真の勇者なら1人で魔王に勝てるよね   作:お茶に煎餅、お酒にチーズ

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さて1月2日ということで。
昨日に引き続いての投稿となります。

それでは2話目、お楽しみ下さい。





勇者、最弱モンスターの瞬殺劇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今日は、良く見えるな」

 

 

 

 風に飛ばされたスカーフを追いかけていくと、不意に少女にとって聞き慣れた声が聞こえた。大きな声というわけでもないのに、ヤケにハッキリと耳に届く落ち着いた声の主を探すと直ぐに見つかった

 

 

 

 イシの村の中央付近にある不思議な模様が描かれた巨木。その枝の上に、太い幹に手を添えるように置いてバランスを取りながら悠然と佇む少年の姿がある

 少女と同じ年齢の幼馴染で、密かにそれ以上の感情を抱いている存在でもあった

 

 

 

「あっ……!」

 

 

 

 唐突に強い風が吹き起ると、少女のスカーフは空高く舞い上がろうとしたところで………………何者かにその行く手を阻まれた

 それは少女の仕業ではなく、未だに巨木の上で静かに景色を眺めている少年によるものだった

 

 

 

「(また助けてもらっちゃった……)」

 

 

 

 少女は内心でそのように独白しながら、お礼を告げようと近くへと駆け寄り、初めて少年の表情に気が付いた。物憂げなようにも、どこか思い詰めたようにも見える苦しげに歪められた表情だった

 彼は快活な性格とは間違っても言えないが、かといって卑屈な性根からは程遠い。村人たちからの評価は、寡黙だが実直で人当たりは悪くなくて、むしろ不思議といつも人の中心にいる。心優しく頼りになる少年だと答えるだろう

 

 

 

 だからこそ、その時の表情はとても珍しいもので、不安にも似た漠然とした感情が浮かび上がってきた

 違和感でもあるのか左手の甲を頻りに摩っており、しかし目線は〈命の大樹〉から離さない。なにかあったのだろうか、と少女が更に近づいた時にはもういつも通りの無表情に戻っており、無言で遥か遠くに聳える〈命の大樹〉を眺めている

 

 

 

 不思議に思いながらも愛犬のルキと一緒に巨木の枝の真下に行くと、少年はゆっくりと振り返って1人と1匹の姿を見留めて枝の上から軽々と飛び降りた

 音もなく着地した少年は、優しくて静かな瞳に少女────エマとルキの姿を映して、悠々とした足取りで歩み寄ってくる

 

 

 

「………」

「ありがとね。レイブン」

 

 

 

 無言で差し出された赤いスカーフを受け取り、頭に巻きつけてみる。やはりお気に入りのスカーフがあると落ち着くし、なんだか安心感のようなものがある

 気分が上がった所為か、または少年────レイブンに無言で見詰められることに耐えかねたのか、茶目っ気交じりに微笑みかけた

 

 

 

「大切な儀式の前にスカーフが風に飛ばされちゃうなんて。私ってばホント、ドジだよね」

 

 

 

 ウィンクも付けて言ってみるが、レイブンは頷くことも首を振ることもなかった

 彼を知らない者であれば無視されたか、聞こえてないのではと勘違いするかもしれないが、親しい者たちが見れば薄く微笑んでいることが分かるだろう

 エマとしても肯定や否定を期待していたわけではないので、特に気にすることなくクルリと振り返った。それに合わせて、レイブンも隣り合うようにして正面に高く聳え立つ大きな岩山を見上げた

 

 

 

「…………ついにあの岩を登る日が来たんだ。あんな高い場所、私に登れるかな」

 

 

 

 独り言めいたエマの言葉に答える声はなく、風の音のみが静かにその場に流れる

 不思議な沈黙だが、レイブンという寡黙な少年と一緒にいれば儘あることなので気まずいとは思わない。むしろ言葉を交わさなくても通じ合っている錯覚に浸っていると、足下のルキがなにかを訴えるように2人に向かって吠えてきた

 

 

 

「わんわん! わん!」

「────うふふ。ルキが、私たちを案内してくれるみたい。さあ行こう。レイブン」

 

 

 

 2人を先導するかのように駆けて行った姿を見て、なんとなく言わんとしているところを理解する。微笑ましい様子に思わず笑みを零して、レイブンの顔を覗き込んでそう伝えた

 なんだか楽しくなってしまい、エマは軽やかにステップを踏みながら傍らの少年を促せば、彼も小さく笑みを浮かべて頷くと、そっと見守るように歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 村人たちに激励の言葉を掛けられながらルキのあとを追って行くと、吊り橋の前に2つの人影があった

