【完結】赤のキャスターは蓬莱山輝夜   作:木工用

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※狂姫中のてるよに、難聴による聞き取り言語捏造が追加付与されました。



トラブルメーカーは夜に駆ける

 

 

 

「皆さん、そろそろ見えてくる頃でしょう。備えを」

「はい。アーチャーは御武運を......キャスター、しくじらないでくださいね?」

「ガッテンでい! ジャックちゃん! そろそろ始めるよ! 頑張れるかな!?」

「うん! いーっぱいごはん食べておなかいっぱいだから、今まででいちばんがんばれると思う!」

 

 

 

「大きな魔力が近づいてきた。サーヴァントども、敵襲だ。持ち場につけ」

「おーおー、わかりましたよマスターさん? 精々暴れてやるから、毒指を咥えて待ってな。姐さんも問題ないか?」

「我が名はアタランテだ。他人の心配なぞする余裕があるなら貴様は大丈夫なのだろうな。私も抜かりは無い。出し惜しみは無しだ、ライダー。()()使え」

「おうよ。()()使うぜ」

 

 

 今宵は新月。

 存在しない月明かりの下に、一挺の超巨大な空中要塞と、無数の航空機が相対す。

 

 

「起動せよ」

『十と一の黒棺』(ティアムトゥム・ウームー)

 

「いっくよー!」

『ルナティック・ザ・ミスト・シティ』

 

 

 無数の航空機を睨み殺すが如く巨大な岩盤が現れたのと、無数の航空機を覆い隠すように魔力を帯びた霧が、両者同時に展開された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧か?......そういや姐さん言ってたな。最後に斥候に行ったとき、敵の城がよく見えなかったって」

「ああ、どうやらあれは奴らの能力だったようだな。アサシン、貴様にはどう見える」

「今の我はマスターぞ......まあよい。あれは我の目をもってしても中が見通せぬ。宝具級の、恐らくキャスターか、あってアサシンあたりの業と見て間違いない」

 

 今から航空機を落としてやろうとしたところに現れた広範囲の霧。これでは狙いをつけられない。赤のアサシンは魔力消費のことがあって砲台の無駄射ちを躊躇う。

 だが、赤の陣営にはもう一人。遠距離攻撃の専門家がいる。

 

「アサシン、確認するが―――別に全機墜としてしまっても構わんのだよな?

 

 霧を眺め、手にした弓を空に掲げ、まるで祈りを捧げるように彼女は目を瞑っている。

 彼女からすれば、空飛ぶ鉄の固まりなぞ紙切れも同然。

 超広範囲の霧、その中の無数の航空機。しかしその全てが、既に彼女の射程圏内であった。

 

令呪ずる。アーチャー、眼前の敵性生命体を殲滅しろ」

「了解した。マスター」

 

 弓に矢をつがえ、其を文とし天へ希う。

 

「此の災厄を注ぐ―――」

 

 返答は、神矢の雨嵐。

 

 

訴 状 の 矢 文(ポイボス・カタストロフェ)

 

 

 赤のアーチャーの弓から、終わりを告げる一筋が放たれた―――

 

 

 

 

 

 "狂姫"

 "竹取飛翔"

 

 

 バゴォオオオオオオオンン!!

 

 

「ゲットォ!!」

「なっ......」

 

―――同時、霧の中からもう一筋の雷光が勢い良く飛び出し、極上の素材で作られたウィッチクラフトのグローブで包まれた赤のキャスターの手が、赤のアーチャーの矢を完全に掴み取った。

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

「さん、にぃ、いち!!」

 

 

 "狂姫"

 "竹取飛翔"

 

 

「ゴーォォォオオオオ!!」

 

 最終決戦だぁぁぁぁああああああああ!!!

 クライマックスだぁぁぁぁああああああああ!!!

 ラストダンジョンだぁぁぁぁああああああああ!!!

 

 今夜はなんと新月! 能力の縛りも無し! 最高にハイってやつだ! 気分はすっかりバーサーカー!

 アカくんの魔力もバッチリだし、ぶっ飛ばして行くよ!

 あ、出始めぶっ飛ばしすぎて乗ってた飛行機壊しちゃった。てへぺろ☆

 

「ゲットォ!」

 

 まずはケモ耳アーチャーちゃんの矢を処理! パンツさん曰く、「赤のアーチャーの一発目はマジでやばい(一部表現捏造)」らしいから任されてた!

