【完結】赤のキャスターは蓬莱山輝夜   作:木工用

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ランサーは灼き尽くす

 

 

「どりゃあ!! これで四つ目ぇ!!」

 

 

 豪快一撃! 左の鉄拳が岩盤を貫く!

 見よ! 俺の拳は今、真っ赤に燃えているぜ!(痛みで)

 

 

 マスパ岩を壊しては飛んで、あと七つ!

 ときおり飛行機のほうに砲撃がいって怖いけど、アカ君やマスターたちがいる飛行機はルーラーさんが守ってくれている。アカ君からも問題ないって連絡が来てるし、大丈夫そう!

 唯一大丈夫じゃないのは私のおててくらい! グローブしてるけど痛いものは痛い! てか作ってくれた二人ごめん! ちょっと壊れかけてきた!

 

「でもこのまま行くよ! バーサーカーちゃん!」

 

 ビリッ、と返事のような痛みが走る。返事にしては痛いんだけどなぁ......あ、もしかして調子に乗るなって警告かな? バーサーカーちゃんは厳しくて優しくて、そしてかわいい! 素敵!

 

「五つ目みっけ! ぶっ飛ばす!」

『図に乗るな狂人』

「へっ? おわっ!」

 

 脳に直接言葉を!? と思ったら四方八方から鎖が!?

 慌てて全部よける。赤のアサシンさんの攻撃かな? セミラミスさんだっけ。セミさんでもミラさんでもラミさんでもミスさんでも語呂がいいから呼び方迷うなあ......う~ん。

 

『今のを避けるか......アーチャーから避けるのだけは上手いと聞いていたが、本当のようだな』

「ん? まあね♪」

 

 こちとら弾幕民族ですから。

 特に矢なんて、永琳のを見てるからね。結構自信あるんだよ~?

 

『まあよい。その余裕がどこまで持つか、見物してやろうではないか』

 

 む、前方に敵兵見ゆ。しかもかなりの量! 骸骨に羽が生えててちょっとかっこいい! 一匹持ち帰りたい!

 ん~でもイナバとはあまり仲良くなれなさそうだなあ......無念。

 

「ま、量には量をってね」

 

 撃つのはとても久々。ちょうどいいから、あの娘とやる前に勘を取り戻しておくとしましょう!

 

 

「スペルカード!

 神宝『ブリリアントドラゴンバレッタ』!!」

 

 

 こんな奴らさっさとぶっ飛ばして、邪魔な砲台なんて全部ぶっ壊してやるんだから!!

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「................................」

「......ャー!............ァー......」

 

 

「アーチャー!」

「っ!?」

 

 目を覚ます。飛行機の中。目の前にマスターの顔。

 生きている、と黒のアーチャーは驚く。

 記憶は、赤のライダーに突撃されたところで止まっていた。

 

「令呪、ですか......」

「はい。よかった、間に合ったようですね」

 

 どうやら、マスターに救われたらしい。

 一画消費された令呪を見て、アーチャーは起き上がり姿勢を正す。

 

「マスター、誠にありがとうございます」

「い、いえ。無事で何よりです」

 

 教え子にしてやられ、想定の上を行かれ、やられてしまった。

 恥ずかしいことだが、それよりも今は一刻も早く現状を知らなくては。

 

「マスター。状況は?」

「赤のライダーはルーラーが対応してくれています。ルーラーは攻撃手段を持たないので防戦一方ですが......アサシンは霧を展開中なので中の様子まではわかりません。キャスターは順調のようです」

「そうですか......」

 

 聞いたところ、悪い状況ではなさそうだと黒のアーチャーは分析する。

 

「行くのですか? アーチャー......」

「......いえ、私が今ここから出て行けば、マスターたちの居場所がバレてしまうかもしれません。

 一旦霊体化し、魔力量も抑え、隣の飛行機に潜伏します。やむを得ない事態になれば出ますが、何もなければこのまま空中要塞に乗り込みます。

 その後、赤のライダーを待ち伏せして、勝てた場合はマスターに合流するか赤のアサシンを攻めます」

「......お願いします」

 

 ここまでは、一応想定の範囲内。

 霊体化し、黒のアーチャーは後ろを振り返る。分厚い雲に阻まれて流石のアーチャーにもその先は見れない。

 だが、アーチャーはその先が気になって仕方がない。地上に残してきた()のことだけは、連絡が取りようもないのだ。

 

 

 ......健闘を祈っています、セイバー.......!