 腰の曲がった老齢の男はエマの祖父で、恰幅の良い穏やかな女はレイブンの義理の母親である。儀式を行う2人を見送るために先回りしていたのだ

 

 

 

 2人は楽しげに足を弾ませるエマと彼女に手を引かれながらのんびりと歩いてくるレイブンの対照的な姿に幼き頃を重ねて頰を緩める。両者共に際立って優れた容姿の持ち主であり、男女が仲睦まじくしていれば周囲の目を惹きつけるものだが、本人たちにとっては大したことではない

 幼馴染であるが故の気安さで、エマの祖父────ダンとレイブンの義母────ペルラの生温かい視線を自然に受け流して、悠々と2人の前までやってきた

 

 

 

「レイブンと孫娘のエマ……。2人が無事にこの日を迎えられて、村長としてこれ以上嬉しいことはない」

 

 

 

 昔の2人でも脳裏に思い描いているのか。感慨深いと目を瞑るダンの言葉には、強い歓喜と少しばかりの寂寥が垣間見えた

 幼くして両親を亡くしたエマは彼によって育てられ、レイブンもまた拾われ子であるだけでなく孫娘と同じ年齢とあっては、本当の孫のように可愛がっていたのだ。そんな2人が逞しく育ち、こうして儀式に立ち会える現在の気持ちを推し量ることは出来ないだろう

 

 

 

「……よいな。16歳となったお主たちは神の岩で成人の儀式を果たし、一人前の大人にならなくてはいかん。神の岩の頂上で祈りを捧げ────頂上で何が見えたか儂等に知らせるのだ」

 

 

 

 そこまでが成人の儀式じゃからな、と意味ありげな口調で2人に言い含めた

 それはイシの村に古くから伝わる風習、16歳の成人として認められるために全ての村人が通ってきた道。村長が神の岩と呼んだあの大きな一枚の岩山の頂上まで辿り着き、そこに“あるモノ”を1人の大人として見定める大切な儀式だと伝わっている

 

 

 

 通例として儀式の内容を成人前の子供に教えることは禁じられているため、レイブンとエマも岩山を登るということ以外は初めて聞いた

 ダンという男は日頃から事あるごとに詰まらない洒落だったり、寒いギャグを口にするどうしようもないくらいお茶目な老人だが、しかし2人に限らず村人にとっては尊敬に値する人物であるのは変わりない。だとすれば付け加えられた一言にも必ず意味があるのだろうと、2人は素直に頷いてみせた

 

 

 

 素直に受け入れた2人に満足げな笑みを返して、これで話は終わりだと首肯した

 そして今まで黙って成り行きを眺めていたペルラをそっと促せば、彼女は神妙な雰囲気を携えてレイブンとエマの2人に向かって静かに歩み寄った

 

 

 

「レイブン……。自慢の息子がここまで大きく育って、お母さん本当に嬉しいよ」

 

 

 

 ペルラは優しく微笑みながら語りかける

 いつものように親しい人物にしか分からない程度ではあるが、確かにレイブンも小さく笑みを浮かべている。その表情は能面に近いものでありながら、同時に嬉しさや気恥ずかしさを感じさせるものだった

 義理の母、即ち血の繋がりがないことは知っていても、この親子にしてみれば些細な問題に過ぎない

 

 

 

 レイブンにとって産みの親と育ての親、どちらが本当の親だなんて態々決める必要なんてないことだ

 産みの親は己を産み落としてくれた存在で、育ての親は拾われ子に愛を持って接してくれた。両者は比較するものではなく、どちらも等しく親愛と敬愛を向けるに相応しいレイブンの母である

 とはいえ、ペルラから向けられる無償の愛を気恥ずかしく思うのは年頃の男としては致し方ないかもしれない

 

 

 

「いいかい? エマちゃんは幼馴染なんだからね。あんたがしっかり守ってあげるんだよ。もしも道に迷ってもエマちゃんの頼れるパートナー、ルキについていけば迷わないはずさ」

 

 

 

 戯けるようにそう言って微笑んだ

 義理の祖父について世界を旅していたレイブンが今更こんなところで迷うはずがないことなんて重々承知だからこそ、敢えて場を賑わすための冗句なのだろう

 

 

 

 または軽口でも叩いてないと不安なのかもしれない

 レイブンにとってもそれは他人事ではなく、生来からの類稀な《直感》が警鐘を鳴らしている。儀式をやめようかと考えれば治ることを鑑みれば、これから少し先の未来でレイブンか、或いはエマやルキに危険が迫るということを暗示しているようだった

