雁夜おじさんのバオー来訪者 Fake編   作:蜜柑ブタ

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前半、前の話で最後に桜に搾り取られた雁夜の描写有り。

桜に振り回されてるようで、ちゃんと愛情はありますよって、のも含め。


後半は、ツツジの忠告通り『変なドジ』発動して、警察署で偽アサシン襲撃現場に居合わせちゃった雁夜がいます。


SS3 死徒

 チーン…、っという音が聞こえそうなぐらい、雁夜はぐったりとベットに沈んでいた。

 その同じベットの隣では、スピスピと安らかに寝ている桜。心なしか、肌がツヤツヤしている。

「…の、呪わしい…。」

「いいじゃん。回復力があるってことは。」

 反対側にあるベットに座っているツツジが、雁夜のぼやきにそう言った。

「こんなところで発揮されなくていい!」

 さっきまで死にそうな状態でぐったりしていた雁夜が、ガバッと起き上がった。

「搾り尽くせるだけ搾られても、すぐ回復できるんだから、戦闘でもすぐ対応できるじゃん。」

「無限地獄だ、馬鹿!」

 雁夜は、バオーがもたらす回復力のすさまじさがこういうことにも発揮されて、頭を抱えた。

「桜ちゃんが、並以上くらいの体力でよかったね。」

「この間なんか、最高記録樹立しようだなんて、耐久戦やらされたんだぞ! どこが並だ、こら!」

「その件について、自分もバオーを移植してもらおうかな~って、マジで相談されたよ。」

「それだけは、頼む、やめてくれ……。」

 ベットから飛び降りた雁夜に、マジ土下座された。

「うん。断ったよ。桜ちゃんまで、こっち側に来る必要はないからね。でも、まあ、魔術を極めたらその反動で老化速度は遅くなるかもしれないけど。」

「そうかよ…。」

「で…、行くの?」

「ああ…。」

 そう言って、雁夜は立ち上がり着替えた。

「位置は分かってる?」

「匂いで辿っていけばいいだろ?」

「間違えて、あの演説してたサーヴァントのところに行かないようにね。」

「……フラグ立てんなよ。」

「だって、雁夜さん、その点については、変にドジなんだもん。あの時も…あの時も…。」

「おまえな!」

「じゃ、いってらっしゃーい。」

「あー、もう!」

 着替え終えて準備した雁夜に、ツツジが笑顔で手を振った。

 雁夜は、ブツブツ言いながら、部屋を出て行った。

 しかし、すぐ戻ってきて…。

「桜ちゃん。いってくるね。」

 小声で囁いて、桜の頬に軽くキスをして、今度こそ出発したのだった。

「……なーんで、これくらいことできるのに、起きてるときはできないかなぁ?」

 雁夜が出発したあと、頭をポリポリとかいてそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして…、ツツジが立てたフラグは、現実化する。

 匂いを辿って、警察署に来たのだが、そこで女アサシンらしきサーヴァントが警察署に襲撃した現場に居合わせてしまったのだ。

 砲弾が強化ガラスの束を割るように、警察署に張られていた結界をすべて割って侵入してきた女アサシンは、警察署内の電気を全て消した。

「…アサシンだと? 二つ匂いがあるとは思ったが…。」

 警察署内に、ひとつ。その外にひとつ。

 雁夜は、まず近くの警察署内にいる匂いを辿って侵入したが、それが間違いだった。

 もうひとつの匂いが警察署内に入って来てしまったのだ。

 匂いを辿ってロビー側の通路に来てしまったため、そのもうひとつの匂い…、女アサシンを暗闇の中ではあるがしっかりと見てしまった。

 女アサシンは、すぐに霊体化したが、その霊体化直後に、照明がついた。どんなに素早い霊体化でも、光の速さには届かない。ゆえに、警察署内のロビーにいた人間達は、確かに見た。亡霊のように消えた歴史を感じさせる奇抜な格好の女を。かえって消えてしまったことが印象づけてしまった。

