「森の中かー、結構行ったみたいね」
昼ごはん(超楽しかった!)の後、ライダーのにいちゃんとアーチャーのアタランテさんが一緒の仕事について、ランサーのカルナさんも別の仕事にお出かけしちゃって、暇になってしまった。
ということで、私の指差した方向に一直線突っ込んで行っちゃったバーサーカーさんを追いかけることにしました! ちなみに誰にもナイショだよ!
「うん、大丈夫。ここまででいいよ♪ ありがとう!」
目の前には鬱蒼とした森林。しかも今は夜。迷いの竹林よりも葉っぱが多いぶん暗さマシマシで不気味。
そして足元には、バーサーカーさんが残した大きな足跡がたくさん。ってバーサーカーさん素足か、寒そ。
ちなみにここまでは車で来ました。適当な若者が乗ってた車をちょいと捕まえてね。便利だわー。"魅了"のスキル便利だわー。
「行った先は私の指差した方向で間違いないし、地面に大きな足跡があるから、追跡には困らないわね」
さて、行きますか!
暗いし枯れ葉も多いから、くれぐれも足跡だけは見逃さないようにしないとね~。
「大丈夫! 私、幸運Aだから!」
× × × ×
「迷った......」
ふえぇ~ん。道中に可愛いシカさんがいたから追いかけっこしてたら、足跡見逃しちゃったよぉ~。
「どうしよっか、シカさん」
フエェ~ン......
あら可愛いお返事。言葉通じちゃった? まあ兎さんと話せる私なら、シカさんと話せてもおかしくないか。
あ、今はシカさんに乗せてもらって宛てもなく移動してるの。気分はお姫様! 毛皮フサフサで気持ちいいわ♪
よ~し、シカさんよ! 私をいい場所に連れて行き給え~!
× × × ×
「......すまない」
ドゴッ!
「ぐほっ!!」
バタッ......
「遅いよセイバー! どうしてもっと早く決断しなかった!!」
「......すまない」
ということがライダーとセイバーにあり、ライダーが逃がそうとしていたホムンクルスの男の子が酷くダメージを負っており、大変な状況になっていた。
「......この子を生かす手段はある。俺のマスターのせいでこうなったのだ。その責任は俺が......っ」
「! 待てセイバー!!」
「時間がないだろう。俺の持つこの心臓を、この子に......!」
「やめろ! やめてくれっ!!」
生前にできなかったことを、セイバーは
......そんなときだった。
「ん......あら?」
「っ!? 誰だ!」
「......まさか、サーヴァント、か?」
「やっほー!
こんばんは~、始めまして~♪」
場違いな鹿に乗って場違いな明るい挨拶をきめた、何もかも場違いでブチ壊しな赤のキャスターが現れたのは。
× × × ×
「始めまして~♪」
第一村人ッ 発ッ見ッ!
ってここ森の中か。なら第一森人? もうどうだっていいや♪
一人目~! ピンクの髪が可愛い女の子!
二人目~! 懐かしの都の堅苦しい兵士みたいな男の人!
三人目~! 木にもたれて座ってる男の子!
わーい、三人もいるぞ~♪
「くっ......こんなときに敵サーヴァントか......!」
「問題ない。俺が相手しよう」
「セイバー......うん、頼んだよ!」
ん~、あんまり歓迎されてないかも。
というか、何かに困ってるのかな?
「あの、何かお困りでしょうか?」
「貴殿には、関係の無いことだ」
「えー? そう言われると気になっちゃうー」
ふん、止まれと言われて止まるほど、私は安いオンナじゃなくてよ!
んで、察するにピンクの女の子が大事そーーに隠してる男の子が問題なのね。
「その男の子が、どうかしたのかしら?」
「違う! この子は聖杯戦争に関係ない! ただの一般人の子供なんだ!
見逃せ! 見逃してくれ!」
聖杯戦争?
......あっ忘れてた、そういえばそれでここにいるんだった~。聖杯戦争に関係ない一般姫になってたわ。
「見逃すも何も、攻撃なんてしないわ。
どうしたの? 怪我? 病気? 何にせよお医者様を呼ばなきゃ! 助けてえー...」
りん! って言おうとしたけど、本当に来ちゃいそうだから止めました。冗談で済まなくなるからね......
「お医者......魔術師は呼んじゃダメだ。この子は魔術師に追われてるんだ」
「あらそうなの......なら、私たちで何とかしましょうか」
「へ?......助けてくれるのかい!?」
「ええ、勿論よ♪」
男の子を見たところ、体は丈夫そうだし、あれを使っても大丈夫か―――
シュッ!
