【完結】赤のキャスターは蓬莱山輝夜   作:木工用

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"蓬莱山輝夜"編
トラブルメーカーは貰い受ける


 

 

 

  ~~決戦当日、日没の貸倉庫~~

 

 

「なあマスター」

「どうした、王様。昼飯から帰って来てから、何やら考え込んでいるようだが」

「考え事してるってわかってんなら、なんかオレに一言くれてもいいだろっ」

「いや、一人で考えたいときがあるのもわかるからな。こうして声かけられるまでは、黙っておこうと思ってな」

「ケッ」

 

 赤のセイバーとそのマスターが拠点としていた墓地。辛気臭くて苦手としていたその場所も、一切の痕跡も残さず去っていくことには、赤のセイバーはほんの少し名残惜しく―――いややはり気のせいだと後ろは振り返らず、車で最後の拠点へと移動を始めた。

 ちなみに荷運びが必要なため車である。無論お気に入りのハーレーも後ろに積んである。

 そんなこともあり、また自身にしては珍しく煩い連中と話しながら昼飯を囲ったこともあり、赤のセイバーは少々考え事がしたい気分になっていた。

 

「姫って、どんな存在だと思う?」

「王、お父上様ときて、今度は姫か。あのキャスターでも見て何か思ったか?」

「オレは王になる騎士だ。前線で戦って、敵を討ち倒し、国に勝利と安寧をもたらすのが役目だ。だから、姫ってのがどういうのかイマイチわかんねぇ。なんか知ってることねぇか?」

「んなもん俺だってそうだ。ネクロと向き合い、ネクロと話し合う生涯だった俺に、生憎と姫さんなんていう高貴なお知り合いがいるはずもないだろう?」

「なぁーに自慢げに言ってるんだよこの屍体好き野郎がぁ......」

 

 自分の生涯についてニッコニコで話す獅子劫に向けて、セイバーは渾身のジト目を向ける。

 

「てかよぉ王様。そんなこと言ったら、お前さんのほうがその手の存在に触れる機会は多かったんじゃないか? 姫っつー姫ではないにしろ、王妃とか」

「ギネヴィアかぁ......話した記憶あんまないからわからん。オレを産んでもねえくせに父上の妻ヅラしてるのに腹たった記憶ならある」

 

 こいつは今も昔もアーサー王にしか興味無いんだろうなぁと獅子劫は再確認した。

 

「まともな思い出かどうかはさておき、参考にならねぇなぁ......世間一般的には、お淑やかで儚い、可憐な花に例えられるようなイメージがあるだろう。が、政治の場に駆り出されたり、国の行く末を考えるのも役目だったりするわけで、か弱いだけじゃないだろうがな」

「どれもこれもあのキャスターにゃ当てはまらねぇぞ? 一応、カグヤ姫って名前だったよなぁアイツ」

「あの姫さんは参考にしないほうがいいと思うぞ......」

 

 教会の前で初対面したときからやたらとハイテンションだったり、

 黒のバーサーカーと一体化してるの! とか言って電気バチバチ大はしゃぎしながら地下室を飛び回ったり、

 子ども(アサシン)とピコピコとゲームして楽しんでたり(何ならアサシンよりも楽しそうだったり)、

 アーチャーが不意から放った必殺の矢を軌道を完璧に読んで受け止めたり、

 

 あれを姫として認めている家来や従者たちを含め、この世の理では推し量れない存在であることは間違いない。

 常識外れとはああいうものを指すのだなと獅子劫は世界の広さを知ったのだ。

 

「何なんだろうな、姫って......」

 

 結局答えは出ないまま、セイバーは腕を頭の後ろで組んで、車の天井のシミを数え始める。

 

「なんだ、もしかしてお前さん姫になりたいとか「あ゛!?」冗談、冗談。冗談だからその殺気を抑えてくれ、心臓に悪い」

「......ったく」

 

 ついにセイバーは目を閉じる。獅子劫はそんなセイバーを横目に、夜道を走り続ける。

 目指すは、戦闘機の眠る貸し倉庫だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

  ~~決戦当日、日没の空港~~

 

 

 

「落陽です。いよいよですね」

「ええ。このまま何事もなくこの空港を発てれば、いい時間に敵の空中庭園が見えてくる頃合いです」

「がんばろうね、カグヤお姉ちゃん!」

「バッチコーイ!!」

 

 決戦当日、夜の空港から空を眺める。

 今日も日が、西に沈んでいった。

 変わることのない、その永遠を刻んでいる。

 ただ、いつもと違い、宵の東に月は見えない。

 それは、今日が新月―――決戦当日だということを意味している。

 

 

『日が落ちて 月も無き夜に 火が灯る

 背を視ずとも 並べる仲間よ 猛々し

 桜咲く 金の未来を 夢に見て

 さあ行こう 迷い無き脚が 土を発つ』

 

