真の勇者なら1人で魔王に勝てるよね   作:お茶に煎餅、お酒にチーズ

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2週間ぶりの投稿です
文章が安定しておらず読み難いかもしれませんがお許し下さい!

それでは、どうぞ





商人デクと宝玉の行方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1年前に盗み出されたデルカダールの秘宝〈レッドオーブ〉は、犯人のカミュの奇策によって今もまだ下町のゴミ捨て場に隠されている筈だった。しかし、意気揚々と回収に来たにも関わらず肝心のオーブは行方知らずになっていた

 隠し場所を知っていたのはカミュとその相棒デクのみであり、彼らが当時ねぐらにしていた下宿の女将から“最近は随分と羽振りが良い”と聞いたことにより、疑いは確信に変わる。かくして、レイブンとカミュの2人は城近くの貴族やお金持ちが住む場所に店を構えるというデクに会いに行くため作戦を練っていた

 

 

 

 下町から城下町に行くことはそう難しくはない。門番に幾らか心付けを渡せば済む問題だからだ

 だが、その案はカミュが却下した。世界各地を旅して来たレイブンの資金力はそれなりのものであり、盗賊として身軽でいることを心掛けていたカミュにしても金に困るほど要領は悪くなかった。下町暮らしだったのは単純に城下町よりも慣れ親しんだ空気を求めていたからに過ぎない

 それらを鑑みれば、あの門番に渡す金など大金というほどでもないのだから神経質になり過ぎと言うのは簡単だが、現時点で2人は大国から指名手配されている脱獄囚なので余計な出費は控えたほうが良いとのことだ

 

 

 

 事前にレイブンから門番の弱点を聞いていたことも、心付けの却下に踏み切る要因となっただろう

 というのも、カミュに頼まれて火の見櫓の上から女将を探していたレイブンは位置の関係から必然的に門番の所業を目の当たりにすることになる。国に仕える者として相応しくない行の数々に眉根をしかめる羽目となったが、その時に偶然にも門番の弱点が露見した

 どうやら門番は犬が苦手のようで、通り掛かった踊り子に見惚れて職務を放棄して千鳥足で後を追うのも束の間、行き先を遮るように立ち塞がった犬がに怯えて這々の体で逃げ出したのだ

 

 

 

 そんな話を女将発見の報告ついでに聞いていたことを思い出して、上手くすれば心付けを渡すより遥かに楽に通れると算段をつけた

 件の犬の居場所に心当たりがあるというレイブンの先導で歩くこと数分、下宿と火の見櫓の中間くらいの位置に幼い少女と犬の組み合わせを発見した。2桁にも満たない年齢の少女に仲睦まじく寄り添う犬は見間違いでなければ、楽しそうに門番を追いかけ回していた犬だろう

 親しげに犬に話し掛ける少女の姿に2人は複雑な心境を胸に抱き、咄嗟に掛ける声を失った

 

 

 

「…………なに見てんのよ。ふんっ。用がないならさっさと消えてくれない?」

 

 

 

 話し掛けもせずに2人が見詰めていたからだろう。少女は不快そうに鼻を鳴らして、ぶっきら棒に言い捨てた

 慌ててレイブンが事情を説明する。と言っても、まさか〈レッドオーブ〉について話す訳にもいかないので、ただ犬を貸して欲しいと言っただけである

 まあ、不審な男の2人組が近づいてきたと思えばなにも言わずに見詰めて、その後に笑顔で近づいていく。仮に門番の兵士が真面な人格の持ち主だったとすれば、即座にお縄につくことになっていたはずと考えれば果たして運が良いのか悪いのか

 

 

 

「はぁ? うちの犬を貸して欲しい? ふん……。冗談も休み休み言ってよ。この子はアタイと同じ………生まれついての一匹狼なの。誰にも懐きはしないのよ」

 

 

 

 少女はそう言って、レイブンの頼みを突っぱねた

 2人はどうしたものかと考える。犬を借りられなければ、あの作戦は無理だ。まさか少女から犬を奪うなんてことはしたくないし、レイブンは勿論のこと根が善良なカミュの2人に思いつくはずもない

 しかし、其処で少女はハッとなにか考えついたらしく、少し悩むそぶりを見せながらもレイブンにあることを提案した

 

 

 

「あっ、でも………そうね。レッドベリーと聖水をくれたら考えてあげても良いけど……………」

「その2つなら持ってるよ。ほら、どうぞ。コレで間違ってないよね」

「…………本当にくれるの? ……後で返して、って言っても遅いんだからね! 絶対に返さないわよ!」

 

 

 