 通路の影に隠れ、様子を伺う。そして匂いで、警察署内の人間達の会話を感じ取った。

 すると、署長らしき人間が、教会の人間らしき人間と、サーヴァント、そして監督役という言葉が聞き取れた。

 つまり、この警察署……、魔術師の関与があり、警察署内の人間もまた魔術師が混じっていたらしい。

 なんてっこったいと、雁夜は、己の軽率な行動を後悔した。なにせ、この地で行われる偽りの聖杯戦争に自分から足を踏み込んでしまったからだ。

 ところで…、ここは、警察署内のロビーに面した通路の三階にあたるわけだが……。

「あっ。」

「……。」

 っと思わず声を漏らした時にはすでに遅し。

 すぐ近くで霊体化状態から実体化した女アサシンがいた。

 目が合って、お互いに固まる。

 そして次の瞬間に飛んできた刃を、雁夜は、余裕をもって避けた。心臓を狙ったそれをわざと受けて、死んだふりもよかったが、痛いのでやめといた。

「貴様…、魔術師か?」

「違う。」

「否。その身より匂う、魔力…、隠し通せると?」

 否定を速攻で否定され、雁夜は、舌打ちをした。

 雁夜が通路から転がり出ようとした直後、女アサシンが雁夜を襲おうとしたが、女アサシンの死角から矢が飛んできた。

 その矢は、通路の先の壁に命中し、壁を破壊した。

 普通の矢では無かった。もし当っていたならば、並の人間どころかサーヴァントですら危うかった代物だった。

 矢を射ったのは、この警察署の若い婦警だった。

 その後、すぐに女アサシンに、斬りかかったのは薙刀のような形状の武器を手にした黒人の警官。

 さらに、大きな盾を手にした巨漢の警官が突進し、女アサシンは、ロビーの方へ逃げた。

 女アサシンは、訝しむ。

 彼らが手にしているのは、宝具だ。

 だが、宝具を持つのはサーヴァントであるはずだ。だがそれを手にする人間達は、サーヴァントらしき気配を持っていない。

 隠蔽するスキルを要しているのは…、しかしそれは女アサシンには些細なことだった。

 彼女の目的はそれでも変わらない。

 

 聖杯戦争を無に消し去ること。

 ハサン・ザッバーハという暗殺者の長を、アサシンクラスとして必ず召喚される彼らを惑わした聖杯戦争そのモノを破壊すること。

 それが彼女の目的だから。

 

 そのために自分を召喚したマスターを聖杯を求める者とみるや即座に殺した。

 女アサシンの行動は徹底しており、狂信に満ちていた。

 たった数年で歴代18人のハサン・ザッバーハの業を身につけ、信仰する狂信者…、それゆえに、ハサン・ザッバーハになれなかった女。それこそが彼女自身を体現するモノ。

 

「狂想閃影(サバーニーヤ)。」

 

 そして女アサシンは、自らの宝具を発動する。

 偽りの聖杯戦争における、偽りのアサシンたる女。英霊の資質を得る頃には、名を捨てた、狂信者。

 肉体を自在に変質させ、過去に紡がれた18の御業を再現する能力。

 実際には過酷な肉体改造なども行われていたが、英霊化したことで肉体を自在に変化させる形となった彼女の力だ。

 女アサシンから伸びた闇が、ロビーにいる署長の方へ伸びる。それに間一髪で気づいた署長がいた場所に、大理石の床をチーズのような抉れた跡が残った。

 闇は、ロビーの各所に広がり、宝具を手にする警官達もその唐突な攻撃に、防ぐか躱すかしかできない。

 署長の傍にいた警官の一人が、腕をその闇に切り裂かれた。

 署長が、その警官の男を捕えた闇を刀を抜いて闇を切った。

 すると、ハラリッと床に闇が落ちた。それは、髪の毛だった。

 タネが分かればこちらのものだと、そう勝利を確信した署長が凜とした声で宝具を手にしている警官達に敵を制圧するよう指示を出し、警察署内のすべての仕掛けを発動させた。

 ロビーの結界が強化され、音が外と遮断される。

 そして、召喚された悪霊達と魔獣達が一斉に現れた。

 

 

「くそ…。」

 

 ロビーの端にある大きな植木の影に身を隠した雁夜が、悪態を吐いた。

 結界が強化されたことで、脱出する隙を奪われた。

 脳裏に、ツツジの言葉が過ぎる。

 『変にドジなんだもん』。

 ああ、そうだな! まったくもってその通りだったよ!っとここにいないツツジに心の中で悪態を吐く。

 グルル…っといううなり声がすぐ傍で聞こえて、ハッとしてみると、豹のような魔獣の牙がすぐそばに迫っていた。

「くっ!」

 その上顎と下顎を掴んで怪力で押しのけた直後、背後から飛んできた悪霊に後頭部を殴られ、植木の傍から吹っ飛ばされた。

 転がり出てしまった雁夜は、ロビーにいる警官達が、署長が召喚した悪霊と魔獣に逆に襲われている現場を見た。

「誰だ!」

「ちっ!」

「まさか、あのサーヴァントのマスターか?」

「違う!」

 署長からの問いに雁夜は即座に否定した。

 しかし警官以外の人間がいる状況に、彼らの疑念は拭えない。

 すると、その疑念を拭ったのは意外な人物だった。

 

「私に、マスターなどいない。」

 

 女アサシン自身がそれを否定した。

「馬鹿な。単独スキルを持つアーチャーならともかく、マスター無しで、これほどの戦いができるはずがない。すぐに魔力が枯渇する。ここにいるマスターの男共々嘘を吐いても無駄だ。」