 もしかしたらペルラも、母親としての勘で不吉な未来を察知した可能性はある

 

 

 

「────さあ行ってきな。夕飯を作って待ってるからね。力を合わせて頑張ってくるんだよ」

「……うん。今日の夕飯はシチューがいいな」

「ははは。しょうのない子だね! それで良いから、無事に帰って来ないと拳骨だよ」

「大丈夫だよ。ペルラおば様。レイブンはとっても強くて、頼りになるんだから! だから安心してね」

「………エマちゃんの言うことも分かってるつもりなんだけどねぇ。この子はどうにも変なところで抜けてるから、いつまでたっても心配なんだよ」

「はい! そういうことなら私に任せてください。しっかりと見張ってますから!」

 

 

 

 だからよろしく頼んだよとペルラが囁けば、エマは見事なまでのドヤ顔で了承した

 女性陣の会話に口を出さず見守っていたレイブンは常より幾分居心地が悪そうに顔を逸らす

 そして、ダンは三者三様の大切な儀式の前とは思えない和やかな雰囲気に、イシの村の村長として怒ればいいのか呆れればいいのか判断がつかなくて、不意に閃いた親父ギャグに含み笑いを漏らしていた

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 ダンとペルラの2人と別れたレイブンたちは直ぐに儀式に臨む──────ことはなく、神の岩までの道中で老人を筆頭とした村人たちに捕まっていた

 やれ仲がいいだのなんだのと、毒にも薬にもならない話に付き合わされるがいつものことなので慣れている。儀式の前に疲労困憊なんてことにはならなかったが、当初の予定時刻より遅れてしまったのでキリのいいところで切り上げると神の岩に向かう

 

 

 

「……うーん。ねえレイブン。さっきの話、やっぱりちょっと気になるよね」

 

 

 

 エマが眉を寄せた難しげな表情でそう言うと、レイブンも神妙な様子で頷いた

 年寄り軍団の話は前述の通りに雑談そのものだったが、それとは別に気になる話を耳にしたのだ

 

 

 

 レイブンとエマは兄/姉として村の子供たちの面倒を見ることも多く、必然的に互いの仲は深まっている

 その中でもレイブンは厩戸のメルという名の少女、エマはマノロという名の少年と気が合うらしい。本当に血の繋がりのある兄妹/姉弟のようだと言えば仲の睦まじさが伝わると思う

 

 

 

 前者の場合はレイブンが元から動物が好きで、なおかつメルが生まれる前の頃から馬の世話をしており、メル自身も厩戸の娘らしく馬に向ける愛情は人一倍強い。それらの共通項と接点から来る親近感は、心の距離を縮めるには容易だった

 後者にしてもエマは言うに及ばないがレイブンに対して特別な感情を抱いており、マノロは華々しい英雄譚を好む年頃の子供らしく、身近に強く優しい勇敢な兄のような人物がいれば憧れるのも無理からぬ話だろう。依ってこれもまた共通点に他ならず、他の子供たちより気が合うのも当然というものだ

 

 

 

 話は戻るが、2人の言う気になる話とは件のマノロという少年についてのことだった

 年寄り集団から解放されたレイブンたちは少しばかり早足で神の岩に向かっていたところ、マノロの母親のアンネが額に手を当て困っている姿を発見した。ソワソワと落ち着きがなく、なにやら焦っているようにも見えるアンネに何事かと声を掛けるとマノロが何処かに行ってしまったと伝えられる

 

 

 

「まさかとは思うけど1人で神の岩に登ったり………はしないわよね。ああ、嫌だわ。心配だわ」

「マノロが……っ!? でも、そういうことなら私たちに任せて! もし神の岩にいるようなら必ず連れて帰るから。レイブンもそれでいいよね」

「うん。それなら少し急いだ方が良さそうだね」

「まあ! 2人ともありがとう。儀式の前に悪いけれど、あの子をよろしくお願いしてもいいかしら?」

 

 

 

 神の岩にいるならと申し出た2人に対して、アンネがそれなら安心だと感謝と共に頼み込んだ

 ────というようなことがあり、弟のように可愛がるマノロが危険かもしれないとエマは気が気ではなかった。経験豊富なレイブンが焦っても良いことはないと諭すことで一先ず落ち着いたエマは、不意に視界の中に映り込んだ巨大な石碑を見て、イシの村に古くから伝わる掟の言葉を思い出した

 

 

 

「“我らイシの民。大地の精霊と共にあり”……か」

 

 

 