 レイブンがレッドベリーと聖水を差し出すと、その場で渡されるとは思ってなかったのか少女は思わずと言った様子で子供らしい表情で呆けた

 それからサッと奪い取るようにしてレイブンの手から受け取って憎まれ口を叩くが、その顔は隠しようもなく嬉しそうだ。微笑ましい光景に2人は顔を見合わせて笑い、心なしかホッとしたようにも見える

 そんな2人を尻目に、少女は笑顔でドラコという名前の犬とレッドベリーを半分こにして食べる約束をしている。残念ながらレイブンたちの方に振り向いた時には元の仏頂面に戻っていたが

 

 

 

「お喜びのところ悪いが、嬢ちゃん。渡す物は渡したんだ。約束通り少しだけその犬を貸してくれ」

「ふん………。仕方ないわね。ドラコ。このお兄ちゃんたちと遊んで来なさい」

 

 

 

 茶々を入れながら催促したカミュを煩わしそうに少女が睨みつける。機嫌を損ねてしまったようだ

 レイブンの窘めるような視線を受けて、肩を竦めたカミュは1歩下がって後を譲る。それでも少女は不愉快そうにカミュを暫く睨んでいたが、約束は守るつもりなのだろう。鼻息荒く視線を切ると、ドラコを2人に貸してくれた

 ──と、其処で話は終わりのはずだったが、なにを思ったかレイブンは腰の袋から更にレッドベリーを3つ取り出して少女に渡した

 

 

 

「………どういうつもり? レッドベリーなら、さっきもらったわ」

「そうだね。だから、これはただのお礼。それに以前たくさん拾ってしまって有り余ってるんだ。腐ってしまっても勿体ないし、遠慮しないで受け取って」

「………………………ふんっ。アタイは感謝なんてしないわよ! 捨てるのが勿体ないからもらうだけだもの!」

 

 

 

 相変わらずの憎まれ口と共に少女は顔を背けるが、良く見ると僅かに耳が赤く染まっていた

 その様子を見ていたカミュは、いとも容易く少女の機嫌を取り戻したレイブンを賞賛するように肩を叩いて声に出さず労う。イシの村で子供の相手をしていただけあり、まさに神対応と言うべきだろう

 2人は少女に礼を言って、その場を後にした

 

 

 

 新たにドラコを連れた一行は、当初の予定通りに上層へと向かうため門番に話し掛けた

 近づいてくる2人には気づいていたので、あの時レイブンが火の見櫓から見ていたように顎を上向けて見下してくる。その所為か、横柄な門番は背後にいる犬の存在には気づかない

 この時のカミュはニヤニヤと悪どい顔で門番を嘲笑っていたので、其方に気を取られた可能性も否めないが

 

 

 

「止まれ! ここから先はデルカダール王国の民が住まう町! 怪しい者を通す訳にはいかん!」

 

 

 

 言葉通りに受け取るならば言っていることは尤もだが、門番の態度が彼の正当性を否定しているのがなんとも言えない

 2人は特に言い返すでもなく、ただ左右に1歩動いた。まるで“ナニカ”に道を譲るような動作だった

 そして、レイブンたちの背後から現れたるは1匹の犬。この後に待ち受ける“遊び”に期待を高めているのが誰にでもわかるほど、ドラコは激しく尻尾を振って興奮を露わにしていた

 

 

 

「ひっ…!? や、やめろ! こっちに来るなっ!」

「…………わん! わんわんわんっ!!」

「う、うわああああぁぁぁ────っ!!?」

 

 

 

 門番はドラコに激しく吠えたてられて、一目散にその場から逃げ出していった。勿論、遊びだと勘違いしているドラコもその後を追いかけていく

 目論見通り門番を排除した2人は意気揚々と上層へと向かう。カミュは門番の反応が大変お気に召したらしく、とても愉快そうに肩を揺らして笑っていた

 そんなこんなで、第一の関門を突破したのであった

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 上層に辿り着いた2人は、ふと空が赤らんできたことに気がつく。急がなければ程なく日が暮れてしまうことだろう

 だが、急ぐにしてもデクの店は城下町よりも警備の厳しい貴族などの居住区にもなっている。レイブンとカミュはお尋ね者なので、慎重に行動しなければならない

 互いに状況を理解していることを視線だけで確認し合って、静かに行動を開始した

 

 

 