 

「......お姉ちゃん?」

「ふふ、ちょっとね?」

 

 思わず、心から詩が浮かんで消える。

 心配そうにこちらを覗き込むジャックちゃんの頭を、私は完治した右手で撫でる。

 その手の甲には、二画の令呪。

 ()()()()()()()()()()だ。

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

  ~~要塞、出発前~~

 

 

 

「本当にいいんですか、玲霞さん。

 マスターとサーヴァント、大切な関係が、無くなってしまうんですよ?」

「平気です。だって、ジャックは私の娘ですから。離れていても、ずっと一緒です」

 

 この三日間、私たち黒の陣営は、決戦に備えてたくさんの準備をしてきた。

 フィオレちゃんとロシェくんが私のグローブを作ってくれたり。

 カウレス君がフィオレちゃんから魔術刻印を継承したり。

 ロシェくんがゴーレムの最終調整をしたり。

 セレニケさんも、私からお願いして皆を手伝ってもらった。

 

 そして最後、作戦の都合上、どうしても必要なことが一つ、残されていた。

 

「カグヤさん。ジャックの令呪、貴女に託します」

 

 即ち、玲霞さんから私への、マスター権の譲与。

 

「......ジャックちゃん、あなたたちは大丈夫なんだよね?」

「必要なことなんでしょ? それに、わたしたち、お母さん以外なら、お姉ちゃんにマスターになって欲しい!」

 

 マスターは戦場に行かなければならない。魔力のパスがあまりにも遠くなってしまうから。そして、魔術師ではない玲霞さんは、戦場に赴くマスターとしてはどうしても不安が拭えない。

 

 そして何より、突撃作戦の内容から考えても、ジャックちゃんのマスターは私でなければならない......らしい。

 

 そういうことで、イレギュラーながらもルーラーさんは渋々ながら許可を出した......らしい。全部聞いた内容です。はい。

 

「......わかりました。その令呪、確かに受け取ります」

 

 玲霞さんの細い右手に、こちらも右手を重ねる。

 ジャックちゃんの令呪を......いや、ジャックちゃんそのものを託されているように感じた。

 本当は、この令呪という繋がりを手放したくないに決まってる。二人の話を聞いたから知ってる。この令呪は、二人を引き寄せた大切なものだって。

 令呪が赤い光を発し、同時にジャックちゃんとのパスが繋がったのを感じた。

 ......玲霞さんの思い、確かに受けとりました。

 

「ええ。お願いします。

 それとジャック、カグヤさん、これも」

 

 そういって、玲霞さんは手に何かを握らせてきた。

 手を開いて見てみると、手作りの御守りだった。

 ジャックちゃんが、瞬く間に涙声になる。

 

「これ......っ、お母さん......っ。わたしたち......っ!」

「大丈夫よ、ジャック―――」

 

 

 

 ―――私がいなくても、あなたは大丈夫。

 

 

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

「マスターであるこの私に、任せなさい!」

「お姉ちゃん......うん!」

 

 てなことがあって、右手の甲にはジャックちゃんの令呪が刻まれている。

 

「キャスター、あまり暴れないように。貴女のその服が大きすぎて少々―――いやかなり邪魔です」

「ぶーぶー、そんなこと言わないでよルーラーさぁん。ほら、平安の貴族を虜にしたカグヤ姫の正装よ?」

 

 いつものお堅い鎧装備のルーラーさんに見せつけるように、レッツ、スキップアゲイン♪

 それ、いっち、にーい、さーん、しーぃ♪

 

「凄くぶわぁんぶわぁんてしてる......」

「......作戦に必要とはいえ、あれで動きづらくないのかしら......」

 

 もちろん動きにくい......今ので若干疲れた......

 久々に羽織った正装の十二単。それを服と呼ぶにはあまりにも大きすぎた。(中略)。それは正にテントだった。歩いて飛ぶテントの爆誕である。

 さらに服の下にはロシェくんからもらい受けた土製のグローブもある。黒のキャスターが残した素材をフィオレさんと加工したらしく、手の動きにピッタリ合わせて動き、握り拳の先端に宝石が埋め込まれている。期待の10倍以上の物を貰った。これ難題で要求できるレベルの物じゃないかな......

