで、金の無いはずのデクは妙に羽振りが良いと聞いた
そうした結論に行き着くのは至極当然というものだったが、女将が思考を遮るように声を上げた
どうやら下町のルールとして、他人の事情を詮索するのは御法度のようだった。それでも首を突っ込むなら直接動けば良いということだ
そうして女将に諌められたことで、カミュも幾分か頭が冷えたらしい
「………そうだな。礼を言うぜ、女将。行こうぜ、レイブン」
多少頭が冷えても、思い当たった事実に変わりはない。カミュはぶっきら棒に女将へと礼を告げると、レイブンを促してさっさと下宿の外に出て行く
レイブンもその後をついて行くと、勢い良く振り返ったカミュが拳を握り締めて胸の内に溢れる言葉を吐き出した。その表情は怒りだとか、悲しみだとか様々な感情が伺える複雑なものだった
「デクが城下町で店をやってるだと? あの野郎、俺とオーブを売りやがったんだ! 締め上げてオーブの行方を吐かせてやる!」
一通り気炎を吐くと落ち着いてきたらしく、どうやってデクのいる場所まで行くのかを考え始めた
難しい顔で腕を組んで、先程は犬に追い立てられていた門番の兵士の立つ場所を睨むように見据える。女将も彼処から下町へと入って来たのだ
カミュは門の先が何処に繋がっているか知っているらしく、仏頂面のままレイブンに説明する
「城下町はあの門を越えた先だ。邪魔な門番には金を握らせるか…………。だが、旅立ちの前に余計な出費は避けたいな。そう言えばあの門番、犬に弱いんだっけか。なら誰かに犬を借りて突破しようぜ。目指すは城下町………城の近くのデクの店だ!」
そうして2人の次の行き先が決まった
恐らく〈レッドオーブ〉の行方を知っているであろうカミュの相棒、デクは城の近くに店を構えている。そのためにはレイブンが気にしていたガラの悪い門番の兵士を突破しないといけない
犬に怯えていたという情報を元に、2人はすぐに行動を開始した
これにて壱章の2話は終わりです
執筆する日が違ったりするので、文章が安定していなくて違和感があるかもしれませんが気にしないでいただけると嬉しいです
今回は最初の方でチョロっと戦闘シーンを入れてみましたが、道中の戦闘は魔物もまだ弱いのであのような形になりました
原作でカミュの加入当初はレベルが低いのは牢獄に閉じ込められていた所為で身体が鈍っていたのだろうと私は解釈して…………というか、そうでもないとデルカダールに来るまでどうしてたんだという話ですよ
私の作品の中ではレベルという概念がないですし、普通に考えて1年間も真面に運動していなければそれ以前と同じように動ける訳がないし、辻褄を合わせるならこんなところかと思います
ちなみに、レイブンが1人で敵を一掃しないのはカミュに戦闘を全て任せて頼るのは嫌だからと言われて、合わせているからです
そうでなければデルカダール周辺の魔物なんて《イオ》で一発ですからね
ところで、前回から投稿間隔を変えましたが、私としては週2で1話投稿がやり易かったので今後もこの形でいかせてもらいたいと思います
ただ、今回は3月5日か3月6日のどちらかに投稿すると言っていましたが、ややこしいので次からは2週間後の水曜日、と決めた方が良いですよね
変更ばかりですが、どうかよろしくお願いします
というわけで、次の投稿は3月20日になります!
遅筆ながら頑張って書くので、楽しみにお待ちいただければ嬉しいです
それでは、また2週間後にお会いしましょう!