「その男は、私を喚びだした者ではない。」

「…本当か?」

 訝しむ署長の言葉に、女アサシンは、コクリッと頷いた。

 署長は、ちらりっと視線で雁夜に確認を取った。

 違う違うっと、雁夜は全力で首を振った。

「ならば、お前は何者だ?」

「俺は…。」

 雁夜は、通りがかりの魔術師だとは答えられなかった。こんな現場に侵入しているだけでも怪しさ満点なのに…。

 

「その男は、ただの通りがかりの不法侵入者に過ぎないよ。」

 

 その声は、外と音が遮断されているはずのロビーの外から聞こえているように思えた。

 すると、一人の男が扉から現れた。

 入ってくる際に、まるで結界を裂くように指を縦に動かし、それを広げるように入って来た。

「いやはや、お見事お見事。」

 拍手をしながら入って来たその場違いな男の姿も、声色も……すべてがおかしい。

「いかなる手品で宝具の力を解放しているのかは知らんが、まさか人の身で英霊に挑むとは! なんとも身の程知らずな話と思ったが、どうだ? 中々いい勝負になりそうじゃないか!」

 楽しそうに笑いながら、男は両手を広げてロビーの中央に歩みだした。

「闇に生きる術を持ちながら、正面きって挑む愚かで愛らしい英霊に、自らの英霊を後方に置き、自らが矢面を立つ血気に満ちた魔術師か。なかなか面白い見世物だ。」

「……おまえ…。」

 雁夜は、思わず声に出していた。

 直感が…、いや匂いが…違う!

 コイツは、英霊どころか、人間ですらないのだと。だが、かといって自分と同じではない。ツツジのように同じだが上位というわけでもない。根本から違う何かだ。

「…ほう? 面白いモノがいるじゃないか。そんなモノもここでは飼っているのか?」

「違う。俺は、ただの通りがかりだ。」

 ついさっき、自分のことを通りがかりの不法侵入者だと言ったくせに、わざとらしく雁夜を見てそう言ってきたので、雁夜は、ギッと男を睨んで否定した。

 すると、なんだつまらんっと、大げさに男が身振り手振りする。

 雁夜は、ムカッとなるのをなんとか堪え、男の後ろに開かれた結界の穴からなんとか逃げられないかと考えた。

 雁夜がそう考えている間に、突如悪霊と魔獣達が見えない何かに押しつぶされて弾け飛んだ。

 あと、一人、警官が片手がもがれた。

「ふむ、この感触、間違いなく宝具とよぶべき逸品だな。人には過ぎた玩具だ。」

 その手首に握られていたダガーを、なんとクッキーでも食うかのようにかみ砕き、飲み込んでしまった。

 その光景に驚愕している署長達を放っておいて、男は、さっきからずっと困惑して突っ立っている女アサシンに恭しく跪いた。

「自己紹介が遅れたな、愛しの君よ。私の名は、ジェスター・カルトゥーレ。マスターとして君の全てを肯定し……、人ならざる死徒として、君の全てを奪い去る者だ。」

「!?」

 途端、女アサシンが目を見開いた。

 ローブで隠れた顔からは、明らかに恐怖や驚愕が見て取れた。

 そんな女アサシンの様子に気づいているらしい、ジェスターという男は、恍惚とした表情で自分自身の胸をなで回した。

「苛烈なる口づけにも似たあの掌の感触……、私は忘れることはないだろう。まさしくハートを鷲づかみにされたよ。一度死んだショックで顔も変わってしまったな。」

「! …!?」

「令呪をもって命じる。可能な限り、この街から離れた場所へと転移せよ。」

 目の前に跪いているこのジェスターという男が、間違いなく、女アサシンが殺した彼女を召喚したマスターだと女アサシンが理解し、排除しようと試みようとした直後、ジェスターが令呪を使った。

 途端、女アサシンの体が光を放ち、その姿が跡形も無く消えた。

 女アサシンが消えた後……。

 ジェスターは、残された警官達を見渡し、肩をすくめながら宣言した。

 

「バトンタッチという奴だ。私も聖杯が必要なのでね。つまり、まあ、なんだ……。とっととくたばってくれないか、血袋ども。」

 

 人ならざるモノからの死の宣告が下された。

 

 




Fake読んでて、あとジェスターのwikiも見て思った。
うわーーー、変態だーーー!って。

pixiv大百科で、偽アサシンを見ましたが、契約を結ぶ条件のハードル高すぎ……。
ペイルライダーは土俵が違いすぎるけど、こっちはこっちでハズレ中のハズレだし…、なんなの?

しかし、本来いないキャラを絡ませるってメチャクチャ大変。書くと決めたくせに。
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