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「うおおおおおおおお!!!」

「ふんっっ!! はあっっ!!!」

 

 広大な草原があったその場所は、最早戦闘前の見る影もなく。

 黒のセイバーと赤のランサーの戦いは、小国一つ分ほどの大地の地形を作り変えられてしまうほど苛烈さを極めていた。

 足場と呼べるものは、既に全て焼き尽くされて炭にも近きものになっており、常人には近づくどころか目視さえ叶わぬほどの高温が空間を支配していた。

 

『幻想大剣・天魔失墜』(バルムンク)!!」

「ふんっ!」

 

 遠距離から放たれた黒のセイバーの宝具を、赤のランサーは具足でいなす。

 それと同時に自身の魔力を右目に込めて、

 

「武具など不要、真の英雄は眼で殺す。

 『梵天よ、地を覆え』(ブラフマーストラ)!!」

 

 まるでビームにも見える灼熱の眼力が黒のセイバーを襲う。

 だが、黒のセイバーはこれを容易にかわす。かわした先、遥か彼方の空で雲に大穴が穿たれたのが目視できた。

 

「はあっ!!」

「まだだ!」

 

 遠距離は不利と見た黒のセイバーが接近戦を仕掛ける。

 剣戟、槍戟、打撃に灼熱の炎。両者一歩も譲らない展開が続いていた。

 

「やはり決め手にならないか......」

 

 黒のセイバーの威力を利用する形で、赤のランサーが再び大きく距離をとる。聖杯戦争が始まってから幾度もぶつかってきた中で、彼の持つ宝具『梵天よ、地を覆え』(ブラフマーストラ)『梵天よ、我を呪え』(ブラフマーストラ・クンダーラ)では何度やっても彼に決定的なダメージを負わせられなかった。これらはかつて必殺とされた技に連なるものであるにもかかわらず、だ。

 

「このまま続けていても、芸がないな」

 

 かつての同郷の者たちの必殺であれば彼を倒せていたであろう。これで倒せなかった己の技量不足を先達に恥じつつ、このままではいけないと赤のランサーは思った。

 

「黒のセイバー、見事な剣だ。我が槍を存分に振るわせてくれたことに感謝し、心の底から称賛する」

 

 対する黒のセイバーは、構えた。

 何かが、今まで自身が体験してきた全てを遥かに凌駕する何か、それが来る予感がした。

 

「貴様を倒すには......今のままでは不足らしい」

 

 赤のランサーの具足が、徐々に剥がれ落ちてゆく。

 剥がれた場所からは血が炎となってあふれ出し、足元を焦がして、周囲の温度を上昇させた。

 立ち上る魔力は、神を幻視させた。

 

「故に......オレはお前を打ち倒すための、絶対破壊の一撃が必要だ......!」

 

 到底推し量れない尋常ならざる魔力が頭上に集まりて成るは、灼熱の神槍。人類の領域を遥かに超えた神をも屠る、究極の一。

 もはや太陽そのものとも錯覚するその宝具が、ただそこにあるだけで周囲は文字通り焦土と化した。

 

「......くぅ......」

 

 防御宝具がある自身だからこそ今こうして立っていられるが、他の英霊であればここにいるだけで熱が致命傷になりかねないと思える。宝具が、ただ現れただけなのに、だ。

 それほどの宝具が今、たった一人、自分にのみ向けられているという事実。

 黒のセイバーは自身の剣を固く握りしめる。かつて邪龍を堕とした相棒が頼りなく思えてしまうほどの圧倒を前に、それでも黒のセイバーに撤退の意思は無い。

 