 暫くの後、情報収集を終えた2人は有力な情報を手に入れた。とある家の屋根を伝って貴族の居住区に行くことができるそうだ

 その情報を元に辿り着いた家の裏手にいた男に確認を取ると、どうやら情報は確かだったらしい。梯子伝いに屋根の上に登ると、1本の縄が隣の建物に繋がっていた

 危なげなく縄の上を渡りきると、今度は建物から貴族の居住区へとまた縄が繋がれている。まだ日は暮れていないので足を踏み外すこともなく、無事に縄を渡り目的の場所に到達した

 

 

 

 デクの店については城下町で情報収集をした際に当たりをつけているので迷うことなく発見した

 噂で聞いた通りに繁盛しているようで、貴族の居住区にありながらデクの店は見劣りしない。店前は綺麗に掃除されており、成金のように趣味の悪いゴテゴテ感はなく瀟洒な印象がある

 とはいえ、立派な扉を前にした2人は特にひるむ様子はなく、カミュを先頭にして入店した

 

 

 

 扉を開けるとまずはレッドカーペットが目に付いた。少し派手な印象で店内はまた外観とは趣が異なっているようにも見えるが、其処彼処に配置されている物にはやはりセンスを感じさせる

 レッドカーペットの先には身形の良い小太りの男がおり、その姿を確認してカミュが歩調を早めた。小太りの男は商品を整理しているのか背を向けてガサゴソと者をいじる音だけが聞こえる。どうやら2人の入店に気づいていないようだ

 カミュは男のすぐ背後で立ち止まるがまだ振り向かない。そして態とらしく店内を見回して感嘆の声をあげた

 

 

 

「へぇ……。なかなかイイ店じゃないか」

「いらっしゃい! うちで扱ってる品はどれも全部一流の品物よー」

 

 

 

 その声に反応してか。いつのまにか背後に人がいることに驚く様子もなかったことから、或いは2人の入店そのものには気づいていたのかもしれない。まあ扉を開けた際に呼び鈴が鳴っているのだから、気づいていない方が問題なのだが

 小太りの男は品物を整理する手を止めて、如何にも商人らしい売り文句と共に立ち上がる。そして振り返り…………カミュの姿を見て驚き仰け反った

 小太りの男、デクの反応を見たカミュは険しい顔で睨みつけて核心に触れる言葉を投げかける

 

 

 

「じゃあ、一流の宝石…………例えばオーブなんかも扱ってるのか?」

「………ア、アニキ!?」

「久し振りだなぁ……デク!」

 

 

 

 実際にかつての相棒の姿を見たことで感情を抑えきれなくなったのか。カミュは挨拶も其処其処に拳を大きく振りかぶってデクに殴りかかった

 レイブンは特に口出しもせずに見守っていたが、此処でまさかの事態が起こる。今にも殴り飛ばされそうになったデクはなんと、華麗に拳を躱してカミュの腹部目掛けて突進したのだ。更には頭を抉り込むようにして腹部に擦り付ける

 

 

 

「アニキー! カミュのアニキ! お化けじゃない! 本物のアニキだー! 無事で良かった、ずっと心配してたんだよー!」

「お、おい引っ付くな! 離れろ、むさ苦しい!」

 

 

 

 ぶん殴ろうとしたデクの思わぬ反応にたじろぐカミュ。犬かなにかにも見える熱い歓迎は見ているだけのレイブンも暑苦しさを感じるほどだ。カミュもこれには参ったようで、突き飛ばすようにしてデクを引き離した

 一方、突き飛ばされたデクはというと、彼はカミュの対応に困惑しているように見えた。以前は先程のような遣り取りも珍しくなかったのかもしれない

 それはそれとして、気を取り直したカミュは依然として険しい顔つきでデクを睨んでいる

 

 

 

「ったく、調子のイイこと言いやがって。この店だって俺を裏切ってオーブを売った金で始めたんじゃないのか?」

「裏切るわけないよー! アニキのことは1日だって忘れたことなかったよー! 店もアニキを助けるために始めたんだから!」

「はぁ、俺を助けるため? なんだそりゃ。大体、元盗賊が遣ってるにしては随分立派な店じゃないか」

「ワタシ、盗みの才能はイマイチだったけど、商売の才能はあったみたいよー」

 

 

 

 デクは裏切ってないと言うが、頭に血が上っているカミュは信じようとはしない

 それに元盗賊と言うことを鑑みれば、明らかにこの店は豪華に過ぎる。初めからある程度の金を所持していなければ、城の近くという立地に店を構えることは難しいだろう。その金は何処から出てきたのか。まさか地面から湧き出してくるはずもないので、カミュの疑念は当然というものだった

 だが、カミュの纏う険悪な空気に気づいているのかいないのか。照れ臭そうに後頭部を掻いたデクの呑気な言葉に、毒気を抜かれたのかカミュも一応は話だけでも聞こうという姿勢を取る

