短編です。
最後までお読みください。

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伝説の勇者の半生

 夜明けの空に、薄っすらと白い靄が掛かっている。

 

 新しい太陽の光が山の麓の村に届く頃、小高い丘の上にある小屋から一人の男が姿を現した。

 

 隻眼のその壮年は白い息を吐き、小屋の前の掃除を始める。

 

 

 

 男の話をしよう。

 

 彼の名はエルディアル・スピカ・トワイライト

 

 通称、悪魔の勇者である。

 

 

 

 数十年前、リーザーの谷でエルディアルは生まれた。

 

 父は生まれた時から居らず、母とともに彼は暮らした。

 

 彼は占星術で「悪魔」を指すキマイラ座の紋章を右手の甲に持っていたために「悪魔の子」と言われ、迫害を受けた。

 

 彼は今も当時のことを覚えている。

 

 

 

「あの頃は毎日が恐怖だった……たった一人で私を守ってくれた母には今でも感謝している」

 

 

 

 やがて母子は迫害を避け、ピクタの町へ移り住む。

 

 そこでも迫害は受けるが、彼はピクタの学校で剣術の才能を発揮し、頭角を現していった。

 

 また、その時彼は生涯の友人である狩人のカルラ、巫女のシーナと出会ったのだった。

 

 

 

 そんな中、悪魔率いる魔物の軍勢がピクタの町を襲撃する。

 

 エルディアル、カルラ、シーナの三人は力を合わせてその首領を撃破。魔物軍を撃退した。

 

 

 

 そして、エルディアルは自分の父であるロストベールが悪魔の王であり、人間の支配を目論んでいることを知る。

 

 

 

 三人はロストベールを止めるため、悪魔城を目指して冒険の旅へ出た。

 

 エルディアルが十五歳の時であった。

 

 強力な悪魔や魔物との戦いを越え、道中盗賊団の女頭領ヴェロッサを仲間に引き入れ、とうとうエルディアル達は父との決戦に挑む。

 

 

 

「あれは死闘だった……辛くも勝利できたのは仲間のお陰だ。最期に父が、母を愛していた本来の心を取り戻してくれてよかった」

 

 

 

 そして勇者はピクタの町へと帰り、シーナとの子もでき、幸せに暮らした。

 

 

 

 

 

 しかし、そんな幸せも長くは続かなかった。

 

 

 

 シーナの病死をきっかけに、一人息子のレオンの心は悪魔に取り憑かれてしまう。

 

 

 

 この悪魔ヘルウッドが全ての元凶だった。

 

 人間を愛した悪魔であるロストベールを操り、人間の支配を目論んだのだ。

 

 

 

 悪魔の仲間につこうとする息子とエルディアルは剣を交えるが、トドメが刺せず、勇者は片目を失った。

 

 

 

 再び勇者は悪魔との戦いに赴く。

 

 一時エルディアルはレオンをも殺す覚悟をしていたが、カルラとヴェロッサの娘である剣士イカルに諭され、勇者は冷静さを取り戻した。

 

 

 父と同じく剣術の才能を持つレオンと、才能には乏しいが努力家のイカル。

 

 

 イカルとの決闘でレオンは洗脳を解き、三人の剣士はとうとう悪魔城へ辿り着く。

 

 

 ヘルウッドとの決戦で、エルディアルはレオンとイカルを庇い重症を負ってしまうが、若き二人の剣士がヘルウッドを倒し、本当の意味で悪魔との決着をつけたのだった。

 

 

 その後エルディアルはしばらく寝たきりだったがやがて回復し、六十九歳の現在は孫もでき、剣術道場を開いて元気に暮らしている。

 

 

 初めは自身のリハビリも兼ねながらの指導。年齢もあって身体に限界が来ることもあったが、現在は全くの問題なし。

 

 一体彼に何があったのだろうか──?

 

 

 

 

 

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国営王都放送局がお送りしました。

 


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