「それ以上、近づくな」
―――おっとっと。兵士さんに抜剣されて凄まれちゃった。怖い怖い。
「セイバー!?」
「ライダー、彼女は赤のサーヴァント。敵だ」
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないだろう! 早くしないとあの子がっ」
「だがっ」
そんでもって、私を置いて揉め始めちゃったー。
あーもう、後ろの子が危険に見えるんだけどー。ちょっとー、もしもーし......はあ。
「―――うるさい。黙りなさい」
「「っ―――」」
赤だ黒だは知らんがな。
要は、この子でしょ。
「この子を治せばいいんでしょ?」
「あ...ああ、そうだ。できるのか?」
「舐めないの。私は赤の―――"キャスター"よ」
ピンクの子が唾を飲んだ。大丈夫、任せて。
兵士さんはまだ剣をこっちに向けてる。好きにさせておこう。こちとら怪しいことはしないし。
あ、ちょっとは怪しいかも。
「永琳、あなたの技術、借りるわ」
では始めましょうか、
脈をとる。まだ生きてるわね。
消化器官は痛めてそうだけど、機能に問題はない。腸が働いていればそれでいい。
疲労がとんでもなく溜まってるのが問題なわけね。それなら、うん、それならそうしましょう。
今日は、まだ
そして今夜は月夜、完璧!
「運がいいね♪ 君。助かるわよ!」
条件は、全てクリアされた。
"道具作成スキル"、発動。
「宝具――
――『
× × × ×
「あの子、大丈夫かなぁ......」
「不安か」
「いやー...だって...ねえ」
黒のライダーとセイバー。
ホムンクルスの子が、ユグドミレニアの城から逃げるのに協力した二人である。
一人は何の葛藤も無く己の心に従い、もう一人は大いなる葛藤を振り切って、ホムンクルスの子を追跡から逃がしきった。
「キャスターに任せたのは他ならぬ貴殿だろう。貴殿が自信を持ってくれなければ、俺も不安になる」
「そう言われてもなあ......」
逃げる際に、魔術師から受けたダメージと極度の疲労により命の危機にあったホムンクルスの子だったが、何の前触れも予感もなく現れた赤のサーヴァント、キャスターの助力により一命をとりとめた。
「しかし、赤のキャスターのお陰であの子が助かったのは、認めたくないが事実だろう」
「......だね。よくわからないけど、宝具まで使ってあの子を救ってくれた」
キャスターは、真名解放した
何の薬かはライダーにもセイバーにもわからなかった。キャスター本人は「ただの栄養ドリンクよ♪」と言ったが、宝具クラスの栄養ドリンクとはどういうことだ。
「あげく、本人は予期して無さそうだったけど、ルーラーまで呼んでもらっちゃったしね」
「ああ。現状俺たちが頼れる者の中で、最もあの子を安心して任せられるのは、あのルーラーであった」
そして、一命はとりとめたが目を覚まさないこの子をどうしようかというときに、ルーラーの登場だ。
あのときあの場にいたのは、黒のライダーとセイバー、そして赤のキャスターだ。これを感知したルーラーは"赤と黒の交戦"だと思い、監視役の責任から慌てて駆けつけたのだという。徒歩で。
もし、赤のキャスターがあの場にいなければ、ただ黒の陣営の数名がいるだけということで、ルーラーは特に気に止めなかっただろう。
赤のキャスターがいたからこそ、ルーラーはすぐに現れ、ライダーたちは安心してあの子を送ることができたのだった。
「終わってみれば、敵とは思えないなあ、赤のキャスターのやつ」
「だが、油断は禁物だろう」
「えー? 僕はあの人と戦いたくないなー。いい人だもん」
「......まあ、そうだな」
しかしあのキャスターには、キャスターかどうか疑われるほどにキャスターらしさがどこにもなかった。
「彼女は悪に見えなかった。だから僕は彼女を信じたい。いや、信じるんだ!」
「......貴殿のその真っ直ぐな心、是非俺にも分けてほしいものだ」
「実際にあの子に心を分けようとした君に言われたくはないなー」
そして、結果的に赤のキャスターは黒のセイバーまでも救った。
あのときはまさに、セイバーが己の心臓をあの子に与えようしていた瞬間だった。当然、霊核たる心臓を失えば、セイバーは死に、聖杯戦争から脱落する。あの子の命の代償として。
それを止めたことで、間接的にだが、赤のキャスターは敵であるはずの黒のセイバーさえも助けたことになった。本人にその気は全く無さそうだったが。
「ま、あの子が助かって良かったし、敵のキャスターがまともそうなやつでダブルに良かったよ!」
「そうだな。安心して戦いに望むことができる」
「魔術は厄介だからねー。遠くからネチネチ~後ろからジワジワ~って、面倒この上ないよ~」
「うむ......では、我々はこの後どうする?」
「あ~、そうだね。ランサーとキャスターの意向に逆らっちゃったし、君に至ってはマスターに反逆を......」
「俺は問題ない。あのときの選択は、今でも正しいと思っている」
「だけど、バツとか......」
「正しいと思っていることをした以上、バツなど、俺にとっては何も怖くない」
「......そっか、強いね~君は!」
「君のほうが、バツなど恐れる者には見えないが」
「もっちろん! 僕は自分のしたことを後悔しない! 自分が正しいと思ったことをしただけだもん。だから後悔も、反省も、何もしないし怖くない!」
「......ライダーは、強いな」
「君ほどではないさ。僕は理性がブッ飛んでるからね♪」
こうして、誰も失われることの無かった夜は過ぎていき、サーヴァントたちはそれぞれの思いを抱えて、自らの家路につくのだった......。
× × × ×
「あ~あ......折角のバーサーカーさんの活躍、見逃しちゃったよぉ~」
一方こちら、一般トラブルメーカーのカグヤちゃん。
黒の二人と別れてすぐに令呪一画で強制帰還され、意気消沈の自室待機なう。
「相手のライダーとランサーと交戦して、大暴れするも追い詰められて、令呪で離脱か~......