 なにか思うところでもあるのか、懐かしそうな表情の中に僅かに苦い感情が一瞬だけ見られた

 レイブンは当然ながら気が付いていたが、それを問い詰めるようなことはせずに無言のまま先を促す

 

 

 

「お爺ちゃんから聞いたの。あの神の岩には“大地の精霊”様が宿ってるんだって。小さい頃からずっと16歳になったら神の岩に登って“大地の精霊”様に祈りを捧げなさいって言われてきたけど………………」

 

 

 

 そこで言葉を切ったエマは、今度こそ明確にムッと顔を顰めてジト目になってこの会話中で初めてレイブンと目を合わせた。もう先程までの焦った様子はないが、私は納得いきませんと体全体で主張している

 

 

 

「────こんな仕来り、誰が考えたのかしら。一人前になる前に崖から落ちて怪我でもしたらどうするのよ」

 

 

 

 態度だけでなく言葉でも不満を漏らす

 といっても本気で怒っているわけではないのだろう。幾ら表面上は取り繕ってもマノロが心配という気持ちがなくなることはない。少しでも落ち着くために別のことに意識を逸らしているだけなのだ

 妙にあざとい仕草であるが狙ってやっていることではない、と念のため言っておく

 

 

 

「……でも、レイブンと生まれた日が一緒だったのが唯一の救いね。ひとりだったら、絶対めげてたもん」

 

 

 

 そう言うとエマはジト目をやめて、どこか照れたような様子ではにかんだ笑顔を浮かべていた

 レイブンから見ても、今のエマは心配事はあっても儀式そのものに不安はなさそうだった。それはやはり、幼い頃から家族とも友人とも違う不思議な距離感で親しくしていたレイブンという少年に対する根強い信頼があるからだろう

 そうして2人が穏やかな空気のまま神の岩に向けて足を踏み出そうとした時、それまで大人しくしていたルキが威嚇を目的とした低い唸り声を上げた

 

 

 

「わん! わんわん──ッ!!」

「──エマ。危ないから下がっていて」

「えっ……。2人ともどうしたの?」

 

 

 

 ルキが吠えたことに呼応するようにして、レイブンが一歩前に歩み出て鋼で造られた無骨な両手剣を構えた。確実にエマを守ることができる位置取りだ

 ひとり事態を飲み込めないエマは戸惑っているが、彼女の疑問に答える声はない。それだけ警戒する必要のある“ナニカ”があるらしい。短いやり取りで理解したエマは口を噤んで1歩2歩と後退る

 

 

 

 普通の村娘であるエマを除いて、この場にいる他のひとりと1匹は特殊な経験をしているが故に悪意を持つ気配を感じ取る能力がある

 元は野生犬であったルキは犬として優れた感覚を持つだけでなく、危険に対する嗅覚が非常に鋭い。生死の境を彷徨ったことがあるから当然というものだろう

 また世界中を旅していたレイブンの危機管理能力も高い。その経験と《直感》は洞窟の奥から強い敵意と邪悪な気配の接近を感じていた。旅をしていた間に幾度も感じた覚えのある────“魔物”の気配だった

 

 

 

「ピキー!」

「ピキピキー!!」

「ピッキー!」

 

 

 

 ポヨンポヨンと特徴的な音と共に洞窟の奥から3匹のスライムが現れた。スライムは明らかにレイブンたちに敵意を向けていた。理由は分からないが興奮している様子なので、互いの実力差を理解して逃げるようなことにはならないだろう

 魔物の中では比較的弱いとされる存在だが、それでもエマのような一般人からしてみれば十分以上に危険である。漸く事態を察したエマは小さく息を呑んだ

 

 

 

「ま…魔物!? レイブン、こっちに来るわ!」

「分かってる! ……ルキはエマを!」

「わぉん!」

 

 

 

 怯えて体を縮こまらせたエマの悲鳴にレイブンは鋭く答えてから矢継ぎ早にルキに指示を出すと、一呼吸挟んでスライムに向かって力強く踏み込んだ

 戦士として優れた技量を持つレイブンの足運びは流麗かつ俊敏。滑らかな挙措からは信じられない速度で、瞬く間にスライムとの間に存在した距離を埋めてしまった。レイブンのその動きは、地面の上を滑ったかのように見える不思議な歩法によるものだ

 いつのまにか両手剣は正眼に構えていた状態から刀身が地面と水平になる形になっていた。レイブンの速さにスライムはついていけていないようで致命的なまでに隙だらけだ。当然ながら容赦を掛ける必要はない

 

 

 

「──ッ!」

 

 

 