 

 いつもと同じだ。来るのなら、迎え撃つまで。

 

「来いッ!!」

 

 

 そして、二騎のサーヴァントが同時に大量の魔力を欲していることに気づいた彼らのマスターも、その思いに応えた。

 令呪て。

 

『ランサー! 黒のセイバーを討てッ!』

『セイバー! なんとしてでも生き抜くんだッ!』

 

 

 これを受けた赤のランサーは、懸念だった魔力供給の不安を排除、出力を全力全開にする。目下で力を開放した第二の人生最大最強の好敵手は、太陽すらも叩き斬らんという気迫に満ちている。手を抜いて勝てる相手では無い。

 最上の敬意を以て、この一撃を捧げよう。

 

 

神々(かみがみ)(おう)慈悲(じひ)()れ」

 浮かび上がる太陽の紋章。展開される四片の翼。

 

「インドラよ、刮目(かつもく)しろ」

 右目は劫火の赤、左目が天雷の青に染まる。

 

絶滅(ぜつめつ)とは(これ)、この一刺(ひとさし)

 神槍の先端が、黒のセイバーに向けられた。

 

 

()()くせ――

日 輪 よ 、死 に 随 え(ヴァサヴィ・シャクティ)!!

 

 

 対する黒のセイバーも、自身の剣へとありったけの魔力を込める。

 

邪悪(じゃあく)なる(りゅう)失墜(しっつい)し」

 剣の宝玉から真エーテルが膨大な魔力となって立ち昇る。

 

世界(せかい)(いま)落陽(らくよう)(いた)る」

 黄昏の大剣が、太陽を捉えた。

 

()()とす――

 『幻想大剣・天魔失墜』(バルムンク)!!

 

 

 此度の聖杯戦争において、両陣営最大最強の攻撃が今、ぶつかり合った。

 太陽と黄昏の拮抗は、しかして刹那のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......................」

 

 大きく吹き飛ばされた大男の体躯が、背中から磔にされているかのように岩にめり込んでいた。

 焼けただれた全身はもはやその生命維持機能をほとんど失っており、供給される魔力が鎧を通じて修復をすることで無理やり()()()()()()()ような状態であった。

 

「驚きだ。この宝具でも倒しきれないとはな」

 

 赤のランサーが地上へと降り立つ。

 否、そこはもう地上と呼べるかどうかすら怪しい焼け野原と化していた。

 黒のセイバーがいたであろう場所に着弾した絶対破壊の一撃は、太古の時代に文化を壊滅しつくしたとされる隕石の衝突をも想起させる衝撃となって地形を破壊し尽くした。

 

「黒のセイバーよ。約束通り、心行くまで剣と槍を交えてくれたことに、感謝する」

 

 最後に、赤のランサーは自身の槍を黒のセイバー目掛けて構え―――

 

 

 

 

 

 

―――心臓へと、真っすぐ突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 令呪ずる。

 

 

「............?」

 

 黒のセイバーが完全に息絶えたはずの戦場に、

 

 

 赤のランサーを討て、セイバー!

 

 

 突如として、巨大な魔力反応が発生する。

 

 

「しゃああああああああああ!!!」

 

 ハーレー・ダビットソン。

 それを赤雷を伴って荒々しく乗り回す豪快な英霊が一人、既に目の前にまで迫ってきていた。

 

「くっ!?」

 

 赤のランサーは動揺しつつも炎の魔力放出を展開し、槍を―――

 

 

 

―――ガシッッ!!