み゛た゛か゛っ゛た゛な゛~!」
溢れる何かを抑えきれず、用意された畳の部屋をゴロゴロゴロゴロローリンガール。
「は~......令呪かー、聖杯戦争だって忘れてたな~。敵のサーヴァントと二人も会っちゃったよ。セイバーさん? には剣先向けられちゃったし......。
あれ? 私実は危険な橋渡ってたりするのかな?」
実はもなにもない。丸腰キャスターが一人で、敵のライダーとセイバー二人に出くわしたのだ。
むしろなんで帰ってこれた。これが幸運Aの力だとでも言うのか。どういうことなんだ、神よ。
「どういうことなんでしょうね......アサシン、私に答えをください」
「さあ? 私に聞かれても、なあマスター?」
「そうですね......はあ」
その姿をアサシンの使い魔ごしに見守っていたシロウコトミネ神父である。
彼がキャスターを捕捉できたのは、ちょうどキャスターがライダーたちと別れてすぐであった。
あの馬鹿は、優雅にシカの背中に跨がって、無防備に背中をさらしやがってました。敵のセイバーに斬られるとか、アーチャーに狙撃されるとか......何一つ考えなかったのでしょうか。
「それとも、早くも内通者......裏切り者になったとかでしょうか」
敵のサーヴァントと何をしていたのかは知らない。もし仮にだが、黒の陣営の者と繋がりを手にいれていて、こちらの情報を漏らしている裏切り者になっていたのだとしたら、見逃されたことにも説明がいきます。
「アサシン、明日の朝に自白剤入りの朝食を作ってもらえませんか?」
「ふん?......なんだ、マスターの好物は自白剤だったか。それならば毎日食べさせてやるぞ?」
「セミラミスの手料理は食べたいけど、そうじゃないです。キャスターに食べさせます」
「......ふん、わかっておるわ。冗談の通じぬ男よ」
キャスターに関しては、慎重に動くとしましょう。今一番の不安要素は、黒の陣営の誰でもなく、あのトラブルメーカーのキャスターです。
まあ、さしあたってはあれですね。彼女には無闇に出歩かないようにして貰いましょう。
夜が明けて、次の日。
キャスターには、命ぜられるまでの外出禁止令を下しました。これは効いたらしく、腕をブンブンさせてあーだこーだ駄々をこねてきました。当然無視ですね。
アサシンに自白剤入りの朝食を盛らせて話をしたところ、黒の陣営二人と話してた理由は、迷子中に通りすがった一般人が死にかけで倒れていたので、皆で助けてあげたというものでした。
......神に仕える者として非常に怒りにくい内容です。ですが流石に叱りました。彼女はショボーンとなりました。どうやら内通や裏切りでは無かったらしいです。
「退屈のあまり逃げられても困るので、これをあげますよ」
「ん~? 何よこれ?」
「携帯ゲームというやつです。あなたが日本の英霊だということで、日本で有名な"PSP"というものを用意しました。これで退屈を凌いでください」
「え~? こんなちっこいので何ができるってのよ~」
「それでは」
「えっ、あっ、ちょ待」
バタンッ。
ふふっ、トラブルメーカーさんには、今後一切容赦無しです。
内心、これだけでどうにかなるものでも無いかな~、と思っていました。
しかし一時間後、アサシンに様子を見てもらったら、凄く楽しそうにゲームをしてるキャスターの姿があったので、こちらも凄く安心しました。
そして、いよいよ今夜だ。
アサシンの宝具がこの時代に甦り、敵として出てくる黒のサーヴァントを、その領土ごと赤のサーヴァントで蹂躙し、我が悲願を成就させてみせよう。
六十年と数多の夜を超え、大聖杯を我が手に。
待ってろ、ダーニック。お前に大聖杯を使わせはしない。