5   作:水凪 菫

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「いやー、昨日から何にも食べてなかったから、本当に助かったわ、ありがとな」

 遅めの昼食を食べ終えたリオンは開口一番に礼を告げる。食事中は終始無言に食べていたところから相当おなかが減っていたようだ。

 そんなたいしたものは作っていないけどおいしそうに食べてもらうと此方としても嬉しい。

 「どういたしまして」

 片付けをしていたジョンがその手を止めてじっとリオンを見る。

 「なぁ、リオン、お前一体どこからやってきたんだ?」

 そして、最も疑問に感じていたであろう質問を投げかけた。

 「たしかにそれは僕も気になっていた。どうなのリオン?」

 リオンは目をつむり、しばらくしてから目を開き、

 「ちょっと森の方から抜けてきてな」

 曖昧に返事を返した。

 「何も持たずに、か?」

 「いろいろあんだよ」

 再びの質問に対し、ぶっきらぼうに答えるリオン。その表情はまるで疲れているように見えた。

 「すまん、ぶしつけだった」

 「僕もごめん、立ち入ったこと聞いて……」

 リオンの触れられたくないという思いを感じ取った僕らは謝る。

 「いや、気にすんな」

 「さ、さぁ!ちゃちゃっと片付け済ませて出発しようか」

 気まずくなった雰囲気をごまかすように僕は声を上げる。

 「そうだな」

 「おう」

 

 3人で行ったことにより、片付けはすぐに終わった。

 「片付けも終わったことだしそろそろ、隣村に向かおうか」

 「隣村?ドンドルマじゃなくて?」

 怪訝そうな顔をするリオン。

 「うん、隣村にあるドンドルマ行きの竜車に乗り換えるんだよ。多分夜までには着くと思う」

 「なるほどね」

 「じゃあ行こうか」

 

 

 

 3人目の仲間を迎えたこともあり今までとは違い道中話題は尽きることはなかった。

 竜車を走らせること数時間、ようやく隣村にたどり着く。

 そこで僕たちは当初の予定通り宿に泊まり一晩を過ごした。

 そして翌日。

 空が白み始めた頃、朝一番のドンドルマ行きの便に乗るため動き出す。

 朝一番ということもあり、他に利用客も見えず荷物を積み込み、座席に座るととすぐに出発してくれた。

 眠たそうにあくびをしながらリオンは問う。

 「そういえば、ここからドンドルマまでどれくらいかかるんだ?」

 「いくつか経由しながらだから後1日はかかるかな」

 「うげっ、マジかよ」

 やはり、というか質問してきた時点でわかっていたがリオンはここらの地理については全く詳しくない。

 それどころか一般常識だって持ち合わせているとは言いがたい。

 昨日だって何度僕やジョンの元に現れては質問していき、そんなことも知らないのかと呆れさせたものだ。

 まるでおとぎ話に出てくるお姫様みたいだ。

 「もしかしてハンター試験のことも知らない、なんて言わないよな」

 「うぐっ」

 ジョンの問いかけに対し返ってきた反応は案の定だった。

 「おいおい」

 やれやれといった仕草をすると、説明し出す。

 「いいか、ハンター試験には2種類ある。本試験を受けてハンターになる方法と訓練所で1から技術を磨いてハンターになる方法だ」

 指を立てるジョン。

 「それってなにが違うんだ?」

 「前者は試験に合格さえすればその場でハンターになれる。まぁその分相当難しいそうが。後者は訓練所で3年間の訓練課程を経てハンターになる方法。当然俺たちはこれを受ける」

 無料だからな、とつけ加える。

 「ふむふむ」

 「ちなみに入学試験なるものがあるらしい」

 「ふぅん、難しいの?」

 「さぁ、わからん。行けばわかるだろ」

 あるということを知っているだけで内容までは僕たちにもわからない。

 「それもそうだな」

 リオンはあまり気にはならないようだ。そしてジョンも。

 僕はというと旅が始まった頃からずっと不安でしょうがない。

 村のみんなから応援を受けたにもかかわらず、もしも入学試験で落とされることになれば1週間と経たず戻ることになる。そのときみんなは僕のことをどう見るのだろうか。それだけがただ怖い。

 そんな不安を抱きつつ、時間は流れていきついに僕たちはドンドルマへとたどり着いた。

 

 

 


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