 

 

 

「アニキが捕まってなんとか命だけでも助けようと色々考えたのよー。放っといたらどんな酷いことされるか…………。だからワタシ、オーブを拾ったと嘘ついて王様にオーブを返したのよ。それでもらった賞金で商売始めたのよー。商売で稼いだ金は城の兵士にバラ撒いて、アニキが早く出て来られるよう裏から手を回したって訳!」

 

 

 

 デクの話は2人にとって、特に彼の相棒であったカミュには衝撃的なものだった。まして裏切られていたと思っていたのだから、本来ならば容易には信じられるものではない

 その瞬間、カミュはずっと頭の隅に引っ掛かっていたことを思い出す。牢獄に囚われてから1年間、毎日のように穴を掘って脱出経路を確保していた彼はその姿を見咎められることはなかった。穴を掘り始めた頃ならばいざ知らず、掘り進めれば掘り進めるほど穴の中に潜っている時間は長くなるし、即ちそれだけバレる可能性は高くなるのは至極当然というものだろう

 しかし、結果として脱出できた以上は深く考えることはやめていたが、こうしてデクの話を聞いて思い当たる節が有るのは間違いなかった

 

 

 

「………………牢の床にデカイ穴を開けても見つからなかったのはその所為か? 妙に監視が緩くて気になっちゃいたが」

「でしょでしょー! きっとワタシの渡した賄賂が牢の兵士たちにも効いてたんだよー!」

 

 

 

 独り言を呟き考え耽るカミュに対して、邪気の欠片もない声が掛けられる

 自慢するような言葉と共に向けられたデクの笑顔は子供が親に自慢する時のような、或いは犬が褒めて褒めて! と尻尾を振っている時のような無邪気な様子である。僅かでもカミュの役に立っていたかもしれないことがそんなにも嬉しいのか、含むところなんて一切見当たらないような見事な満面の笑みを浮かべている

 そんな姿にカミュは決まりが悪そうに背を向けて後頭部を掻きむしったが、すぐに勘違いを受けて入れてデクに振り向いた時には表情を緩めていた

 

 

 

「………はぁ。わかったよ。疑って悪かった。礼を言うぜ、相棒」

「アニキー! わかってくれて嬉しいよ!」

 

 

 

 カミュは人に謝るにしても、礼を言うにしても的確とは言えない態度だったが、当事者のデクに思うところはないようである。むしろ誤解がなくなって嬉しそうに喜んでいるくらいだ

 とはいえ、誤解はなくなったのは良いが、結果的にカミュの目的は達成できなかった。〈レッドオーブ〉は彼の知らない内に国へと返還されてしまったので、完全に行方知れずとなってしまったのだから。加えて、一度盗まれている以上、更に厳重に保管されているに違いない

 

 

 

「けどな……これでオーブは行方知れずか………」

「フフフー。それなら大丈夫。安心しちゃってよー、アニキ! ………ちょっと店の外までついてきて!」

 

 

 

 つい愚痴を零すようにカミュが呟くと、此処である意味で予想外の人物から反応があった

 デクは両手を腰に当て胸を張ると、自信ありげにそう言う。そのまま陽気な笑みを浮かべて揚々と店の外へと出て行ってしまった

 不思議そうな顔で見送った2人も少しの沈黙の後、素直に店の外に出る。もうすっかり日は暮れてしまっており、デクは店前で2人が出てくるのを待っていた。その背中にカミュが問いかける

 

 

 

「どうしたんだよ、デク? なにに安心しろって言うんだ?」

「ワタシ、国にオーブを返した後も人を使ってオーブの行方ずっと追ってたのよー。アニキが大事にしてたの知ってたからね。オーブはグレイグ将軍が南のデルカダール神殿に移して厳重に守ってるらしいよー」

「デルカダール神殿だって? 確かデルカダール神殿は此処から南東……………レイブンの住んでたイシとか言う村も多分同じ方角だな。なるほど、手間が省けてちょうど良い。早速デルカダール神殿に向かうとするか。デク、お前も一緒に来るか?」

 

 

 

 オーブは国に返還しても、その足取りは追っていたらしい。やはり予想通りに以前よりも厳重に保管されているようだが、何処にあるのかという情報を知っているのと知らないのとではまるで違う

 偶然にもイシの村とも方向が同じようなので、レイブンの所用を済ませることも可能だろう。といっても、村の様子を見るだけになりそうだが

 それは未だに〈レッドオーブ〉を諦めていないカミュにとっても渡りに船の話だったようで、有力な情報を得たこともあって弾んだ声でデクを旅に誘った。しかし、デクは首を横に振る