 

 

「何っ!?」

 

 驚愕に振り替えるとそこには、

 確かな光を目に灯しながら、腹部を貫通したランサーの槍を全力で握りしめる黒のセイバーがいた。

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「俺は、赤のランサーに敗北するかもしれない」

 

 勇気を出して、マスターと赤のセイバーに打ち明け、その上で考えた捨て身の作戦。

 赤のキャスターの蘇生宝具により一瞬の奇跡を掴み、その一瞬を、赤のセイバーに託す。

 そして自分自身は、存在するであろう赤のランサーの奥の手を何としてでも耐えて()()()()、自身への止めに槍を使わせること。

 

「......わかった。頼むぞ、セイバー」

「へっ、面白そうじゃねぇか。いいぜ、乗った」

「これ、幸運のおまじない付きだから♪ 頑張ってね、セイバーさん!」

 

 この戦争中、ジークフリートは常に思考し続けていた。生前とその死に際を思うに、自身の何かを変えなければならないという葛藤があったのだ。

 そして、マスターとの会話。アカの生き様。他サーヴァントの話。それらがジークフリートの成長を促し、動かした。

 もし自身が無策で赤のランサーに敗北した場合、自身との約束から解放された彼が何をするか―――それこそ、黒の陣営を文字通り壊滅させたとて不思議ではない。赤のランサーだけは何が何でも自身との戦いで倒さなくてはならない。

 例え、自らの命を賭してでも。

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「馬鹿なっ!?」

 

 赤のランサーは驚愕に目を見開く。あまりのことにどうしても黒のセイバーに注意が向く。背中を貫通して背後の岩まで突き刺さったランサーの槍は、黒のセイバーに命がけで掴まれたまま、ビクともしない。

 

 黒のセイバーの目は、敗北を受け入れていた。

 しかして、赤のランサーの目も同様であった。

 

 

 

我が麗しき(クラレント)―――

 

 

 

 

貴公の勝ちだ

 

 

 

否、オレの敗北だ

 

 

 

 

―――父への叛逆(ブラッドアーサー)ァァアアア!!!』

 

 

 

 終幕を前に、二人の英雄は余りにも満ち足りた気分でいて。

 赤雷により炎をものともせず突っ込み、ランサーとの距離をゼロにした赤のセイバーの邪剣が、ランサーを袈裟懸けに切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「片はついたか、セイバー」

「ん、おうよ。今ちょうど、見送ったとこだ」

 

 赤のセイバーが切り裂いた赤のランサーは、ちょうど黒のセイバーの横に吹き飛び、程なくして二人とも消失していった。

 二人の戦士の、脱落である。

 令呪が届くギリギリの範囲から戦いを見ていた獅子劫は、赤のセイバーを車で迎えに来た。地形がとんでもないことになっているので大層苦労したが。

 

「よし、ならとっとと行くぞ。ユグドミレニアご一行に先を越されるわけにはいかないからな」

「そうだな! 早く聖杯を......マスター」

「......ああ」

 

 そんな二人が、同時に殺気立つ。

 熟練の先も先に位置する直感と魔力の気配が二人に訴えかけてきた。

 誰かがいる、と。

 

「動くと撃つ!」

 

 先に、獅子劫が自前の武器を発砲した。

 それは標的へと直進し、

 

「ふぎっっ!!」

 

 呆気なく着弾した。

 

「......あ?」

 

 彼の弾は着弾したら最後、呪詛により相手の心臓を確実に打ち抜く必殺の弾丸。

 謎に近づいてきた下手人を呆気なく死に導いた......

 

「......いってーなあ!! そこ心臓だぞ心臓!! 死んだらどうしてくれんのよ!!」

「......は?」

 

 ......はずだったのだが、不可解なことに元気な声が平原に響き渡った。

 二人は声のもとを見る。そこには、

 

「......まあいいや。死なないし。死ねないし。

 殺せなかった詫びとして一つ教えてはくれないか。おっさん。

 カグヤだ。カグヤってやつがどこにいるカグヤか、答えろカグヤァ......!」

 

 冷静なようで目が血走っているのを隠しきれていない、白髪を足元まで伸ばした血だらけのモンペを着た少女が、そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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