 いやー、フィオレちゃんとロシェくんのグローブ良いねぇ! この肉体じゃ素手だとパンツさんの矢もまともに止めれなかったのに、これがあるならケモ耳ちゃんも怖くない!

 

「おのれキャスタァァ......おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれエエ!!」

 

 ヤバッ、怒らせちゃった!

 えーっと、準備はいいかな? いくよ、もーいっかい!

 

 

『ルナティック・ザ・ミスト・シティ』

 

 

 故あって大声で叫ぶと、辺りに霧が立ち込める。ケモ耳ちゃんも完全に覆われたみたい。

 接近する! ぶん殴ってやんよ!

 

「もこパンチ!」

 

 miss!

 

「そんな拳、当たらんて!」

 

 外してもうた(´・ω・`)。結構自信あったのに。ちょっともこたーん? あなたのせいよ?

 まあいいや。拳は当たらなかったけど、()()()()()()()()()、作戦は成功だね! 私はこのままあのでっかいマスタースパーク岩をぶっ壊しに行くから、ケモ耳ちゃんは任せたよ、()()()()()()()!!

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「姫さんは姐さんのほうに行ったか......」

 

 ライダーは戦況を見ながら思惑する。

 赤のキャスターが赤のアーチャーに行った結果か、航空機の霧が晴れた。キャスターの仕業と見て間違いない。

 

「アサシン。キャスターの飛ぶ速さ、瞬間速度だけなら俺の戦車以上だ」

「なぜ貴様はそこまで冷静でいられるのだライダー! キャスターが飛んでくるなど想定外だぞ!」

 

 荒ぶったアサシンの声が響くが、ライダーの心は微塵も揺らがない。戦場でこんなにも凪いだ気分になるなんて生前も含めて初めてかもしれないとアキレウスは天を仰ぐ。

 

「あの姫さんなら何やっても俺は驚かねぇよ......姐さんの援護と航空機への砲撃を頼む。俺は先せ......アーチャーを倒す。それでいいか」

「......ああ、許可する。なんだ、踵をやられて落ちぶれたと思っていたが、随分落ち着いて頼もしくなったようだなあ、大英雄さん?」

「......かもな。

 クサントス、バリオス、そしてペーダソス。準備はいいか、行くぞ。

 今日は何だか......」

 

 

疾 風 怒 濤 の 不 死 戦 車(トロイアス・トラゴーイディア)

 

 

「......いい気分だ。ハハッ」

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

「..................」

 

 

 キャスターが飛翔してから、黒のアーチャーは弓を構え、空中要塞を睨み付けるように監視していた。少しでも動きがあれば対応できるようにと。

 そしてその目が、()を捉えた。

 

『マスター、これより赤のライダーがこちらに来ます。狙いはこちらのようです』

『......わかりました。宝具の任意使用を許可します。アーチャー......どうか無事に帰ってきてください』

『承知いたしましたマスター。何かあれば、迷わず令呪の使用を』

『はいっ』

 

 短く、会話を済ませ、戦闘態勢に入る。

 フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニア。過去の英霊である自身とは違い、彼女は今を生きる愛すべき人間だ。こんな戦争に参加した以上は死んでしまっても文句は言えないのだが―――

 

「......それでも」

 

 ―――こうして自分を呼んでくださったからには、生きて帰らせたいものだ。

 

 

 

「ハハハハハハハッッッ!!!」

 

 

 

 前方から彗星の如く三頭だての戦車が迫り来る。それを駆るのは、この戦争が始まってから、いや始まる前からもよく知っている大英雄"アキレウス"だ。

 見慣れたその顔を目掛けて、アーチャーは烈火の如く矢を射ち放つ。

 

「黒のアーチャー!! 今日こそ決着をつけようじゃねぇか!! なああああああ!!」

 

 数kmは離れていたはずの距離を刹那に詰め、赤のライダーは黒のアーチャーのいる飛行機を強烈に貫いた。

 

「......チッ」

 

 黒のアーチャーは辛くも隣の飛行機に飛び移りつつ、夜闇の空間を正確に狙い射つ。踵をやられた今となっては迫る矢の一つひとつが致命傷になりかねないが、しかし赤のライダーは余裕をもって躱しきる。自身の能力は幾分下がれど、戦車の機動力は健在。