 

 

 

「残念だけど行けないよ。商売始めた後、ワタシ嫁さんもらって……………それに店のこともほっとけないよ」

「そういやお前は昔から商売やりたいってよく言ってたもんな…………。わかったよ、嫁さんを大事にしろよな。それじゃ、足がつかない内に出発するか。デク、世話になったな。達者で暮らせよ」

「アニキも元気でね。あと連れの人も…………ワタシの分もアニキのことよろしく」

 

 

 

 嫁がいると言うデクに、そういえば店の中に1人女性がいたとカミュは思い出す。あの女性がデクの嫁なのだろうと納得する。かつての相棒が幸せな生活を送っていることに安堵した様子で、カミュは澄ました顔で彼らしく端的に発破をかけた

 デクも付き合いが長いので、それがカミュなりの激励であることがわかっている。彼は穏やかに笑って頷き、カミュのことを頼まれたレイブンも力強く頷いた

 

 

 

「南門は兵士だらけで突破は無理だな。グレイグの部下が相手じゃ賄賂を握らせるってのも難しいだろう。仕方ない。遠回りになるがデルカダールの丘の南の裏道を抜けてデルカダール神殿へ向かうか。ついでにイシの村にも寄って行こう。というわけで、1度下層に戻るぞ」

「アニキ、あっちから行くって言うなら呉々も気をつけてよー。あの先に広がるナプガーナ密林は迷い込んだら2度と出られない危険なジャングルって話なんだよー」

「………噂に聞く秘境ナプガーナ密林か。だが、道はそれしかないんだ。上等だ、やってやるさ」

 

 

 

 この後の方針が決まり、2人はデクと別れた

 流石に陽が落ちてから縄を渡るのは危険なので、城下町に上がって来た時に見掛けた小さな建物の屋根に飛び降り、其処から更に地面に飛び降りたら目の前には下層に繋がる通路がある

 巡回する兵士たちに見つかることもなく下層に辿り着き、犬に吠えられて壁際まで追い込まれている見覚えのある門番をなんとなしに眺めながら、2人は無事に城下町から抜け出した

 

 

 

「デクのお陰でオーブの行方がわかったな。彼奴には頭が上がらねえよ」

 

 

 

 そう言ったカミュに対して、レイブンも深く頷く

 其れこそオーブの行方によっては、あの場所で2人は別れていた可能性もあったかもしれない。偶然にも同じ方角に用があるために行動を共にしているようなものだからだ

 城下町から暫く離れたところで2人が振り返ると、巡回を行なっているであろう兵士たちが現れた。松明を手にして誰かを探しているように見える

 レイブンとカミュの存在には気づいていないらしく、2言3言ほど何事か会話した後に城下町へと戻って行った

 

 

 

「……それじゃ、行こうか」

「ああ……。まずはデルカダールの南にあるナプガーナ密林を目指すぞ」

 

 

 

 2人共にデルカダール王国に思うところはある

 カミュは其れなりの年月をこの国で過ごしたし、レイブンは旅の初めに訪れた場所。不当に捕まり、牢で出会った青年と脱獄した末に行動を一緒にする。事前に預言を受けていたというカミュにしても、この出会いはなにか運命めいた数奇なものを感じさせた

 暫しの間、2人は城下町の方向をボンヤリと眺めていたが、レイブンの言葉を合図にして背を向けた

 次の行き先は、秘境ナプガーナ密林である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







これにて壱章、3話目を終了します
誤字脱字、ありましたら報告よろしくお願いします


ところで、最近は執筆時間に余裕ができたことでこの作品以外にも新しい作品の設定を作り始めています
勿論、此方の優先順位が上なので書き溜めを作りながら少しずつプロットを固めているだけですが、いずれはこの作品を投稿するのと同時進行で他の作品を投稿できたら良いなと考えております

まだまだ先の話ではありますが、私の好みの関係上、基本的には転生や憑依という話が多くなるでしょう
主人公最強やチート的な要素も含まれると思います
アニメや漫画、ラノベなど好きな作品は沢山あるので、幾つかプロットを考えてその中から上手く書けたものを投稿する形になるかもしれません
今はまだ執筆速度が遅くて実現できそうにありませんが、そういう風なことができたら良いな、と考えています

次の投稿は2週間後、4月3日となります
更新が遅いくせに新しいプロットを考え始めてるダメな作者ですが、どうかこれからもこの作品を読んで頂ければ嬉しいです

それでは、今回もありがとうございました!


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