 電光石火。気合一閃。身体ごと一回転して放つ豪快な横薙ぎの一撃。攻撃範囲が広い両手剣は一瞬の抵抗も許さずに3匹のスライムを纏めて両断した。レイブンは油断なくバックステップして残心。しかし体が上下に別れたスライムが起き上がるはずもない。危険がないことを確認して構えを解いた

 暫くこの場に妙な沈黙が訪れた。ルキはブンブン尻尾を振って今にもレイブンに駆け寄って行きそうな様子だが、飼い主のエマが余りの瞬殺劇に思考を停止してしまい硬直しているがために律儀に待っている

 

 

 

「…………わぁ! レイブンったら凄いわ。あっという間に魔物をやっつけちゃうなんて!?」

 

 

 

 実を言うとエマには一連の動作が早すぎて目視が叶わなかった。だが、無残な姿に成り果てたスライムと構えを解いて警戒を止めたレイブンを見て、なにが起きたかを把握すると素直に歓声を上げて駆け寄る

 呑気な幼馴染の姿になんとなくレイブンも呆れたように見える笑みを浮かべながら、両手剣を元のように背中に吊るしてから飛びついてきたエマを受け止めた。足元ではルキも嬉しそうに尻尾を振って、2人の周りをグルグルと回っている

 

 

 

「それにしても本当に魔物がいるなんて……ああ、ビックリした……。レイブンのお陰で助かったわ。神の岩の頂上へ行くには洞窟を抜けていかないとダメなのよね。さっきの魔物みたいなのがまたいるかもしれないのは不安だけど、レイブンが一緒ならへっちゃらだわ。頼りにしてるわよ。さあ、行きましょう!」

 

 

 

 一頻り騒いで落ち着いた後、そう言ってエマは先を促す。魔物に対する恐怖がなくなったわけではないが、伝聞でしか知らなかったレイブンの実力を目の当たりにしたことで勇気をもらったようだ

 危険はあるがレイブンにしても儀式を中断するつもりはなかった。エマたちを守る自信があるだけでなく、神の岩に向かった可能性のあるマノロのことが心配だという気持ちが大きい

 

 

 

「うん。急いでマノロを探そう」

「そうね! 魔物がいるような場所ですもの。きっと怖くて動けなくなっちゃったんだわ! ルキのことも頼りにしてるわよ。マノロの臭いを辿ってみて」

「わん! ………わんわんわんっ!!」

 

 

 

 エマの号令に合わせて一斉に動き出す

 洞窟の中で両手剣だと取り回しが難しいと判断したレイブンは白金の精緻な意匠の〈プラチナソード〉と神秘的で荘厳な細工が施された〈奇跡の剣〉の2本の片手剣を装備した。どちらも入手が困難だとされるが、伝説のトレジャーハンターである祖父から生前の頃に譲り受けたもので、彼の宝物に等しいものだった

 人命が掛かってるかもしれない現状で、レイブンは最善を尽くすことに決めたのだ

 

 

 

 飼い主の言葉に従い早速ルキは臭いを辿り始めて、直ぐに痕跡を見つけたのか先導するように駆け出した

 短時間で発見したことから、マノロがこの近辺を通ったのはそんなに前のことではないのだろう。だとすれば急げば間に合う可能性は充分にある

 レイブンがそのように伝えるとエマも力強く頷いて、2人は我先にとルキの後を追いかけるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







2話の投稿完了です。
ご満足いただけていたら作者冥利に尽きます(昨日が初投稿だったにわか作者の大言壮語………)


補足としてーーーー

この時のレイブン、即ち原作主人公はゲーム基準だと大体30〜35くらいのレベルのつもりです。
当然ながらスライムでは相手にならず、敢えなく三枚下ろしの刑に処されました。
ゲームとは異なる点として、片手剣と両手剣の他にも格闘と槍ができる設定で考えているのですが、その場合だとスキルポイントが圧倒的に足りなくて悲惨なことになるのでレベルとかの概念はこの世界にないです。

それでも一定数の魔物を倒すとなんか強くなった気がしますし、ゲームでのスキルを習得するだけの技量があれば幾らでも覚えることができます。
しかし、現実として剣も槍もと欲張って一流になるのは至難の技だと思うので、そこはチートと言われてしまえばそれまでなんですよね。


長くなってしまいましたが、作者としてはそのように考えてストーリーを展開していきたいと思います。

昨日の今日で気が早いかもしれませんが、感想・批評などは大歓迎なのでお待ちしております。
よろしければ明日の3話目もお楽しみくださいませ。



*改訂内容

ペルラおばさん→ペルラおば様


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