 

「まだまだ行くぜ!!」

「くっ............」

 

 一つ目の飛行機を破壊してから僅か数秒で隣の飛行機を貫く超速戦闘に、されど黒のアーチャーも負けじと反撃し続ける。何度足場の飛行機を壊されても無数の矢を放ち続けた。

 されど矢は掠りもせず、空に放たれるのみ。

 

「先に足場を潰させてもらう!」

「まだだ!!」

 

 赤のライダーは黒のアーチャーが逃げる先の飛行機を予め潰した。これで逃げられないだろうとライダーは戦車に更なる魔力を込めて叫ぶ。

 

 

疾 風 怒 濤 の 不 死 戦 車(トロイアス・トラゴーイディア)!!!

 

 

 真名解放。迫る一条の彗星。

 黒のアーチャーは狙いを飛行機の燃料部に定めて一射。

 

 

 バコオオオオオオオンンッッッ!!!

 

 

「......くそっ、やっぱうめぇな」

 

 発生した大爆発の勢いに乗り、黒のアーチャーは遥か先の飛行機に飛び移った。

 

「―――だが追い詰めたぞ、アーチャー」

 

 しかしそこは飛行機群の端の端。これ以上逃げ場は無い。

 場所は数km先。だが戦車を駆ける赤のライダーにとって、その程度はもはや50m走にも等しい。

 突撃する赤のライダーを、しかし黒のアーチャーは目を瞑って迎えた。

 

「―――然るべき時、然るべき座標、然るべき速度。射撃に必要なのは、これだけです」

 

 突如現れた、赤のライダーの背後から迫り来る矢の豪雨。空に放たれていた黒のアーチャーの矢は、ほぼ全て、この時この座標を狙って放たれていたのだ。

 

 

 "千里眼"

 "心眼(真)"

 

 "未来視"

 

 

 黒のアーチャーの持つ計算能力と合わさった、常人には予測不可能な必殺の攻撃である。

 

 

 

「......習ってはないが、読めてるぜ、先生......」

 

 

 ―――だが、今のこの男だけは例外だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤のライダー、お前は本当に持っている宝具が多いのだな」

「そういうあんたも、大層な具足つけやがって。手加減する必要も余裕もねぇよ」

 

 それは、偶然のことだった。

 前日までの、赤のランサーとライダーとの模擬戦。そこでライダーは、ある宝具を試していた。

 

「こいつは真名解放が一度きりでな。黒のアーチャー相手の切り札にしたいんだが、使い時が難しくてな。どうにか温存して戦いたいんだが......」

「......ならば、力を抑えて解放するのはどうだろう」

「力を抑えて......?」

 

 一度打ち合いを止め、ライダーはランサーの話を聞く態勢に入る。

 

「オレは魔力消費が激しいサーヴァントだ。故に、例えばマスターの魔力量が低い場合などは、オレも出力も抑えて宝具を使う必要がある」

「......ああ、聖杯戦争ならな」

「アサシンから聞いた話だ。この空中要塞に黒のライダーが来たとき、何やら珍妙な魔術防御宝具を使っていたらしいが、後から真剣に考えた結果、宝具の真名を間違えていたのか出力が全く足りていないように見えたらしい」

「......真名を間違えていた?」

 

 初耳だった。黒のライダーは防御宝具を、真名を間違えたまま使っていたらしい。

 

「聞いた話は以上だ。ここからはオレの推測だが......」

「いや、結構だ。後はこっちで試すだけだ」

「......そうか。これは言葉が足りていたか......」

 

 ―――発想は得た。

 ライダーは再び宝具を取ると、ランサーの炎を相手に、思い付いたことを即興で試してみた。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそのまま、今に至る。

 

 

我が躯守りし友(アイ・アース)!!

 

 

 誤った真名によって解放された赤のライダーの宝具『蒼天囲みし小世界(アキレウス・コスモス)』は、けれど自身の戦車を丁度覆うサイズの大盾となって展開され、黒のアーチャーの必殺を防ぎきった。

 

「......今のは、盾ですか......」

「終わりだ、黒のアーチャー!」

 

 

疾 風 怒 濤 の 不 死 戦 車(トロイアス・トラゴーイディア)!!!

 

 

 バコオオオオオオオンン!!