 ただし、これもそこそこ重い。正直歩くのも疲れる。ふえぇ、重量過多だよぉ......(´;ω;`)

 

『......カグヤさん、頼んだよ』

 

 でも待望の武器だ。ロシェくんに感謝感激。藤原不比等(もこたんパパ)が持ってきた蓬莱の玉枝の贋作なんかよりよっぽど強くて美しいよ。

 この聖杯戦争で、皆から貰った思いの全部、胸の奥に刻み込んだからね。何千何万年経とうと忘れないよ。

 

「あ、アーチャーさん、ジャックちゃんも。渡したあの薬、ちゃんと飲んだ?」

「......ええ、いささか以上に不安でしたが、マスターのご指示だったので」

「飲んだよ!」

「おっけい!」

 

 あと、私の宝具、一回だけ生き返れるあれを、パンツさんとジャックちゃんと、それと男のほうのセイバーさんにも渡した。パンツさん以外は単独行動無いけど、ほんの一瞬だけでも命を繋げられたなら、何かを変えられると思うから。

 セイバーさんからは直々に頼まれたしね。それが絶対に必要になるだろうって。

 

「姉ちゃん、侵入者とかは無いんだよな?」

「異常無しです。人払いの魔術も正常に作用しています」

「そうか、ならよかった」

「......貸し切り、なんですよね。本当に誰もいない......」

「ええ、そうです」

 

 ユグドミレニアの方々からは、フィオレさんとカウレスくんが来た。

 サーヴァントは、ルーラーさん、パンツ......アーチャーさん、ジャックちゃん、それと私ことキャスター。黒のセイバーさんは何やら別のところで決闘するらしく、赤のセイバーさんは別行動らしい。

 そして......もこたんは未だ来てない。おかしいなあ、このままだと全部終わっちゃうよ?

 

「刻限です。飛行機に乗りましょう」

「う~ん......」

「キャスター、どうかしましたか?」

「おい、まさか力が上手く出ないとか言うんじゃないだろうな!?」

「いやいやいや、竹取飛翔は問題なくできるよ!......うん、大丈夫!」

「おいおい、本当か?」

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「いやー......実は生まれつき高所恐怖症でー......」

「......慣れろ」

「ひどい!......まあでも、がんばります!」

 

 ―――嘘だ。あんだけ幻想郷で飛び回って弾幕ごっこしておいて高所恐怖症とか、見知った皆の前では口が裂けても言えない。

 もこたん、来ないかなあ......まあ、待っててもしょうがないか。

 

「うん、行きましょう! 人類の明日はあっちです!」

「お姉ちゃんお姉ちゃん! 飛行機はこっちだよ!」

「............てへっ」

「......不安だ」

「不安ですね」

「不安です......」

「えへへへへ......」

 

 うん。行こうか。

 この長かった旅の、終点へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

「......っ!? 侵入者、魔術感知域の内側に入りました!」

 

 マスター及びサーヴァントが全員、飛行機に乗り込み、まさに最後の一機が離陸した瞬間に、巡視より管制に警戒の一報が入った。

 

「数は?」

「一人です」

「様子は?」

「......服が傷だらけ。長いこと運動した後のような疲れが見えます。ただ、魔力のようなものを感じます」

「男か、女か」

「少女です。比較的小柄の」

 

 離陸の隙を狙った魔術師か。雇われの賞金稼ぎか何かが依頼を受けたか。

 いずれにせよ、妨害を受けてはたまらない。

 

「とにかく離れさせろ。このタイミングで来た魔術師などロクな存在ではない。近づけるな、手段は問わない」

「了解」

 

 との指示を受け、巡視の者たちが侵入者の前に立ちふさがる。

 

「即刻、立ち去れ。ここは今、貸し切り中だ。外部の者の立ち入りは禁じている」

「......はぁ......はぁ......はぁ......かっ......やぁ......」

「まあ待て。どうだお嬢さん。お疲れだろう。水でも飲んで落ち着いてくれ。話を聞こうじゃないか」

 

 巡視は人好きな表情で、少女にペットボトルを差し出した。しかし、その水面には催眠術が仕掛けられており、見たものを惑わし、真っ直ぐ家に帰る暗示がかかるように術を行使した。

 彼は今回の巡視長であり、そこそこな魔術師の一人だった。

 

「さあまずは落ち着こう。目的はなんだ?」

 

 だが、その言葉が、

 

「......か......や」

 

 ()()という言葉が、少女を―――藤原妹紅を刺激した。

 

 

 

蓬莱「凱風快晴

    -フジヤマヴォルケイノ-

 

 

 

「輝夜ああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 ―――その後、焔の軌跡が、彼らの空港を蹂躙した。

 が、侵入者はそれだけで、程なくして消えていった。

 まるで、諦めたように、探し物を見つけられなかったように。

 その知らせはすぐにフィオレに届いた。

 こちらの飛行機に被害がないならと事態を軽く見た彼女だが、一応サーヴァントら全員に事態の周知をした。

 皆が一様に首を傾げ、ただ別に関係ないと捨て置く中、ただ一人―――先頭を行くルーラーのすぐ左隣の飛行機に乗り込んだカグヤだけが、腹の底から大笑いしていた。

 

 

 

 

 

 




※不比等がもこたんパパであることは現時点では明確なことではありませんが、そういうことにさせていただいております。
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