 

 

 赤のライダーの戦車が、逃げ場の無い黒のアーチャーを貫いた。

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

「遅い! 私に当たる拳では無いぞキャスター!」

 

 空中要塞外縁部。

 赤のアーチャーは、空を飛ぶ意味不明な赤のキャスターと戦わされていた。

 しかも、宝具か何かで出した不思議な霧が辺りを包み込んだせいで、自身の周囲はアーチャーの目で見えなくはなくとも、遠方の飛行機を狙撃するのはできなくなった。

 

「おのれ、初めて会ったときからちょこまかと動きおって、貴様の頭を射ち抜く日を心待ちにしていたぞ!」

 

 しかし、赤のキャスターの服装は非常に目立つ。戦場にとても相応しくない東洋のクソデカテントドレス(十二単)がブワンブワン飛ぶ姿は、霧の中でも視認を容易にしていた。

 弓に矢をつがえた。赤のキャスターはこちらを見ていない。あいつもこちらが見えていないのか。滑稽なことだ。

 

 

 射ち抜――――――ッ!!

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

此よりは地獄―――

 

 

 赤のキャスターの十二単は、本来の彼女の細い体を完全にわからなくするほど大きい。

 もし、その中に子供が一人いたとしても完全に隠れてしまうほどに。

 

 

わたしたちは、炎 雨 力―――

 

 

『ルナティック・ザ・ミスト・シティ』。

 赤のキャスターが考えたそれっぽい偽りの真名解放の裏で解放された"暗黒霧都(ザ・ミスト)"。

 月明りさえ無い新月の"夜"。

 そして事前情報通り、赤のアーチャーは"女"であった。

 

 条件は全てクリアされた。

 

 

『―――解体』

 

 

「ッッ!!」

 

 

 今宵の殺人も完璧なはずだった。

 

 相手が、最速の狩人でなければ。

 

 

 

 "追い込みの美学"

 

 

 

「リッ!? きゃっ!?」

「......外傷は避けたか。だが攻撃は潰せた」

 

 振り向き、刹那数発。

 相手が先手を取ろうとしたとき、その行動を確認してから自らが先んじて行動できる。"最速の狩人"たるアタランテにしか到底成しえない絶技が、ジャック・ザ・リッパーの殺人行動を潰した。

 

「気配も音も全くなかった。気流と勘で狙えただけ幸いという他ないわけだが......そうか、貴様が最後の一人か、黒のアサシン」

 

 霧の中に、黒のアーチャーは黒のアサシンの姿を捉えた。

 赤のランサーやライダー、ひいては赤のキャスターよりも小さい自身が、それでも見下ろすほど小さい背丈を。

 

「急に攻撃してくるなんて、ひどいことするね」

「貴様、子供か......?」

 

 赤のアーチャーは驚きのあまり一瞬だけ止まってしまった。

 

「うん! はじめましてかな? はじめましてだよね! あなたをバラバラにしに来たよ!」

 

 そう言って、黒のアサシンは再び霧の深くへ。

 しまった、と黒のアサシンの逃げて行ったほうを行く赤のアーチャー。

 

 

 

わたしたちの名は、ジャック・ザ・リッパー

「ッッ!?」

 

 

 

 その耳元から急にささやいてきた殺人鬼を、赤のアーチャーは慌てて振り払いながら矢を数発撃つ。

 されど矢は虚空を穿ち、殺人鬼は再び姿を消した。

 

「あはははは! あはははは!」

 

 ジャック・ザ・リッパー。ロンドンの連続殺人鬼。子供の姿であることには動揺したものの、自分を害する存在には容赦はできない。しないと決めた。

 赤のキャスターはどうやら離れていったようだ。要塞の砲台を破壊しに行ったのかもしれない。故に邪魔する者はいない。

 懐を確認する。硬く冷たい感触。()()()()は変わらず持っていた。

 

 

「ねえねえねえねえ! 貴女の名前、教えてくれる?」

「......随分と口がうるさい子供だ。おしおきが必要だ!」

「あはははは! あはははは! あはははは!」

 

 

 警戒されてか、黒のアサシンはクナイや投げナイフといった投擲に切り替えている。だが遠距離戦でアーチャーたる私が負けることはない。

 そして今を耐えることができれば、相手は狙ってくるはずだ、先ほどの近接宝具を。

 

 

 ―――次に接近した時が、貴様の最後だ。殺人鬼。

 

 

 

 

 

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